2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
提供:ClipLine株式会社
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高橋勇人氏(以下、高橋):次ですが、先ほど水谷さんからもClipLineという名前が挙がりましたけれども、私の経験としても別々の店舗にいる従業員を動かすことは非常に難しいんですね。
この難しさを解消するために、ClipLineという動画を使った双方向の仕掛けを作ったわけです。
先ほどの課題に対して、ClipLineをどのようにご活用いただいたのかについてお話しいただきたいと思っております。小宮さんからよろしくお願いします。
小宮克巳氏(以下、小宮):FASTGYM24は社員は配置しておりません。店舗に勤務される方はすべてアルバイトの方々です。
1年間で7割の方がお辞めになってしまいますから、当然常に採用し、常に研修をしてということで、SVを含めた社員が非常に疲弊しておりました。
そんなタイミングで、たしか2015年だったと思いますが、第1回のこのセミナーでのモデレーターである、一橋ビジネススクールの藤川先生が座長の経営者勉強会で高橋社長と知り合いまして。
高橋さんからは「ティップネスさんには総合型の、いわゆる基幹事業の方に提案をしたんだけれども、採用に至らなかった」という話を聞きまして。「具体的にどんな内容ですか?」とうかがったところ、我々が今直面している課題の解決につながるのではないかということで、FASTGYM24事業部長に相談したところ、ぜひ使ってみたいということで即決しました。
小宮:当然のことながら、研修ツールですから、オペレーションの品質向上やマネジメントにも活用しているんですけれども、僕自身が一番最初によかったなと思ったのは、ClipLineのエンドユーザーがアルバイトの方々だということですね。
ですので、採用コストが削減できたといった企業側の視点も重要なんですけれども、僕はアルバイトの方がこのツールを使ってどうなるかが非常に重要だと思っていまして。このツールは、アルバイトの方々にとって安心のツールだと僕は思います。
入社初日のアルバイトさんにClipLineを使ってもらってSVが研修する場に、実際に立ち会いました。ものすごく嫌がられましたけど(笑)。見ていて、僕がアルバイトだった時代にこれがあったらよかったのになと痛感しました。
社員がいないわけですから、当然アルバイトの方々が不安になったときにすぐに教えてもらえないし、確認もできない。それを短時間のクリップで確認できて、安心の提供にもつながったのではないかなと思います。
結果的に……これは高橋さんが「絶対言えよ」と僕に言ったことなんですけれども(会場笑い)。半年後の離職率が、実は9パーセントにまで下がりました。採用の1年後も、70パーセントだった離職率が36パーセントまで下がりました。以上でございます。
高橋:1点だけちょっと補足をさせていただきますと、けっこうティップネスさんはオペレーション自体が新しいので、現場で新しいオペレーションが発明されるんですね。
もちろんマニュアルは本部が作って落とし込むというのもあるんですけれども、主婦の方こそマシンの磨き方、掃除の仕方が非常に上手だと。そのやり方をClipLineを使って吸い上げて、優良事例をブラウジングするかたちでご利用いただくと。
そうすると、現場の暗黙知がクリップというかたちの形式知で収まっていく。このような使い方をしていただいたのがティップネスさんでございます。では続けて水谷さん、よろしくお願いします。
水谷謙作氏(以下、水谷):最初に高橋さんとお会いしたときに、「このClipLineは、私自身がこれまでやっていたオペレーション改革の中で『どこでもドアがあったらすごく便利だな』と思って作ったものなんです」という話を受けたんですね。その話に感銘を受けたというのもあります。
さっきお話したとおり、SVが店長を兼務するような状況にあったんですね。本来SVは、臨店して各店舗の状況を見て回るのが仕事なんですが、それがうまくいってない。そこでClipLineの動画で双方向のものを使って、例えば開店前に厨房やトイレなど、お店全体を動画で撮ってチェックできる。そんな機能が使えて非常に有用だなということで導入を開始しました。
大変だったのは導入を開始したあと、きちっと使ってもらうことなんですね。これは今のホリイの方々に非常にがんばっていただいて、営業本部長が自ら現場に行って、全員に使っていただくように浸透させていきました。
使ってみると、それ以外にも非常にたくさんの有用なポイントがありました。先ほども出ていたと思うんですが、トップメッセージというかたちで私や社長の想いを、本当に末端の方にお伝えすることができたりします。
それから新人教育です。さっき小宮さんがおっしゃっていましたけれども、やっぱり非常に便利なんですね。OJTって、現場は大変なんですよ。先輩のアルバイトの方……我々はパートナーと呼んでますけれども、先輩のパートナーが新人のパートナーにいちいちOJTで教えなきゃいけない。そこを、このクリップのショートムービー1週間分を(渡して)、1日目はこれ、2日目はこれ、というかたちで「これを見ておいて」と言うと、新人教育ができるんですね。そういう活用法が非常によかったですね。
あとは現場への落とし込みという意味では、メニューを開発して、現場にそのメニューを落とし込むときもクックパッドのように動画で撮れるわけです。これが非常によかった。
水谷:それから現場でのコンテストですね。これがまた非常におもしろくて、非常に盛り上がったんですね。「いいね!」が押せるわけですよ。例えば、「刺し盛りの盛り付けのコンテストをやりましょう」などで各店舗が盛り上がっていて、「いいね!」を一番得られたところを表彰したり。
これはコンテストも盛り上がり、かつその動画が横展開で、各現場でも見られるんですね。一番いい盛り付けの動画が各末端のパートナーの方々まで伝わる。これがモデルというか、見本になるわけですね。そういう使い方ができます。
さっきCS、顧客満足度が一番重要ですよという話をしたと思うんですけれども、ClipLineの動画の中で店舗のミステリーショッパーの点数をずっとランキングしてですね。補習みたいなかたちで、ClipLineにある「こういうポイントをやってください」と。
ちょっと怖いんだけど、ミステリーショッパーを使って点数化するときに100項目くらいあるんですけれども、その中にも相関があるんですね。この10個が高いところは点数が高いとか。例えば最後のお見送りがきっちりできるとか。そういったところなんですけれども。
点数が悪いところに、そういう補習講座のようなかたちでやってもらったり。そんなことをやりながら活用していったところでございます。非常に有用だと思います。
高橋:ありがとうございます。なんだか半分くらい言わせちゃってる感じがなくはないんですけど。
(会場笑い)
高橋:実際の使い方を見てみないと、ClipLineが他のサービスとどう違うのかがわからないと思いますので、今日は実際の使い方の映像を、見せていただける範囲でご覧いただきました。
では、この立ち上げ期に関して、野中先生より総括をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
野中郁次郎氏(以下、野中):経営者がある程度、物語の筋書きを読めていた、ということなんでしょうね。
ホリイフードは最初から成功の道筋はどこにあるのか、本質直観というか、見えていたのかなと。ティップネスは、今何をすべきかという課題について、ひとりではなく、多様なバックグランドをもつ人材と、サイロを破壊してまっとうに向き合いながら、 俺の筋書きを一緒にやろうと巻き込んだ感じがあるよね。
その時に組織がある程度自律分散型になってないとなかなか向き合えないが、離職率が高い中でそれを真摯に受け止めながらClipLineを活用して、ある意味対面に等しい動画を使ったことで、向こうもコミットして一緒にやろうとなりイノベーションのアイデアが出てくる。そういうことをしながら場を活用していったのかな。
動画の場合はマニュアルと違って読む必要がない。誰も読まないよ、マニュアルってのは(会場笑い)。動画だと、 忙しくても見てれば無意識的に身体に入ってくる。それは、離職率を下げるほどコミットする度合が高くなったことに表れている。
ClipLineの動画のしくみは、1on1から始まって1 to nまで一気に持ってくるわけですが、その場合の原点はやはりペアの対話なんですね。それが面白いしすごいんじゃないのか。ClipLineの意味合いはそういうところかな。離職率が下がるってのは一緒にやろうっていう共感じゃないかな。
高橋:ありがとうございます。私が野中先生に対して知的バトルをするのは大変おこがましいんですけれども、「とにかく対話だ」と、お目にかかるたびに諭されております。とにかく「対話と共感」だと。
ただ、対話をする、物理的に会うのは非常にコストがかかるわけですね。時間も合わせなくちゃいけない、場所も合わせなくちゃいけない。ですけれど、今のビジネス案件において、いかにスピードアップするか、回数を増やすか、コストを下げるかは避けて通れないわけですので。
我々から野中先生への大きなチャレンジは、その対話をいかにデジタル上で再現するか。ここに僕らは、ある意味チャレンジしつつ、先生にいろんな教えを請うているということでございます。
高橋:では時間もだいぶ押してまいりましたので、最後のフェーズ3に参りたいと思います。先ほどのご苦労の先に、どのような展開が待っていたのか。
小宮さん、事業面から教えてください。
小宮:起案時に株主および経営陣には、3年で100店、5年で200店という数字を打ち上げました。残念ながらそのペースには至っておりませんが、なんとか今年の5月に100店目が開業できまして。5年かかりましたが、やっと3桁まできたということになります。
僕にとっては残念ながらで、スタッフにとってはありがたいでしょうけれど、実はこの6月でFASTGYM24事業部の担当から卒業しまして。新規事業をもっと作れということで新規事業の担当になっております。200店は後任の方に託して、今バトンタッチをしておりますけれども。
私としては早くティップネスを「総合型もやってる会社だよね」と言われるような企業にしたいと思っております。さまざまな業態を同一エリアに同時展開する。僕の本当の専門はエリアマーケティングなんですけれども。
まさしくGIS(地理情報システム)上の地図のエリアを重ねるように、同じエリアに何枚もの業態のレイヤーを重ねていくことによって、その地域にお住まいの方々のライフサイクルの変化を……一番大きいのは加齢だったりするんでしょうけれど、それだけじゃなくて。
例えば、フィットネスクラブに通って、最初は何も使ったことがないんですけれども、総合型で非常に手厚いインストラクションを受けますと、お客様が自在にマシンを使えるようになり、自分でプログラムできるようになります。それもお客様の時間軸の変化なんです。
そのときに、ずっと使っていないプールの分までお金を払い続けて総合型に在籍していただくよりも、同じエリアに割安で24時間営業しているジムがあったら、お客様の立場になればありがたいに決まってるわけですね。
たまたま今は総合型と24時間ジムの関係性だけを申しましたけれども、それ以外にもお客様の変化に応じたさまざまな業態を同一エリアに展開する。総合型は30年間ビジネスが安定しているのに対して、たぶん24時間ジムは、ものすごくプロダクトのライフサイクルが短いと思うんですね。
なので、この業態で大きくキャッシュカウ化して、次の事業にまたプロダクトサイクルをどんどんどんどん作って、いずれは「ああ、総合型もやってたよね。ティップネス」と言われるような企業にしたいなと思います。
高橋:ありがとうございます。最初は(上司に)反対されていたのが、(今では)新規事業担当になられたというのはグレイトビクトリーですね。ありがとうございます。
高橋:では続けて水谷さん、よろしくお願いします。
水谷:まずは撤退の話がありましたけれども、30店舗以上をガーッと撤退させたんですね。赤字店舗がたくさんあるところから撤退していくんですけど、それがどんどんなくなっていくと、なんか雰囲気的にも良くなってくるんですね。なので、ここは撤退だということで、一気に撤退を加速させました。
そのあとのメニューがとにかく多かったんですね。120品目くらいあったのを70品目台くらいまで減らしました。現場のオペレーションが楽になって、お客様に提供するスピードも速くなって、非常に喜ばれると。現場にも喜ばれたし、お客様にも喜ばれるということですね。
メニューはキラーコンテンツとして、他店の美味しいメニューを参考にして、赤なべ・白なべというのを開発しました。今日も調達の担当の方がいらっしゃっていて、彼がすごくがんばったんですね。
赤鍋はチーズダッカルビで、白鍋は豚のしゃぶしゃぶなんですけれども、この2つはものすごくおいしいです。キラーコンテンツになっていますので、ぜひ食べに行ってください。
それとペイドメディアですね。食べログ、ぐるなび、ホットペッパーというところも効果的に使っています。今日もその担当の方が来ているんですが、彼がスポンジのようにメディアのことをどんどんどんどん吸収していって、今はもう本当エース級でがんばってやってもらってるんですけれども。
メディアへの広告のかけ方は非常に重要だなと思いました。これがトップラインをぐっと伸ばした一因じゃないかなと思います。あとは経費削減というところで、TBIとホリイで食材調達を共通にしたりしていきました。
あと一番大事なのが人材交流です。年齢的にTBIは若い会社で、ホリイフードのほうがシニアな会社という雰囲気だったんですけれども。そこを一緒になって、一枚岩になろうということで、バーベキューを開催したり、みんなで富士山に一緒に登ったりしています。
それから実は、今年の1月にフルマラソンに参加しました。参加者を募集したら20人以上が走るということで、忍家の勝田店をベースに、みんなで勝田マラソンを走って、体がボロボロになったことがあるんですけれど。そういった人材交流のような場も設けていきました。
高橋:ありがとうございます。人材のところで先にご回答いただいたところもありますけれども、事業が成長していく中で不足していた人材獲得にも変化があったと思います。
組織に関して補足があればお願いいたします。
小宮:新規事業は社員も経験がありません。マニュアルもありません。そういう点でいきますと、ClipLineというツールは非常に新規事業立ち上げ向きじゃないかなと思ってます。
それこそこの業界は体育会系が多い縦社会なんですね。ヒエラルキーがしっかりしていますので、必ず上が下に教える。一子相伝で言い伝えるようなことを美徳としている社員もいたわけですよ(笑)。
ですけど、新規事業は社員もやったことがないので、実はFASTGYM24事業で何が起きてるかと言うと、社員もアルバイトと一緒に学んでいるんですね。逆にアルバイトから教えられることもいっぱいあるということで。
それをクリップ上で体現していると思います。それこそ、知識創造経営で言うBA(場)が、あたかもデジタル空間上に存在しているような雰囲気じゃないかなと思っています。
水谷会長もおっしゃっていましたけれど、僕らも組織の所属意識や仲間意識が醸成されておりまして、新店を立ち上げるときに、もうすでに立ち上がっているお店のアルバイトの方々が応援に来てくれるんですね。
当然初対面です。ですけれども、ClipLine上でもう顔見知りになっていますので。今の若い人がすばらしいなと思うのが、初対面なのに前から知っているように初日から打ち解けてくれる。こんなことが起きています。
今年の5月に駒沢体育館を借り切りまして、100店200数十名で運動会をやったりしました。200名が集まるんですけれども、昔から知っているような雰囲気でみんなが盛り上がっていたのも、まさしくデジタル空間上での場がそうさせるんじゃないかなと。
そういう点で言うと、社員も学んでいますので、野中先生が提唱されるSVがミドルアップダウンを体現してるんじゃないかなと思います。
高橋:ありがとうございます。水谷さん、組織について補足があればお願いします。
水谷:人事面でやったことはインセンティブ制度といって、現場の社員はもちろんなんですけれども、パートナーの方々にもインセンティブが生まれるような仕組みを作りました。
あとは全社総会ですね。今まで全社員総会をやったことがなかったんですけれども、去年、今年とやっているんですね。年に1回、今年は全店休業にして全社員が顔を会わせると。今までは茨城で採用された人と神奈川で採用された社員が会ったことがないということが起こっていたので。みんなで盛り上がれればいいねと思って作りました。
あとはClipLineを活用し、風通しのよい空間というか、社員間のコミュニケーションを大事にしていきました。その中で変化が起こってきたなと思ったのは、「やったら報われる」「やりたいことがやれる」「やる気になれば結果が出る」といった感覚に変化した空気を感じています。
あとはCS・ESを強化しようと。とくにCSですね。顧客満足度を強化しようということで、なんとなく今までは内向きというか社内向きだった思考が、顧客に向いた思考になっていったんじゃないかなと思っています。
これからということでいきますと、やっぱり飲食業界、居酒屋はとくに変化が激しくて、とても早いんですね。その中でトップランナーになれるように進化し、成長し続ける。そういう組織にしていきたいなと思います。
そのためにもどんどん有用な人材、若い方々の能力を引き出して、チャンスを与えてあげて、組織を引っ張れるような人材をたくさん作っていきたいなと考えております。
高橋:ありがとうございます。だいぶ時間も押してまいりましたが、あと質問は2つです。今後ClipLineをどのように活用していきたいかというコメントを、小宮さんと水谷さんからそれぞれいただきまして、最後に野中先生からの総括という流れでございます。
よろしくお願いいたします。
小宮:もう導入して丸2年経つんですけれども、動画撮影のサポートから、今日のこの場とか、僕にとっては非常に参考になる異業種の方々がどう活用しているかということも吸収できるので、非常にありがたいと思っています。まだまだClipLineの機能を使いきれてないかなとは思っておりますが。
実は僕、この3月までいい歳をしてビジネススクールに通っていました。そこで、こういう場で適切かどうか微妙なんですけれども、野中先生と親交の深い徳岡晃一朗先生と紺野登先生から直接知識創造経営を学びました。
このClipLineの導入と私の大学院生活の話がリンクしていたものですから、それこそ高橋社長からSECI(セキ)モデルがベースとなる説明を受けたときに、僕はスッと飲み込めました。自分たちのやっていることを野中先生のSECIモデルの理論に照らし合わせながら、自分自身は理解してきたつもりなんですね。
なので今後は、まったく僕では役者不足なんですけれども……トレーニングもただ運動するよりも、例えば運動生理学やトレーニング理論を熟知したうえでトレーニングするとしないのではぜんぜん違うんですね。なのでうちのスタッフにも、知識創造経営を僕の口から伝播して、実践と理論両立てで使いこなして業績につなげていきたいと思っています。
おかげさまで、この5月に私の5つ目の新規事業が立ち上がりました。実はこの事業、非常に暗黙知の塊でございます。これは僕1人じゃ決められないですが、この事業でもClipLineを活用していきたいなと個人的には思っております。
高橋:ありがとうございます。では水谷さん、よろしくお願いします。
水谷:ClipLineはツールとしてもいいんですけれども、事業を理解していただいたうえで、そのツールの使い方のコンサルティングがすばらしいんですね。
さっきから申し上げている顧客満足度向上に向けて、ミステリーショッパーを使ったんですけれども、そのミステリーショッパーの方々と一緒になって、ClipLineを活用してミステリーショッパーの結果を上げていくにはどうすればいいか、そういうところまで一緒に深く入り込んでアドバイスしてもらったのがいいところなんですね。
私は持続的な成長の基盤としたいと思っています。具体的には、スピードが非常に求められる業界でありますので、その変化にいち早く対応が可能になるような社内インフラにしていきたいと思っています。
あとオペレーション上では、QSC(クオリティー・サービス・クリンリネス)につながるKPIを細分化して、それを逐一フォローできるような活用をしていきたいと思っています。
高橋:ありがとうございます。KPIの連動に関しまして、ClipLine自体も日々進化していますので、少しだけご紹介します。実はClipLineは、先ほどご紹介したとおり、全店舗・全社員が24時間使えるツールでございます。どの店舗の誰がどういうふうに使ったか、全部トラッキングできます。
横軸が1年間、縦が何時に使ったかという24時間表示なんですけれども、このレベルで把握することは今まで決してできなかったと思うんですね。全アルバイトを含めて行動を見ることができる。
あとはこれを集約すれば、これはホリイフード様のケースですけれども、いろんな切り口で集計できます。今までとは桁の違うマネジメントができるようなモニタリングも、機能としては出していきたいなと思っております。
高橋:最後、野中先生にここまでのセッションの総括をお願いできますでしょうか?
野中:これまではPDCAというのがずっともてはやされていますよね。最初にPLANありきで、まず分析から入る。マイケル・ポーターはじめ、まず理論ありき、それを演繹的にやっていくのが通例でした。
しかし、現実にうまくいくのはそうじゃないんですね。ある意味体育会系なんですね。はじめに経験ありき、それもペアでやる。共感ですよね、やっぱり。
だから長嶋のね「バーンとやれ、ガーンといけ、ピッ、ピッ」とね、言ってることわからないんだけど(会場笑い)、分析的に野村が「グリップの位置がどうの」と言うけど、むしろ長嶋型で入りながら、ペアを確立する過程でロジックを後から入れていくモデルのほうが、成功しているイノベーションで起こっていることなんですね。
これまで 日本には暗黙知が豊富だったけど、分析的なサイエンティフィックなアプローチがなかったから、PDCAが導入されてちょうどうまくバランスとれたけど、それは効率追求のモデルであって創造モデルでは決してなかったんです。創造するというのは、まさに共感からスタートして、そこから本質を追求していく。効率から創造へのモデル転換を動画認識からやるっていうのが面白いなと思いました。
簡単にまとめますと、二人ともなんか良いことをしたいという思いをもっておられます。Common good(共通善)がないとやっぱり元気出ませんからね。
現実直観というところでは、小宮さんはまさにいつもエビデンスを突き付けているんですね。現場現物現実の、立地という厳しいリアリティにエビデンスで絶えず挑戦する。分析する前にリアリティからの直感、共感をまず見ろということだと思います。水谷さんのステアリングコミッティなんかもクロスファンクショナルで、チームを媒体にして飛んでいくと。
野中:マイクロソフトのサティア・ナデラは、シニア・リーダーシップ・チーム(SLT)という、キーパーソンを集めて、徹底的に議論することをやっている。ロジックではなく生き方を語れと。何のために生きてるのか、分析的なパワーポイントはもういいから目的意識や自分のヒストリーを共有しようと、フェイストゥフェイスでお互いの生き方からこうしたいという場づくりをやっているようです。
同時にClipLineを活用したトップメッセージは、動画だと本気度が見えますよね。そういう意味で直観の本質は、本気度を伝えることであって、動きや表情を含めて意味を語ってるわけです。
サービス業は物理的に分散化していて効率化が難しいから、デジタルツールを使って1対1の共感を1対nで効率よく転送する。現場の暗黙知を活用するのに効率がいい感じがしますね。われわれは、あれもこれもとなるのが現実であり、矛盾は論理で解決できないです。動いて文脈を変えるというアクションがあって、初めてあれもこれもっていう矛盾の落としどころが見えてくる。
動画は生々しい情報が飛び交っています。実は1対1の対話の方がより本質的な情報が浴びれますが、コストが高い。一人ずつメンターで鍛えていくっていうのは大変なことです。最初のペアをひとつの核にしながら、二人から1対nに一気にもっていくというのは、仮想的だけど疑似的な対話として効果が期待できると思う。
リアルな対話とClipLineを介した仮想的な対話は二項対立ではなくお互いを補いあう、二項動態を実現させることが組織にイノベーションを起こす追い風になるんじゃないかと思いました。
高橋:ありがとうございます。以上で本日のセッションをひと通り終了することができました。大変中身の濃いお話でございましたが、私のモデレーション不足により時間が押してしまい、申し訳ございませんでした。本日はありがとうございました。
(会場拍手)
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