孤独はお酒やたばこと同じくらい健康に悪い?

荒川和久氏(以下、荒川):ちょっと話がずれちゃいましたけど、さっきも言ったソロ活市場はというと、私が推計したので国の推計じゃないですけど、国の推計した人口構造とか消費支出というのを合わせると、2030年にはたぶんソロ消費市場が家族消費支出を抜くんです。

これは親元にいる独身も含めてです。一人暮らしの独身だけだとここまでいきません。けれども、今、親元未婚という人がすごく増えています。実はそれが一番賢いんですよ。家賃をちょっと親元に入れても、自分だけで家賃を払うよりぜんぜん安いから、親元で暮らす。

中野信子氏(以下、中野):インフラも使えますしね。

荒川:要するに、親元未婚って、ちょっと頭の固い人は「ニートだ。パラサイトだ」と言うんですけれども、むしろ賢いんですよ。

中野:そりゃそうでしょう。合理的ですね。

荒川:合理的です。今までさんざん人口統計みたいな話をして、「日本はみんな孤独になりますかね」という話を、1個目にしようかなと思うんですけど。孤独をものすごく怖がっている人がいるじゃないですか。

中野:いますね。あれはどうしてなんですか。

荒川:どうしてなんですかね。孤独は、お酒とかたばことかと同じくらい健康に悪いとか。

中野:ちょっとネガティブなイメージがありますよね。

荒川:あります。

中野:孤独という言葉がとても寂しいイメージ、かわいそうなイメージと結びつけられている。ソロでいる人は極力なくさなくてはいけない、みたいな。

荒川:(笑)。

1人でいなければ癒せない傷もある

中野:実際のところはそんなことはないわけですよね。1人でいなければ癒やせない傷もあるし。

荒川:あれ、そうなんですか?

中野:だって、人に会うって気を遣うし、脳も使わなきゃいけないから、すごく体力というか脳もエネルギーを使うんですよ。そういう余分なエネルギーを使わないで、癒やすことに集中したくて、1人でいることも必要です。

しかしながら、人間関係の中にそういった癒やしの物質もあるわけです。オキシトシン、愛情ホルモンといわれる物質ですね。オキシトシンを投与した個体と、そうでない生理的食塩水をコントロールして投与した個体では、傷の治り方が違うといいます。オキシトシンを投与したほうが傷の治りが早いという研究がある。ただ、人間でどうかというのは、人間に傷を付けるわけにはいかないので未確認です。

でも、おそらく人間においても、体組織が成長するための役割は果たしているようなので、オキシトシンというのは体を修復したり、精神を安定させる効果がある。そういう物質なんだろうね、ということは言われてはいます。

そのうえ、個体のバリエーションによって1人が向いている人と、多数であることが向いている人なのかも、また調べる必要があるわけですよね。

荒川:ソロでいる人って、シェアハウスが嫌いな人が多いんですよ。

中野:ああ、しっくりきます。

荒川:帰ったときに、ワイワイとかガヤガヤとか、灯りが付いているのがストレスでしょうがないんです。真っ暗で誰もいなくてシーンとして、冬だったら寒い部屋に帰りたいんです。

中野:わかる!

(会場笑)

荒川:わかります?

中野:ごめんなさい。結婚しておいて、旦那さんのことが好きだけど、家にいるとちょっと「ああ……」という気持ちになる。

(会場笑)

1人で30分でもゆっくり寝たかったな、とか頭をよぎる。

男性だけは離婚率と自殺率に相関関係がある

荒川:向き不向きはあると思うんですよね。独身の方は1回は言われたと思います。「結婚しないと孤独死するぞ」と言われたことってないですか。

孤独死の問題って絶対あるんです。孤独死ってよくよく考えてほしくて、孤独死しているのは、ほぼ元既婚者なんですよ。今は、高齢で孤独死している75歳以上を例に出すと、75歳の人って、日本が皆婚時代と言われていて、ほぼ100パーセント結婚していた時代の人なんです。ということは、今、孤独死している人はほぼ昔は結婚していた人ですよ。

中野:単純に算数の問題ですね。

荒川:そうです。だから、「結婚しないと孤独死するぞ」じゃなくて、「結婚してても孤独死するじゃん」というような話ですよ。

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