「ここが気になる関係人口」トークセッションがスタート

司会者:このセッションは2名のモデレーターに場を仕切っていただきたいと思います。モデレーターは、博報堂ブランドデザイン副代表・兎洞(うどう)さん、未来のコミュニティ研究室・楽天サステナビリティ部シニアマネージャー・眞々部(ままべ)の2名です。

兎洞さんは、博報堂ブランドデザインにおいて、ビジョンの自分ゴト化や組織の関係の質を高めるインターナルな組織開発の実践を担当されている傍ら、経済インパクトと社会インパクトの双方を創出する進化に強い関心を持たれまして、企業・行政、企業・アカデミアなど、マルチステークホルダープロセスによるソーシャルイノベーションの実践プロジェクトの立ち上げなどを行っていらっしゃいます。

一方の眞々部については、NGO、総合シンクタンク研究員を経て、2015年より楽天グループのサステナビリティ戦略策定、ESG情報開示のほか、ステークホルダーと連携したソーシャルイノベーションの創出を担当しております。

また本日は、前に登壇しているメンバーをご覧いただくとおわかりのとおり、今回各登壇者には、5つの役割のいずれかが書いてあるTシャツを着用してもらっています。5つの役割なのですが、外部の人を地域に巻き込んでいる「巻込み」、地域に巻き込まれに行っている「巻込まれ」、どんな役割にもなれる「JOKER」、地域にどっぷり入って人々の動きを観察する「観察」、人を動かす仕組みをつくる「仕組」となっております。

どの登壇者がどの役割に当てはまっているかについては、お手元の登壇者一覧の資料をご参照いただけたらと思います。さまざまな立場の方がいらっしゃるので、トークにご期待いただければ幸いです。

最後に、登壇者の方は10分間のセッションが終了したのちに、話した内容によってランク付けされたお寿司を食べることができます。みなさん気になっていたと思うんですけれども、前でお寿司を握っております。お寿司なのですが、一番上のランクから「飛騨牛」「マグロ漬け」「コハダ」の3種類を用意しております。

ランク付けおよび寿司を握っていただくのは博報堂の兎洞さんなんですけれども、会場のみなさまからも各トピックごとに終了時に拍手をいただきたいと思っています。その拍手の大きさももしかするとお寿司のランクに影響するかもしれません。ですので、みなさん、終了後、ぜひ拍手をお願いいたします。

それではここから10名の登壇者を簡単にご紹介したいと思います。まずは「巻込み」として、都竹飛騨市長。本日はオンラインでのご参加となっております。次に楽天Chief Well-Being Officerの小林です。

小林正忠氏(以下、小林):小林です。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

眞々部貴之氏(以下、眞々部):(中継のモニターに向かって)都竹さん、見えますでしょうか?

都竹淳也氏(以下、都竹):見えます。

眞々部:バッチリ見えています。

都竹:はい。よろしくお願いします。

(会場拍手)

司会者:ありがとうございます。次に「巻込まれ」として、東京大学大学院博士課程学生・吉岡さん。

吉岡弘隆氏(以下、吉岡):吉岡です。よろしくお願いします。

(会場拍手)

司会者:次に、飛騨市地域おこし協力隊・岡本さん。

岡本文氏(以下、岡本):岡本です。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

司会者:次は「JOKER」になります。岐阜大学・高木教授。

高木朗義氏(以下、高木):高木です。よろしくお願いします。

(会場拍手)

司会者:続きまして、小さなお宿「やまなみ」女将の中村さん。

中村文香氏(以下、中村):よろしくお願いします。

(会場拍手)

司会者:次に「観察」の方々です。未来のコミュニティ研究室、水産研究・教育機構研究員・杉本さん。

杉本あおい氏(以下、杉本):杉本です。よろしくお願いします。

(会場拍手)

司会者:続きまして、未来のコミュニティ研究室、東京大学助教・杉野さん。

杉野弘明氏(以下、杉野):杉野です。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

司会者:最後に「仕組」ですね。おてつたび代表の永岡さん。

永岡里菜氏(以下、永岡):よろしくお願いします。

(会場拍手)

司会者:以上の10名でトークセッションをさせていただきます。それではさっそく開始したいと思いますので、ここからモデレーターの眞々部にマイクを移したいと思います。眞々部さん、お願いします。

眞々部:ちょっと1人紹介し忘れていたので。

(一同笑)

飛騨市役所の文化振興課係長の三好清超さんです。飛騨市で盛り上がってます。

(会場拍手)

眞々部:というわけで、みなさんよろしくお願いします。

飛騨を「いいよね」と思ってくれる人であれば、誰でもウェルカム

眞々部:今回こういう感じでなにせ人数が多いんですけれども、関係人口ということで、いろんな立場の人が必要だろうということで無理やり10人を壇上に上げました。しかも無理やり飛騨市の市長をオンラインでつなぐという、ちょっと荒業でやっています。ちょっとどうなるのかという感じではありますけれども。

すごく大事なことなんですが、みなさんの意見やコメントもこのセッションの中で重要な役割を果たしていきますので、なるべく拾っていきたいなと思います。

あっ、そうだ。ルールとして、人数が多いので1発言1分以内でお願いします。1分を過ぎたら「もういい加減にしてください」ということで切りたいと思いますので、みなさんよろしくお願いします。

では、まず市長に、飛騨市にとっての関係人口とは何かについて聞きたいと思います。先ほどの講演でソトコト編集長の指出(一正)さんから「下北山には若者が来てほしいな。釣り人じゃない人が来てほしいな」といった話があったんですけど、飛騨市としてはどういう人に関係人口になってほしいというものはありますか?

都竹:別に「こういう人だ」と定義するつもりでもないんですけど、この場所がおもしろいと思ってくれたり、楽しいと思ってくれたりして、「いいよね」と思ってくれる人なら誰でもいいという感じですね。あまり定義しようと思っていないんですね。

眞々部:ありがとうございます。誰でもいいってことで、とても安心しました。我々もウェルカムということですね。

都竹:はい。誰でもウェルカムです。

眞々部:ありがとうございます。そういう飛騨のウェルカムな風土もあって、我々はこういうことができているんじゃないかなと思っています。

作りたい未来を発信できるリーダーの存在が、関係人口の増加には不可欠

眞々部:では、まず「巻込み」側の人に聞いていきたいんですけれども。今の飛騨市にとって、飛騨市の関係人口って多いんですかね。(三好)清超さんはどう思います?

三好清超氏(以下、三好):飛騨市にはファンクラブとかもあるので、関わってくださる方は多いんじゃないかなと僕は思っています。

眞々部:なるほど。数的にも多いし、いろんな人がたくさんいてくれてるんじゃないかなという。清超さんの隣に座っている人は楽天市場をつくった人なんですけど、飛騨と関わっていくなかで、岐阜県とすごく密にやられていましたよね、正忠さん。

小林:はい、この場があるのも、「岐阜県と楽天で提携をしましょう」と、いろいろと地域活性をしていくことを古田知事(当時)と仕込もうとしたときに、現場の職員として動いていらしたのが都竹さんで。それ以来の関係ですね。

眞々部:そういうのがいっぱいあるよと。

小林:日本を元気するには地方からと思っていたので、楽天はいろんな地域と連携しようとしていました。

眞々部:そのなかでいろんな自治体さんと関わっていらっしゃったと思うんですけれども、飛騨市の特殊なところとはどんなところですか? 関係人口というか、関わる人の質であったり、いろいろあると思いますが。

小林:まずはリーダーがいること。「未来はこうしていきたいぞ」と掲げるリーダーがいるのは、たぶんとっても大事なことで。そこに共感・共鳴する人たちは、ついてくるだろうなと思いますね。それに興味を持てない人はたぶんついてこないと思うので。

やっぱり、自分の意見を発信するということが大事で、必ずしも首長である必要はないと思うんですけれども、未来の理想像を持っている人たちをどれだけつくれるかというのが、ここでいうところの関係人口に関係してくると思います。

眞々部:そのリーダーというのは市長だけじゃないと?

小林:そう、誰でも。だから、先ほど発表されていた飛騨市役所の上田さんもそうですし、冒頭挨拶をさせていただいた舩坂もそうです。

想定していなかったことが自然発生的に起こるプロセスがおもしろい

眞々部:確かにリーダー的な人はよく目立つような気もしますよね。

小林:舩坂を飛騨に送り込んだ時に、こんなことやるなんて一言も言ってなかったので。こういった研究室を立ち上げちゃうのも、彼女の独創的というか自発的行為であって、まったくもって想定していなかったんですね。

ふるさと納税の税収アップが期待できるかなと思って始めたら、飛騨市の地元の方々に彼女が触れて、結果的に「未来のコミュニティ研究室」を立ち上げて、関係人口について研究するプロジェクトを展開していきたいという。さらに、「日本における未来のコミュニティづくりのプロトタイプを作れたらいいな」と彼女が言い出したので、「それは楽天と合うね」ということで始めたのがきっかけですかね。

眞々部:ありがとうございます。確かにこのプロジェクトは、最初からこうしようと思って戦略的に我々楽天がやっているわけでもないんです。「powered by Rakuten」とかいろんなところに書いてあるんですけれども、自然発生的にいろんな人たちと関わるなかで形ができあがっていったようなところは確かにありますね。

小林:ある日突然ミーティングがセットされて、これが決まったという。

眞々部:(笑)。ありがとうございます。市長からすると、こういうことが飛騨市で起きているのはどうなんですか? 飛騨市の市民の方にとってはどういう意味がありますかね?

都竹:いや、おもしろいと思いますよ。とにかくおもしろいと思う。自然発生的に出てくるというのがまずおもしろいでしょう。それから、想定もしていなかった方向に、どんどん増殖してくるんですよね。

このプロジェクトって、どんどん増殖していってどんどんかたちを変えていくわけですよ。この変化がおもしろくてたまらないですね。関わっている人たちは、「次に何が出てくるんだろう?」と思っているだろうし、それが本当におもしろいですね。

眞々部:いろんな人が関わってくることによって、想像してもいなかったような変化が出てきているという、そんなイメージですかね。

都竹:そういうことですね。こういうものって、なんだか計画的にいくとおもしろくないじゃないですか。だから、どんどん想像もしない変化が起こり得るところが楽しみのような気がするし。そうじゃないと、今後の本当の展望って出てこない気がするんですよね。だから、この未知の状態というのがすごくいいなと思いますね。

関係人口の増加と、飛騨市民が自分たちの地域を見直すきっかけ

眞々部:ありがとうございます。もうひとり、飛騨市役所で働いていらっしゃる清超さん……清超(せいちょう)さんと正忠(せいちゅう)さんが隣同士ですごくわかりにくいですけど(笑)。清超さんのほうにお聞きしたいんですが、なんか変な新しいことって起きています?

三好:僕はそもそも飛騨の歴史とか文化財が好きで、飛騨に住むことになったんですけれども、それを少しでも多くの人に知ってほしいなというところがスタートでした。

飛騨について今まで知らなかった人が、飛騨の歴史や文化財にピンポイントで興味を持ってくれる人が増えてきたなと感じています。それが増えることによって、今度は飛騨市民が自分たちの地域を見直すきっかけになっているなと感じています。

眞々部:ピンポイントとは、どういったことですか?

三好:僕は遺跡の発掘調査を仕事にして飛騨市に住んでいるんですけれども、その中でも今は、とくに5,000年前ぐらいの縄文時代の石棒という祈りの道具をおもしろいと感じてくれている人たちが増えてきていると思っています。

眞々部:先ほど飛騨市役所の上田さんから紹介していただいたプロジェクトの中にも3つありましたよね。「おこめ部」と「石棒クラブ」というプロジェクトと、あと「飛騨市ファンクラブ」。

その3つのプロジェクトについては、みなさんのお手元にも資料があると思うんですけれども、すごくピンポイントなところを今攻めていまして。狭い入り口ではありますが、飛騨市に入っていただくきっかけになっていただければなと思うので、ぜひちょっと見てみてください。

関係人口は「飲み仲間が増えた」感覚に近い?

眞々部:フロアからの質問もこのあたりで見ていこうかなと思うんですけれども。これは先ほど市長がお話ししてくれたところと関わってくるのかな。「関係人口を受け入れやすい地域と受け入れにくい地域の質の違いはありますか?」という話なんですけれども。これはぜひ地元側の方たちにということで、市長と清超さんにお聞きしたいと思います。

つまり、要は飛騨市って何なのかと。関係人口を受け入れやすいということだったと思うんですけれども、その秘訣は何ですかね。

都竹:飛騨市って、古川、神岡、河合、宮川という町が合併してできているんですけど、外からいろんな方が来られてなにかしたいというときに、どこもわりとスッと受け入れるところがあると思うんですよね。

関係人口って、移住することじゃないという話がありましたけれども、「住んでしまわない」というのは、けっこう受け入れやすいポイントとなっているのではないかという気がしていて。住むとなると、やっぱりお金の面でのハードルが高いところもあるんですけど、「ただ来て、何かしてくれるだけ」って、すごくハードルが低いんですよ。

この4つの町にはとくにカラーの違う2つの町があって。例えば、今市役所がある古川というところはわりと保守的な感じのある伝統的な町なんですけれど、隣の神岡は鉱山町でしたから、いろんなところからいろんな人が来る。外から入ってくる人を比較的自然に受け入れる風土がある。

こういった違いはあるんですけれど、両方とも関係人口的な人というか、ゆるく関わる人はスッと受け入れてしまうところがあると感じていて。「一緒に飲む仲間が増えましたね。よかったね」みたいなところがあるんじゃないかなと思っています。

眞々部:ありがとうございます。ちょっと清超さんに聞こうと思ったんだけど、あと20秒しかないので、20秒でなにかコメントを(笑)。

三好:僕が来た時にもそうだったんですが、みんなやさしいです。

(会場笑)

眞々部:なんかいいですよね。みんなやさしくて、飲み会に誘ってくれるような、そんな地域みたいですね。ありがとうございます。

いいネタを提供した登壇者に、いいネタの寿司を振る舞う

眞々部:実は兎洞さんはタイムキーパーとしても機能していまして。そろそろお寿司ができあがったようでございます。ここで1個目の質問が終わりになりましたので、ちょっと拍手をしてみたいと思います。この拍手の受けの良さによって寿司ネタが変わるかも、というところだと思うんですけれども。ということで、お三方、ありがとうございました。

(会場拍手)

最初なので、兎洞さんに「なんでそのネタなのか」というのを説明しながら渡してもらって。市長、すみません、寿司がなくて。

都竹:えっ、僕の分はないんですか(笑)。

(会場笑)

兎洞武揚氏(以下、兎洞):市長にもお寿司を握ってあげたいなと思ったんですけれども、ちょっと遠くにいらっしゃるので残念ながら握れませんが。

そうですね。「巻込み」のオレンジのTシャツの方、緊張されていましたけど、一生懸命お話しされていたので、コハダを差し上げたいと思います。

(会場拍手)

それから正忠さん、あまりおもしろくなかったですけど、「巻き込む」という姿勢を見せたので、コハダを握らせていただきます。

小林:ありがとうございます。

兎洞:それから、後ろにいらっしゃる緑のTシャツの「観察」の方、パソコンとか打っていて、なんの緊張もなくのんびりしていましたけど。それがまさに観察だなという感じがちょっとしていたので、マグロを。

(会場笑)

杉野:ありがとうございます。いただきます。

(会場拍手)

兎洞:じゃあ、すみません、このまま。お寿司を手渡しで握るって、気持ちが渡るので。

三好:ありがとうございます。

小林:握ってもらえるんですか?

眞々部:はい。ということで、コハダとマグロと飛騨牛ですね。私はコハダがすごくおいしそうだなと思って見入っていました。ちなみに、兎洞さんが今日持ってきているこのネタ箱は、偶然飛騨の木材で作ったとか作らないとか。

兎洞:そうですね。飛騨に白石逹史さんというジャズフェスを企画しているような方がいらっしゃるんですけど、その方とたまたまお知り合いになりまして。週末に寿司を握っているという話をしたら「えー、ほんま!?」みたいな話になって。桐のネタ箱を探してると言ったら「飛騨に桐職人いますよ!」ということで、木工房 大噴火の清水丈雄さんという方に作っていただきました。

もうお金もたっぷりお支払いして、私は関係人口の鑑じゃないかと思っています(笑)。みなさんもがんばってください!

(会場拍手)

眞々部:すみません。フロアから「寿司はどうでもいいから話を進めろ」という辛辣な意見が来ましたので、話を進めたいと思います。

(会場笑)

こんな感じでインクルーシブにやっていきたいと思いますので(笑)。