電卓からはじまる壮大な計画
神田敏晶氏(以下、神田):それで、次に実装したいのが為替レート。昨日の終値の為替レートを、とりあえずはリアルタイムではなくても、昨日のレートを反映して、1日1回だけアクセスしてもらうと、そのレートでいける。
及川真一朗氏(以下、及川):すごく便利ですね。
神田:あとは元とかドルとか。あるいはFXの電卓みたいなやつ。FXのチャートのところから引っ張ってくればできると思うので。
使いたいやつだけを置いておいて、任意のボタンがつけられるようになするとか。そういうのができると、まさに今でいくらとかがわかる。あともっと言えば、日にちを指定すれば、過去のドル円とかも表示ができるとおもしろい。
及川:当時いくらだったかって?
神田:はい。AOLがタイムワーナーを買った時の買収価格を今やると、金額が狂っちゃうんですよね。
及川:狂っちゃいますね。
神田:当時の金額にレートを戻さないと。ランキングした時に、それが最大かどうかわからないし。
及川:確かに。
神田:大陸横断鉄道の時の、リーランド・スタンフォードが投資銀行を作った時の価値は、今で言うとどれぐらいなのかとかね。そこのレートなんかも、お金の計算をちゃん最近のことも含めてやれるといい。歴史の年表とつなげていくと、もっとおもしろいことができるよね。
及川:確かにそうですよね。そうじゃないと、また一個一個を調べて、アナログの手間が入っちゃいますもんねぇ。
神田:だから、そうやって考えていったりとかね。あとは世の中のGDPとかのレートと比べてみたりとか。こういうことを数字でできるようになると、景気の判断に使えたりすると。
たぶん、これからこういうビッグデータのコミュニケーションができるものが出てくる。電卓から始まって、年表、為替、歴史とか。いろいろ壮大な計画になってくるわけですね。
及川:確かに今のアプリや電卓って、単純に計算するだけだから、まったくそういう変な……変な意味でIT化されていないというか(笑)。
神田:そうですよね。
及川:インターネットとつながっていないというか。
スシローの売上げもフェルミ推定でわかる
神田:そうなんですよ。だからさっきのスシローの売上の計算の方法でも、要するにスシローの売上と店舗数がわかれば、1店舗あたりのフェルミ推定でわかると。だったら、「飲食」と打ちこんで、だいたい年間の営業日数と営業時間で割れば、1時間あたりの売上と平均単価が出て、客の人数も計算できてみたいにして。
及川:(笑)。
神田:あと、原価率がわかって、販管費がどれぐらいでわかって、じゃあもうスシローのところからバランスシートだけ抜き取ってきて、貸借対照表のところだけを分析すると。これによって、どれぐらいの売上が立っているかが、子どもでもわかるようにしてあげると、すっごくおもしろいと思う。
及川:へぇ〜。さすが(笑)。
神田:そうすると、経営というか、数字を見る力が出てくるので。決算書を読める小学生をどんどん増やしていけば、起業する時もファイナンス面がすでにある程度は理解できるから。
だから僕は「貸借対照表」という言葉自体がおかしいなと思っていて。「調達運用表」と言うべきだと思うんです。BSシートをね。
及川:なるほど。まさにまさに。
神田:(スライドを指して)要するに、こっち側は調達してくるところの利益方で、左側は運用の部分なので。そういった意味でバランスが取れてるかどうか。
及川:確かに。
神田:「これは正しいよ」ということをバランスシートで出しているので、こっち側の調達と運用がどうなっているかという状態が一目でわかる。そういうふうになっているだけで、同じような業態・業種でも、左上を見れば経営がわかるので。それで財務の知識もつくだろうし。
及川:そういう勉強って、しない人はまったくしないで大人になっちゃいますもんね。
神田:一番ダメなのは、サラリーマンの人たちは経営企画室とかに行かない限り、そんなことには触れないわけですよ。財務や経理に行かないと、触れないまんま一生終わっちゃうんですよ。
及川:そうですよね。
神田:学校教育で受験があって、いい大学、いい会社とかがあるんだけども、学校の先生自体は起業したこともなければ、学校以外に働いたことがない人が教えているわけですよ。
及川:ですよねぇ。
神田:もしかすると大学でも、自分で社会経験のない学問ばっかりやっている先生が、経済学や経営を教えているケースがあるわけですね。それって、わかってないですよね。
物事を組み合わせて「WOW」を作れる力が必要
及川:確かに、確かに。そういった意味では、今後のいわゆる学問の考え方というのは、だいぶ変わるんですかね?
神田:学問も今までは暗記が中心だったり、記憶がよいかどうかで……。まぁ、どちらかというとストック型なんですよね。
及川:うん、うん。
神田:ストックで積み重ねてきたものを、こうアクセスよく出してきて、適材にパッと出すみたいな。でもこれからはやっぱりストリーム型というかフロー型なところで、その流れの中で適材な判断・ジャッジをどういうふうにできるか、という教育が必要で。今はぜんぜん違うことをやっちゃってるんだろうなと。
及川:確かに。だって今はなにかを調べようと思えば、頭の中に入っていなくても、インターネットから取れるから。
神田:「OK, Google」でいける。
及川:ははは(笑)。
神田:「Alexa」って聞けばいいわけですからね(笑)。
及川:記憶する必要がなくなってきて。
神田:数字をバッチリ頭に入れておく必要って、そんなにないですよね(笑)。
及川:どちらかというと、なにかを引き出す力と、これを組み合わせてなにか答えを導く力みたいな。こっちのほうが大事かもしれないですね。
神田:そっちのほうが大事。だから、ルールに合わせて、その中で賢く動き回るということがすごく要求された時代は、型が決まっていたから、その型の中で最適化を考えればよかったんです。でも、今は型がなくなってきていて、逆に型はどこまでかを見極めて、いたずらを仕掛けないとダメな時代なので。
それを考えた時には、その型の中で考える方が思いつかないようなアイデアにいかないと、企画も通らないし(笑)。おもしろくもなければ、誰もワクワクしないし。
及川:確かに、確かに。
神田:LINEの人たちもそうでしょうけども。舛田(淳)さんがよくおっしゃってますけど、「WOWがあるかどうか」。僕は常にWOWがあることしかやってきていないから(笑)。
及川:ははは(笑)。確かに。
神田:WOWのないことは出さないようにしてるっていう(笑)。
及川:確かに(笑)。
神田:そこはやっぱりねぇ。
及川:そうなってくると、いろいろ組み立ててWOWを作れる力なんですかね。そこは確かに、あるとないとでぜんぜん違いますね。
神田:そうですよね。
サービスの作り手と受け手の関係値の変化
及川:何か会社を作るにしても、やっぱりそこがないと、みんな集まってこないですしね。
神田:何かを作って、何か影響を与えようと思った時には、自分の中の志もすごく大事で。でも志とかいうのはすぐ折れちゃうんですよね。それでも志が折れないためには、やっぱり自分の中でミッションを持って、ステートメントを持っていないと。自分1人の「俺はやるぜ!」みたいなものだと、「あぁ。ダメだ、俺」みたいになって。
及川:ははは(笑)。自分だけがでは、そうなりがちですね。
神田:そういう意味では、社会に対してのミッションだったり、お約束みたいなものがあったりね。これがあったらいいなぁと思って、その夢を共感できる人たちって、その夢の共感に対して命をかけられるような仲間がいたりとか。
そりゃ命は無理だけど、あとは熱狂的にそれを支持してくれるユーザーであったりとか。そうやって、お客様と売り手ということよりも、なにか一種のお客様も巻き込んだ共同体みたいなね。そういう姿があるのかもわからないですね。
及川:そっかぁ。いわゆるサービスの提供側と受ける側という、そういう関係値も変わってきているということですもんね。
神田:関係値も変わってきている。もしくは、もう1つあるとしたら、そういう人たちを結びつけるプラットフォーマーですね。プラットフォーマービジネスは、最初の仕組みづくりや仕掛けは大変ですけども、回り始めてきたときには、取引量が多ければ多いだけの手数料が回りますよね。
かつて、eBayが乗り込んできてもヤフオクが負けなかった時と同じように、メルカリみたいなところも、やっぱりローカルの強さみたいなものがあって。でも、パソコンでやっていたところで、どうしてもスマホのところにエース級の人を配置できなかったという。
要するに、今の事業を守るためには、そこの事業に本腰を置いているから、どうしても片手間になっちゃうんですよね。
及川:なるほどね。
神田:でも、ベンチャーはその大企業が片手間でしかできないところに、もう全部をぶちこんでくるので。
及川:確かに。全力投資できますもんね。
メルカリはトランクルーム化している
神田:だから、メルカリも最初は「えーっ? スマホでしかできないの?」って。PCセントリックな人たちには「えーっ、これで全部打ち込むの?」みたいな。「それって1回パソコンで打ったやつをコピー&ペーストして、スマホに送ってからやるの? めんどくさっ!」って。
及川:ははは(笑)。
神田:最初からスマホでという判断にすると何が変わるかというと、PCのようにあちらこちらと比較しないで、メルカリの中で買っちゃうというのがあって。要するに、PCセントリックの世界では比較検討するのが当たり前なのに、メルカリの中で売られている価格の中で買っちゃうということが出てくるんですよね。
それはどういうことかというと、メルカリの中で買うということは、メルカリで売ればこの値段でまだ売れるというのが担保されているんです。
及川:確かに、確かに。
神田:それで手数料の10パーセントを取られると。その価格から10パーセント引きだということは、「使用料は10パーセントなんだな」というぐらいのイメージで売買をすると、「買う」「所有」というより、メルカリからサービスを「レンタル」しているという気分になる。さっきのお話にもあったように、メルカリがもうだんだんトランクルームに変わってきてる。
及川:トランクルームに。それはおもしろいお話ですよね。
神田:これってヤフオクの時には考えられなかったことで。トランクルームの感覚で、ある程度ほかのところにいろいろ行かずに、ラクマに行ったら同じようなものがさらに安いし、ラクマだったら3.5パーセントの手数料なのに、なぜ10パーセントの手数料が取られるメルカリで売るのって。
そこもやはりグロースハックの力で。ここまで浸透してきてしまうと、「早く売れる」という回転率の勝負になってくると、ラクマで得するかもわからないけども、いつ売れるかわからないよりは、今日売れるっていう確証のほうが、10パーセントでもバリューが生まれるわけですよ。
これからのベンチャーでプラットフォームで動いていくところだと、やっぱりグロースハックで、どこにお金をかけるかが大事で。
及川:なるほど。
テレビはHDMIの取り合い
神田:今は調達したお金のほとんどをテレビコマーシャルにかけてますよね。でも、もうあと1〜2年だと思うんですけど、テレビ広告費をインターネット広告費が抜き去る日が来る。今でもうちのテレビのHDMIは、地上波が映っているHDMIを選択しているほうが短いわけです。
及川:なるほど。
神田:例えばAbemaニュースを見ていたりとか、YouTube Premiumを見てたりとか。Amazon……なんだっけ?
及川:Amazonのやつですよね。
神田:プライムビデオ。頭がだんだん……(笑)。そうやってHDMIの取り合いになってきてるわけですよね。
及川:だから、テレビというより、「液晶画面に何を映すか」みたいなことになってますよね。
神田:僕、今自分の中にいくつかアイデアがありますけども、やっぱりテレビのメディアも作りたいなと思っていて。
及川:あぁ〜。そうですか。
神田:要するに、家に帰ったらHDMIの映し出すおすすめセットがあるみたいなね。
及川:あぁ〜。なるほど(笑)。
神田:レーティングした今日のおすすめで、家に帰って僕が選んだ経済記事やニュースを「30分で見ます? 1時間で見ます?」と聞かれて、僕が編集したやつが全部バーンと流れるみたいな。
及川:はははは(笑)。それ、いいですね。
神田:編集するというか、タグを打って、その人のレコーダーの中でリストだけ作って、リストだけを配信していくっていう。こういう事業はありだなと思って。それを女性用にしたり、子ども用にしたりして。
そうすると自分がサブスクリプションしている中で、「あなたはもうHuluと契約しているのは無駄ですよ」とか、サジェスチョンできるようになってくる。それによって節約して、「それよりもうちのリストを買ってください」みたいになって。
そうするとNewsPicksみたいなビジネスモデルで、「この番組は良かったですか?」というフィードバックを聞けば、Spotifyのようにお好みの番組を編集してくれて、家に帰ってくると「あなたの見るべき番組はこれ」と教えてくれると。職業も聞いて、個人ということじゃなくてAIで判断して出てくる。
英語を勉強しているのなら、そのための例えばBBCの番組がちょこっと入ってくるとかね。そういう意味では、テレビを見ながら、もう世界中のありとあらゆる教材から出してきて、HDMIに届けると。「小学生1年生用の帰国子女向けのための日本語の番組」とかね。うちのアンドロイドボックスだけ買ってもらえれば、それが定期的に配信できるという。
いろいろとクラスを変えていってね。そうすると、これは教育ビジネスにもなるだろうし。うちとしては、そういうテレビ番組をウォッチしていく編集部と、そのセグメントとプログラミングをしていく。たぶん、そんなに人を集めなくても作れるような。
及川:そうですよね。
神田:配信できると思うんですよね。
及川:確かに。僕も家で使って、HDMIを挿しながらやっていますけど、映画ぐらいしか見てないなと。子どもは、いわゆる子ども向けのウルトラマンやアニメとかを見たりするんですけど、それ以外の情報に関しては、まだあそこの中では提供できていないですよね。学びに関してもそうですし。
神田:あとはやっぱり、長時間見て入ってるメディアほど広告代金が取れたりということもあるでしょうし。
ただ、Netflixなんかもそうで、45分のやつがシーズン1で7本あって、それがシーズン6まであるとかねぇ。それをガン見するんだけども、いつまで経っても終わらないですよね(笑)。
及川:終わらないですよね(笑)。
神田:すべてシーズン1の第1話しか見ないんですよ。
及川:ははは(笑)。そうなんですね。
神田:全部の番組を見ようとしたりとか、それだけでも大変。
及川:ははは(笑)。
神田:もうほとんどがNetflix茶漬けになっちゃって(笑)。沼にはまっていくわけですよ。
スタートアップがピボットするのは、登る山を間違えているから
神田:それよりはもっと自分の仕事に役立つ番組とか、今日のニュースとかね。例えばNetflixを出しながら、下にニュースを流してもいいだろうし。そのニュースが気になったらストップして、「ニュース見せて」と言って、パーンってそこが見られるようにするとか。それができれば、例えばスマートスピーカーにその機能を配信するとか、いろんなことができるよね。
これってヤフーですらやろうとすればできるんだけど、ヤフーも図体が大きすぎて。やろうと思ったら、まず会議で企画を通して、チームを組んで、チームビルディングをしてから、マネージャーを見つけて、予算を取って、初めてスタートできる。ベンチャーだったら、その間にもうサクサクっと始められちゃうというのがありますからね。
及川:それはありますよね。
神田:そういう意味で、たぶんいろんなスタートアップがあるんでしょうけども。なぜそのスタートアップを目指したのかというところも考えたりすると、スタートアップがピボットをし続けるのも、もしかすると登るべき山を間違えている可能性もあるわけですよね。
及川:うーん。
神田:でも「これをやるんだー」みたいなね。一応の作文は作って、夏休みの課題のように、一応投資家に会う日が決まって、とりあえず調達したら動けるみたいですね。まずは仕事にありつけるみたいな雇用の機会になっているスタートアップが最近多くって。
及川:確かに(笑)。そうですね。
神田:ピッチのために起業したみたいな。このピッチがあるから、そこに合わせて起業を……。
及川:ははは(笑)。
神田:「おいおい、違うだろ」みたいな(笑)。「やってることぜんぜん違うやん」みたいなね。「それ、ピボットじゃねぇから」って(笑)。
及川:そうそう(笑)。
神田:だから、そういう意味でも正しい起業の見つけ方という教育もしたほうが、人生は無駄にもならないし。
「好きじゃないけど、できること」がビジネスでは上手く働く
神田:例えば、僕はきのう、林修さんの……。なんかテレビばかり見てるんですけどね。これも事業の勉強のためって奥さんには言うんですけど、奥さんには「あんた、本当にテレビ好きだよね」って。
及川:ははは(笑)。
神田:もう写真撮りながら、書きながらテレビを見てるから。
及川:ははは(笑)。
神田:テレビ見ながら、ポーズばっかりですよ。
及川:そうなんですね。
神田:巻き戻して1回見てからやるとダメなんです。あくまでリアルタイムのポーズで書きながらやって。
及川:へぇ〜、おもしろい。そういう見方をしてるんですね(笑)。
神田:そう。その横にまた別のテレビをつけて、そっちではライブで見たりするわけですよ。
及川:へぇ〜。すごいなぁ。
神田:林修さんが「自分の好きなことと・できること」という軸を書いていて。好きなことで、できることを目指したほうがいいんだけれども、そこじゃなくて、好きじゃないけどできることのほうが、ビジネスとしてはうまく回るという話をされていて。
及川:なるほどですね。
神田:だから塾も実はあんまり興味ないけれども、オファーがあって、できるからやっていると。テレビの仕事も好きじゃないけれども……。「本当は好きなんじゃない?」って(笑)。
及川:ははは(笑)。
神田:あれだけテレビばかり出ていたら、普通だったら飽きてますよね。でも、できるということはオファーが来るわけなので、好きじゃないからこそ、逆に効率を良くしなきゃいけない。自分の好きなことだけで生きるってやると、無駄に過度な投資が実は多いですよね(笑)。
及川:ははは(笑)。
神田:過度な投資が多いと思う。普通はちょっと考えるところを考えない。
及川:ははは(笑)。
磯村尚美氏(以下、磯村):がんばっちゃう?
神田:がんばっちゃう(笑)。好きなことだから、がんばっちゃうし、どうせやるならみんなも喜んでくれるからって、原価率がめっちゃ高い寿司屋になったりさ。原価率が95パーセントぐらいの寿司屋になっちゃったりして(笑)。
及川:確かに(笑)。
神田:そうやって考えていくと、好きでできることよりは、好きじゃないけれどもできることのほうが、ビジネスとしてはよくて。できないけど好きなことに対しては、もっと消費したほうがおもしろいです。僕、ピアノを始めたんですよ。でも、できないんですよね。
「1万回やれば誰でもプロになれる」
及川:そういえばFacebookに載っていましたね(笑)。
神田:もう家の中がピアノだらけで(笑)。
及川:3台とか4台とか(笑)。
神田:できないのに好きなことは、けっこうおもしろくて。でも、うまい人が弾いてるのはあたりまえですよ。もうすぐ僕のへたくそなピアノで苦労してる姿がYouTubeで上がってくるので……。
及川:(笑)。
神田:「こいつ、へただなぁ」みたいな画像がいっぱい出てきて。だけど「この機能がすばらしい」っていうレビューがね。ピアノ1年生が「弾いてみた!」って。そんなにへたでもこれだけ弾けるようになるっていう。今、『Hey Jude』の練習をしていて(笑)。
及川:そうなんですか?
神田:今、『Let It Be』と『Hey Jude』が弾けるまでにどれだけかかるかやっていて。
及川:ははは(笑)。
神田:今すごいですよ。指一本で伴奏を全部やってくれるんですよ。
及川:あぁ、そうですか。
神田:あとこっちは弾けばいいので。こっちが弾けてないんですけど(笑)。
及川:へぇ〜(笑)。
神田:でも、やっぱり好きだったら、その経験みたいなものがが楽しい。できなくてもね。やらないよりは、1万回やれば誰だってプロ並みになれるところがあるので。やっぱり、しないよりはしたほうがいい。
及川:確かにそうですね。でも最近の若い方というとまたあれかもしれないですけど、起業家になる人の特徴として、「好きなことをやりたい」というのがものすごく強いですよね。
神田:うん、うん。
「やれること」と「好きなこと」の違い
及川:ただ、僕はやっぱり、原価率というか、やれることと好きなことの違いってあるんじゃないかなぁと思って。最近入ってくる情報によると、そういう方が増えてきたなっていう印象がちょっとあります。
YouTuberとかの楽しんでお金に変えていく方が増えたからなのかな、と思ったりもするんですけどね。最近はそんな気がしますねぇ。
神田:好きなことで生きていくという部分で、大多数の人が会社に勤めて、自分に上司が必ずいる立場で、好きなことをさせてもらえるわけがないじゃないですか(笑)。
及川:そうですよねぇ。
神田:好きなことじゃなくて、あなたはこの会社に来て、会社のために働いて、お金をもらえるっていう1つの労働契約に基づいて、保険もあって、40年間働けば、ちゃんと年金も入るし。
及川:そうですね。
神田:「そのあとで好きなことをやれば?」みたいな。
及川:ははは(笑)。
神田:じゃあ、70歳になってから好きなことをやるって、あと20年ぐらいあって。60歳であれば、僕はあと3年で定年ですけど。
及川:はいはい。
神田:定年があるかどうか(笑)。一応、定年はしようと思ってるんですけどね。それからもう本当に好きなことをやろうかなと思って。
磯村:これまでも好きなことをされていたけども(笑)。
神田:まぁ、そういうのはあるんですけど。好きなことで生きていくということに対して、すごく憧れがある方が多いですね。でも僕はサラリーマンになれるんだったら、それがうらやましいですよね。
磯村:ははは(笑)。
及川:逆にですね(笑)。
神田:だって、お正月も給料をもらえてるんですよ。
及川:それは確かにすごいことですね。
神田:祝日でも給料がもらえるんですよ。
及川:はいはい、確かに。
神田:僕なんかYahoo!の記事とか書かない限りは、一銭も入ってこないですからね(笑)。
及川:確かにそうですね。お正月に書かないと、1月7日にアップできないですからね(笑)。
神田:そうですよ。サラリーマンは1月7日に行って、その日から給料を1ヶ月分もらえるわけですから。これはいいですよねぇ。だって、年間に働いてる労働日数とかいろいろ考えて、あと保証やらいろんなことを考えた時には、すごく安定していると思います。
もっと言うなれば、自分で起こした会社で、自分が働かずに運用できるのが本当は一番いいかたちだろうし。じゃあ、もっとその時間を使って、自分も雇ってもらえる自分の会社を作っていって、自分は動かないというのが一番いいわけですよね。
及川:確かに。
イーロン・マスクに指示できる人は誰もいない
神田:自分はもっと考えるほうに専念していって、ポジションと人の置き場所を考えて、人に「こういうふうにしたら?」っていうサジェスチョンをして。判断はある程度見ていきながらね。自分が判断し始めると、そこでてんてこ舞いになると思うんですけど、やっぱり、その立場のほうがおもしろいんじゃないかなと思うんですよ。
及川:確かにねぇ。
神田:それでイーロン・マスクみたいな人もたまにいますけども。なんかもう集中しろよって思うよね(笑)。
及川:ははは(笑)。やっていることが幅広くて(笑)。
神田:イーロン・マスクは1つのことをさせたら、もうとっくに完成してることばっかりだから(笑)。
及川:間違いないですよね(笑)。地下を掘ったりして。
神田:地下を掘ったりね。「上か下かどっちかだよ!」って(笑)。車が走るんだったら、バッテリーをちゃんと作ろうよって。
及川:確かに、確かに(笑)。
神田:でも、あのイーロン・マスクに指示できる人がいないんですよ。
及川:確かにねぇ。
神田:株主ですら、指示できないわけですよ。
及川:ははは(笑)。あそこまで超越しちゃうと、なかなかみんな言いづらいですし。
神田:言いづらいですよね。だからZOZOの前澤さんみたいなのも、やっぱり彼に対して誰も忠告できないし、「Twitter書くな」とか、「剛力と付き合うな」とか誰も言えないわけですよ(笑)。
及川:確かに言えないですよね(笑)。
神田:自分のために好きなことをやって、自分が社会のために愛を分かち合おうとしているんだから、誰もかなわないわけです。
及川:確かに(笑)。
神田:あと僕はソフトバンクのアカデミアというところにいて。孫正義さんが校長先生でね。僕が今最年長で、次の4月からまた新しい期が始まって。最近は年に1〜2回しか会えないですけども、やっぱり孫さんの考えていることはおもしろいですよね。
及川:やっぱり、そうですか。
神田:今だにもう……。だってお金でいえば、自分がもうあと250年生きても使い切れないぐらいのお金を持っているわけですよ。
及川:まぁ、そうですよねぇ。
神田:別に服にも女にもこだわらないし、髪型もこだわらないし(笑)。
及川:ははは(笑)。
神田:もうこだわってらっしゃるのは家ぐらいですかね。あとは別になにもない。それよりもAIで何ができるのかとかね。もう携帯会社には、まったく興味なくなってらっしゃるし(笑)。