CLOSE

株式会社iMed Technologies 河野健一氏によるショートプレゼンテーション(全1記事)

2019.10.29

Brand Topics

PR

つくりたいのは「神の眼」を持つリアルタイム手術支援AI 「医療×経営×AI」分野で起業した医師のイノベーション

提供:一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)

2019年8月26日、LINK-J主催によるイベント「L x T bridge ~LS経営・戦略xAI~人のつながりで革新を~Vol.3」が開催されました。第3回となる今回は、非エンジニアやAIの知識のないマネジメント層などに向けた、「そもそもAIとは何か」から学ぶAIサマーナイトスクールを実施。数式や理論を省いたうえで、ヘルスケア分野での応用事例を多数紹介し、「AI x ヘルスケア」の具体的な展開のイメージを持ってもらうことを主題において行われました。本記事では、株式会社iMed Technologies 代表取締役 CEOの河野健一氏による、現在開発中の手術支援AIについてのショートプレゼンテーションの模様をお送りします。

他人事ではない脳梗塞

河野健一氏(以下、河野):今日の内容ですが、弊社で手術支援AIを開発していますのでそれに関してと、起業して5ヵ月経つので、そこで感じたことをお話しします。時間が限られていますので、あとでメールやFacebookで申請して質問をしていただいても構いません。

脳梗塞は脳の血管が詰まる病気で、寝たきりになったり命にかかわったりします。決して他人事ではない病気で、ご家族や周りの方が脳梗塞になられたという人もいるのではないでしょうか。私は脳梗塞などの頭の病気に対して、長年、脳血管内治療という手術を行ってきました。その脳血管内治療について簡単にご説明したいと思います。

頭の血管は細いところで1〜2ミリぐらいです。これは数年前に私が実際に治療した患者さんの3Dプリンターで作ったものです。カテーテルなどの医療機器を使って治します。これを血管の中に通します。どこから通すかというと、頭を治療するのに、なんと足の付け根から入れていきます。頭を開けないので直接は見られません。ということで、X線を通して、胸のレントゲンみたいな感じで見ます。

どんな感じで実際に見えるのか。この血管の太さは幅3mmぐらいです。ぽちっと点がここにあるんですけど、これがカテーテルの先端なんですね。これを見逃してはいけないんです。ずっと見ておかなければいけない。

しかも、場合によっては複数のポイントを同時に見なければいけない。画面1、画面2と書いてありますが、手術する人(術者)はここを見ながらステントを開いているんです。ここをずっと見ています。1mm単位で調整しています。だからここから目を離せないんですね。

でも同時に、ガイドワイヤーやガイディングカテーテルが同時に動いてしまうんです。動かしながらも、ここを見ないといけないんですね。助手がそこを見て注意しています。ですから課題としては、4画面のいろいろな場所を同時に見ないといけない。見落とすと、場合によっては脳出血などの大きな合併症になりかねない。私もひやっとした経験があるわけですね。

河野:もうちょっと厳密に言うと、術者と助手で、通常3人くらいで手術するのですが、みんなで複数の画面の複数の場所を注意しながら見ています。そして必要に応じて声を掛け合っています。 

つくりたいのは「神の眼」 リアルタイム手術支援AI

河野:じゃあ、どういうソリューションがあるか。常に監視し、助言を与える。これって別に人間じゃなくてもよくないですか? AIでできそうですよね、画面を見ているだけですから。だから私たちが作るのは「神の眼」です。そのAIというものを作りたい。

よく「神の手」といいますよね。別に動かさなくてもいいので、見て、ここで危ないと言ってくれればいい。そういうものを作りたい。そこでディープラーニングを用いた手術支援AIを使っていく。常に監視し助言を与えること。これはAIだったら疲れることはないですよね。

可能性を秘めているディープラーニングの威力

河野:少し話がそれますが、病院を辞職するのは、けっこう大きなインパクトなんです。自分の時間を確保できるので、よりアクセルがかかったという事実はあります。目の前の患者さんだけではなくて、世界中の患者さんを笑顔にしたい、という志。世界に安全な手術を届ける、というミッション。そういう思いで、2人で起業しました。

私は医療面をカバーし、自分でもある程度プログラミングして、エンジニアの方とやりとりしています。金子は経営の経験が豊富なので、経営戦略を任せています。我々2人はお互い3月で仕事を辞めて完全にフルコミットしています。

それからディープラーニングですね。細かいことは省きますが、例えば先ほどのこの点。この点を見落とすといけないわけですね。ディープラーニングでどれくらいのことができるか。ここだけ専門的になるんですけど、手術画像があってそれをもとに教師データというものを作ります。これは非常に時間がかかる膨大な労力。それで学習させると、例えばこれは予測結果で、白が正解、赤が不正解、だいたいこんな感じになります。

計算速度はCPUの100倍、GPUによる画像処理

河野:さらに、(ある)GPUの計算速度は(ある)CPUに比べると100倍になります。どういうことかというと、学習するのに自分の家にあるコンピュータだと3日間かかるところが、NVIDIAの(ある)GPUを使うと1時間で済む。3日が1時間になる。これはすごいことです。

しかもこれはいくらか。クラウド経由でちょっとコストは掛かりますが、この3日を1時間にするコストが300円です。300円出せば1時間でできてしまう。これは圧倒的な生産性ですね。もちろんGPUは性能がありますので、もっとお金をつぎ込めば、いまだったら恐らく1時間だったり10分ぐらいだったり、とても早くできると思います。時間がかかる部分はあるので、私自身も寝る前に計算させたり、隙間時間に計算させて、結果を朝起きたときに見たりしています。

医者もAIや経営に触れる必要がある

河野:最後に医療×AIの起業で感じたことについてお話しします。一つは知らないことの多さ。やはり医療業界はかなり規制が多いんです。みなさんの中には、医療業界の方がおられるのでわかると思います。特に薬事や知財ですね。

さきほどAIの知財という話がありましたが、そのあたりも特殊なところがあると思っています。個人的にはネット情報ではなくて、行動して得た情報、人的ネットワークがとても重要だと思っています。

AI×医療って新しい分野なので、知財に関しても弁理士の1人目に聞いたものと、2人目に聞いたものとでは実は全然違ったりするんですね。あとはPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に行ったり、都庁の薬務課に行ったりしました。前例がないので、色々な見解があります。定まっていない。セカンド、サードオピニオンに聞きに行かなければいけない。その中で、自分たちで前例を作っていく必要性があると考えています。

先ほどもディスカッションに出ましたが、「AI×医療×経営」には共通言語の知識が必要で、AIの方にとっては現場を見る必要性があるかなと思っています。医者にとってはちょっと難しいですが、AIや経営に触れた方がいいと思っています。

医療業界の企業にとっては、個人的には海外の情報を持っているのは強みかなと思います。医療は医療機器も海外で普通に使えますので、その情報というのは非常に強い。経営の方面で言えば業界に特有の知識があるといい。個人的には新しいものに触れて楽しむということをやっています。何かあればまたFacebookやメールでご連絡ください。

プロをマネージするために必要な知識やスキルの身につけ方

曽山明彦氏(以下、曽山):今日のテーマに関わりのあるお話をいっぱいしていただいたと思います。先ほど先生は、ずっと医師をなさっている中でAIに触れるというお話がありました。起業されて、その手前でAIを学んだと思いますが、どうやってAIを学んだのかということと、実際やってみて、今の立場だったらどのレベルまで必要なのか。

組織図を見たら業務委託をされている方が何人かいらして、プロ、エンジニアの方がいると思うんですが、彼らとコミュニケーションする、ある意味マネージすることが必要だと思います。そのためにはどのくらいのレベル、AIの知識が必要なのかを教えてもらえますか。

河野:私はかなり特殊で、数学科を出てプログラムも多少できるという前提があるので、数式を見てもわかるんですね。なので、先ほどのような組織図でも比較的なんとかなるんです。

本当は最初にCTOがいた方がいいんじゃないかという話もあったんですが、CTOは(採用にかかるコストが)高いし、なかなか見つからないんですね。理想的にはある程度自分でコードを書けたり、論文が読めたりするのが理想だと思います。ただ、難しいと思うので、そこをブリッジしてくれるビジネスもわかっているCTOみたいな人をつかまえてくるとか。経営をマネージする方ができることとしては、AIのセミナーなどに行って少しでも触れてみる・体験することが一番重要かなと思います。

やはり0と1では全く違うので、今ならネットで何でも体験できます。ディープラーニングも、先ほどの(山田さんがお話しされた)CNNやRNNであれば簡単に体験できますが、そこのハードルが高く感じてしまうんだと思うんですね。そこをちょっとやってみて「こんなものか」っていうのがわかると全然違うと思います。 

課題から入ることが大切

曽山:もう一点、関連の質問ですが、今日は大企業、製薬企業の方も含めていらっしゃっていて、恐らく社内で「AIやれよ」って言われている。さきほどの山田さんのプレゼンの中にもあったように、ミッションを負っていたり、かなり悩まれている方もいらっしゃると思います。

もともと数学科で数式もわかるような先生ではなく、一般的なバックグラウンドの人がやるには、やはり人を採用するしかないと。でも採用しても、その人との会話が成り立たないとうまくいかないと思うんですが、そのコミュニケーションというか、どうやってうまくやっていったらいい感じですか?

河野:やはり課題が先にあって、その解決法として「本当にAIを使わなきゃいけないのか」という問いから入るべきだと思います。ただ仕方なく、それでも使わなければいけない場合は難しいですね。私は大企業にいたことがないので分かりませんが、恐らく上から言われてやらなければいけない場合は難しいかなと思います。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 海外拠点がサイバー攻撃者に狙われやすい“4つの理由” 実例からひもとく「EDR」+「SOC」の効果と特徴

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!