2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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長谷川秀樹氏(以下、長谷川):それでは次に林さん、お願いします。
林英俊氏(以下、林):スマートショッピングの林でございます。私はスマートショッピングという会社を運営しています。自己紹介がなかったので、ちょっと簡単に説明させていただきます。
7年ほどコンサルティングをやりつつ、起業前はAmazonで定期購入や、会員サービスの立ち上げなんかをやっておりました。そこから「消耗品の買い物ってもっと便利にならないかな」という問題意識を持ちつつ、会社を立ち上げて、スマートマットという商品を立ち上げたところでございます。
私は、お二方と比べて「渋い」サービスをしております。お客様のフロントで見るような派手なものではなく、裏側で在庫管理や発注を自動化するような「渋め」のところで戦っていますので、少しつまらないプレゼンになるかもしれません。
長谷川:大丈夫です。今日のお客様は渋いのでもなんでも大好きです。
林:ありがとうございます。ご拝聴をよろしくお願いいたします。会社は五反田で、50人ほどでやっていまして、5年目のスタートアップです。(スライドを指しながら)何をやっているかと申しますと、これだけを見ても何もわからないかと思いつつ、実物を一応持ってきました。在庫専用の体重計、これがスマートマットというハードウェアになっています。
よく「棚に置いて使うの?」と言われるんですが、我々のコンセプトとしては、何でも置けるような汎用性がありつつ、電池で動いてどこにでも置ける、まったくケーブルも出ないかたちのIoTのハードウェアになっています。
現行プロダクトはWi-Fiで通信していて、SIM版は現在開発中です。そのハードウェアと、(スライドを指しながら)右側のクラウドソフトウェアがセットになっていまして、上に乗った商品の重さを計測して、残量がどのくらいあるのか、在庫の推移がどうなったのか、入出庫がどうなっているか、といった在庫管理のデータが見えるようになっています。
あとは、補充のアラートとして、ある一定の量まで減ったときに、「補充してくださいね」というアラートが優しく飛んだり、自動発注もメールやFAXの機能はデフォルトでついていまして、webとシステム連携すれば、それ以外のものでも繋がるような自動発注の仕組みまで持っております。
長谷川:だいたいどこに置かれて、なんの商材を置くのが代表的な感じですか?
林:床か棚に無造作に置かれていることが多いですね。
長谷川:小売業の?
林:そうですね。(スライドを切り替えながら)業種は実は後ろにあるんですが、私が想像していたより広いですね。小売業のバックヤードでも使われてはいるんですけれども、病院やホテル、あとは最近は飲食、バーといったところにも使われています。基本的には、お客様に見えるところよりも、裏側の保管庫に置かれることが多いです。そういうロケーションで使われているサービスです。
長谷川:だとすると、A4ぐらいの大きさですから、積むとしても限界がある感じですかね。
林:そうですね。縦に積んでいただく場合は、棚を用意していただいて、基本的には1SKU1ハードウェア(SKU=Stock Keeping Unit:最小管理単位)という構成で、縦に荒く積むことは避け、整理整頓してくださいというお話をさせていただいています。
もう少し仕組みを話しますと、在庫管理が非常に簡単になりまして、商品をマットに置くだけで、あとは商品を出し入れするだけで自動で棚卸・発注ができるようになります。
棚卸や発注が完全にゼロになって、届いたものをまた置けば補充されてということで、数えたり、発注のFAXを入れる手間がまったくなくなります。「置いて使うだけ」という使い方をしていただいています。
林:データという文脈でよく注目されることがあるんですけれども、私はもともとAmazonで、消耗品の定期購入のサービス提供に関連する業務をずっとやっておりました。その時に感じていたことですが、定期購入ということで「シャンプーを何ヶ月に1回買うか」を最初に決めないといけないんですけど、自分がシャンプーを何ヶ月に1回購入しているか、ぜんぜんわかっていなかったんですね。
とりあえず、適当に「2ヶ月」とかを選ぶんです。さらに丁寧におすすめなども出てくるんですけれど、1人の人と4人家族の人とではぜんぜん違う周期で買っているのに、その間くらいの平均でおすすめしてくるので、当たらないんですね。それで、ドンピシャで消費ペースまでわかってくれて、小売りが自動で届けてくれたら良いのになって思っていました。
消費データという文脈でも評価されています。消耗品を買った後の消費活動データは全くわからず、「ブラックボックス」になっています。家だったら、どこかにストックしたり、移動させたりしますし、法人様でも建物の中で移動させることがあるんです。
けれども、そういう活動は自分自身でもわかってないし、さらに言えば売っている側、販売者側としては、もうまったく見えないので、いかんともしがたい。そこのデータがきっちり取れたらすごくおもしろいだろうなということで、カメラだったり、ITだったり、重量だったりで、実データを取れないかという話です。
スマートマットは、そこに対してど真ん中に入っていくもので、データの意味でいけば、消費や実在庫が「見える」ようなデバイスです。
長谷川:これは、1枚あたりいくらするんですか?
林:月額500円のサービスモデルになっています。ボリュームによるんですけど、500円から1,000円で1枚お使いいただけます。
長谷川:わりといけそうな感じですね。
林:ちょうど100枚で7万円なので、B to Bを中心に販売させていただいているんですけれども、アルバイトの方を1人雇うよりはぜんぜん安いです。100枚並べて、文句も言わず、有休もいらず、という感じですかね。
長谷川:あとは、置く人が違う商品を置かないかだけ注意しておいたら、オペレーションはうまくいく感じですかね?
林:おっしゃる通りです。よくあるのが、シリアルナンバーだとわからないので、なんか苺のシールを貼るとか。そういう点だけ(工夫して)運用していただければという感じですかね。
先ほど申し上げたように、メリットとしてはリアルタイムの実在庫の棚卸や、それに基づく正確な自動発注ができること、売る側としては遠隔からお客様の在庫がどうなるかがわかることですね。
それに合わせて、配送などを効率化できるという目に見えるメリットと、あとは目には見えにくいですが、中長期的にはお客様の方でも、サプライチェーン全体のオペレーションを見直すことができます。バーコードで読み込んでいると、ミスも起こるので、そういったミスがなくなるなどといったことです。
林:売る側としては、アメリカではけっこう流行っているんですけれども、「ベンダー・マネージド・インベントリー」と言って、販売者が自動補充するサービスを立ち上げたり、マーケティング上のデータとして使ったり、そういう価値向上のメリットも出てくるようなイメージです。
先ほどちょっと出ましたけれども、ビジネスモデルではハードウェアとソフトウェアがセットになって、サービスを提供するビジネスモデルです。プレミアムサポートというかたちで初期費用をいただき、月額利用料をいただくような、よくあるサブスクリプション型(SaaS)のモデルとさせていただいています。
対象の業界は、最初はかなり「オフィスのコピー用紙」を念頭において作ったんですけども、展示会等でお話を聞いて、お客様からいろいろ教えていただいたことがあります。この半年から1年、業種は問わず、どこにでも在庫はあるんだなということを実感しました。
会社名を「スマートショッピング」と付けてしまったので、(対象が)買い物ばっかりになっていたんですけど、なんて言えばいいんですかね……例えば、飲食のところにあるゴミ箱のようなものだったり、買い物に限らないかなと思います。
例えば、ランチのビュッフェの料理ですね。みなさん、ランチにカレーを食べに行っていて、カレーが売り切れていたらたぶん怒ると思うんですよ。そのあたりのぜんぜんPOSデータに現れないような、サプライチェーン全体のボトルネックで使えるようなサービスになり始めているというのが現状です。
長谷川:ちょっと質問していいですか? ビュッフェのカレーの例って、例えば土台、入れ物の下に置くようなイメージなんですか?
林:まさにおっしゃる通りです。我々の重量センサーで量るときは、容器重量というパラメーターがデフォルトでありまして、例えば鍋だったり、ちょっと台があったりするものは、容器の重さとして最初に設定していただいて、それを差し引いた残量を計算するような仕組みになっています。
長谷川:熱や温度帯は、けっこう熱めでも大丈夫な感じなんですか?
林:足のところはそこまで熱くないというのと、それでも心配な方はゴムのようなものを1枚噛ませていただいている感じですね。衝撃についても、心配な方に関しては(スマートマットは)運よくA3とA4でやっているので、けっこう、同じ規格の安いシートのようなものがあります。
防水機能も、下からの水には弱いんですけど、ちょうどぴったりサイズのジップロックがあるので、それに入れてくださいと(伝えています)。そんなことで対応していますね。
林:ちょうど半年から1年前に始めて今があるんですけれども、今日のニューリテールという文脈では、我々はどちらかと言うとバックヤードです。(スライドには)粋がって「レジレス店舗」とか書いてしまったんですけれども、基本的には裏側のオペレーションか、小売りさんが商品をお客様のところに配って、お客様の在庫を「見える化」して、自動補充するような、ちょっと両極端な使われ方をしています。
私の印象として、大きく在庫が3つに分かれると思っています。当然、メインに「販売在庫」というものがあります。「生鮮、惣菜の在庫」はちょっとまた複雑です。なぜかと言うと、店頭でちょっとカットしたり調理したりするので、そうなると「在庫管理はどこに行った?」というようなかたちになってしまう。
あとは、それとは関係ない弁当のボックスなどの「資材」です。ここはもう暗黒大陸で、みんな「経験と勘で買う」というような感じになっています。「資材」はそもそもノーマークだったので、「なんか手軽に管理できないかな」「ちょっとERP(Enterprise Resources Planning:企業資源計画)とかそんな重い話じゃないな」と思ってでしょうか、我々が評価されています。
あと「販売在庫」と「生鮮・惣菜の在庫」は、棚出しのタイミングを計るために使えないかなとか考えますね。「生鮮・惣菜の在庫」になってくると、加工しなきゃいけない。仕掛品と言えるかどうかわからないんですけれども、そういうものって本当にノーマークです。フードロスを減らすために、ちゃんと管理しないといけないと思いますね。
あと、同じ小売店舗の中でも、「店内に100個あるのはわかるんだけれど、裏にあるのかどこにあるのか、まったくロケーションがわからない」というような時に手軽に場所を紐づけておいて使っていただいているかたちです。
お客様ということで言うと、1事業者さんと組ませていただいていることが多いです。例えばAmazonさんだったり、アスクルさんですね。Amazonさんだったらドリンク類、アスクルさんだったらコピー用紙を、お客様のところで残量を量ってもらって自動で届ける。(スライドを指しながら)そういった、右端のようなサービスをさせていただいています。
長谷川:僕も生鮮の買い付けシステムなどを作っていたので、スマートマットは生鮮の管理に最高だなと思いました。冷蔵庫の中で、1個1個、いくら使ったか棚卸をしているんですよね。その棚卸が全部自動でできる。
(従来の生鮮の在庫管理では)「まぁ、ええか」みたいにちょろまかしたりするんですよね。スマートマットがあればそういうこともできない。生鮮で、全体の中身を自動で量っているというのは最高にいいなと思いましたね。
林:そうですね。生鮮ってなかなか量りにくくて、(食材に)個体差があるんですけれども、あんまり個体差は気にされていないんです。
ざっくり「キャベツ10個でいいよ」というようなお客様が多い。あと、冷蔵庫の中って、みなさん開けたくないし、「大きい冷蔵庫の中には入りたくない」というような人間として当たり前の心理がありますね。それで、使っていただいているところです。
林:あとは、ここまできてやっとソラコムさんの出番なんですけど、通信をWi-FiからSIMにしました。あとA5のもの、A6のもの、これよりさらに半分のサイズのものが、開発のロードマップとして今年から来年にやっていこうとしていることです。
林:最後に、今日はIoTに興味のある方がオーディエンスということで、私なりの所感をお話しします。ちょっとニューリテールとは離れます。私も実はハードウェアをやるのは初めてで、いろいろと苦労しながら過ごしたんですが、5つのポイントがあると思っています。
1つ目は、なるべくシンプルにできるなら、シンプルなハードで賢いソフトが鍵だと思いました。
2つ目として、サービス設計のときに、デバイスを作って、その中にクラウドを作るようにきれいに分かれなくて、「両にらみ」でサービス設計をしないといけないなとすごく思っています。
例えば、スマートマットは液晶がまったく付いていないんですね。「残量などはクラウドに寄せる」と勇気を持っていろいろ決めてしまうと、ハードウェア側が非常にシンプルになる。(ハードとソフトの)両方で、「こういう機能はこっちに役割分担させる」と、「両にらみ」で考えるサービス設計って非常に難しいなと思いながら、楽しみながらやってきました。
3つ目はセンサーです。それがデータになって残るんだというような単方向なIoTはできると思うんですけれども、例えばスマートマットって、クラウド側から「この時刻に計測しなさいね」とか、「この頻度で計測しなさいね」とか、ハードウェアを制御できるようなかたちになっています。本当にパフォーマンスを最大化できるようなIoTのサービスは、双方向であるべきということは常々感じております。
4つ目として、地味な話になりますが、わかっていただける方もけっこういると思うんですけれど、「ネットに繋がって当たり前」みたいな雰囲気があるんですけど、(実際はうまく)確実につなげるのは難しいですね。市販モデルは今はまだSIMでもなく、Wi-Fiでやっているので繋がらなくて、いろいろと工夫しながらサポートをやらせていただいて、お客様に使っていただいている感じです。
5つ目として、カスタマイズと汎用性です。ソフトウェアでは当たり前のことだと思うんですけれども、特にハードウェアには最小ロットみたいなものが絡んでくる。なので、なかなかカスタマイズができない中で、汎用的にしなきゃいけないけれども、お客様はけっこういろいろなリクエストを言ってきたり。
そういったことのバランスをとるのがキーポイントになるということが、2年やってきての感想ですね。私からは以上です。
長谷川:なるほど。林さんも久保さんもプロトタイプを作るときって、日本で作るんですか? 中国で作るんですか?
久保渓氏(以下、久保):プロトタイプは自分でやった方が早いので、僕の場合は日本で作ることが多いですね。
林:私のも試作は日本でやって、なるべく日本でやりたかったんですけど、どうしてもコスト面が合わなくて、最後の量産はやっぱり海外に出ましたね。
長谷川:なるほど。
林:在りものとか既製品だったらすごく安く手に入ったりするので、ちょっと試したりします。シンプルなハードと賢いソフトで言うと、ハード面でカスタマイズする必要がないのであれば、在りもので調達することも、選択肢としてはあると思う。
長谷川:なるほど。ありがとうございます。
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