ClipLine導入の理由と活用方法

高橋勇人氏(以下、高橋):次ですが、先ほど水谷さんからもClipLineという名前が挙がりましたけれども、私の経験としても別々の店舗にいる従業員を動かすことは非常に難しいんですね。

この難しさを解消するために、ClipLineという動画を使った双方向の仕掛けを作ったわけです。

先ほどの課題に対して、ClipLineをどのようにご活用いただいたのかについてお話しいただきたいと思っております。小宮さんからよろしくお願いします。

小宮克巳氏(以下、小宮):FASTGYM24は社員は配置しておりません。店舗に勤務される方はすべてアルバイトの方々です。

1年間で7割の方がお辞めになってしまいますから、当然常に採用し、常に研修をしてということで、SVを含めた社員が非常に疲弊しておりました。

そんなタイミングで、たしか2015年だったと思いますが、第1回のこのセミナーでのモデレーターである、一橋ビジネススクールの藤川先生が座長の経営者勉強会で高橋社長と知り合いまして。

高橋さんからは「ティップネスさんには総合型の、いわゆる基幹事業の方に提案をしたんだけれども、採用に至らなかった」という話を聞きまして。「具体的にどんな内容ですか?」とうかがったところ、我々が今直面している課題の解決につながるのではないかということで、FASTGYM24事業部長に相談したところ、ぜひ使ってみたいということで即決しました。

ClipLineによる研修でアルバイトの離職率が激減

小宮:当然のことながら、研修ツールですから、オペレーションの品質向上やマネジメントにも活用しているんですけれども、僕自身が一番最初によかったなと思ったのは、ClipLineのエンドユーザーがアルバイトの方々だということですね。

ですので、採用コストが削減できたといった企業側の視点も重要なんですけれども、僕はアルバイトの方がこのツールを使ってどうなるかが非常に重要だと思っていまして。このツールは、アルバイトの方々にとって安心のツールだと僕は思います。

入社初日のアルバイトさんにClipLineを使ってもらってSVが研修する場に、実際に立ち会いました。ものすごく嫌がられましたけど(笑)。見ていて、僕がアルバイトだった時代にこれがあったらよかったのになと痛感しました。

社員がいないわけですから、当然アルバイトの方々が不安になったときにすぐに教えてもらえないし、確認もできない。それを短時間のクリップで確認できて、安心の提供にもつながったのではないかなと思います。

結果的に……これは高橋さんが「絶対言えよ」と僕に言ったことなんですけれども(会場笑い)。半年後の離職率が、実は9パーセントにまで下がりました。採用の1年後も、70パーセントだった離職率が36パーセントまで下がりました。以上でございます。

高橋:1点だけちょっと補足をさせていただきますと、けっこうティップネスさんはオペレーション自体が新しいので、現場で新しいオペレーションが発明されるんですね。

もちろんマニュアルは本部が作って落とし込むというのもあるんですけれども、主婦の方こそマシンの磨き方、掃除の仕方が非常に上手だと。そのやり方をClipLineを使って吸い上げて、優良事例をブラウジングするかたちでご利用いただくと。

そうすると、現場の暗黙知がクリップというかたちの形式知で収まっていく。このような使い方をしていただいたのがティップネスさんでございます。では続けて水谷さん、よろしくお願いします。

「どこでもドアがあったら便利なのに」という思いから生まれたClipLine

水谷謙作氏(以下、水谷):最初に高橋さんとお会いしたときに、「このClipLineは、私自身がこれまでやっていたオペレーション改革の中で『どこでもドアがあったらすごく便利だな』と思って作ったものなんです」という話を受けたんですね。その話に感銘を受けたというのもあります。

さっきお話したとおり、SVが店長を兼務するような状況にあったんですね。本来SVは、臨店して各店舗の状況を見て回るのが仕事なんですが、それがうまくいってない。そこでClipLineの動画で双方向のものを使って、例えば開店前に厨房やトイレなど、お店全体を動画で撮ってチェックできる。そんな機能が使えて非常に有用だなということで導入を開始しました。

大変だったのは導入を開始したあと、きちっと使ってもらうことなんですね。これは今のホリイの方々に非常にがんばっていただいて、営業本部長が自ら現場に行って、全員に使っていただくように浸透させていきました。

使ってみると、それ以外にも非常にたくさんの有用なポイントがありました。先ほども出ていたと思うんですが、トップメッセージというかたちで私や社長の想いを、本当に末端の方にお伝えすることができたりします。

それから新人教育です。さっき小宮さんがおっしゃっていましたけれども、やっぱり非常に便利なんですね。OJTって、現場は大変なんですよ。先輩のアルバイトの方……我々はパートナーと呼んでますけれども、先輩のパートナーが新人のパートナーにいちいちOJTで教えなきゃいけない。そこを、このクリップのショートムービー1週間分を(渡して)、1日目はこれ、2日目はこれ、というかたちで「これを見ておいて」と言うと、新人教育ができるんですね。そういう活用法が非常によかったですね。

あとは現場への落とし込みという意味では、メニューを開発して、現場にそのメニューを落とし込むときもクックパッドのように動画で撮れるわけです。これが非常によかった。

現場が楽しみながら行うコンテストの結果が、新しい見本となる

水谷:それから現場でのコンテストですね。これがまた非常におもしろくて、非常に盛り上がったんですね。「いいね!」が押せるわけですよ。例えば、「刺し盛りの盛り付けのコンテストをやりましょう」などで各店舗が盛り上がっていて、「いいね!」を一番得られたところを表彰したり。

これはコンテストも盛り上がり、かつその動画が横展開で、各現場でも見られるんですね。一番いい盛り付けの動画が各末端のパートナーの方々まで伝わる。これがモデルというか、見本になるわけですね。そういう使い方ができます。

さっきCS、顧客満足度が一番重要ですよという話をしたと思うんですけれども、ClipLineの動画の中で店舗のミステリーショッパーの点数をずっとランキングしてですね。補習みたいなかたちで、ClipLineにある「こういうポイントをやってください」と。

ちょっと怖いんだけど、ミステリーショッパーを使って点数化するときに100項目くらいあるんですけれども、その中にも相関があるんですね。この10個が高いところは点数が高いとか。例えば最後のお見送りがきっちりできるとか。そういったところなんですけれども。

点数が悪いところに、そういう補習講座のようなかたちでやってもらったり。そんなことをやりながら活用していったところでございます。非常に有用だと思います。

高橋:ありがとうございます。なんだか半分くらい言わせちゃってる感じがなくはないんですけど。

(会場笑い)

フェイストゥフェイスのコミュニケーションが離職率を下げた

高橋:実際の使い方を見てみないと、ClipLineが他のサービスとどう違うのかがわからないと思いますので、今日は実際の使い方の映像を、見せていただける範囲でご覧いただきました。

では、この立ち上げ期に関して、野中先生より総括をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

野中郁次郎氏(以下、野中):経営者がある程度、物語の筋書きを読めていた、ということなんでしょうね。

ホリイフードは最初から成功の道筋はどこにあるのか、本質直観というか、見えていたのかなと。ティップネスは、今何をすべきかという課題について、ひとりではなく、多様なバックグランドをもつ人材と、サイロを破壊してまっとうに向き合いながら、 俺の筋書きを一緒にやろうと巻き込んだ感じがあるよね。

その時に組織がある程度自律分散型になってないとなかなか向き合えないが、離職率が高い中でそれを真摯に受け止めながらClipLineを活用して、ある意味対面に等しい動画を使ったことで、向こうもコミットして一緒にやろうとなりイノベーションのアイデアが出てくる。そういうことをしながら場を活用していったのかな。

動画の場合はマニュアルと違って読む必要がない。誰も読まないよ、マニュアルってのは(会場笑い)。動画だと、 忙しくても見てれば無意識的に身体に入ってくる。それは、離職率を下げるほどコミットする度合が高くなったことに表れている。

ClipLineの動画のしくみは、1on1から始まって1 to nまで一気に持ってくるわけですが、その場合の原点はやはりペアの対話なんですね。それが面白いしすごいんじゃないのか。ClipLineの意味合いはそういうところかな。離職率が下がるってのは一緒にやろうっていう共感じゃないかな。

高橋:ありがとうございます。私が野中先生に対して知的バトルをするのは大変おこがましいんですけれども、「とにかく対話だ」と、お目にかかるたびに諭されております。とにかく「対話と共感」だと。

ただ、対話をする、物理的に会うのは非常にコストがかかるわけですね。時間も合わせなくちゃいけない、場所も合わせなくちゃいけない。ですけれど、今のビジネス案件において、いかにスピードアップするか、回数を増やすか、コストを下げるかは避けて通れないわけですので。

我々から野中先生への大きなチャレンジは、その対話をいかにデジタル上で再現するか。ここに僕らは、ある意味チャレンジしつつ、先生にいろんな教えを請うているということでございます。