第1の逆説「AI革命の時代こそチャンスである」

田坂広志氏(以下、田坂):このたび、『能力を磨く ─ AI時代に活躍する人材「3つの能力」』という本を上梓しました。このタイトルを見て、「そうだ、能力を磨かなければ。大変だ……」と気おくれする方は、これからちょっと厳しいかもしれません(笑)。

AI革命の時代がやってきます。たしかに大変なことはいろいろありますが、一方でいままで磨けなかった能力が磨ける、チャンスの時代でもあります。そう考えて、「よし、自分の中で眠っていた可能性がいよいよ開花するぞ」と思えるような方が、これから活躍されると思うのです。

野球でもそうですね。九回裏二死満塁で打席に立ったときに「どうしよう、三振したら立つ瀬がない」と考えてしまうタイプは伸びない。「こんなチャンスが回ってくるなんて、俺は持っているな」という打者が成功するのではないでしょうか。

「AI革命によって知的職業に就く人の半分が失業する」と言われています。しかし実は、職業そのものが淘汰されてなくなるということはあまりない。AIによって置き換えられるのは、職業ではなく能力です。

わかりやすく言うと、営業という職業がなくなることはないけれど、マニュアル営業をやっているような人はAIに仕事を取られてしまう、ということです。そうではない営業パーソン、難しい商談になってもお客様の気持ちを考えて適切に判断し、自ら責任を持って対応できるような営業パーソンは、不要になることはないのです。

身につけるべき「5つの能力」

知的職業には5つの能力が求められます。最初の段階として「基礎的能力」。もう少し具体的に言うと知的集中力と知的持続力です。2つめは「学歴的能力」で、これは論理思考力と知識の習得力です。

ただしAI革命の時代には、こうした論理思考力があったり、知識が豊富であったりという能力だけでは、AIに淘汰されてしまいます。

これからより求められるのは3つめ以降の能力です。まずは「職業的能力」。スキルやセンス、テクニックやノウハウといったことが基本になる能力です。これらを身につけている方は、AI時代でも、それなりに活躍できるでしょう。

しかし、さらに活躍するためにはもう一段上のレベルである「対人的能力」が必須です。なぜなら、コミュニケーションやホスピタリティなどの能力において、AIが人間を凌駕する時代は当分の間来ないからです。

そして、もっとも上位にあるのが「組織的能力」です。リーダーシップやマネジメントと言われる分野です。ただしマネジメントのうち管理業務、たとえば資材管理や工程管理といったことはAIにすべて置き換わります。だから、人間にしかできないマネジメント能力を身につけないといけない。これについては後ほどお話します。

第2の逆説「高学歴のビジネスパーソンこそ危ない」

さて、これらの3つの能力を身につけている人は多くありません。特に、逆説的ですが、高学歴の方々が一番危ない。高学歴がマイナスになる、と言っているのではありません。

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