今までで一番大変だったのは、創業半年で倒産の危機を迎えた時

河上純二氏(以下、河上):呉さんと真面目に飲みながらあんまり話したことないからさ。呉さんが13年間ここまで来てさ、今まで一番大変だったなと思ったこととかってある?

呉京樹氏(以下、呉):それは会社ですか?

河上:そう、会社経営の中でね。

:そうですね、実際クリエイターズマッチって創業半年で倒産の危機を迎える会社なんですよね。

河上:あっ、しょっぱなから。

:そう、しょっぱなからなんですよ。実は一番最初の1年目が一番大変だった。

河上:ああそうなんだ。

:はい。それで、これは異常に難しいビジネスモデルへのトライというか。いわゆる全国のデザイナーさんとお仕事をするというのは、今でこそ一般的で、クラウドソーシングと言われるメジャーなビジネスモデルになって、上場企業も出たりしていて。

それを2007年に国内でスタートしてやった時に、デザイナーさんたちと仕事をマッチングする場があればいいだろうっていう、けっこう今のクラウドソーシングのビジネスモデルの構想でスタートしたんですけれども、やっぱりこれが非常に難しくて。

マッチングサービスで起こった“ミスマッチ”

:こういう言い方をするとすごく難しい話になっちゃうんですけれど、いわゆるデザイナーとして成功している人って、やっぱり仕事に困ってないんですよね。なので、我々が「クリエイターを救いたい」と言った時に、これは当時すごくディスられた部分で、「お前らに救われたくない」みたいな。

「そもそもそんなに苦労しているとは思ってない」とか。僕自身もデザイナーをやっていた時に、デザインの仕事が好きだったので、24時間働いても別に苦と思ってなかったんですよね。ただ、やっぱり環境って整備しないといけない、と。

なので、デザイナーさんといい仕事をマッチングするっていうビジネスモデルでもともとスタートしたんですけど、意外にスタートしたら、仕事がある人たちってやっぱり入ってこないんですよね、仕事がない方々が入ってくる、と。

河上:そうだろうなー、最初はそうだろうな。

:なので、これってやっぱりミスマッチが起きてしまう。クライアントからすると「もっとできると思ってた」とか。なので、実は半年でマッチングサービス自体はクローズして。要は炎上、クレーム。

河上:あーそうだったのー。

:納品日に納品されないとか、電話しても捕まらないとか、いわゆるそういった事故がたくさん起きて、こっちも責任取らないといけないところで、そのサービス自体は半年でクローズ。っていうのがそのタイミングでキャッシュアウトして、サービス構築から全部投資していたので。

クリエイターの教育事業をベースに置いて再出発

河上:そこからどうやって切り替えしていったの?

:銀行さんを全部回って。

河上:社長稼業だなー。

:半年かかって一行の銀行だけが融資をしてくださって。これ言っていいのかな、まあでも事実なんで、りそな銀行さんの渋谷支店長さんが。

河上:りそなさん、実はいいよね。

:いや、僕はいまだにすごく感謝していて。

河上:実はけっこうりそなさん、ね。うん。

:そうなんです。それで、いわゆる調達をさせていただいて、それでスタートしたのが実は、今の僕らのベースにある教育事業。

河上:あっ、第二の旅立ち的なところは、マッチングの前面ではなく、教える側に行ったということ。

:はい、完全に教える側から。いわゆるクリエイターとしてのスキルじゃなくて、ビジネスマインドだったりとか。

河上:そっち側の。社会人としてのスキルとか。

:どっちかと言うと、仕事をするというところのスタンスの在り方だったりとか、お客さんがどう考えているかとか、お客さんがどういうものを求めているか、みたいな研修をスタートしたことが一番最初のきっかけなんですよね。

それは僕らが痛い目にあった部分なので。別に多分クリエイターからしたら悪気があったわけでもないと思うし。クリエイターって自分の作りたいものを満足いくまで作りたいという思いはあるけど、でもやっぱり、ビジネスって納品してしかりなので。

そこをちゃんとバランスを合わせていくというところも含めて、あとはスキルセットの提供というところで、りそなさんから融資したお金で、全国行脚して、一番最初にスタートしたのが宮崎。

クリエイター業界で心中する覚悟があった

河上:実際に教えに行ってたの?

:行ってました、はい。僕らはリアル講座しかしないので。

河上:なるほどね。それはでもほら、事業的な話で言うとさ、けっこう手間暇かけて売り上げ小さ目に見えちゃうような入り方のような気がするよね。

:はい、めちゃめちゃそうです。1~2年目くらいまで、売り上げはほぼゼロでしたね。

河上:でも、それでもその道から入っていったのは、この業界を正常化させるというか、ちゃんとしていきたいという熱量だったからってことですか?

:もうそれしかないですね。

河上:そうなんだ。この業界でしばらくどっぷり賭けて付き合っていこうという決意があったってこと?

:いやもう、心中しようと思って。

河上:クリエイター業界で?

:はい、クリエイター業界でですね。

会社名にあえて「クリエイター」と付けた理由

河上:今までたくさんのことをやってきてる呉さんだから、また他のものを見つけりゃいいじゃんっていうさ。別に軽いタッチじゃなくてね、他にもまだいろんなものあるよね、っていう目線も多分呉さんにはあったと思うんだけど。でも、ここにしがみついて繋げていったのはやっぱりなにか理由があるの?

:実はけっこうクリエイターズマッチが目指している世界って大きいんですよね。僕らが言っているクリエイターって、どうしてもデジタルの業界にイメージがあるんですけど、僕らが会社名を「クリエイターズマッチ」とあえてクリエイターと付けたのは、デザインの領域だけに絞りたくなかったんですよね。

それで、クリエイターって僕の中ではモノを作る人なんですよね。僕ってゼネコンでマンションを作っていたりもしていて。いわゆるモノづくりをする人すべてなんですよ、僕の中でのいわゆる救わなきゃいけない人たちっていうのは。なので、そういう意味で言うとものすごく広いんですよ。多分一生かけても叶えきれないかもしれないですけど。

ただ、その入り口として一番入りやすかったのがデジタル業界だったっていうのもあったんですけど、将来的には、例えば日本でどんどん少なくなっている宮大工とか、切子職人とか、絶滅寸前と言われている職人が後継ぎがいないとか、そういう業界まで入り込んで、それこそ地産地消と言っているのは、いわゆる日本の伝統工芸を守るとか、将来的にはそういう方向までやりたいなって思ってるから、あえて「クリエイター」っていう。

河上:あ~そういうことか。

モノを生み出すすべての人に幸せになってほしい

:はい、クリエイターって幅広いですよね。なので、別にデジタルに絞るわけでもなくて、あくまでもクリエイター、モノを作る、生み出す人たちをどういう風に幸せになってもらうかということを考えていくっていう思いで、実は会社を作った。

河上:なるほどねー、素敵だねー。それで、でも今はまだデジタルから出きれてないよね。

:今は出きれてないですね。

河上:そこまでは行けてない。でも、そこまで行こうと思ってはいるんだ。

:思ってます、はい。

河上:なるほどね。じゃあ本当のリアルなモノづくりも含めて、そういう環境インフラになりたいっていうことなのかな?

:そうですね、はい。なので、つい先日のイベントとかで、建築家さんとディスカッションさせてもらったりとか。僕としてはすごく興味がある領域なので。

有名無名に関わらず、クリエイターが正当に評価されるプラットフォームを作る

:ただやっぱり難しいのが、僕はクリエイター教育を通してクリエイターが活躍できる場を作るということを考えたときに、最終的に必要なのは評価の軸だと思ってるんですね。

河上:作品の評価?

:作品の評価。この作品の評価が正しい姿であるべきだと思っていて、僕はそのプラットフォームを作るのがゴールだと思ってるんですよね。なので、5年前からアワードをやったりとか。

いわゆる一般的な指標、定性的な指標だけじゃなくて、定量的な指標も含めて、すべてを評価する仕組みができれば、多分「誰が見てもこの人優秀だ」という、クリエイティブの世界が作れるんじゃないかなっていうのが僕の夢見ている世界。

ただどうしても今って、有名な人が「この人いいよね」と言うと、どうしても影響力が高いので。ただ、僕らが普段日頃手に取っていいなって思ってる商品って、意外に普通に地方のクリエイターさんが作ってる商品だったりとか、そういうものが世界に広がっていける環境を……。

だから、僕はもしかしたらクリエイターが正当に評価されるプラットフォームを作りたいのかもしれないな、というのは最近自分の中でも気づきがありますね。

河上:なるほどね。今(クリエイターズマッチのパートナーの人数は約)300人じゃない? これを今後はもっと増やしていくの?

:できることならやっぱり幸せにする人を増やしたい。

河上:増やしたいか。

:はい。

評価基準を保ちつつ、幸せなクリエイターを増やしていきたい

河上:でもほら、さっきクラウドソーシングの話も出たけど、いろいろ後発で出てきたけど、僕らもね、現場や授業を見ていたときなどに(クラウドソーシングを)使うこともあったけど、あっちはあっちでたくさんいらっしゃってさ。

細かい作業からさまざまなことをやられる人たちというところだけど、呉さんのところはわりかし審査制を取っていてさ。俺には人を選んで取り組みを形作ってきた印象があるんだけど、それは今後どういう風にしていく? やっぱり厳しく見てそういう(審査に通った)人たちだけを大事にしていくということなんだよね。

:そうですね。基本的には、それはお客さんへのコミットなので、基本的には大事にしていきたいと思っています、と。ただやっぱり13年やってさっき言ったように300人というところでいくと、一般的なクラウドソーシングと比べると人数的にはすごく少ないという。なので、やっぱり増やしていきたいですね。

どっちかというと増やしたいというのは思いとしてですね、「幸せなクリエイターを増やしたい」という僕の勝手な思いなんですけれど、一人でも増やしたいと思ってます。ただ、やっぱりここ(評価の基準)を緩めるといいことないなって思ってるので。

河上:そこのあれがね、ちゃんとね。

:なので、どっちかというとそのレベルに達してくれる人たちを増やしていきたい。これはたぶん、司法試験だったりとか世の中の検定がある職種って全部一緒だと思っていて。そこの基準を緩めている検定って別にないじゃないですか。なので、どっちかというと高みを目指してほしい、目指す人を増やしたいって思うと、あんまり緩める必要はないのかなと思ってます。

河上:そうだね、そうだね。

しわ寄せが来やすいポジションだからこそ知識が必要

及川真一朗氏(以下、及川):数ね、(レベルに達しない人を)いくら増やしてもしょうがないといえばしょうがないですからね。クリエイティブによって人を幸せにできる人がたくさん増えたら、やっぱりいいわけですよね。

:はい、僕は実現したいのはそこです。

及川:ですからね。

河上:だから及ちゃんもさんざんあれでしょ、クリエイティブ。この人(及川氏)が本当にクリエイティブをまとめていた人だから。いろいろ大変だったでしょ、クライアント付き合いとかさ。

及川:僕は7年ぐらいやっていて。それこそ2004年から2011年ぐらいまでやってたんですけど、ある種かぶってる部分もあるんです。

河上:さまざまなクライアント付き合いは、本当に大変だから。俺はずっとどっちかというとクライアント側にいることが多かったから。どっちかというとけっこう言わせてもらっちゃったけどね。無理難題をたくさん言ってさ、すごい大変なんだろうなと。今考えれば、そう思うことがすごく多い。

:そうですね。どうしても(クリエイターは)タッチポイントが(仕事の流れの中で)最後の部分なので。お客さんからプレゼンして、商談して、作るものが決まって、最後の制作、なので。

やっぱり、どうしてもしわ寄せが来やすいポジションではあるので、そのしわ寄せをできるだけ少なくしてあげたいという思いも含めて、やっぱり、だからこそ知識をつけないといけないし、世の中のことをちゃんと知らないといけない、というのは僕の中で学びだと思ってるので。

河上:だいぶ語ってきてわかったでしょ、熱いタイプだって。

(一同笑)

及川:そうですね、JJさんがさんざん熱いタイプだって言ってましたからね、今回もね。

河上:グイグイ来るからねー、熱量。情熱熱風なわけよ。