年間300回近いプレゼンをしていても、テクニックより中身が8割

澤円氏(以下、澤):ふだん『Talk Your Will』という、羊一さんがやっているイベントの時には、順番が逆なんですよ。僕が先にプレゼンテーションのレクチャーをお話した後で、羊一さん。いつも後攻なんで、先に言われちゃってやりづらいというのがけっこうあったんですね。

(会場笑)

ですので、今回は先攻・後攻を入れ替えてみました。僕の方では、実際、プレゼンテーションというのは、8割くらいは中身で決まります。僕は一応去年1年間で287回で、羊一さんは何回でしたっけ。

伊藤羊一氏(以下、伊藤):297回。

:これだけやってるので、その中で磨いてきている技は、言われてみるとテクニックでもかなりできるところはあるのですが、やっぱり中身が8割です。とはいえ、今すぐ使いたいインスタントなテクニックを知りたいじゃないですか。

(会場笑)

というずるーいやつを、できたらちょっとご紹介しますね。まず、自分の立ち方を全部説明できる人はいます? 「私はこうやって立っている」と言語化をもうすでにしているという方? たぶんほとんどの方はされてないんですよ。

自分がなりたい姿を実現するテクニック

じゃあ自分のベストの立ち方というのを、言語化しますよ。要するにそれはなりたい姿ですね。どう立っている姿が自分の中でかっこいいのかは、試して自分に写してみないとわかりません。

どういうことかというと、僕の場合だと実はかかと荷重で少し反り腰なんですね。なのでそういう状態だと、立っているとこうなりがちなんですよ。なのでちょっと調整をしなきゃいけない。だけど不安定なのでどうするかというと、僕は少し片足を寄せたりするんですね。

必ず動きます。動いてると結局のところ、ずっとバランスを取りながらやります。ちなみにこれもあるテクニックを使っています。目をつぶって僕の話をちょっと聞いてみてもらうと、今からいろいろ入ります。目をつぶって話を聞いてると、気づきますからね。

僕は実はすごく早口なんですよ。もう目を開けていいです。目を開けて、今度は同じスピードでしゃべります。同じスピードでしゃべるんですけど、僕は動きがすっごくゆっくりなんですね。そうするとビジュアルの方に引っ張られて、早口であることが少し誤魔化せるんです。

早口であることを抑えようとすると、自分のペースじゃなくなっちゃうので、僕の場合だと調子が狂うんですね。だから自分のナチュラルスピードをそのまま維持しながら、動きによって少しそこを抑えるというやり方をします。

今もちょっと細かいテクニックを使いました。ぜひ聞いてほしいところはゆっくりしゃべる。わかります? 今も問いかける。わかります? もう1回ゆっくり言いますね。絶対ここだけは覚えてほしいなというところは、ゆっくり話すという感じで、間も空けるというんですね。

そうするとそこだけ浮き上がってくるんですよね。これが染み込ませるというテクニックです。そうすると、これは覚えて帰ろうと思えるんですね。ずーっと一生懸命やっちゃうと、どこの部分を覚えて帰ればいいんだとなっちゃうので、今それをあえて浮き出させるというやり方をします。

プレゼンテーションは、演者にとっては観客へのプレゼント

やっぱりビデオを撮るというのはすごく大事です。自分の動きをきちんと理解するのももちろん大事ですし、あとは細かく人体のことを理解しておいた方がいいです。まず人体。手の甲の方がきれいに見えるんですよ。

ですので、手の甲をできるだけ見せた方がいいです。マイクの持ち方も手の甲の面積が広くなるように持った方がかっこよく見えるんですよね。20人にお話ししていただいて、そのうちの何人かはこの罠にはまってたんですが、ポイントはもう片方の手なんです。

こっち(マイクを持つ手)は固定されるのでいいんですけども、もう片方の手。20人の中でもう片方の手をどこに置いてたか完全に記憶している方、ここに置いたと断言できる方はいらっしゃいます? ほとんどの人がぶらぶらしてたんです。

もしくは、ぶらぶらしちゃうからここに引っかけてたんです。どこに置くか決めておけばいいんですね。僕の場合は常にここ(胸の少し下あたり)にあるんですよ。そうすると、みなさんにこうやって「じゃあちょっと手を挙げてもらえます?」というアクションにさっとつながるわけですね。

さっき言ったように、数に関する部分だったら手の甲を見せる。1、2、3とやって、次に表を見せると、メリハリがつくわけですね。細かいテクニックはいっぱいあるわけです。そうやって見せることを意識するとしゃべり方がぜんぜん変わってくるのと、「あっ、今響いたな」というのが跳ね返ってきます。

フィードバックです。これはたまらないですよ。自分の「これは聞いてほしい、これだけは覚えてほしい」ということがパッと伝わって、さっとメモを取り始めるとかすごく頷いてるとか、驚いているという顔を見ていると、こっちがわくわくしてくるんです。

なにしろプレゼンテーションというのは、演者にとってはプレゼント・贈り物ですからね。贈り物を渡すんだという気持ちで、時間をプロデュースしていくことがすごく大事なんですね。ということは、みなさんのベストの状態を目に焼きつかせるというのがすごく効果があるし、せっかく時間と空間をこうやって共有してやっているわけだから意味があるわけですね。

ですので、「なにかしゃべらなきゃいけない。言われたから、仕方がないから人前でしゃべろう」ではなくて、「今この瞬間の自分の人生のベストの状態を全員の脳裏に焼き付けてやるぜ」と、美しく立って、美しく話をして、美しく見せて、そして最後。これで最後になるわけですね。

最後の締めくくりの挨拶は、ドレミファソの「ソ」をイメージ

ほとんどの方がやっていなかったので、ぜひこれをやってください。最後の挨拶はドレミファソ。音痴でもなんでもいいです。だいたい「ソ」のあたりをイメージしてください。そこに向かって駆け上がっていく。「ありがとうございました」とやると、拍手しやすくなるんですよ。

よくあるのが、ご清聴から始まっちゃうんですね。「ご清聴ありがとうございました」。これはちょっと拍手しずらい。フレディが「ご清聴サンキュー」って。いややらなくていい。

(会場笑)

だから、フレディだったら「サンキュ―!」と上にあげるんですね。最後に挨拶するんだったら、もうどんな場面でもいいと思いますよ。別にステージの上じゃなくっても、普通のミーティングでもいいと思うんです。最後に「もう質問ないですかね? はい、じゃ、ありがとうございました」とやるだけでも、ちょっと前向きな気持ちになったりしますよね。

全体のプレゼンテーションで最後の締めくくりの言葉を「ドレミファソ」の「ソ」のあたりに、ちょっと駆け上がっていって挨拶すると覚えていただけると、気持ちよく時間を締めくくることができるんじゃないかなと思います。ということで、なにかのアドバイスになったら幸いです。ありがとうございました。

(会場拍手)

3組のプレゼンターが審査員の個人賞を受賞

河原あず氏(以下、河原):はい、そんな素敵なお話が終わったところで、最後に締めのセレモニーなどをしたいと思います。まさに、思わぬプレゼントのような素敵なトークがありました。みなさん半分忘れているかもしれないんですけど、これから審査員からの個人賞というのをね。

そんなこともありますよね。最後に3組のプレゼンターが選ばれましたので、こちらの発表で締めたいと思います。同率とかないですよね。

これからあゆみさん、澤さん、羊一さんの順番にマイクを回していって、順々に発表していくので、コールされた方はぜひすごい喜びようでお願いします。

(会場笑)

発表すると、たまに「え、誰なの? 俺?」みたいなのがあるんですよ。これは司会としてはすごく拍子が抜ける。「前から、あ、でも、あれどうなの?」とみんな不安になるので、自分の名前がきた瞬間に「おっしゃー!」ともうガッツポーズで。

(会場笑)

たぶん、さっきのあゆみさんの方が上手いと思います(笑)。

伊藤:じゃあリアクション選手権だ!

河原:そうですね(笑)。リアクションのプレゼンテーションです。はい、いいこと言った。ということで、それではあゆみさんから順番に。あゆみさん、今回通してどうでしたか?

藤本あゆみ賞は、苦手だったプレゼンに挑戦したオグラ氏

藤本あゆみ氏(以下、藤本):やっぱりすごく個性が出てるのが、むちゃくちゃおもしろかったです。1分という限られた時間をそれぞれどう使うのかというので、みなさんが考えてきたのが伝わってくるので、やっぱりすごく楽しく過ごすことができました。私もすごく学ぶことが多かったので、がんばりたいと思います。

河原:それでは、大変長らくお待たせいたしました。「1分であたりまえを疑え」、あゆみ賞の発表です。ジャン!

藤本:4番目のオグラさん

(会場拍手)

河原:あゆみさん、受賞のポイントは?

藤本:はい、まさにキャラのところです。みなさんすごくいろんなキャラがいる中で、自分自身のキャラがちゃんと素直に出てた。声にもそれが伝わっているし、仕草に伝わってプレゼンに伝わって、だからみんなが受け止められたというのが、すごくよかったなと思って選ばせていただきました。

河原:ありがとうございます。一言、喜びのコメントなどを。

オグラ氏(以下、オグラ):えー。

(会場笑)

河原:期待を裏切らない(笑)。

オグラ:みなさん、ありがとうございました。

(会場拍手)

澤円賞は、ガンに罹患した体験を語ったカナザワ氏

河原:はい、それでは続きまして、澤賞の発表でございます。「1分であたりまえを疑え」、澤賞の発表です。ジャン!

:僕はカナザワさんを選ばせていただきました。

(会場拍手)

河原:澤さん、正直なことを言っていいですか? 福音ラジオの彼を選ぶと思ってました。

:彼には特別賞として、あとで出演をしていただきます。

(会場笑)

河原:澤さんが選ばれたポイントは?

:実は僕の義理の姉もガンをやっていて、復活したんですよね。復活したらやっぱり命の重さというのが、感じ方が変わって、やっぱりそれをストーリーにして語り部として伝えるということを実は今やってるんですよ。

そういった意味でいうと、シンパシーの度合いがぜんぜん違ったというのがまずあります。それをきちんと言語化をされているのと、本当に今日と同じ明日ってたぶん来ない。ちょっと違うという意味レベルではなくって、下手すれば明日が来ないかもしれないと思いながら生きるのと、雑に生きるのって、ぜんぜん意味合いが違ってくると思うんです。

日本って平和だからね。あんまり今日と違う明日が来るとは限らないと思う機会ってないかもしれない。やっぱり病気をしたり、死をものすごく身近に感じたりすると感じ方が違って、たぶんここにいらっしゃる方、みなさんがそれを1分という時間の中でものすごく感じることができたんじゃないかなと思うんですよね。

だから、生き方を考える上でもすごくいいヒントにもなるし、すごく命を粗末にしてたりとか、生きることを雑にしてたりする人に会った時に、たぶんみなさん自身がなにかかける言葉が変わってくるんじゃないかな。そんな期待なんかもあって、僕はすごくうれしく聞いていました。

ちょっと、あー上手く今しゃべれてよかったなと。この手のやつをやるとけっこう感情的になって泣いちゃうので、マイクを渡したいと思います。ありがとうございます。

河原:ありがとうございました。

(会場拍手)

カナザワ:やっぱり病気をしたっていうのはあるんですけど、それから生き方は変わりましたし、今日こうやってこの場に立たせていただくことが想像できなかったので、本当によかったなと思ってます。カナザワユウタといいます。Facebookやってます。ぜひみなさんつながってください。ありがとうございました。

(会場拍手)

伊藤羊一賞は「どうせ無理を疑え!」のチャンミナ氏

伊藤:すごいわ、うん。でもよかったわ。2人ともよかった。羊一賞、ちょっとやるのを忘れてたことがあった。

:あーやっぱりそうだよね、そうだよね。

河原:なんでしょう?

伊藤:プラスにした人は、もうしゃべって気持ちよくなってるわけですよ。オーディエンスの人たちも、ガーッと声をあげて盛り上げたいかなと思ってですね。

そこからの羊一賞という感じで。僕がこうやるので、そのまんま真似してください。いいですか?

河原:コールアンドレスポンス、はい。

伊藤:そう。いきますよ。 デーオ!  デーオ! デデデデデデデオ! デオ! デーオ! デーーーーーオ! ヘヘヘーイ!

羊一賞は……なんだっけ。

(会場笑)

伊藤:羊一賞は「どうせ無理を疑え!」のチャンミナさん

河原:はい、羊一さんの決め手は?

伊藤:うん。僕は別な場所でも、1分で話すというイベントをやってたり、今日もものすごく期待をしてきて、1番近くで聞いてて、やっぱり本当にみなさん一人ひとりの話というのは感激するわけですよ。

それは一人ひとりが想いをもってしゃべること自体が僕にとってはものすごくて、20人の言葉というのがすごく胸に響きました。なぜチャンミナさんに賞を差し上げたいかというと、20人の中で1番、明日から「これを疑って俺も生きよう」と思えるような方に賞をあげたいなと思いました。

俺も明日から、「どうせ無理」とか言わないでやろうよと思えて、僕の行動指針につながりそうだなと思ったので、ぜひ賞を差し上げたいなと思いました。おめでとうございます。

河原:チャンミナさん、受賞のコメントをどうぞ。

チャンミナ氏(以下、チャンミナ):まさか選んでいただけるとは思っていなかったんですけど、私今入社3年目で、「どうせ無理」と言われることが多くて、でもすごい悔しくてなにかやりたいなと思ってやってきたので。東京ガスから秋くらいにあるサービスをローンチ予定なので、みなさん楽しみにしていただければなと思います。

河原:ちなみにどんなサービスなんですか?

チャンミナ:「えっ、東京ガスがこれ?」みたいなものですね。イメージがなくて、「え?」とびっくりするような。それまで走り抜こうと思うので、よろしくお願いします!

河原:ということで、ほぼ3時間走り抜けました。「1分であたりまえを疑え! ナイト」フィナーレとなります。登壇されたすべてのプレゼンターのみなさん、ありがとうございました!

(会場拍手)