いじる余白のない、キャラクターものを任されるつらさ
横石崇(以下、横石):もう少し言うと、バンダイとかのおもちゃ業界には、「ここを通れば出世」といったものがありますよね。
吉田将英氏(以下、吉田):「普通はここいくよね」みたいな。
横石:人気キャラクターを使うのが出世頭とかですね。
高橋晋平氏(以下、高橋):そういう感じです。だから、僕も辞める1、2年前とかは有名キャラクターをすごく担当してた。それまではギャググッズしかやってない、異質な社員だった(笑)。
それを気遣ってくれた上司が、そういう道を用意してくれました。「お前、がんばってきたから担当しろ」と言って、ほんとうに全員が知っているようなキャラを担当したときに、完全に潰れちゃった。
吉田:潰れたんですね。
高橋:そうですね。ぜんぜん向いてないし、ギャグの入れようもないじゃないですか(笑)。
(会場笑)
横石:ぜんぜん余白なさそう。
高橋:いじっちゃいけないから、もう決定的に向いていないと思った。それで、自分の進む道を考えはじめたというのは実際あったんです。だから今は、こうやってひょうひょうとして、「自分らしさなんていりませんよね」と言ってるけど。そのくらい「自分、これからどうしたらいいだろう」と思って怖かったですよ。
横石:ご結婚もされてましたよね?
高橋:いつ?
横石:辞めるとき。
高橋:そうですよ。ちょうど家を買って半年後で、子どもが1歳になったばかりみたいな感じですね。奥さんは主婦だし、全条件が揃ってる。
吉田:全条件。
高橋:だから辞めるのは超怖かったです。
「レールから外れたって怖くないよ」なんて言えない
高橋:それが現実で、「レールから外れたって怖くないよ」なんて言ったって、納得するはずがない。働き方の本で「好きなことで食っていけ」みたいなのが流行ってるじゃないですか。
吉田:「戦え!」みたいなね。
高橋:それで納得するのは無理ですよ(笑)。僕も最初、1、2年はビクビクしながら、「ほんとうに今月はぜんぜん仕事がなかった」みたいな。誰かのおかげで仕事をいただけてよかったけど、来月はまた仕事がない、みたいな。一喜一憂ですよね。