一瞬で賃貸物件が予約できるエクスペリエンスを提供

山口公大氏(以下、山口):それをOYOに反映させたときにどうなるのかを、事業領域を決めたタイミングで考えたのがこちらですね。これも実際の資料です。今年の1月初旬ですね。実はこのときは、OYO LIFEが今の事業モデルでいくことが決まったタイミングです。

それ以外は物件を80物件くらい持っていて、あとは何もない状態です。今回、我々の武器は何かと考えたときに、まず1つ目は圧倒的に資金力があること。2つ目はインドのエンジニアがむちゃくちゃ大量にいて、日本にどんどん来るんですよ。

「開発したい」と言うと、(インドからエンジニアが)20人くらい送られてきたり。最後は物件を自分たちで持っていることによって、回避できる法律、削除できる契約プロセスがあったこと。これらを1つのサービスにまとめ上げるということをやっていました。

戦いの場所は、物件を選ぶという市場ですね。我々ができることは、まるでAmazonみたいな感じで、一瞬で物件を予約できるというエクスペリエンスを作ることでした。他の場所でも買えますけど、Amazonもワンクリックでものを買えるじゃないですか。すぐ買えて、すぐ届くというエクスペリエンスが優れてるんですね。OYOも物件を選ぶというエクスペリエンスはどこよりも速くできるのではと。

もともとの物件選びは、物件オーナーが不動産仲介業者に卸していて、不動産仲介業者がSUUMOやLIFULLに届けるんですよ。

できるかどうかよりも、勝てる場所に誘導するプランを立てる

物件を探すと、人は物件をその場で選べず、不動産屋に案内されるじゃないですか。その時点で物件を選べていない。なので、我々はその不動産屋に案内されるステップを消す状態を作り上げることを、今年の1月のタイミングで決めました。

この絵を先に描いて、これをどうやったら間に合わせるかということを1月の中旬くらいに決めて、1月の下旬くらいまでに全貌を固めたようなイメージです。実際にこの絵を達成しようと思ったら、今のOYOLIFEの前身になるようなサービスがインドで開発中だったんですよ。

なので急いでインドに行って、それを持ち帰ってきて、WebサイトのTOPページだけ変えて出すことをまず決めました。エンジニアも足りなかったので、インドから20人くらい来てもらいました。決済オンライン、契約のオンラインは、日本の中で探すといくつか提供している会社があったので、委託して入れて、3月までにサービスを出せと言われていました。なので、1月の中旬に決めて、1ヶ月半でそれを全部開発しきるという線表を引くわけです。

できるかどうかというよりも、OYOの強みであるキャノン砲を使って、絶対に勝てる場所に誘導をしていくプランを先に立てると。できることだけからやると、圧倒的に勝てるような場所には行けません。まずは圧倒的に勝てるような場所を描いてから、そこに間に合わせるという作り方です。

共感できる「未来図」が人を魅了する

この次は、いわゆるスタートアップの中でよく言われていることかもしれません。やることが決まったら、次はこの世界を具体的に描くんです。なので、「目指す世界の解像度を上げる」ということが次に来ます。次に行ってください。

これは実はSprinklrというよりも、私が1回脱サラしているときにやっていたクラウドファンディングで気付いたんです。今ってロジックでの選択以上に、夢や意義にお金と人が集まるなと。実際に私がクラフトビールを作って、こういう世界を作りたいんだというヴィジョンを作ってプロジェクトをやったら、実際にお金と人は集まるわけなんですね。

このときにいわゆる夢や意義みたいなものを研究していて、参考にしていたのが、例えば横浜スタジアムでした。これをご覧になったことはありますかね。以前、横浜スタジアムの未来構想というものを出したときに、「未来のスタジアムはこうあるべきだ」という絵を先に出したんですよ。

スタジアムの真ん中が実はぶち抜きになっていて、道路の先まで続いています。横浜を通った人は野球の試合をチラ見できるという未来図を作ったんですね。今は先に夢があって、それに共感性があればあるほど、人が魅了されます。

孫正義氏に「ホテルのように部屋を選ぶだけ」というゴールイメージをプレゼン

これを参考にOYOでやったことは、プロダクトを作っている途中に、先にゴールイメージを作るということをやっていました。2月10日くらいに代表の勝瀬が孫さんに事業のプレゼンをするというイベントがありました。

その際、先に実現したい世界の動画を作って見せるというプロジェクトが、1月下旬から発してたんですね。当時は構想でしかなかった、敷金・礼金ゼロで翌日に入居できて、一瞬で部屋の契約が終わるというエクスペリエンスをしたらどうなるかという世界、ヴィジョンを動画で作ってしまうんです。

「ホテルのように部屋を選ぶだけ」というコピーを作って、そのコピーを実際に実現している人を作って、それを孫さんのプレゼンでぶつけるという裏舞台がありました。このタイミングで「行け! (アクセルを)踏め!」となりまして、一気に開発を進めることになりました。

クラウドファンディングと選挙に共通する勝ち方

じゃあ次ですね。これが最後です。「社会との合意形成に時間とお金をかける」と。私は今マーケティングの責任者をやっているので、「どのくらいお金を使っているんですか」とよく聞かれるんですよ。エントリーするときも、OYO LIFE、OYO LIFEといろんなところに出ていったので、「お金を使えていいですよね」と言われるんです。

ただ、私がOYO LIFEの初期エントリーに使った費用は80万円です。ソーシャルアドに80万円を使っただけなので、実際にお金をどうかけるというよりも、どう社会との合意形成を取るかにフォーカスしていくことが最後のセクションになります。

これも脱サラしているときのクラウドファンディングを転用しています。クラウドファンディングって、これもよく「どうやったら勝てるんですか」と聞かれるんです。「選挙に勝つために必要なことをやったら、勝てるようになっています」とよく言うんですよ。

やることは3つです。1に共感されるマニフェストを作れたかどうか。2に有権者を選挙前に集められたかどうか。3は選挙開始と同時に投票してもらえたかどうかですね。これさえ守ってちゃんと動けば、クラウドファンディングは成功すると言っています。

個人のクラウドファンディングで成功するんだったら、大きな企業でやったらもっとパワーが上がるんじゃないかという実験でした。なので、OYOでやったことの1つ目はマニフェストを作ることですね。どうやったら今の世の中に響くような言葉を作れるか。

言葉を作るところに時間をかけていました。最後にまとまったのがこの文章ですね。OYOはなぜホテルじゃなくて不動産で最初にエントリーしたのかという答えは、「ホテルのように部屋を選ぶだけ」という体験を提供するため。潜在的に持っていた不満に問いかけるような文章を作りました。

「OYOは何を解決するか」というマニフェストで、議論を起こす

次ですね。我々がやったことは今の言葉を作って、自分たちのマニフェストを1枚のLPに載せただけです。この左側の2つがOYOがエントリーしたときに最初に出したものです。本当に「OYOはなにを解決するか」という、これしか出してないんですよ。

どういうメリットがあるか、どういう世界を作りたいかというのを、1枚のLPを出して、興味を持ってくれそうな人にソーシャルでターゲティングしてアドを打っただけなんですよ。そうしたら何が起きたかというと、Twitterの一部分で、「あれ、OYOがホテルじゃなくて不動産でエントリーしてるぞ」とつぶやく人がいたりしました。

アドを当てた人ですね。そこから「あれ、なんでホテルじゃないんだっけ」「確かにこの不動産のモデルは気になっていた」ということが起きて、翌日にTwitterのトレンドに6個入っているんですよね。それでニュースメディアが取り上げて、4日後にプレスリリースで答え合わせをするというのが、実は最初のエントリーなんですよ。

なので、まずはマニフェストを作って、議論をしてくれそうな人たちに問いかけて、語りかけただけ。その議論がソーシャル上やWeb上で起こっているのを見ながら、盛り上がってきたところで正式な回答を出すことを、2月17、18、19、20日くらいの4日間ぐらいまでやりました。これがOYOのエントリーですね。

お金をかけない代わりに、緻密なPRを展開

これは実際の資料です。LPをまず先に作って、プロモーションをしていました。サービスリリースは2月25日と書いてあったんですけれど、3月28日に延期しました。生々しいですね。その間のアドというプレマーケのところは、80万円分のソーシャルアドを打っただけです。

そのあとは、一番下のPRのところですかね。答え合わせ的にプレスリリースを出すと、フリーの取材ががーっと集まってきたので、段階的に徐々に情報を出していったと。

お金をかけなかった代わりに、すごく緻密にやっていたのがPRです。実際に火種みたいなものを作って、答え合わせをするプレスリリースをしてから、徐々にフリーパブリシティでちょっとずつちょっとずつ情報を出していきました。

サービス側も事前登録してくれた人に、今もどんどん開発状況などを送っちゃってたんですよ。サービス情報はないけれど、グーグルマップに物件の旗を立てて、先に登録してくれた人に「今こういうのがあります」というようなものを送ったりしました。

1ヶ月無料でOYOの物件に住めるキャンペーンに5万人が参加

事前にOYOを体験したい人は、言ってくれたらもう先に住めますよというものを出したりして、連絡をしていました。3月4日くらいにけっこう盛り上がってきたので、ぶち上げるためのキャンペーンを1回やりました。

当たったらタダで1ヶ月間OYOに住めるという、くじ引きキャンペーンみたいなものをやっていたんですよ。これもいったらPRですね。一応、六本木駅と東京駅、横浜駅のOOHだけジャックして、キャンペーンを始めました。前半はビジネス系で、キャンペーンを始めると今度はC向けのメディアが取り上げ始めてくれました。

「OYOが日本に不動産で入る」というメッセージングを解説していくのが初期段階。後ろの段階は、「ユーザーにどういう価値を提供していくか」というキャンペーンのところです。紐解いていくというのが後ろの段階ですね。

こういうかたちでやっていったので、本当にお金はあんまりかからないまま、事前登録は結局1万5千人くらいが登録し、くじ引きのキャンペーンは5万人くらいが参加するような状態で初期が終わりました。

この間に議論の火種をどんどん燃料投下していったので、記事としては150記事くらいの露出をして、最後に3月28日のローンチを終えるというようなかたちでした。はい。進んでもらっていいですか。

SprinklrとOYOの5つの共通点

改めて、本日の内容のまとめです。この5つですね。まずは1である、3ヶ月以内に野戦で勝つ。そのあとは採用の罠にはまらないように、しっかり丁寧に時間がかかっても人を採っていって、ユニコーンの企業が持つ最高の武器をどの戦場でぶち放つかまで誘導していくというプランニングをします。

目指す世界の解像度を上げて、最後は強制的に伝えるんじゃなくて、社会共感、社会との合意形成に時間とお金をかけながら火種を作っていく。この5つに関しては、SprinklrもOYOもどちらでも変わらなかったことでした。

本当は、いろいろな事件だとかエピソードなどがあるんですけれども、1時間という限られた中でしたので、今日はこれで以上とさせていただきます。本日はありがとうございました。

(会場拍手)