6ヶ月間の大人インターンシップ「信州100年企業創出プログラム」

櫻木瑶子氏(以下、櫻木):それでは次に、「先輩が語る、キャリアアップ・キャリアチェンジのための学び直し」ということで、実際にリカレント教育を実践・推進する方々にそれぞれのお立場から学び直しの意義についてお話しいただこうと思います。みなさま、よろしくお願いいたします。

はじめに、簡単にみなさまのご紹介をさせていただきます。お1人目は、信州大学の「信州100年企業創出プログラム」をご担当されている林准教授。

お2人目は、実際に学び直しを受けた社会人というお立場から、信州大学の「信州100年企業創出プログラム」にて、平成30年度から1年間学び直しをされた星野様。

3人目は、リカレント教育を提供する機関としてのお立場から、明治大学副学長、社会連携担当である竹本教授。

最後に、その明治大学の「女性のためのスマートキャリアプログラム」にて平成30年度から半年間学び直しをされた中山様です。よろしくお願いいたします。

それではさっそくお話をうかがっていきましょう。林准教授、そもそも「信州100年企業創出プログラム」とはどういったリカレント講座なのでしょうか?

林靖人氏(以下、林):まず信州大学では、Research、研究と、Upgrade、人材の成長というところをキーワードにしまして、挑戦的な学びと仕事をつないだようなかたちで「信州100年企業創出プログラム」といったものを実施しております。

このプログラムは、地域の未来や創造といったところを狙いたい長野県の企業さんたちと首都圏在住の人材をマッチングさせて、その人たちに一緒に次の企業をつくっていくことを通じて学びをすることが特徴になります。

櫻木:魅力はどういった点なのでしょうか?

:まずこの魅力というところなんですけれども、通常の座学的なものももちろん入っているんですけれども、一番は、企業の中に入り込む6ヶ月間の「大人インターンシップ」という例えになるのでしょうかね。あるいは「セカンドインターンシップ」といういろいろな表現があるかと思うんですけれども、そういったタイプの学びが特徴です。

教授と受講生が専門職のプロとして対等に学び合える環境

櫻木:なるほど。星野さん、この「信州100年企業創出プログラム」になぜ応募しよう、受講してみようと思われたのでしょうか?

星野亜紀子氏(以下、星野):東京で主に仕事をしていたんですけれども、自分のキャリアや今後の未来、家族の未来を考えたときに、「自分らしく働くには?」というところから、地域の仕事をしていきたいと夢を抱いていたので、今回、魅力的なプログラムだと思って応募しました。

櫻木:実際、受講されてどういった点に惹かれましたか? お薦めな点はなんでしょうか。

星野:私は家族と神奈川県の藤沢市に住んでいたのですが、このプログラムを受講したことによって、今年の4月に松本市へ移住をしました。いわゆるライフスタイルすべてを大きく変える可能性や、未来のあるところが一番の魅力だと思います。

櫻木:ずばり、現在やりがいを感じていらっしゃいますか?

星野:そうですね。責任もあり、また結果を出さなければいけないのですが、先生たちがいまだにバックアップをしてくださるので、非常にやりがいを感じています。

櫻木:星野さんのような受講生・卒業生もいらっしゃいますが、ほかにどういった生徒さんがいらっしゃるのでしょうか?

:職種といいますか事業種はバラバラでして、モノづくりもあれば、製造業や飲食業もあれば、本当に旅館業ですとか、いろいろなパターンの企業さんたちが今回応募をいただいているというかたちですね。

そこに、先ほど申し上げた首都圏の方々にマッチングさせていただいて、だいたいそれぞれ半年間ほどそこに入り込んで、企業や業界の未来を考えながら、実際にその業界の未来を考えるために今後どういったことが必要なのか、そして今、何を始めないといけないのかを考えることを、みなさんにやっていただくかたちになっています。

櫻木:卒業生のみなさんの現在を見て、どのようなことをお感じでしょうか?

:現在に関しては、みなさんそれぞれ、パラレルキャリアの人もいれば、実際に就職をした人もいます。タイプやパターンはいろいろあるんですけれども、みなさん、実はそれぞれの企業において、新しい事業部をつくられてそこに入り込まれたりですとか、社長の右腕になって活躍されたりですとか。また、一番おもしろいのが、研究員同士のコラボレーションが起きまして、新しい仕事を企業横断的にやったりしています。

櫻木:星野さん、今うなずかれていましたけれども。今回のこのプログラムを実際に受けてみて、どういったスキルや知識を身につけられたとお感じでしょうか?

星野:もう一度専門的な学び方の基礎などを学べましたし、このプログラムは「100年続く企業」という大命題がありましたので、100年後の未来や日本というものを、合宿形式でディスカッションして学べたことが非常に魅力でした。

櫻木:これまでの学校のイメージと変わった点は多かったですか?

星野:そうですね。一番おもしろかったのは、学生時代は教授と生徒という立場だったのですが、今回、我々は専門職のプロということで、教授とも対等に、それぞれが学び合えたことが学生の時とは一番違う魅力だと思います。

400講座もの社会人教育を提供している明治大学

櫻木:なるほど。ありがとうございます。では、次に竹本教授にお話をうかがいたいと思います。明治大学では、どのようなリカレント講座を提供されていらっしゃるのでしょうか?

竹本田持氏(以下、竹本):明治大学は首都圏の総合大学で、大きな大学ですけれども、中心としては現役の学生・院生が対象になります。1990年頃に学外で社会人教育というものを一度試してみて、これにニーズがあるなということがわかったものですから、この方向を少し強化しようということで、1999年に「リバティアカデミー」という社会人教育の講座を開設いたしました。

最初は36講座ということで非常に小さかったんですけれども、現在400講座まで増えています。講座自体は、文化ですとか教養的なもの、資格・語学、それからビジネススキルを高めるものがあるわけですけれども。

明治大学は、どちらかというと男性の多い大学だったんですけれども、今だんだん女子学生が増えております。非常に多くの学生が学んでいますが、この社会人教育を受ける人たちの中でも、女子が増えてきていると。

こういうことを把握しまして、これは「そういうニーズに対応したプログラムがあってもいいのではないか?」ということから、2015年に、今日一緒に来ていただいています中山さんが学ばれた「女性のためのスマートキャリアプログラム」を導入したということであります。

これは履修証明プログラム制度を利用しておりまして、半年間ですが、きちんと講座を修了いたしますと、履修証明書が発行されるかたちになっております。

履修証明が得られる「女性のためのスマートキャリアプログラム」

櫻木:なるほど。その講座を受講された中山様、この女性のためのスマートキャリアプログラムをなぜ受講しようと思われたのでしょうか?

中山香織氏(以下、中山):私は新卒で流通の企業に勤めていたのですが、非常に忙しい会社でした。女性として「今後、仕事をし続けるなかで、どうやって自分のキャリアを考えたらいいのかな?」と思い悩むことが多く、いったん退職したあと「何をしようかな?」と思っているときに、たまたまSNSの広告で、この明治大学の「スマートキャリアプログラム」を見つけたことがきっかけです。

履修証明プログラムなので、当時ハローワークにも相談にいったんですけれども、そこでもちゃんとバックアップしてくださることがわかりましたので、「1回勉強し直してみようかな」と、最初は軽い気持ちで受講を決めた次第です。

櫻木:竹本教授、中山さん以外に、この「女性のためのスマートキャリアプログラム」の受講者の方は、何を目的に学び直しに来られるのでしょうか?

竹本:もともとこの「スマートキャリアプログラム」は、新しく何かをしようということの前に、すでに働いていて一度子育てなどで家に入った人が、仕事に復帰する前にビジネススキルを高めていただくというところが、1つの目的にありました。

もう1つの目的は、今働いているんだけれども、もう少しキャリアアップしたい人たちにも対応しよう、ということで始めました。それで非常に多様な方が学んでこられますけれども。

その中では、ビジネススキルということですから、マーケティングや金融やマネジメントを幅広く学ぶ。講師の側は、明治大学の専任の教員を中心としまして、ビジネススクール・専門職大学院などもありますので、そういったところの先生方もゼミなどを持って、より魅力的な講座にしています。

櫻木:中山様、実際にこの講座でどういったスキルや知識を身につけられたとお感じでしょうか?

中山:私、実務でマーケティングに関わってきたんですけれども、そういった実務の裏に、実はいろいろな経済や経営の理論があって、そういうものを大学ではあまり勉強してこなかったんですけれども。理論的なところから今回きちんと学び直せたのは、私にとっては非常に大きな成果でした。

それに加えて、実は金融等の話も教授にしていただく機会がありまして。年金の話などは、主婦の方、非常に興味がおありで、授業を30分延長しても全部質問に答えていただいたり。すごくアットホームな雰囲気で、そういった社会情勢なども学べるのが魅力の1つだと思います。

櫻木:一度社会人になったからこそ、学べること、身につくことは大きいですか?

中山:そうですね。自分の現在地を探るといいますか、どういうことで今まで仕事をしてきて、自分のどんな能力に価値があったのか。改めてそういう学び直しを通じて、自分の現在地を測れたことが大きかったかなと思っています。

講座で生まれた「横のつながり」が次のステップへ

櫻木:竹本教授、このリカレント教育を実施されている明治大学様から見て、近年、学び直しを行う社会人の数は増えているとお感じでしょうか?

竹本:はい。具体的な人数を申し上げるのは難しいと思いますけれども、この「スマートキャリアプログラム」を含む社会人教育全体、リバティアカデミーにおける無料の公開講座等へ参加される方は非常に多くいらっしゃいますので、増えているなという感じはあります。

それから、一般の学部の入試、専門職大学院の入試などにもチャレンジする社会人の方が多くいらっしゃいますので、そういう点でも増えているのかなと。

ただ、実際に、例えばリバティアカデミーをきちんと受講するということになりますと一定のコストが必要になります。現在は年間1万7,000〜2万人ぐらいの方に受けていただいておりますけれども、人数的には少し頭打ちかなという感じがいたしております。

しかし一方で、この「スマートキャリアプログラム」のいいところ、あるいはリバティアカデミー全体もそうだと思いますけれども、非常に多様な方が受けておられます。リバティアカデミーですと、それほどではないかもしれませんが、「スマートキャリア」のように集中して授業を学ぶということになりますと、いろいろな立場・キャリアの方と横のつながりができていくと。

これはもしかすると、当初はあまり想定していなかったことかもしれませんけれども、その中で仲間ができて、個人個人のキャリアに加えて、その人のつながりが次のステップアップにつながっていくようなことが実際にあるようですので、非常にいい傾向かなと思っています。

櫻木:中山様、その人のつながりという点ではどうお感じですか?

中山:スマートキャリアプログラムのことをみんなで「スマキャリ」と言っているんですね。その受講生を「スマキャリ生」と言っていて、けっこう横のつながりは本当に大きいと思います。

なかでも、ゼミ形式の授業が必修科目として設置されているんですけれども、世代も違うし、環境も違う女性ばかり5人とか6人で集まって、チームを組んでチーム名を決めて、企業様の課題をどうやって解決していこうかという話をする授業があります。

そういうものを通じて、横の連携もそうですし、違う期のスマキャリ生の方とも関わりが強くなってきていまして、そういう女性の学び直しを通じた人脈がすごくバックアップになっているなと思っています。