2024.11.25
「能動的サイバー防御」時代の幕開け 重要インフラ企業が知るべき法的課題と脅威インテリジェンス活用戦略
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荒川和久氏(以下、荒川):他人を叩きたいということになってきちゃうと、けっこうどうなんだろうというところがありますよね。
中野信子氏(以下、中野):これってたぶん、人間の本質なのでそんなに変わらないと思う。意識していてもけっこうやっちゃうと思うんです。ただ意識的になることによって抑えることはできるかもしれない。
さっきの500万円、1,000万円問題と一緒で、抑えている人と抑えていない人がいたら、抑えていない人のほうが勝っちゃう。なので、抑えることは損だよねということになる。
荒川:ああ、そうですね。
中野:政治もトランプみたいなやつが選ばれるし、ヒラリー・クリントンのほうが抑えめですよね。そうすると、抑えていない人が勝っていくから、抑えようと言ってもそのエフォートは無駄になるんじゃないか。
荒川:それってなんか、歴史的には揺り戻しになったりしないんですかね。
中野:どうだろうな。これはすごく重大な問題だし、もっと丁寧に論調する人もいないといけない領域なんだとは思うんですけど、あまりちゃんと体系立ててやられていない感がありますね。
荒川:だからこそ、そういうのがネットで可視化されることによって、昔はそういう流れが見えなかったものが、今、みんなが見えるっていう状況になっているのはアウトですよね。
中野:叩いてもいい人を見つけやすいツールができたことは、この流れと無縁ではないと思う。昔は見つけるツールはテレビとか新聞とか週刊誌しかなかった。
それが、ネットというものができてしまったことによって、検出が比較的容易になったし、なんなら冤罪もできてしまう。一般の人が罪人を作れるわけです。何の落ち度もない人を「こんなことを言った」と。
拡大解釈であることもぜんぜん承知の上で、その人を攻撃したいがために、そういう解釈をわざわざするということが起きる。これはしばらく続くんじゃないかと思います。もっと悲観的な予測をすれば、かなり長い間続くんじゃないかとも個人的には思う。
荒川:なるほど。こういうのって、脳科学的に……。
中野:ああ、これこそSchadenfreude(シャーデンフロイデ)ですよ。シャーデンフロイデって、妬みに付随して起こる感情です。
荒川:メシウマですね。
中野:メシウマか。あいつの不幸で今日の飯はうまいっていうのをメシウマという。シャーデンフロイデのフロイデ(freude)はドイツ語で「喜び」、シャーデン(Schaden)は「損害」という意味です。「相手の損害がうれしい、喜びである」ということです。
余談になるかも知れないんですけれども、東京大学というところに入って、間もないころの、すごく印象に残っている思い出は、駒場のときの男性の同級生が「どういう女の子が好きなの?」と聞いたら、「この大学に受かることが最低条件」と言うんですよ。「だけど、俺より頭が良くちゃダメだ」と言うの。ああ、そういうことなのねと思ったんですよ。俺より頭が良かったらもう対象じゃない。そういうやつとは付き合いたくない。
荒川:自分より頭のいい女の人とは一緒にいたくない。
中野:不快なんですね。妬みというネガティブ感情が生じるからです。もしかしたら男性のほうが、そういう状況を受け入れがたいのかなと思いました。
荒川:(笑)。この話を本に書いていて、いわゆる理性、感性の話のときに、よく、意識が変われば行動が変わるとか、意思があれば変えられるというのがあったりするじゃないですか。
でも、実は、象と象使いと環境の関係性という比喩を使ったんですけど、象は感情で、象使いは理屈だったりで、象使いが象を動かしているつもりになっているけど、象が動いた方向を「よしよし」と思って、後付けの理屈づけをしている場合がけっこう多い。
じゃあ、なんで象は動いているかというと、ほぼ環境で動いているんです。「こっちのほうが道が歩きやすいな」とか思うから象はそっちに行く。「こっちに餌がありそうだな」と思うから動く。ということは、象は環境によって感情を起こされているし、感情によって後付けの理屈付けをしているんだなというところがあります。
女は感情で動くとか、男は理屈で動くというのはあまり関係なくて、実は、みんな感情で動いていて、理屈付けをしているということを共感だと思い込んでいる。そういうのがあるなと。
中野:シンプルですね。こっちのほうが実像に近いと思う。
荒川:物売りとかマーケティングの話でいうと、感情を作るのが大事なのではなくて、感情に後付けの理屈付けをさせてあげることが大事なんだなというところがあります。「なるほどね」とか「納得です」と思わせないと、さっき言ったみたいに、嫌いなら嫌いでとことん嫌いになられると困っちゃうわけで、そこの部分ってすごく大事だなと。
中野:ええ。
荒川:「共感、共感」と言うと、感情で繋がるべきってみんな勘違いする。
中野:ですね。共感おじさんが、私、一番嫌いなんです。
(会場笑)
共感したつもりになっている人。すっごく嫌い。
荒川:あと、私が嫌いなのは、こういうことを言えば共感してもらえるだろうなみたいなやつ。
中野:それ! それだな。本当、それ! なんか雑な言葉になってすみません。それです。足元を見られている感じがね。「こういうことを言っておけば満足するんだろ?」という感じがすごく嫌。
荒川:嫌だし、たぶんそういう人たちが思い描いている共感って、ちょっと表面的だなと思っています。「わかるわかる」とか、「あるある」とか、「すごくいいですね」みたいな話ってあるんだけど、実はもっとそこの中に強烈に脳に傷を付けるといって、傷つくと不快じゃないですか。
中野:そうですね。
荒川:不快さや傷みたいなものがないと残らないから、多少の不快さはあっても理屈付けさせられると、そういえば、あのときああいうことがあったからああいうものを買おうとか、好きだけど知ってるけど買わない、みたいなものですよ。
中野:これがどういうことなのかなというと、今、納得できている方とそうでない方と半々くらいかなと思います。私たちは、なかなか言語化できない感情を持っていますけれども、この感情を巧みに言語化できる人がいると、みんなその人のことを好きになっちゃう。例えばテレビとかで人気のある人は、ほとんどこれができている人だと思います。
荒川:いわゆるカリスマとか、演説がうまい人。
中野:そうですね。
荒川:こういうことですよね。
中野:そうですね。トランプ大統領、この技一つで大統領になったような……。
荒川:(笑)。そうですね。
中野:みんな、嫌だなと思ってモヤモヤして、でも言えない。トランプ大統領は俺たちの思いを代弁してくれる的な。
荒川:そういうことも踏まえると、男脳、女脳も含めて、結局個体差でしかないし、さっき言った環境と象と象使いでいうと、置かれた環境とかがすごく大事。
中野:そっちを変える方が早い。
荒川:人間を意識付けで、意思で変えようと思うんです。
中野:絶対続かないから。
荒川:周りを変えた方が早いよねという。
中野:そうなんですよ。「脳科学的に集中力を上げる方法はないですか?」とか言われる。その質問を何百回聞いたことか。意思の力で本当に変わるんだったら、1回言ったらできるはずよ? と思いますよね。
(会場笑)
何回失敗してるの。つまり、意思で変えることはほぼ不可能ということではないか。
荒川:不可能ですよね。意思で変わったと思いたいだけですよね。
中野:そう思いますね。こんな人がいたら病気扱いになると思います。
荒川:というような話でお時間がきてしまいました。でも、これが結論でした。こういう話を考えていたほうがいいし、でも、考えるということは感じるということとイコールなんだな、みたいなところ。
中野:これ(感情の理屈付け=共感というスライド)、出しちゃうんだ。これ、めちゃくちゃ売れる方程式なんですけど、出していいんですか?
荒川:ぜんぜんいいです。
中野:そうなんだ。これですよね。
荒川:みたいなことを感じていただければいいかなと。
中野:これができた人は何にでもなれると思いますね。
荒川:さっきの、「自己肯定感を上げるにはどうすればいいですか」という質問、すごくされるんですよ。ハウツー的な答えを求めすぎなんじゃないかと思うんですよね。答えはいくらでもありますが、本質的じゃないなと考えていて。
要するに、ハウツーって所詮は手段の話じゃないですか。「どうすればいいのか?」の前に「なんのためにするのか?」という「本質的なものは何だろう?」という問いの方が重要で、いろいろ考えていったことの中の一つですよね。これは、すべてのことに当てはまると思います。
中野:なるほどな。すごい。やはり鋭いですね。
荒川:でも、これは全部に当てはまるような気がしますよ。
中野:全部に当てはまると思いますね。いい結論。
荒川:ちょっとお時間がきちゃったんですけど、せっかく中野さんが来ているので、質問をちょっとお受けしたいと思います。質問のある方いらっしゃいます?
質問者1:先ほど、感情の理屈付けというのを言語化すると言っていました。それ以外の方法というのは、例えばどんなことですか?
中野:モダリティは何でもいいんですけれども、言語が一番たぶん手っ取り早いんですよね。言語によらない方法は、意識しやすいのは音楽とか。「あ、これは俺の気持ちを代弁してくれている」と。アートとか。他に作品とか……。言語がなんで手っ取り早いかというと、情報の解像度が高いので、解像度よく伝えることができて、言語が最も手っ取り早く効果的にできる方法かなと思います。
荒川:なんて言ったらいいかわかんないとモヤモヤしているときに、「それってこうだろ」と言ってくれたときに、めっちゃそいつのこと好きになったりしません?
中野:ですよね(笑)。
荒川:わかる! なんでわかるの!? みたいな。言って欲しいことを言語化してくれることって、めっちゃ気持ちよかったりしません?
中野:言語化AIとかできたら、みんなそいつのこと好きになっちゃうかも。
(会場笑)
荒川:中野さん、どっかの講演かなにかの記事を見たときに、話を聞いてもらうことって、セックスに匹敵するくらいの快感があるというのがあった。
中野:そうですね。
荒川:結局、話を聞いてもらうことって大事なんだなと。
中野:大事なんですよね。同じ回路を共有しているということで、話を聞いてもらうことって、実は私たち、ほとんどないですよね。コミュニケーションを取っていても、相づちに終始したりどうでもいい話だったり、共通の話で盛り上がるというくらい。
本当に自分が思っていることを認めてもらった経験って、ほとんどしていないと思います。自分のことを認めてもらったという感覚の気持ちよさというのはかなり大きいわけで、それができる人はモテたりとか、正しいかどうかわからないけれども、信頼を強く得てしまったりするわけですよね。詐欺師は人の話を聞くのがすごくうまいと思います。
荒川:思うのは、人に話を聞いてもらうことがそんなに気持ちいいんだったら、これからおっさんが自分でお金を払って、若い人に話を聞いてもらう商売が流行るんじゃないかと思いますね。
中野:(笑)。それってパパ活とかギャラ飲みとかそういうことじゃないですか。
荒川:わかんないですけど。
中野:あれ? キャバクラとかもそういうシステムなんじゃないですか?
荒川:キャバクラの女の人じゃなくても、説教したいんですよ。
中野:そうかそうか、若い男の子もターゲットなんだ。
荒川:若い男の子とか、「俺が若い頃はな」とかなんとか言いたいんだったら、お金払ってよおじさん、みたいな。
中野:ああ、それって昔の会社の飲み会とかそういう雰囲気ですか?
荒川:今は説教なんかしようものなら大変なことになります。
中野:確かにね。
荒川:そういうのを、外部でお金を払って回すんです。
中野:そういうサービスね。お話聞く屋さんが儲かる。
荒川:そうそう。あながち間違いじゃなくて、お金を払ってもいいと思っていると思いますよ。今、話す機会がないんですもん。
中野:私、ちょっと請け負いたいですね。
(会場笑)
お話聞く屋さんになりたい。
荒川:単価高そうです。
中野:要相談ですね。
荒川:すみません。お時間が来てしまったので、以上で終了とさせていただきます。ありがとうございました。
(会場拍手)
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