今悩んでいることは、本当に問題なのか?

花海志帆氏(以下、花海):受講生代表の花海です。今回お越しいただきましたのは、株式会社カイゼンプラットフォームCEOでいらっしゃいます、須藤憲司先生です。よろしくお願いします。

須藤憲司氏(以下、須藤):よろしくお願いします。

花海:今回の授業は、「事業を正しい改善に向かわせる戦略と計画のつくりかた -ワークショップで学ぶ、課題発見・課題解決-」の第1回です。「本当に解決すべき課題を明らかにする」と題して、授業をお届けしてまいります。ふだんみなさんが、日々のお仕事や経営の中でモヤモヤしていることを、この授業を受けて解消していきましょう。

それではさっそく、先生に自己紹介をしていただきたいと思います。お願いいたします。

須藤:はい、こんにちは。カイゼンプラットフォームの須藤と申します。ふだん、カイゼンプラットフォームという会社で、いろんなインターネットの事業だったり、サービスを改善していくための戦略をサポートしています。今まで300社で2,000サービスぐらいの改善に携わってきたんですけれども。

今日、私がここでみなさんにお伝えできたらいいなと思ってるのは、この「今悩んでることって本当に問題ですか?」というテーマで、ちょっと授業をやってみたいなと思っております。

花海:はい。

イシューからはじめよ

須藤:なんでこんなことを始めたかって言うと、これは安宅(和人)さんというヤフーにいらっしゃる方のすごい良い本で、『イシューからはじめよ』って本がありまして。これ、読んだ方もいらっしゃるかと思うんですけど。

要は、タテが「解の質」というものですね。そのイシューに対して、どうやったらうまくいくかって。あと「イシュー度」というのがヨコなんですけど、要は「どうやったら問題の質を高められるか」という話なんです。たいてい、人の相談って「うまくいかないからどうやったらいいか教えて」という、Howの相談なんですよね。要はタテの相談なんですけど。

「このサービスがうまくいかないんですよね」「事業がうまくいかないんですよね」という話を聞いてると、「だからうまくいく方法を知りたいです」って言うと、「あれあれ?」と。

要は問題が、そもそも問題の起点が違ってたね、ということがすごく多くてですね。僕が今年に入っていろんな会社の、大企業の本当にすごい重要なサービスも含めて相談を受けてきた中で、9割以上の確率で「そもそも問題じゃなかったことでみなさん悩んでる」というのがありまして。

要は今日やりたいなと思ってるのは、どうしてその「問題じゃないこと」でみんなが悩みに陥るのかということと、そうだとした時に、それをもう一度元に戻すための方法とか、エッセンスを、今日お持ちしております。

KAIZEN直伝「90日改善計画戦略マップ」

ということで、今日は「事業を正しい改善に向かわせる」「本当に解決すべき課題を明らかにしよう」というテーマでですね。この難易度の高いテーマで1時間一本勝負という、無謀な挑戦を一度してみたいなと思っております。

花海:(笑)。はい、よろしくお願いします。

須藤:よろしくお願いします。

花海:こちらがワークショップの概要ですね。

須藤:そうですね。このワークショップ、一応3つに分かれてるんですけど……。

まず今日は、「本当に解決すべき課題を明らかにする」がステップ1です。2と3もありまして、1ヶ月後ぐらいにそれぞれあるんですけど、課題がわかったら次に「目標とかKPIをどうやって設定するか」って話と、最後に改善していくための方法ですね。「具体的な方法を策定する」ということで、やっていきたいなと思っております。

今日お話しするのは、実はもともと僕らがやってる事業で、だいたい90日から120日ぐらい、要は3ヶ月から4ヶ月ぐらいで、サイト改善していくためのパッケージがありまして。その中に、90日で成果を出していくための要素を凝縮したプランニングがあるんですね。そこから今日、さらに要素を落とし込んでですね。「90日改善計画戦略マップ」という、これをみなさんと一緒に作りたいなと思っております。

花海:おぉー。

須藤:これ、たくさん書くとこあるんですけど、今日はもう1、2、3、4の4つしか使わないということで。一番下にあります、「事業構造」というものですね。それから「中期的なゴール」、これは一番上にあるやつですね。要は今の問題を把握して、行きたい目的地をちゃんと設定して、その間にマイルストンを置いて。「マイルストン」と「真の課題とアクションプラン」ということで、この4つをみなさんと一緒に作っていきたいなと思っております。

花海:はい。これ、けっこう難しそうですね。

須藤:そうです。今日はもう詰め詰めなんで。

花海:(笑)。

同じ悩みを持つもの同士の助け合いは大切

須藤:今日、みなさんがやる前にですね……まずそもそも今日の授業、みなさんけっこうネットからアクセスされてますけど、ほかの会社のみなさんもいっぱいいらっしゃるんで。ここにいらっしゃるみなさん、みんな同じ悩みを持つ仲間だということで、助け合っていくということは非常に大事です、ということ。

もう一つは、ポイントを掴んでもらって。実際、今日の1時間の中で課題の質が高まったらそりゃ苦労しないわけなんですけど、エッセンスを持ち帰ってもらって、自分のお仕事でもいいですし、学生さんだったら自分のサークルでもいいですし、自分のチームで内容を実践してもらえるとすごくうれしいなと思ってます。

その実践するためのテンプレートとかは、ダウンロードするURLを後ほどご紹介しますので、ご活用いただければと思っております。

花海:はい、ありがとうございます。それではさっそく、アジェンダをまずは紹介していただきたいと思います。お願いいたします。

ドラッカー曰く「問題に見える多くは、症状であって問題ではない」

須藤:はい。今日のアジェンダはこの4本になってまして。

4本というか、基本3つですね。1つ目が「なぜ事業が成長できないのか?」。2つ目が、みなさんにワークしてもらうための「ワークショップ」。最後ですね。みなさんに「これを明日から改善するぞ!」という「KAIZEN宣言」をしていただいて。金曜の夜の貴重な時間を参加いただいてますんで、みなさんになにかを持ち帰っていただければと思っております。

4つ目の「テンプレート」に関しては、最後にダウンロードのURLなど、ご案内できればと思っております。

花海:はい、よろしくお願いします。ではまずは「なぜ事業が成長できないのか?」に入っていきたいのですが、その前にみなさんに質問があります(笑)。みなさんの事業は、成長していますでしょうか? こちらについてコメント欄に回答をお願いいたします。

須藤:……胸が痛いです。

花海:胸が痛いですね。

須藤:はい。「そんな簡単に成長しないよ」という感じだと思うんですけど。要は事業が成長するのって、思ったとおりにいかないことって当然あるわけですよね。その時にどうやって振る舞うかという話なんですけど。

ドラッカーさんが言ってますけれども、「問題に見える多くは症状であって問題ではない」ということで。みなさんが「なんかうまくいかないな」とか、なにか起きてる「問題に見える事象」って、単なる症状なんですよね。事実とか症状であって、問題はその奥にあるんですけど、その奥の問題を捉えなきゃいけないと。これがけっこう難しい、という話なわけなんです。

元NY市長・ジュリアーニ氏に学ぶ、中間目標の価値

要は、問題がなかなか解決しない場合は、その問題そのものの設定を疑ったほうがいい、というので……1個みなさんに事例をお伝えしたいなと思うのが、ニューヨークのジュリアーニ市長のケース。

ご存知の方いらっしゃるかもしれないですけど、ニューヨークのジュリアーニ元市長って、一応歴史上でもかなり……犯罪率を下げたトップとしては、たぶん歴史に残るぐらい下げた、と言われてまして。

で、この今日やるお話は、ここにけっこうエッセンスが実はあってですね。例えばこのジュリアーニさんは「犯罪率を下げます」と言って選挙に出て、当選されるんですよね。当時のニューヨークって、治安が良くないんです。凶悪犯罪もいっぱい起きます。

で、その「犯罪率を下げる」という目的地の手前に、中間目標を彼は敷いてまして。それがこの「橋での強請(ゆすり)を減らす」という。

花海:ほぉー。脅迫的な。

須藤:そうです、そうです。マンハッタンって島なんで、だいたい橋とかトンネルで、車で入るじゃないですか。要は入口と出口なんですよ、橋って。橋のところに来て「コンコン」って開けられて、なんか銃とか突き付けられて「お金出せ」とかって言われる、まぁ強請ですよね。

これを減らそうと。要は観光地として、入口と出口で犯罪が起きまくるって……。

花海:もう行きたくないですね(笑)。

横断歩道以外を渡っている人を全員取り締まり

須藤:そうですよね、行きたくなくなっちゃうじゃないですか(笑)。でも難しいのは、その「橋での強請」を減らそうとした時に、実は「現行犯逮捕じゃないと取り締まれない」という問題があって。

花海:へぇー。

須藤:要は、友達に声かけてるのか、それとも強請をしてるのかがわかんない。ということで、彼がやったアクションがすごくって。「横断歩道以外のところで渡ろうとするやつを全員取り締まる」というですね。

花海:えー!

須藤:それ、簡単に取り締まれるんですよ。

花海:なんか、脅迫・強請とはまた違った感じはありますけども。

須藤:そうなんです。これをやったことによって何が起きたかというと、要は簡単な犯罪もしっかり取り締まることで……例えばそれで、じゃあ「ピピー!」って笛吹いて、「ダメだ、ID見せろ」ってやるじゃないですか。そうすると、「あっこいつすごい悪いことしたやつだ、前科何犯で……本当は強請しようとしたんじゃないの? 武器持ってないの?」みたいなことをやったことで、凶悪な犯罪が減ったんですよ。

花海:へぇー……。

須藤:一番大きいのは、これをやると観光客がすごい戻ってきたんで。要は、最初に中間地点として置いた「橋での強請を減らす」ということ、短期間で、3ヶ月ぐらいで実はけっこうな成果をもたらして。これによって、街の人たちがすごい協力的になるんですよね。

で、街の人たちが協力的になると全体としての、軽犯罪ももちろん減ってるんですけど、例えば強盗とか、そういう強請以外の犯罪も、実はけっこう市民の目がちゃんと効くようになっていって。グッドスパイラルが効いていって、犯罪率が全体で下がっていく最初のきっかけになったと言われてるんですね。

花海:へぇー。確かに小っちゃいことでも「見てるぞ」という感じにはなりますね。

どんな難題でも中間地点を設定すること

須藤:そうそう、そうなんですよ。要はどんな難しい問題でも、最初にどういう中間地点を置いて取り組み始めるか。その問題に対して、それを実行する時に本当に難しいことは何なんだという、このことを問題に設定しないと。事業も同じなんですよね。最初に問題として、自分たちが取り組むテーマとか、いかに質の良いものにするかが極めて重要ですと。

これができるとできないとで、けっこう大きな差が出る。というところで、こんなワークショップをやってるというわけなんです。

花海:なるほど。「問題がなかなか解決しない場合、問題そのものを疑ったほうがいい」ということで。「みなさんの事業は成長していますか」という問いかけで、たくさんのコメントをいただいてます。もちろん理由も含めて教えていただければと思いますが、ぜひ。この後のワークショップでも?

須藤:はい。

花海:つながることなので。

須藤:そうですね、みなさんに。これは「成長してますか?」と聞かれても、「成長してます」「成長してません」だけだとアレなんで(笑)。

花海:「なぜ」。

須藤:そうそう。できれば「どういうところに悩んでる」とかということを投稿していただけると、非常にありがたいなと思ってます。じゃあ、みなさんのコメントはまた後ほど。

花海:後ほど見ていきましょうか。はい。

須藤:じゃあさっそく、今日けっこう詰め詰めなんで。ワークショップのほうに、入っていきたいなと思っております。