自分の事業をDNAを残したい

及川真一朗氏(以下、及川):AIもそうですけど、それでもなお事業として大きくとか、世の中に対してイノベーションをと考えるモチベーションは、どういうところにあるんですかね?

神田敏晶氏(以下、神田):僕らはDNAがあって言えることと言えないことがずっとあるんですけども、公開されている中で一番わかりやすいのは、「300年続く企業」。やっぱり、自分の子どもに代を継いで、自分のDNAを残したいというのが、一般市民の考え方であって。普通の一般のオスの考え方ね。

及川:自分のということですね。

神田:自分のDNAを残したいから。たくさんの女の人にモテたいというのも、自分のDNAを残すための行動であって。孫校長ぐらいの立場になってくると、自分の事業のDNAを残していって、社会をもっといいほうに向けたいみたいな。

でも考えてみたら、今までの日本のメーカーや家電とかもそうで。家電が伸びてきて、何が便利になったかというと、女性が家事をやっていたのが掃除機で楽になりましたと。洗濯機で楽になりましたと。昔はタライでやっていたわけですね。川に行って洗濯していたわけですよね。

及川:確かに。

神田:桃太郎を拾ってくるようなやつね(笑)。

及川:確かに(笑)。今じゃもうねぇ。

神田:お風呂に入るのに薪を焚いて入っていたのが、今はピッとやって入れるわけですね。でも、それでできた時間を有効に使えているのかというと、無駄なことにしか使ってなかったりして。テレビを見てダラーっとして、太って、今度はダイエットを始めるとか(笑)。

及川:ははは(笑)。

神田:テクノロジーの進化と幸せのトレードオフの関係って、うまく成立していなかったりするんですよね。

「Car」の語源は馬車

1つの転換としては、車という産業が生まれたことによって……。車はエジプトの時代からずっと、車輪というものを発明してから、テコの原理やらいろんな効率化はあるんですけれども。それが馬になって、馬車に変わってきて、そこで19世紀に突然、馬車の「cargo」から「go」の文字をとって「car」というね。

及川:なるほど。cargoから。

神田:cargoからcarというのが来てるんですよね。

及川:そうなんですか。

神田:それでカーをダイムラー、ベンツが発明して、ガソリン車で動かし始めて。水蒸気よりも電気よりも効率のいいのがガソリンなんですね。そのガソリンを使うことによって、もっと遠くへ動くようになってきて、今度はタイヤという産業でファイアストンだったり、草履を作ってた石橋商店がブリヂストンになったりして。そうして一大産業になってきた。

及川:そうですねぇ。

神田:それで車が出てくると、ハイウェイというのが現れて。砂利道だったものが舗装されてアスファルトになって。今度は石油が必要になってね。スタンダード石油を作ったロックフェラーは、石油なんて精製したことも、掘ってもいないのに、農協みたいなビジネスなんですね。

シャーロック・ホームズと自動車

これも19世紀のそのへんの歴史を調べると、すごくいろんなプラットフォームがあって。ロックフェラーなんてまさにプラットフォーマーで、粗悪な石油がたくさんあった時に、ロックフェラーのスタンダード石油だけは、どこへ行っても世界標準で使えるという。

それで当時、戦争が起きたので、一気に爆発的に広まった。タイミングと運と仕掛けと製品づくりと。宣伝営業も含めて、その世の中の時勢にばっちり合ったんですよね。そして金融からいろんなところまで広がっていく。

だから、当時の19世紀のモルガンにしても、政治力やらいろんなところで今ほど情報がない時代に、情報とテクノロジーとすべてにわたって、いいタイミングで絶妙なバランスを取ってきてるんですよ。

及川:へぇ〜。100、200年とか、もっと経つのかもしれないけど、その時代はまだ参考になるということですね?

神田:なります、なります。だって車が出てくるまでは、シャーロック・ホームズの映画を見ていてもまだ馬車で。シャーロック・ホームズのコナン・ドイルの最後のほうに車が出始めた時に、「うわっ、これからAIが出てきてどうしよう」みたいな感じだったんですね。

今まで馬車でやっていて風情があったところに、いきなり車がガンガン走り始めて。馬に餌をやらなくてもいいし、糞も出てこないみたいな。

今パソコンやインターネットでも驚いているのに、さらにAIが出てきて、シンギュラリティがあるというのは、たぶん19世紀に水蒸気が出てきて、それまでの農業の生活から紡績機が出てきて、帆船で運んでいたのに水蒸気船が出てきてみたいなことで。いきなり電信機が出てきて、言葉が飛ぶように伝わるようになってきたとか。

及川:そうですよねぇ。

神田:「伝書鳩で送ってたのはどうすんの?」みたいな。そこのパラダイムシフトはすごいんですよね。

時代は変われど、ハードウェアとしての人間は変わらない

及川:確かにその伝書鳩の時代と、今の時代との幸福度の違いはどう変わってきているのか? というのは、おもしろいテーマかもしれないですね。

神田:そうですね。でも、基本的にハードウェアとしての人間は変わらないんですよ。寝ないとダメだし、食べないとダメだし。空気吸って、汗かいて、排泄して、子作りして。そこでだいぶ変わってきたのは、本当は人間って40年以上生きられるようなハードウェアじゃないんですよ。

及川:あっ、そうか。寿命ということですか?

神田:寿命ということです。歯は40年ぐらいしかもたなかった。だから、昔の人はすぐ歯周病で歯がダメになって、食べられなくなって、50歳まで生きたら、おじいさんとして死んでいく。

及川:そっかぁ。

神田:つい戦前までも、そんなものですよ。

及川:今は「100年社会」とか言われていますからね。

神田:そうですよね。120年とか。

及川:ははは(笑)。

神田:もう70歳過ぎても、まだピンピンで困りますみたいな。

及川:それでもまだやっと折り返し地点とか言われかねない時代になる(笑)。

神田:そうなんですよね。それでアンチエイジングやらいろいろやって。あとはガンなどもだんだんと克服できるようになるだろうし、目が悪くなってもレーシック手術があるし、サプリメントとかもあるし、時間軸がすごく伸びてくるんですよね。たぶん、神様が「あれ?」ってびっくりしてると思う(笑)。

及川:確かに(笑)。

人間の寿命をたたく神電卓が誕生する?

神田:「なんでそんなに」「いつの間に地球に人間ばかりいるようになったんだ」と。「いや、俺は人間と恐竜をこれぐらいの割合で作ったんだけどなぁ」みたいな(笑)。

及川:いつの間にか自分たちの寿命を長くし始めちゃって(笑)。

神田:いつの間にやらね。「勝手に宇宙にまで飛び出して。君たち、なにしてんの?」みたいな(笑)。でも太陽だって3億年ぐらいしか生きられないので、我々の寿命って言ってみればもっと儚いんですよね。神の視点から見るとね。

もうすぐ神電卓といって、地球の寿命から比べて、あなたがどれだけちっぽけかがわかるものを作ってもいいかなって。

及川:ははは(笑)。

神田:「太陽から見た視点電卓」みたいなね。そうやって考えてみたときに、儚いからこそ、生まれてきてポッと生きる間にということがある。例えば小さな昆虫でも、一瞬にして死んで、なにを考えて生まれてきて、死んでいるのかわからないんだけども、生き延びている虫もいる。でも太陽から見たら、人間ってもっとそれ以下みたいな。

その中で、いろいろ話をしたり、違う文化の人を珍しがったり、驚いたり。あとはいがみ合ったり、戦争したり。離れて暮らす人は魅力的なんだけども、言葉が通じなかったり、自分の仲間を大切にしたいがために国益があったりと、いろんなことがあるんですよね。

人々がインターネット国の住民になる時代

インターネットで言葉が変わってきて、僕は今もう住民票がこっちにないんだけども、税金はどこで払っているのかというと、ほとんどパーマネントトラベラーみたいなかたちで、どこにも居住国がない状態でやっている。

及川:なるほど、なるほど。

神田:あと10日もすれば、今度はポルトガルのヨーロピアンになるので。そうなってきたときに、自分の居場所と納税場所と生まれた国の意識と。あとは母国語と使用言語と宗教とがあって。例えば、奥さんが同じ国の人じゃない可能性も出てきたときに、国とかそういう小さなコミュニティの中での……。

まぁ、ワールドカップや紅白歌合戦みたいな、そういうゲームの中での国籍は要るのかもわかんないですけどね。経済戦争とかいろんなところで、これから何が起きるかわから状態でもありますし。あんまり幸先いい感じじゃないから。

及川:ははは(笑)。

神田:お隣の国とも一触即発なところがあって。へたするとテクノロジーがこれだけ進んでるのに、またベトナム戦争みたいな、ああいう米中や日中、ロシアなど、いろんなところの問題があって、「まだやってるの?」みたいなね。

だったらもっと超えたところで、もう国の概念がない「インターネット国」に住むみたいなさ(笑)。なんかグローバルシチズンみたいになって。

及川:そうですよねぇ。普通に生活していて、なんか実質そうなりつつあるのかなぁ、というのはちょっと感じますよね。ルールの中では国の制限がありますけど、生き方としては、あまり属している感じではなくなってきてますもんねぇ。

「本籍地は皇居にしちゃってる」

神田:だから、基本的にはそういう移住が認められてくると、会社がタックスヘイブンというか、租税のいい国を選ぶという。そういうところを選んで、住みたいところに住んで。じゃあ、故郷だからというのは、生まれ育った日本だから、生まれ育った神戸だからというのがあったとしても……。僕は今、本籍地を皇居にしちゃってるので。

及川:皇居にしちゃってるんですか?(笑)

神田:皇居にしちゃった。千代田区1番地で。

及川:1番地なんですか(笑)。そんなのできるんですか?

神田:できるんです。法律的にできる。でも何が楽かというと、結婚する時も、本籍の戸籍抄本・謄本を取るのに、そこの千代田区分所で取れちゃうんです。

及川:あぁ、なるほど(笑)。

神田:地下鉄に乗ってきて、すぐ取れるところに本籍地があれば、いちいち面倒くさいことをしなくて済む。「じゃあ、本籍ってなんなんですか?」という話。

及川:確かになぁ。

神田:これっておもしろいですよね。日本の本籍というのはね。これをやっている国ってけっこう少なくて、中国とか韓国とかは本籍地によって照合していく。だけども自由に皇居とかにできるんですよ。住んでもいないところを本籍にできるし、住民票の申請も住んでもいないところを住所にできるわけですよね。これって意味あるんですか?

及川:確かに。

神田:じゃあ、マイナンバーってなんなんですか?

及川:ははは(笑)。

神田:だから、そうやって考えていくと穴だらけなんですよ(笑)。

及川:ははは(笑)。

神田:パチンコ屋のボールペンを交換してくれるところと同じように。

及川:なるほど、なるほど。

神田:「じゃあ、僕の万年筆も交換してよ」と。

及川:ははは(笑)。

神田:「だって、ここはボールペンを交換してくれるとこでしょ? うちのやつも交換してよ」っていう。建前では、日本はそういうことをやっちゃダメなところなんですけど、「ここはそうじゃないところですよ」みたいなね。

及川:そうですねぇ(笑)。

神田:メインと裏のところで、日本は今までうまくやってきていて、「そこはもう触らないでおこう」みたいなところが、もう透明性が高すぎてできなくなっている社会なのに、そこはそこで残っているから、なんか変なことが起こっているんですよ。

及川:確かに(笑)。

AI代議士を置けばお金もかからない

神田:そうやって見ていくと、話はまた億兆電卓に戻るんですけど、億兆電卓は5兆円の予算とかをテレビ見ながらカチャカチャ叩ける。「おーっ」って。

及川:なるほど(笑)。

神田:新しい発見があるようになると、エビデンスとして今まではわからなかったいろんな予算が見えてきて。じゃあ、それをこれからどうしていこうかと思うと、やっぱり政治のところにいく。

僕たちは投票する時にしか、その権利を行使できないんですけども。そうじゃなくて、もっと法案に対してもニュースを見るたびに、マイナンバーで「いいね」や「ダメね」を押すとかね。

衆議院の人たちは代議士なので、いつでも彼らと通じて代議士をやるとか。代議士の枠にはもうAIの代議士を置いて、みんなの総意が動くようにして、AIが動いてくれれば、もうそのぶんはお金がかからないとかね。

磯村尚美氏:いいですねぇ。

神田:逆にその人たちがいることによって、近い人たちが便宜が図れたりとか。

国もそうですけど、助成金のシステムなんて利用してる人はめちゃくちゃ利用してるんですよ。起業なんかでも助成金があるから。助成金があって、アプリでも50万円まですぐ費用が出るというのが、いっぱいあるわけじゃないですか。

でも、みんなが知らずに、知っている人だけにこそっと使われる状況があって。「いや、ちゃんと官報にも出しているんですけど」って、「官報を誰が読むんだよ!」みたいな。

及川:(笑)。

神田:読まないですよ。

及川:読まないです(笑)。

過去に選挙に出馬して落選、でもまだやりたいことがある

神田:なんか一部の人のために回るお金で、一部で動いていくために税収があって、消費税があって、還元というのはやっぱりおかしい。そろそろ、それを……。

まぁ、僕は2回出馬して、失敗して、選挙に出たことによってテレビの仕事から干される経験をしているので(笑)。自分が出ることに興味はないんですけど、仕組み作りはまだなにかあるかなぁと思うので。

政策の裏側でもっとITなりAIを使って、もっと税金を取らなくてもうまく回るようにするとか。税金を使わないでも、民間でやってうまくいくようなサービスを考えたりとかね。

及川:確かにそうですよねぇ。

神田:もっとできると思うんですよ。例えば、日本の中でも移住すればすごくいい場所もいろいろあるんだけども、なんかみんな「ウチへ来たらなんとかで」って、自分たちの地方自治の税金を上げるためだけに「おいでおいで」って言っているだけなので。「いや、それでは行かないでしょう」っていう。

だったら、別荘が売れないで困っているところと、家賃が激安で、その代わり別荘の管理人みたいな簡単な軽作業だけをしてくれれば、ほとんどタダで住めるとかね。そういうプラットフォームのビジネスもやりたいなぁと思ったり。

及川:やりたいことが、めちゃめちゃいっぱいありますね(笑)。

神田:あるんですよね。だから老後が楽しみです。

及川:確かにそうですね(笑)。

息を吐くようにアイデアが出る

神田:老後はこうやってスタートアップの仕組みと、事業をもう最初からイグジットで「誰かやりません?」みたいにして。「明日からすぐできます」っていう。

及川:ははは(笑)。

神田:「3日間だけ研修を受けてくれたら明日から社長です」みたいな。それをリタイアメントした人向けに考えたりとかね。それもできるだろうし……。

及川:神田さんとお話ししてるといろいろ出てきて、もうなんかね(笑)。やっぱり、すごいですね。いろいろな情報を集めてるから、そういうアイデアも出てくるんですかね?

神田:なんて言うんですかね。空気って吸ってないと吐けないじゃないですか。

及川:確かに。

神田:吐き続けてるだけの人って、やっぱり無理なので。

及川:確かにそうですよね。インがあって、アウトがあるわけで。

神田:そうですね。吐くためには、たくさん吸って吸って、溜めて溜めて、ガーッと本を書くタイプの人もいるかもわかんないですけどね。僕は見たことをすぐしゃべりたいみたいな(笑)。

及川:ははは(笑)。

神田:見聞きしたことを早く作りたいし、形にしたいので。せっかちなので、もうちょっと考えてから動くのもありだけどね。考えてから動いてうまくいくんだったら、考えてから動くのもありだし。考えないで動いてもなんとかなるんだったら、走りながら考えたほうがいい場合もあるだろうし。

及川:神田さん、そろそろちょっとお時間が来てまして、すみません。

神田:そうですよね。

及川:もっとたくさんお話ししたいなぁと思っているんですけど、ちょっと時間が過ぎちゃって。

神田:あっという間にこんな時間になって。

及川:また、こういうかたちでお話しさせてください。

神田:はい、ありがとうございます。

及川:今日は神田さんでございました。ありがとうございました。

神田:ありがとうございました。

磯村:ありがとうございました。

(一同拍手)