2024.11.29
“マニュアル作成が進まない問題”をAIで解決 管理者の負担も軽減できる、先進AIツール活用法
This Flatworm Remembers Things After You Cut Off Its Brain(全1記事)
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マイケル・アランダ氏:プラナリアは、淡水と海水に生息する扁形動物で、再生能力が高いことでよく知られています。尾を切っても再生し、半分に切っても2匹の完全体の扁形動物になります。それでもなお2匹とも頭部があり、その中には脳もあります。何より驚くべきことは、脳を切断された後も、切断前の記憶が残っていることです。
プラナリアは非常に単純な生物ですが、脳があり感覚受容などを管轄しています。しかもこの脳は、単なる神経の塊などではなく、ちゃんとした脳であり、脳葉が2つあり、全身の神経機能を司り、それぞれ管轄する部位があります。
つまりプラナリアの脳は、原始的な脳の姿である可能性が高いのです。そのため、プラナリアの脳は、脳の進化を研究したり、記憶などについての根源的な疑問をぶつけるにはうってつけであるといえます。
当然のことながら、プラナリアの記憶について調べることは困難です。しかし、プラナリアには新しい不自然な動作をするように訓練できますし、異なる条件下でもその記憶を保持しているかどうかを確認できるのです。
プラナリアの欲求は単純です。生肉を好み、光と変化を嫌います。僕もこれには共感します。プラナリアは、好物のエサのためには、嫌いな光も我慢しますが、同時に他にも変化が起きると対応できません。例えば、プラナリアを滑らかなガラスのペトリ皿から出して、ざらざらしたペトリ皿に移すと、最初のうちは、中央に光が当たったレバー片があっても、怖がって動きません。
ところが、プラナリアを事前にざらざらしたペトリ皿に移しておけば、この新しい環境に慣れる訓練を、おとなしく受けさせることができます。その後にスポットライトを当て、レバーを与えると、プラナリアはすぐにレバーめがけて動きます。
訓練の成功は、こうして十分に立証されました。さらにプラナリアは、この「食事運動療法」訓練の後でも、少なくとも14日間は記憶を保持できることがわかりました。
ここで一つの疑問が提起されます。ここでプラナリアの頭部を切断してしまったら、どうなるでしょうか。扁形動物はこれまでには、エサを食べるなどの通常の働きが可能な新しい頭部を、一週間で再生できることがわかっていました。その間は食べずに生き、問題なく過ごします。
ところでこれまでは、脳を持つ生き物であれば、記憶を保持するのは恐らくは脳であると考えられてきました。そこで、1950年代以降、科学者たちは、扁形動物が頭部を失い、脳を再生した場合はどうなるのかを調べてきました。するとたいへん不思議なことに、彼らは以前の訓練を記憶しているようなのです。
例えば、2013年に行われた実験では、訓練済みの扁形動物は、その訓練を受けたのは頭部切断前であったにも関わらず、エサに素早く近づきました。しかし、訓練済みのプラナリアと訓練を受けていないプラナリアとの差異は、頭部切断前とさほど変わらなかったことから、研究者たちは、この実験の記憶保持は100パーセント肯定できないと結論付けました。とはいえ、そもそもプラナリアが訓練を覚えていられるとこと自体が驚きですよね。
さて、プラナリアがどのように記憶を保持するかということに関しては、実はよくわかってはいないのです。ある興味深い説によれば、習慣的な行動の記憶は、脳の外部の神経組織に部分的に移管されるというのです。
なぜかはわかりませんが、体内の他の神経に保持される記憶が存在するわけですね。これは、これまで記憶についてわかっていると考えられていたことを根底からひっくり返してしまいます。
確かに「マッスルメモリー」という言葉はありますが、そもそもこの言葉も、四肢をコントロールする脳の部位の働きを指すものであり、四肢そのものの記憶についてではないのです。
この現象を深く理解し、それがプラナリア特有のものなのか、それとも脳を有するすべての生物に共通するものなのかを解明するために、さらなる研究が必要です。なぜなら、ヒトの記憶がなんらかの形で脳外にも存在するならば、その仕組みを知ることで、脳の損傷や記憶障害、認知症の治療法を改良できる可能性があるからです。頭の無い変形動物から得られる学びとしては、素晴らしいものだとは思いませんか。
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