カフェインには本当に利尿作用があるのか?

マイケル・アランダ氏:カフェインは排尿を促すので、カフェイン含有の飲料を飲むと脱水症状の原因になると広く言われてきました。しかし、本当にカフェインには利尿作用があるのでしょうか?

答えは「イエス」ですが、みなさんが想像するほど影響はありません。もしかしたら、朝のコーヒーを飲んだ後、おしっこに行きたくなるかもしれません。

しかし、そのコーヒーの量と同じくらいの水を飲んだ後にも、同じようにおしっこに行きたくなるかもしれません。では、カフェインを取った方がもっと尿意を生じやすいのでしょうか?

このことは簡単に証明できるように感じるかもしれません。どれだけの液体を摂取し、どれだけの量が排出されるかを見れば良いのではないでしょうか? しかし、実際はそんなに簡単ではないのです。

まず、人によってどれくらいの飲料を摂取するか、どれくらいの量を排尿するかが大きく異なります。ですから、適当な被験者たちにコーヒーと他の飲料を飲んでもらうより、同じ人たちに異なる日に、カフェイン入りかそうでない飲料を飲んで計測した方が良いのです。

それに、いつ計量するかも重要です。肝臓の機能には睡眠・覚醒のサイクルがあるからです。肝臓は夜間は働きが遅くなり、日中にたくさん働きます。ですから、被験者を少なくとも24時間は観察する方が良さそうです。

カフェインが脱水症状を起こすと言われるようになった、ある研究

それに、一人の人がどれくらいの飲料を必要とするかは、はっきりとわからないのです。誰によるか、何をしているかにより異なるのです。脱水状況にあるかどうかをモニタリングしている時その違いが出てくるのです。水分をどれくらい失うのかも、どれくらい運動をするか、外の気温がどうかによって変わります。

被験者それぞれの基本となる水分摂取量を決めることにより、だいたいその分量に目安をつけることができますが、カフェインを取る日と取らない日の行動をだいたい同じ内容にする必要があります。ですから、人が水分を補給したり排出したりする実験をするのは容易ではないのです。それでも、研究者たちは過去何年にも渡り、それに挑戦してきました。しかし、いつも成功してきたわけではありません。

カフェインが脱水症状を起こすことは、少なくとも何十年も前から言われてきました。もしかしたら、1928年の研究から言われてきたのかもしれません。この時の実験では、被験者は3人しかおらず、尿の量しか測られなかったので、ベストな研究ではありませんでした。

みなさんはどうかわかりませんが、私は90年前の3人のおじさんのデータがあるからといって、カフェイン入りの飲料を飲むのをやめたりするつもりはありません。幸いなことに、それ以降もたくさんの研究が行われてきました。

カップ2~3杯のコーヒーでは脱水症状にはならない

それらの研究では、カフェインの錠剤からエネルギードリンクからコーヒーに至るまでが試されました。これらのデータをすべて一緒に見てみると、ある傾向が浮上します。ふさわしい量のカフェイン、つまり300から500ミリグラムであれば、ほとんどの研究結果で利尿作用は見られませんでした。その量のカフェインは、バリスタの入れたコーヒーであれば、カップに2杯か3杯分、お茶であれば6カップ、ソーダであれば2.5リットルにあたります。

これらの量よりも多く摂取した場合、カフェインには多少の利尿効果がありそうです。しかし1928年の研究者も気がついていたように、もしみなさんが毎日カフェインを摂取されると、この利尿効果に抵抗力を持つようになってしまうようです。

1997年の研究では、高濃度のカフェインによるこの利尿効果でさえ、被験者が運動をするとなくなることがわかっています。ですから、この言い伝えがこんなに長きにわたり言い伝えられているのが驚きです。

これはどこでも言われていますし、医療のプロですらこの古いガイドラインを広めていることがあるほどです。でも安心してください。研究結果は明らかです。何杯かのコーヒーやお茶、そしてカフェイン入りのソーダを飲んだとしても、脱水症状になることはありません。

砂糖がたくさん入ったカフェイン入りの飲料を控えるべき理由は他にあるかもしれませんが、脱水症状はその一つではなさそうです。