「五感」がテーマのトークセッションがスタート

木村和貴氏(以下、木村):みなさん、ありがとうございました。非常におもしろい話が聞けたんじゃないかなと思います。

井上さんは眼鏡から集中力を計測して、そのデータを使って空間をつくっていくということをされており、宇佐美さんは風を研究し尽くしている。リラックスできる風がどのようにつくられるかを生み出し、そういう空間を作っていくと。

最後の三木さんは、非常に刺激的なプレゼンテーションだったと思います。エンジニアさんだからかわからないですけど、非常にこだわり持って、いろんなところ研究し尽くして推測せずに計測するところでいろんなところに取り組んでいる。

僕らもそれを調べることは非常に大事だと思うんですけど、すでに研究し尽くされている3名の方の知見を聞けば、僕らは楽に享受できるということで、これからいろいろお話をうかがえたらなと思います。

ここからトークセッションに移るのですが、トークキーワードを映してからフリートークをする流れで考えています。どういうトークキーワードにしようか悩んだんですけど、「五感」でアプローチしていきたいなと思います。それぞれについてみなさんにお話をうかがっていければいいなと思います。

ただ、「五感」だけだとおもしろくないので、そういった取り組みの効果が高いのか低いのか、それが短期・中期・長期のどの時点で役に立つものなのか、この2軸で考えられるのであれば、僕らにとっては有益な情報になるのではと思っています。

それでは1つ目のトークキーワードに移ります。「視覚」というテーマで、まずは井上さんからお話をうかがえればなと思います。

植物が少しあると集中は続くが、ジャングルの中では集中できない

井上 一鷹氏(以下、井上):いろいろあるんですけど、集中したいときやパフォーマンスをあげたいときなど、その瞬間の視覚情報のエビデンスが取れているのは、やっぱり植物なんです。お時間があったらあとで見てみてください。むちゃくちゃ植物を置いているんですよ。しかも生の植物なので、メンテナンスコストがかなりかかるんです。

人間の視野角の認知範囲はだいたい120度ぐらいなんですが、植物の緑が目に10%から15%くらい入ってくるように設定すると、1番いいストレス状態になって、集中が続くそうなんです。

今日の会場の「Think Lab」では、その最適配置をしています。ただ意外だったのは、30%くらいにすると、逆にストレスが上がるそうなんです。ジャングルに入ると人はストレスを感じるので、ちょうどいいのは10%から15%らしいんです。あと、そこの植物の種類によっては人への影響も変わるそうです。

僕らも全部の種類を見れてないんですけど、東洋人は東洋人が好む植物じゃないと、なかなかしんどいなという仮説が浮かびました。トロピカルな植物を置きすぎると、緊張感というか交感神経はあがるんだけど、副交感神経が活発になる感覚がしないよねと。そのあたりは、集中の続く種類の植物を選ぶのがおもしろいかもしれないです。

「寝る前のスマホはやめろ」の科学的な理由

井上:もっと大事なのは、さっき三木さんもおっしゃってたように「寝る前にスマホを見るのはやめろ」ってことなんですよ。僕、一番言っちゃいけないこと言いますね。僕は眼鏡屋なのにコンタクトつけてるんですね。

(会場笑)

家に帰ってから、寝るときは外すじゃないですか。すると、スマホを見るときってすごく近い距離なんで、めちゃくちゃ目に悪いんですよ。ブルーライトが強いんですね。なぜかというと、ブルーライトは昼の光なんです。僕らは夜行性ではないから、昼の光を浴びたときは覚醒状態になります。

夜は部屋を暗くしていますよね。ブルーライト成分の多いものが近くにあって、暗いから瞳孔が開いているんです。この状態は真昼間なんですよ。そうするとメラトニンという睡眠導入ホルモンが明らかに出なくなります。

「JINS SCREAN」(ジンズ・スクリーン)というパソコン用眼鏡で実験してみても、ぜんぜん睡眠導入ホルモンが出なくなっちゃうのがわかりました。視覚的な話でパフォーマンスに一番寄与する話は「寝る前にスマホはやめろ」ですね。これが一番大きいです。

木村:なるほど。睡眠に一番影響が出ると......。

井上:大きいですね。人の体内時計は、光と食事時間でほぼ決まります。太陽のシフトに合わせて夕方は暖色系にしないと、睡眠が浅くなっちゃうんですよ。それを最大限こいつ(スマホ)がダメにしているので、やめたほうがいい。

木村:なるほど、ありがとうございます。僕も感心しているばかりで何もリアクションができていませんでした。スマホはブルーライトを発していて、ブルーライトカットで解決していけますからね。

使わないリモコンのボタンに我々は「疲れさせられている」

木村:プロダクトづくりとハードづくりという意味で、宇佐美さんに聞きたいんですが。視覚情報としてこだわっている点や、ビジネスパフォーマンスが上がる方法などはあったりしますか?

宇佐美夕佳氏(以下、宇佐美):たぶんみなさんが見ていただいている製品もそうなんですけど、例えばお家にあるテレビリモコンを想像していただいてもいいですか。「押してないボタンもある」というぐらい、たくさんボタンがありませんか? 

例えばブルーレイのレコーダーもそうですよね。なんだかたくさんいろんな情報を目にしている。あれが原因で疲れるって知っていましたか? 

なぜかというと、いろんな視覚情報に対して、自分が意図的に選ばないといけないからなんですね。それって想像しやすいと思うんです。毎日毎日その積み重ねをされていらっしゃるんだということを、まず意識していただきたいですね。

我々は「海外の製品って非常にシンプルにつくられているよね」と感じると思いますが、それは世界中の人が同じアイコンを見て同じアクションができないといけないからなんです。それを考えたとき、いわゆる本当の意味でのユニバーサルのデザインにせざるを得ないんですよ。それを追及していくんですね。とにかくそぎ落としていくという動きをしていきます。

「効率を落とすもの」から離れることで、見えないストレスを減らす

宇佐美:あとで見ていただけばと思うのですが、我々の製品はリモコンをパッと見てすぐに使える状況です。これって、日々使うものだから工夫しているんですね。さっきお話しした地域性も当然あるんですけど、我々としては今日だけ使うとか、あるいは3ヶ月だけ使うといったように、短期的な使用を想定していないんですよ。

これから2年、3年、あるいは10年使っていただく、日々我々の製品に触れていただく時間がどんどん積み重なって、とんでもない時間になっても疲れないということを当然考えているんですね。

そこに関してはみなさまどうでしょうか。自分身の身の回りにあるものや、ご自宅にあるいろんなアイテムのなかで、なんだかちょっと「ん? これ何だっけな」と考えている時間があるとします。それは、私にとっては効率を落としているなと思えるんですね。

そうした視点からものを選んでいくと、自分の好きなアイテムたちに囲まれることになるので、幸せホルモンが出てくるんじゃないのかなと思っています。

木村:なるほど。たしかにそうですね、人は1日に9,000回は意思決定をするという話もに聞きますが、毎回、瞬間的に無意識のうちに何かを考えて、どれかを選んで選択している。そう思うと、その回数をどれだけ減らせるかで見えないストレスを減らしていくことなのかなと思います。

それと、おっしゃる通りグローバルでプロダクトを展開されている場合は、誰が見てもシンプルな動作で直感的に使えるかが求められる。シンプルに研ぎ澄ませていくということが、いかに大事かということを今感じましたね。

パフォーマンスが最も向上する「明るさ」とは

木村:三木さんはデスクにひさしをつけたりと、いろいろ工夫されてました。視覚という意味で何かこだわっていることありますか?

三木明氏(以下、三木):個人的に井上さんにうかがいしたいんです。

井上:僕ですか?(笑)。

三木:明かりを常に1,200ケルビンぐらいにしておくのって、パフォーマンスの低下につながります?

木村:その前に一瞬いいですか? ケルビンって何の単位ですか?

井上:明るさです。

木村:ありがとうございます。

井上:これは僕の憶測です。瞳孔の開閉による効果があるので、明るさを変えてもその瞬間に入ってくる成分比率は変わらないんですよ。ブルーライトを選択的にカットするというのは、そういう意味があります。ずっと暗くしているより、朝日は浴びたほうがいい説が最近は有効じゃないですか。朝はセロトニンを出すためにブルーライトを浴びるべきだし、ゆっくり落としていったほうがいいはずなんですね。

三木:なるほど。

井上:それをできる限り、昼に上げて夜に下げるのがいいと思います。

三木:自分の伸びしろが見つかりました。

(会場笑)

井上:それ言いたいだけじゃないですか(笑)。

木村:ちなみに今日参加されてる方で、自分の目に入ってくる光の量を意識して調整している方はいますか? ちなみに一番手前の方はどんなことを......?

:なるべく暖色系の照明で色温度を管理しています。スマートフォンはどうしてもブルーライトのシートを貼っちゃうと汚くなっちゃうんですけど、色が茶色っぽくならないブルーライトのフィルムが、去年エレコムさんから新しく発売されて。それを貼ったりして徹底的にカットしています。

木村:ありがとうございます。