毎年鳥取県の人口と同じ数だけ、働き手がいなくなっている日本

金海憲男氏(以下、金海):私はClipLine株式会社の金海と申します。担当はコンサルティングとカスタマーサクセスで、責任者をやらせていただいております。

カスタマーサクセスと申しますのは、名前のとおりなんですけれども、ClipLineを実際に導入いただいたお客様の課題を解決するですとか、財務成果を挙げていくですとか、そういったいろんな取り組みをあらゆるかたちで支援する部隊でございます。

このClipLineを作る前は、経営コンサルタントとしてお客様の課題解決、成長支援といったことに取り組んでおりました。

今日はその中からみなさんに、1つ2つでも、できれば3つ4つと多いほうがいいですけれども、なにかヒントになるものを持ち帰っていっていただければなと考えております。よろしくお願いいたします。

今日は13時から始まって、ここまでで2時間半ぐらい経ちました。聞いているばかりでは、さすがに疲れたんじゃないかと思っていました。そこで、ちょっとクイズから始めたいなと思っています。いきなりなんですけれども、この数字は何でしょうか。おわかりになる方いらっしゃいますか。声に出していただいてもけっこうですし、心の中で念じていただければ、私、感じ取れますので。どうですか?

……すばらしい! みなさん、正解です。これは、日本の総人口が1年間にどれだけ減ったかを表している数字です。

じゃあ、50万、こっちは何でしょうか? ……すばらしいですね。これも同じく人口減なんですけれども、15〜64歳のいわゆる生産年齢といわれる人口が減った数です。

総人口と書いてあるんですけれども、これはいわゆる外国人の方を含んでいます。含んでこれだけ減っているというのが今の実態だと、そういう話です。ちなみに、外国人の方は15万人ぐらい増えているんですけれども、それを加えても50万人も減っています。

50万人がどのぐらいの規模かというと、実は鳥取県の人口が55万人ぐらいということだそうです。なので、毎年鳥取県の全人口にかなり近いぐらいの人数の方が、働き手としてどんどんいなくなっている。これが今の状態です。

これを見ると市場がどんどん小さくなっていますね。こういう見方もあるんですけれども、実はそれよりももっと速いスピードで働き手がいなくなっている。これが今の世の中の状況です。

今サービス業が置かれているシビアな現実

金海:みなさまご自身が肌身で感じていらっしゃることだと思うので、わざわざここで言うまでもないんですけれども、人がどんどん減っています。これ、未来はどうなるかというと、これより良くなることはなくて、ひたすら減り続けるというのがもう決まっている未来です。

まあ、考えてみればそうだねって話なんですけど、仮に明日ベビーブームが来て子どもがたくさん生まれても、その子どもたちが生産年齢に入るのって2035年以降なんですよね。なので、これはもう「人はいないものだ」と思って我々はビジネスを営んでいくしかない。これがまず出発点になります。

「人が減る分だけ仕事が楽になっているんだっけ?」というと、そうはなってませんというのが、ここの絵が表しているものです。

例えばサービス業でいえば、お客様からお代を頂戴する場面が必ずあると思うんですけれども、ひと昔前なら、新人が入って勉強したら、まず現金の取り扱いとせいぜいクレジットを覚えていればよかった。今はそれに、SuicaやPASMOみたいないわゆる電子マネーもありますし、スマホ決済も最近増えましたよね。LINE Pay、PayPay、楽天Pay。もうほとんど早口言葉みたいなんですけど、いろんなものを覚えないとレジに立てない。こういうのが今の世の中です。

やらなきゃいけないことが増えて、どんどん難しくなっている。でも現場はというと、幕間のCMでもありましたけど、人はどんどんいなくなっている。むしろ戦力としては、放っておけばダウンしちゃう。時間とともにこのギャップがどんどん開いていく「ワニの口」が存在している。

これが今サービス業が置かれている環境だと認識をしています。冒頭、いきなり暗いところからのスタートなんですけれども、これがまず前提条件になります。

多店舗展開ビジネスの成否を担うミドルマネージャー

金海:その中で成果を出していこうと思うと、私がよく使う図はこのぶった切り方なんですけれども。

乱暴に言うと、戦略を立てて、それを実行する。たまに、戦略も実行もうまくいかないんだけれども、運だけでなんとかなったケースはあるにはあるんですけれども、ここではいったん置いておいてということで。「戦略」と「実行」という立て方をさせていただきます。

「戦略」のところにつきましては、この前のセッションでいろいろお話もしていただきましたし、このあと楠木先生にもご登壇いただくので、大変おもしろい話も聞けるかなと思っています。そこで、私のほうからは右側の「実行」の部分について、このセッションで少しお話をさせていただきたいと思います。

「実行」と書いてあるんですけれども、今日このセッションのテーマである「ミドルマネジャー」というのは、まさにこの「実行」を担う人たちを指していると思います。このときに、とくに多店舗展開しているようなビジネスを考えると、この実行の部分が成否を分けるというのが、私の経験から感じているところです。なんでかというのは、これは後ほどお話をします。

今日のテーマとしては「実行を担うミドルマネージャーをどうサポートして成果を実現するか?」。こういうお題で少しお話をさせていただきたいと思います。そのミドルマネージャーのあり方・サポートのあり方の話の前に、少しサービス業の特性を一緒に考えたいなと思っています。

モノづくりの世界と比較してみたいと思います。モノづくりの世界で、例えば「昨日作った車と今日作った車で燃費が違う」とか「スマートフォンが製造ロットによって明るさが違う」とか「同じ服なんだけれども、作った日によって寸法が違います」、こんなのあまり見たことがないですよね。まずお目にかからない。言ってしまえば、あり得ないレベルだと思います。

でも一方、サービスの世界だとどうでしょうか。メニュー表を見てレストランで注文をしたと。出てきたのがなんかずいぶんメニューと違うなですとか。物を買ったときに「これって保証の範囲ですよ」と言ってたんだけれども、いざ物が壊れて持っていくと「いや、それは保証範囲外です」みたいな話がある。「どっちなんだ?」ってなりますよね。

「同じ看板なんだけれども、お店によって接客のルールがずいぶん違うよね」ですとか、こういうのはわりと「あるある」という感じが、みなさんもきっとあるかと思います。誰もが経験するレベルです。

生産と消費が同時に行われる「サービス」は検品ができない

金海:つまり何が言いたいかといいますと、サービス業というのは、ばらつくんだと。ばらつきが当たり前に存在する世界が、サービスの世界と言えるかと思います。

なんでそうなるかっていう話ですが、1つこういう特徴があるかなと思っています。

モノを作るというのは、形が当然あってモノがあるので、目で見える。サービスは、目に見えない、形がない。

かつ、次が重要なんですけれども、このサービスというのは、生産と消費が同時に行われるので検品できないんですね。「後工程でチェックします」ということができずに、つくった瞬間に消費される。そして消滅しちゃう。目に見えなくなっちゃう。この構造によって、サービスというのは宿命的にばらつくというのが特徴として言えるかと思います。

お越しのみなさんのなかには、サービス業の企業さんもたくさんおありかと思うんですけれども、当事者としてこんな経験があるかと思います。

新しいサービスを始めた。いろいろ考えて作って、マーケティングリサーチして、こんな施策つくりました。いざやってみたらあんまり売れないし、サービスの申し込みも少ない。現場へ行ってみると、ポスターも何も貼ってないし、店内告知されていなくて、そもそもお客さんはそんなサービスがあることすら伝わっていない。新しい商品を投入したんだけれども、突然すぎて現場が混乱しちゃってオペレーションができていないとか。

3つ目もよくあるんですけど、新しくなにかキャンペーンやりますと。「お店に来たらなにかもらえるよ」みたいな。やるんだけれども、コアなファンのほうが店員さんより先に知っちゃって、来て「これちょうだいよ」と言うんだけど、「そんなの知りません」って店員さんが言って、揉める。

こんな話がよくありまして、顧客満足度を高めようと思ってやった取り組みが不発に終わっちゃう。あるいは、逆に不満足を高めちゃう。こういうケースってよくあると思います。

お店の「ばらつき」を解消しなければ、良い戦略も絵に描いた餅

金海:これはどういうことなのかというのを、漫画で表してみたいと思います。

あるサービス業界において、A社とB社があるとします。A社が画期的なサービスを考えた。今までサービスレベルよりはるかに高いところで「うちはこういうことやります」って言ってみました。

それを見て慌てたB社が「うちはじゃあもっと高いところを目指そう」と、線を引く。これはいわゆる本部の視点で行われる競争ということになるかと思います。

でも、じゃあ現場はどうなんだと。お店はついてくるんですかというと、実はA社でそのサービスレベルを超えられるのはわずかで、ほとんどはそれより下のところにいっちゃう。なかなかそこまで全部できません。なんならもっと下のお店もいて、全体の出来栄えの分布を取るとこんな感じになりますよと。

B社はというと、いや、もっと下で残念でした。とてもうまくいきませんでした。こんな話になると、分布としてはこんなかたちになりますね。

ここからが大事なんですけれども、お客様が見ているのはこの黒い線の比較ではなくて、この赤い線を見ている。お客様が体感するのは、お店行ってサービス受けて「なんじゃこりゃ」と思うのか「これいいな」と思うのかというのは、このお店のばらつきによって決まっていることになります。

さらにもっと大事な話というのは、我々の売上や利益はこの顧客が体験するサービスから得られることになるので、ここのばらつきをなんとかしないと、いくら戦略でいいことを考えても、絵に描いた餅になる。

むしろお客様の不満を煽ることになるということで、いかにばらつきを管理して目指す結果を出すか、ここが勝負を分けますよというのがサービス業の、ある意味「実行を成果につなげる」という観点から見たときに大事な視点ということになろうかと思います。