1分プレゼンならではの醍醐味
河原あず氏(以下、河原):それでは、第2部にいきたいと思うんですが、その前にお三方の講評とまではいかないんですけど、ファーストインプレッションで今のところどんな感じ、というコメントをいただきたいんですが。羊一さん、今どうですか。
伊藤羊一氏(以下、伊藤):いやぁ、1分で話すから、いろんな人の話が聞けるじゃないですか。9人。今、めちゃめちゃ頭がシェイクされていますね。
河原:ブギーな胸騒ぎですね。ベリーベリー最高ですね。シェイクシェイク。
伊藤:すごい、いいわ。今、気持ちいいです。
河原:気持ちいい。なんかサウナ入った後みたいですよね。整ってますね。
(会場笑)
伊藤:僕、『1分で話せ』という、表現に関する本を書いているんですけどね。ボキャブラリーがすごく貧困なんで、最高としかいいようがないです。
河原:ヒップハッピシェイク。
伊藤:イエス。
河原:イエス。ありがとうございます。
(会場拍手)
十人十色のプレゼンを見る楽しさ
河原:澤さん、いかがですか。9人のプレゼンターのプレゼンが終わったわけですが。
澤:本当に素晴らしいですね。全部それぞれ持ち味が出ていて、なんか、テーマを自分で選んでいいというものなんでね。テーマを選ぶところから、すでに本番って始まっている状態なので、そのときに何を掴んだのかということによって、そのあとの話しやすさなども変わってきます。
これは後でも話をしようと思っているんですけれど、そのテーマを決めた後で、たぶんみなさんのアンテナはすごく鋭敏になったんだろうなということも(感じますし)、1分話した裏側の世界というものがなんとなく垣間見えたりして、非常に楽しい時間を過ごさせていただいています。あと、羊一さんの前にどんどん積み上がっていくお煎餅の数。
(会場笑)
河原:会場で一番食べていますよ。
(会場笑)
澤円氏(以下、澤):大丈夫かなって、それはどうでもいいんですけど(笑)。ということで、楽しませていただいています。ありがとうございます。
河原:ありがとうございます。
(会場拍手)
藤本あゆみ氏(以下、藤本):すごく人柄が出ていて、プレゼンって1つじゃないんだなっていうので、いろんなプレゼンがあるということを、こんなにたくさんいっぱい見られるのは、楽しいなと思っています。
河原:スタートアップピッチを見たあとだから、なおのこと新鮮というか。
藤本:ねぇ!(笑)。
河原:仕事を離れると、こんなに楽しいのか。
(会場笑)
藤本:おっしゃるとおりです。
河原:正直、ある気はしますよね。はい、ありがとうございます。そんな感じで、第2部、ジャンジャンいきたいと思いますので、また順番に呼び込んでいきたいと思います。
IT業界に女性が少ない問題は、義務教育から始まっている
河原:それでは、次のプレゼンターです。アイビーさん、いらっしゃいますか。前のほうにお願いします。拍手でお迎えください。
(会場拍手)
簡単に自己紹介などお願いします。
アイビー氏(以下、アイビー):小学校のプログラミング教育を推進するNPOで働いております、日本人のアイビーです。田中が周りにいっぱいいすぎて、ミドルネームを勝手に付けました。
河原:それでは心の準備はよろしいでしょうか。
アイビー:いやぁ、無理ですね。
(会場笑)
河原:ちゃぶ台ひっくり返さないでくださいよ。
アイビー:いや、やはり緊張しますよ。
河原:ちょっと深呼吸します? それじゃあ、目をつぶって、いい空気を吸うイメージで息を大きく吸ってください。
アイビー:やりますね、もう。
(会場笑)
河原:せっかく段取ったのに。せっかくちょっとマインドフルネスな感じにいこうと思ったのに。
アイビー:大丈夫です。ありがとうございます。
河原:それでは、合図とともに1分間プレゼンテーションです。1分であたりまえを疑え! アイビーさんのプレゼンテーションです。用意スタート!
アイビー:こんにちは。テクノベーションのアイビーと申します。みなさん、IT業界に女性が少ないと思ったことありませんか? (挙手を促す動作)実は、IT業界に女性が少ない問題っていうのは、中高生の頃から起きています。
私、2年前に中高生限定のプログラミングコンテストに行ったんですけど、女の子の参加者って、全体でたった2人だったんです。それを見たときに、私は、それはちゃんとやらないと、なにかやらないといけないと思って、女子高生限定のアプリコンテスト世界大会を日本で展開して、かつ、日本で女子中高生にプログラミングを教えるという活動を始めました。
現在は首都圏でかなり少人数の支援しかしていないんですが、今後は日本で、日本全国に展開することでIT業界の女性を増やそうと思っています。もし、興味がある方は、私と一緒にやりましょう。以上です。ありがとうございます。
河原:はい、ありがとうございました。
(会場拍手)
プレゼンで一番武器になるのは、数字が与えるインパクト
河原:時間ピッタリ。はい、羊一さんお願いします。
伊藤:ありがとうございました。ヤフーは全社員のうち、女性が3割なんです。いっぱいいそうじゃないですか。でも、3割なんですよね。特にエンジニアは少ないです。今、お話を聞きながら、そこからやらなきゃいけないなって、確かにおっしゃるとおりだと思いました。
アイビー:FacebookとかGoogleとかも、世界的に(女性の割合は)20パーセント以下なので。
伊藤:じゃあ、ヤフーは多いほうなんだな。
アイビー:多いほうです、多いほうです。そのかわり、他の企業が少なくなっちゃった。
伊藤:なるほどね。ありがとうございます。
河原:ありがとうございます。
澤:ちなみに、さっきまでサラリーマンの仕事をしていて。僕の所属している部門は、だいたい300人弱くらいの人数がいて、そこに20人マネージャーがいるんですけれども、その20人のオフサイトミーティングでは、女性のマネージャーが1人だったんです。
マネージャーとなると、さらに減るんですよね。そういう問題点を、さっき数字でおっしゃっていましたよね。2人しかいなかったという。実は、プレゼンのなかで一番武器になるのはこの数字なんですよね。
河原:へぇーって言ってましたもんね。
澤:そうそうそう。数字が与えるインパクト、あるいは驚きというものが一番心に残るので、入り口としてはすごくいいなと思います。1分が始まる前の前振りの段階であずさんをいじり倒す。そこでだいたい流れができてておもしろかった。
河原:なかなかいないですよ。司会をいじってくる人。
澤:その攻撃の手を緩めないなと思いながら、頼りがいがあるなと思って見ていました。ありがとうございました。
河原:ありがとうございます。
(会場拍手)
プレゼンの構成は個性
藤本:世界のテックカンパニーも同じような取り組みをしているんですよ。実は自分が好きなものを作れるのがプログラミングなんだというプロモーションなどをけっこう世界中でやっているので、今の取り組みはすごくいいなと思っています。
ただ、最後のプレゼンのところで言うと、はじめになにか「一緒にやりたい」という気持ちを前に出した方が、勉強になるよりももっとワクワクして、「そうか、じゃあそれは一緒にやらなきゃね」という気持ちになったんじゃないのかなと思って、構成をちょっと変えたら、もっとよくなったんじゃないかなと思います。
アイビー:すごく迷って、テーマが『あたりまえを疑え!』なので、あたりまえをまず前提に持ってきたほうがいいのかなと思ってやりました。
藤本:テクニックでどっちに持ってくるかというのも実はあるので、あたりまえを疑うのがテーマだけれども、さっきの澤さんの話をもとにして考えたときに、「このプレゼンでなにを持って帰ってもらいたいか」ということで、構成を組み立てた方がいいと思います。
河原:なるほど。構成は個性だという話ですね。そういうオチでいいですか。はい、アイビーさん、ありがとうございました。
(会場拍手)
東京ガスで唯一の兼業家が登壇
河原:それでは次のプレゼンターです。チャンミナさんいらっしゃいますか? それでは拍手でお迎えください。
(会場拍手)
チャンミナ氏(以下、チャンミナ):よろしくお願いします。
河原:チャンミナさんは本名じゃないですよね。
チャンミナ:本名じゃないです。すいません。私、東京ガスで新規事業をやりつつ、自分でビジネスをやっている兼業家みたいな感じでやっています。
河原:東京ガスで兼業?
チャンミナ:はい、唯一の兼業家として。あの東京ガスなんですけど。
河原:いうて、インフラ企業で日本の企業の中でも一番固い部類のような。
チャンミナ:そうなんですよ。そこをちょっと壊してみようかな、というのでやってみました。
河原:その赤いスカートは、ガスの火を連想させる。
(会場笑)
チャンミナ:(ガスの火だと)赤はちょっと異常な感じになってしまうので、青が理想なんですけど。
河原:なるほど。今日は異常な感じで。
チャンミナ:異常な感じで来ています。
河原:なかなかやりますね。
(会場笑)
それでは、1分であたりまえを疑え! チャンミナさんのプレゼンテーションです。用意スタート!
「どうせ無理」の思い込みが可能性を奪っている
チャンミナ:大手で新規事業を立ち上げるのは無理ゲーではない。なぜならば、どうせ無理と人々が思い込んでいるからだ。私は大学時代、個人事業をしていて、そのとき大手って、ブランド力や顧客基盤を持っていていいな、うらやましいなと思っていたんですが、よくネット記事で、大手で新事業を立ち上げられる人材はいないとか、なかなかそういう制度が整っていないとか書かれていますよね。
本当にそうなのかと思って入ってみたんですよ。入ってみてやってみると、問題はそこではなくて、どうせ大手じゃ無理だろうと社員の人が思い込んでいて、だから熱量がなかなか上がっていないんですね。問題はそこだったんです。
みなさん、ちょっと考えてみてください。どうせ無理って思ったことありませんか? それって本当に無理でしたか? 無理なことですか? どうせ無理の思い込みって、実はさまざまな可能性を奪っているんです。だから、大手で新規事業立ち上げるなんて無理じゃないです。どうせ無理だと思わなければ。ありがとうございます。
(会場拍手)
河原:どうせ無理を疑うですが、羊一さん。
伊藤:もうね、ヤバイ!
(会場笑)
河原:ヤバイ、出ました。
伊藤:なんかね、そうだよね。
(会場笑)
なるべくポジティブでいようと思って、「イエー!」「やるぜー!」「うおー!」とかってことばっかり言っているんですけど。でも、ときどき、“どうせ無理病”がフーッと頭をもたげるような感じがあるんですけど。絶対やめよう。どうせ無理なんか、ダメ。
(会場拍手)
聴衆に覚えてもらうための“染み込ませるテクニック”
河原:ありがとうございます。澤さん。
澤:ちょっとプレゼンのテクニック的なところですごくよかったところをお話しすると、間がいいんですよね。間がいい。
河原:間。
澤:問いかけたあとに1~2秒間持つ。1分の中の1~2秒だから、これはけっこう勇気がいるんですよね。
河原:60分の1ですからね。
澤:それは、けっこう投資額多めみたいな感じになるんですけれども、それがあるのとないのでは、ぜんぜん染み込みが(違ってくる)。僕は、“染み込ませるテクニック”と言っているんですけれども、なんかパワーワードをバンとぶつけたあとに、ちょっと1~2秒置くとなると、その間、少し考えてくれるんですね。そうすると、もう1回脳の中で染み込ませる作業をしてもらえる、バッチリ覚えてもらえるというテクニックなんですけど。
河原:なるほど。高野豆腐もすき間があることで出汁が染み込む。
澤:そういうこと、そういうこと。
(会場笑)
だいたいそういうこと。そのすき間があるということは、実は、しゃべった内容がより効果的になるテクニックだったりする。それがすごくうまくできているなというのと、「どうせ無理」というキーワードがすごくわかりやすい。あと、もしかしてあれですか。植松努さんのプレゼンって聞いたことあります?
チャンミナ:はい。聞いたことあります。
澤:やはり、これは別にその言葉が一緒だとかマネしたとか、そういうつもりは全然ないんだけれども、これだけシンプルな言葉と自分なりの経験を掛け合わせるって、やはりすごく効果があるんですよね。ひとつ、ロールモデルとしては充分みんながマネする価値があるんだなと思います。ありがとうございます。
(会場拍手)
河原:はい、ありがとうございます。
藤本:みんなの顔を見ていたのがすごくいいなと思っていて。誰のためにしゃべっているかというと、みんなのためにしゃべっているので、それがちゃんとできていたというのは、すごくよかったなと思っています。
新規事業の話、私たちもPlug and Play Japanでたくさん関わっているので、大変さはわかりますけど、それを貫いていって、たくさんの事業を作ってもらいたいなと思わせてくれたプレゼンでした。お疲れ様でした。
チャンミナ:ありがとうございます。
(会場拍手)