2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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白川寧々氏(以下、白川):「どんなグローバル人材になるんですか?」「どんなふうに世界と関わるんですか?」「どんなふうに日本以外の経済圏と関わるんですか?」っていう選択を(今)、突きつけられているんです。その中で「日本語以外の言語を知る」「日本以外の需要を知る」みたいなことを、わざわざやらないっていうのが、今の大多数の「グローバルは自分に関係ない」っていう日本人なのかなって思っています。私はそれがすごくもったいないし、さっき言った大量の不自由の切り口がそこにあると思っています。
これ、何でしょうね? 何の壁だと思いますか? 「自分には関係ない」って思っちゃう壁。何か意見ある? なんで「関係ない」と思っちゃうと思いますか?
ピョートル・フェリクス・グジバチ氏(以下、ピョートル):なんでかな?
白川:(スライドを指しながら)これなんですよ。「人材」(の表記)を材料の材にするのが嫌な人、たまにいるんですよね。(その主張も)別にいいですよ。ちなみに中国語だと材料の材じゃなくて、才能の才です。よくないですか? 今度から「みなさん、自分の才能をグローバルに生かしてください」と書こうかな。そうしよう。絶対コノテーション(共示)が違うんですよ。これで突っ込まれたことあってさ。
ピョートル:そもそもちょっと今、「みなさんの『グローバル』という言葉の定義はなんだろう?」って、聞きながら悩んでいたんです。(日本では)だいたい「グローバル」は「海外」ですよね。それでよろしいですか? ちなみに「グローバル」って、ラテン語でも英語でも、「海外」とか「国際」とかそういう意味はないんです。
まず、根本的な意味は「全般的」です。要はシステムシンキングできるかどうか。宇宙人であるかどうか。自分たちは日本に住んでいて、全員地球の水を飲んでいるし、全員地球の空気も吸っているはずですね。地球にはパイロットがいない、操縦されていない乗り物です。「どこに飛ぶかわからないし、違う乗り物にぶつかるかもしれないから、火星に行かなきゃならない」「グローバルの環境の問題を解決しなきゃならない」とか、そういうのが僕にとって「グローバル」な考え方です。
別に今日の会の意図を否定するわけではないんですけれど、それは英語を話せても話せなくてもできるんですよね。「自分が人間として人類にどんな貢献をして、世界に何をもたらして、世界から何を得たいか」というのは、別に海外でなくても、日本からでもできる。
Google翻訳がガンガンよくなっているから、(英語教育に携わる白川氏には)挑発なんですけれど、やりたいことがあれば英語を話せなくてもいいかもしれないんです。中国語でもできるかもしれないですよね。どうですか?
白川:中国語については、そのうち『英語ネイティブ脳みそのつくりかた』(大和書房)の英語習得バージョン以外にも中国語(バージョン)を出そうと思うのでよろしくお願いします。2、3日くらい前に深圳に行ってきて、日本語(バージョン)も出してくださいと言われたのでね、よろしくお願いします。今度、日本語(バージョン)が出ます(笑)。
中国に生まれ育っていて、今の中国にいるんだったら英語はいらないかも。そうかもしれない。だけど、日本の市場のサイズじゃ、やばいじゃないですか。あと言語はツールじゃないんですよ。情報の発信受信、マインドセット。ピョートルさんだってニュースは全部、英語で仕入れているじゃないですか。
ピョートル:そうですね。
白川:ね? 英語でニュースを仕入れる大事さを知っている人って、大抵、英語ができる人なんですよ。
ピョートル:マイクを取っても大声で何も言えないんですけれど、やっぱり英語での情報の量と、その他の言語の情報の量は違うんですよね。中国語は近づいてきていると思うんですけれども、何を手に入れたいのかにもよりますよね。
例えば「日本の神奈川県のおばあさんたちは今、どんなお祭りを仕掛けようとしているか」ということを調べたいのであれば、それは日本語でニュースを見た方がいいですよね。「日本のタレントの恋愛スキャンダル」を知りたいのであれば、日本語で見た方がいいですよね。ただ「人類の未来」や「環境の問題」、「火星の可能性」というのを考えれば、日本語よりほかの言語で収集した方がいいですよね。
白川:「自分は日本語だけで生きるんだったら、絶対無理」っていう顔しているのにさ(笑)。ガラパゴス過ぎて、何の情報も入ってこないもん。世界を騒がせてる本だって、翻訳されて流行るのは二年後とかさ。
ピョートル:それはたしかにそうですよね。
白川:「1回も自由だったことがない人」には、自由のありがたみがわからかったりする。(スライドを指しながら)日本で最初の量産型グローバル人材は、こういう人たちですよ。グローバル経済圏に関わりました。外貨を稼ぎました。いろいろ、扱いの面ではかわいそうなこともあったかもしれないんですけど、グローバルで売れるものを作った、立派な「グローバル人材」です。
その前提が冒頭でみんなが嫌いだった、この教育だと思うんです。これは世界中で150年前くらいに流行り出した、グローバルスタンダードな教育です。これを受けていること、日本が明治時代に、数十年くらいで(教育の)普及率を100パーセントにしたのって、けっこうすごいんですよ。
これを受けていたら、今時の「グローバル人材」なんです。だって、インドとかだったら村によってはこれができていないから。すごいんです。外貨を稼げています。日本人のポテンシャルは高いんです。テストも解けます。
(スライドを指しながら)だけど、こういう問題があるよね。ちょっとこれはあまりディスりたくないんですけれど、いろいろあったんですよ。大企業に勤めていたこともあるし、MBAでもいろんな大企業から派遣されてきた人も見てきました。
これも、友達にいるかもしれないんでディスりたくないんですけれど、TOEFLを50回受けてやっと100点とかね。25,000円の試験ですよ? 日本で一番いい教育を受けて、一番お金をかけて、親にも期待されて、たぶんこういうところに勤めていて。それでアメリカに行ったら、一番英語ができない。
ごめんなさい。Google翻訳では、MBAに通える気がしません。商談もできる気がしません。ネットワーキングもできる気がしません。だって、誰も相手にしてくれないもん。その人たちがつまらないからいけないのか。努力しなかったからいけないのか。そういうわけではないじゃないですか。彼らは「日本の教育に騙された」って言っていましたよ。だから、がんばって変えようとしているんですよ。
白川:(スライドを指しながら)これは飛ばしますけど、「負け循環」を一度観測してきたんですよ。駐在員が英語ができない。海外市場の「欲しいもの」を知らない。だって、(英語が)できるっていうことは、商売の基本じゃないですか。「どういうところに需要があるの?」って(確かめるのに必要)。
それで「日本の技術は最高だから、日本の(製品を)売っちゃえ!」って。1980年代だったらそれでよかったかもしれないですけれどね。ね? ピョートルさん。ポーランドには、シャープの冷蔵庫とかあった?
ピョートル:なかった。今はあります。
白川:1990年代初頭くらいに中国でみんなが一番欲しかったのは、シャープの冷蔵庫ですよ。その時はよかったんだけれど、残念ながらそのあとLGエレクトロニクスとかHaierが出てきたわけじゃないですか。そうしたら、「日本が一人勝ち」みたいな技術力じゃなくなっちゃった。
残念ながらそこらへんをわかってない人たちが「なんか海外市場はうまくいかないから、とりあえず投資をやめた」みたいに言って、いろんな工場が閉じられたり、投資が打ち切られたり。「いやー。あの国の人たちは、わかってないよね」みたいな。アメリカや中国市場について語るサラリーマンをで散々見ましたよ。けど、現実は違う。
もっというと、問題は外国市場だけじゃない。
それだったらいいんだけど。iPhoneを持っている人?
(会場挙手)
この率は、やばいですよね。だってさ、本当はAppleのグローバル市場のシェアって10パーセントが関の山なのに、日本人の「iPhone好き」率、やばいですよね。私もそうなんだけど。こういうふうにスマホの話とか……ね?
白川:(スライドを指しながら)マジ、こんな感じしません? だって、最初にiPhoneが出てきたときに、「いやいや、ガラケーが一番でしょ!」って思いませんでした? ガラケーだってさ、2003年とかって(使っている人は)アメリカにいました?
ピョートル:いましたよ。
白川:なんか、携帯ってグローバルレベルで全部ぱかぱかの超ダサいやつじゃなかった?
ピョートル:そうです。
白川:日本のガラケーはすごくなかった? 見たことある?
ピョートル:すごくよかったですよ。
白川:ちょうど私が女子高生だった時、半年くらいごと、年に2回くらいモデルチェンジをする子がいました。「日本の携帯って、これからどんどん進化していくんだろうな」って思っていたら、全部iPhoneになっちゃったよね。なんでこういうことになるんだろう? 地元市場でもみんなiPhoneが好きって、どういうことですか? SXXXさん、何をしているんですか? (お勤めの方が)誰かいたらごめん。
白川:(スライドを指しながら)まあ、こういうことになるよね。情報の受信発信ができないと、しんどいじゃないですか。(スライドを切り替えながら)ここら辺は堅い人のための話なので、別にいいです。日本の英語教育市場は1,600億円です。だけど、到達度はアジアの中でボトムスリーで、ネパールや北朝鮮以下です。
ネパールではロバが走っているような土地の子どもでも英語がペラペラ。「あなたのところのグローバルアントレプレナーシッププログラムに参加させてください。飛行機代も出してください。私は絶対に出世します」とかメールを書いてくるんですよ? すごいじゃん?
そういうメールを書いているってことはさ、その子はほかのプログラムには受かっているのよ。ほかの人たちには飛行機代を出してもらえたのよ。たぶん、日本の普通の子どもたちと比べると1,000分の1くらいしかお金を持っていないけど、彼らはそういうプログラムに行って、英語ができて奨学金をもらって、アイビーリーグ(の大学)とかに行けちゃうわけですよ。英語で受発信ができるだけでこんなに未来が広がるの。以上!
だから、それで日本の子どもたちを振り返ってみると、「何でも持っているはずなのに、何も持ってないじゃん」と思うんです。(スライドを指しながら)これができていなくない? 「世界中の人の思いを汲み取って、需要を汲み取る」みたいなことです。綺麗事じゃなくて、けっこうビジネスの話です。世界中に居場所があるっていうことを悟ってほしいと思う。
サラリーマンになるだけが人生じゃないです。社畜になるだけが人生じゃないです。そうだよね? Googleに勤めたいんだよね? いいじゃん。以上。
白川:(スライドを指しながら)This one is my favorite. これは「本をいっぱい読むと、壁の向こうの素敵な世界が見えるよ」っていうメッセージなんだけれど、日本の場合、本はいくらでも読めるじゃないですか。だけど、本当に英語でものを考えられるようになると、見えてくる世界が違うなっていうのが、私の実体験です。誰でもできます。マジで誰でもできます。私みたいなんじゃなくても、できます。そうじゃないと、本を書いてないです。
「私ができたんだから、誰でもできます!」みたいなことは言わないですよ? ちゃんと、日本のいろんなレベルの子どもたちで実験しました。そうしたら、誰でもできました。(スライドを指しながら)私はけっこうそう思っているんですよ。
日本の子どもたちには未来がある。が、未来はグローバルマインドセットにしかない。歴史を紐解きましょうか。「胡椒一粒は金一粒」って言うじゃないですか。金を受け取ったのは、胡椒を作った人じゃない。日本の浮世絵は世界に出た途端すごいことになったけれど、世界の人が認めるまではラッピングペーパーだったんですよ。
こんまり(片づけコンサルタントの近藤麻理恵氏)も今、全米ですごいことになっているけれど、日本の中ではOne of themだったわけじゃないですか。同じカテゴリで同じくらい売れている人が、いっぱいいたじゃないですか。だけど、彼らが海外ですごくウケるっていうことを発見した人が、一番大儲けしたってことなんです。
世界と世界をつなぐ人って、別にこんまりや浮世絵師のようなオリジナリティ、クリエイティビティー、ユニークネスはいらないじゃないですか。「日本のものって、すごいらしいよ」ってわかっているだけでいい。それになる力が、みんなにはあります。「普通の日本人」というのが、グローバル市場でけっこう珍しい、宇宙人みたいな位置付けになるかもしれないと私は思っています。
白川:だから、深圳の大学生たちには「日本人と組みなさい! あの人たちは真面目だし、おもしろいよ。おもしろいものをいっぱい知っているし、センスいいし」っていうことを散々言ってきたので、そのうち押しかけてくるかもしれません。本当にいいことがいっぱいあるんですよね。だから、私は、みなさんを自由にしたいです。地元でしか生きていけないなら、せっかくのユニークさが、何も生きないから。
英語ができても、できなくてもいいから「あの国で、これがウケるらしいよ」っていうのを知っているだけで、いろんなものを換金できると思う。自由って、口先じゃなくて経済力を伴わないと自由じゃないです。おじさんの言うことを聞かない自由が、自由。そのあと、ダンボールハウスに行かないのが、自由。
そのためには英語ができるのは当然で、こういうのを知って、もうちょっと「生き方の選択肢」を増やしましょうよっていうのが、私が本で言いたかったこと。メソッドは本当に何でもいいです。(スライドを指しながら)こんな現実もあるんだからさ、もっともっといろんなところに「英語なんて、誰でもできる」っていう現実を広めてほしいわけですよ。
自分の人生を、おじさんたちに任せてはだめです。特に、日本の英語教育界の人たちは、やばいですよ。「日本人だから絶対にできない」とか言っているんですよね。「日本人は生まれつき舌が短い」とか言っているの。大学入試の英語にスピーキングテストを導入するかという時に、「喋れない人はどうするの?」みたいなことを言っています。「あなたたち、今まで目が見えない人とか考慮したことないですよね?」みたいに思うわけですが、そういうレベルで、わけがわからないこと言い出すんですよ。
白川:(スライドを指しながら)だけど私は、大抵の壁は……この金魚鉢は、「思い込みの壁」だから、本を読んでくれた全てのみなさんに、一緒に「壁壊しパーティー」を提案したい。たまたまこの写真を使ったけれど、ピョートルさん的にはこれ、どうです?(笑)。
ピョートル:いろいろ思い出しました。
白川:ね!(笑)。たまたまなんですけどね。これは今日のために用意したわけじゃないです。これは両側から壁を壊したから、楽しい「壁壊しパーティー」だったんですよ。片方から壁を壊したら侵略ですからね。というわけで文科省とか学校の先生とか親御さんとか、「みんなで両方から壁を壊しましょうね」って煽っているんですけれど、幸いなことに学校の先生もちらほら来ていただいています。どうぞ、手をお挙げください。ありがとうございます!
(会場挙手)
いえーい! ありがとうございます。……っていうのが、一応のプレゼンでした。ありがとうございます。まだ時間あるよね? 大丈夫だね。
(会場拍手)
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