自由人を泳がせることが会社の懐の深さに

参加者3:ありがとうございます。仲山さんと村山さんに一つずつよろしいでしょうか。

お話しいただいた1.0、2.0、3.0というステップで、仲山さんが楽天という会社で兼業自由・勤怠自由にシフトしていき、三木谷さんとはどんなやりとりがあったんですか? 組織の中でそういう人を出すという意思決定を経営者がするって、ほかの影響も考えるとあるかなと思っているんです。

村山さんは、大企業の支援をされて研修をよくやられていて、人が疲れているというお話がありましたが、その企業が研修するのは、3.0の個人を増やしにいくためにやっているのか? 

個人だと2.0から3.0のシフトできるんですけど、それが組織でシフトしにいくとなると、ある程度の時間がかかったりとかハレーションも起きたりするんじゃないかと思います。そのあたりをどのように捉えられているのかということが聞けるとうれしいなと思いました。

横石崇氏(以下、横石):じゃあ仲山さんから、三木谷さんがどういう思いで仲山さんを外に出しているのか。

仲山進也(以下、仲山):知らないです。

横石:わからない?

仲山:はい。

参加者3:聞いたことも?

横石:聞いたことも?

仲山:ないです。はい。

横石:うぉお、信頼関係で結ばれていますよね。

仲山:それもわからない。

横石:信頼関係でもないかもしれない。

仲山:確認したことがないからわからないです。

横石:周りの人はなんて言ってるんですか? 怒られません?  「三木谷さん、なんで仲山さんばっかりあんな自由なの?」みたいな。

仲山:わからないです(笑)。

村山昇氏(以下、村山):ただ、会社としてはですよ、こういう自由人を泳がせているという「楽天って懐が深い会社だな」と良い意味で世間の風評が立てば、OKなんじゃないですかね(笑)。

仲山:すごくうれしいことを言っていただきました。「『会社に対して何の価値を提供しているのか?』と聞かれるときにどう答えようかな?」というのは、ずっとその問いが立った状態で12年間過ごしてるんですけど。

横石:仲山さんでさえ。

仲山:今のところ思っているのは、まさにDoの価値とBeの価値があるじゃないですか。Beの価値とは何かというと、いるだけで価値がある状態のことですよね。究極だと思うんですけど。なので「いることが価値です」と言えるようになりたい。

横石:いること自体に価値がある。

仲山:そのためにはどうすればいいのかなというのはすっごい考えていて。そういう意味で、村山さんが言ってくださったように「仲山の存在を知ることで、楽天の印象がよくなる」と思ってもらえるとしたら、すごくうれしいです。

横石:最近だと幻冬社の箕輪さんみたいなスーパー編集者みたいスターが出てくると、「幻冬社おもしろいな」「ブランドとしておもしろいね」という人も増えている気はしていて、そういう1人の個の力がマーケットを動かす時代でもあると思うんですよね。

三木谷氏は物事が螺旋で見えている

横石:ただ、もしかしたら三木谷さんは、それを見越してスターの社員をもっとつくらなきゃいけないと思っているかもしれない。経営者ならではの思想もあるのかなと思いました。

仲山:三木谷さんっていきなり「概念はゆらぎながら進化する」と言い出したりするんですよ。イベントのテーマをそう決めて、事務局の人が意味が理解できなくて、僕のところに「あれ、どういう意味ですかね?」と聞きに来るみたいなことがあるんです。

そういう螺旋みたいなことを、感覚的にかわからないけど、見えている人です。反対側の価値観を割り切ってしまうと、螺旋って進まなくなっちゃうじゃないですか。だから、対立するように見える両極の価値観を包含しないと進化って起こっていかない。

僕は社内でも「変わってる」と言われているけど、もともとは楽天の中では主流派なんですよ。創業の時代はみんなこんな感じだったので(笑)。

横石:すごい会社だ(笑)

仲山:でも螺旋の反対側、逆サイドに行っているときは、「楽天らしくない人」と呼ばれるようになるんです。「半額セールがんばりましょう!」とか言わないから、ぜんぜんトレンドじゃない。そんな中で「安売り依存の消耗戦から抜け出す方法を考えよう」とか言っていると、出店者さんから「普通の楽天の人と言ってることが逆だよね」みたいなことを言われるんですけど。

でも「どっちも楽天の範囲内だろ」と三木谷さんは思ってるから、「仲山居てよし」ということなんじゃないですかね。わからないけど。

横石:三木谷さんの懐が深いというのはよくわかりましたね。

仲山:それで会社の風評をちょっとでも上げることに貢献しているんだったら、Beの価値として「楽天は意外と懐が深いと思われる係」を名乗ろうと思います(笑)。

横石:幅は広がりますよね(笑)。

キャリアのウェルビーイングをどう育むか

では、次に村山さんのお答えを聞きましょうか。

村山:その質問は意外とシンプルで。

横石:質問なんでしたっけ? 村山さんへの質問。

村山:「企業の研修が、いわゆる個人の2.0・3.0を後押しするかたちをとっているかどうか?」ということですよね。

横石:3.0への個人のシフトはなんとなく個人的には共感できるけどだけど、組織や上司が理解してくれない悩みですよね……。

村山:企業がそこをウェルカムと思っているかどうか。

横石:質問の中に二つ観点があったなと思っていました。従業員が疲れていると村山さんが思われていることに対して、企業はどう捉えているのか。

そして、個人のシフトはその人がシフトできれば完了するのですが、人の集合体である組織が2.0から3.0にシフトするには、2.0に留まる人も同じ組織の中にいるとしたときのシフトにはたぶん時間がかかったりします。3.0と2.0がごちゃ混ぜになったときには、ハレーションが起こったりする組織について、村山さんはどう捉えていますか?

村山:まず疲れているということですね。これは企業の人事も深刻には受け止めています。その疲れている象徴としてのメンタルヘルスですね。うつ病だったり、下手をすると自殺者が出たりする。大企業では社内に自殺者が何名か出ています。

私の研修は、キャリアを考える「キャリア開発研修」というジャンルがあるんですけど、そこらへんは堅い需要はあります。私は数年前から「キャリアウェルネス研修」という切り口で提案しています。

キャリアのウェルネス、キャリアのウェルビーイングを考えるということですね。日本語でいうと、健やかなキャリアをどう育むかということなんです。そういうコンセプトの研修に対して、すごく反応がいいです。

人事部もそういった研修なら人材育成予算ではなく、福利厚生の一環としてやりたいというところもあります。社員のほうで「もうHaveやDoよりBeを考えないといけないね」と敏感に感じている人が確実増えていると実感します。

ただ、このBe価値にいこうと思うと、やっぱり「じゃあ働く意味って何だ?」「働くモチベーション、深い次元は何だ?」と探さなきゃいけない。探すのって難しい問題だし、その一歩が踏み出せなくて、どうすればいいかわからないということで立ち止まる人はけっこういますね。

でもまったなしに明日までにやらなきゃいけないクレーム処理があるということで、1年が経ち、3年が経ちというような状況はありますね。

やっぱりすんなりと2.0から3.0に移れる人というのは、まだまだ少数派かもしれません。かといって現状でいいと思っている人も少ない。でも、おおかたは2.0から3.0までの考え方はわかるけれど、どうすればいいかわからない、あるいは「そうするのもちょっとなんか面倒くさい話だね」みたいなところで二の足を踏んでいる人も多いということですね。

SEOに見る、「やり方」と「あり方」の違い

横石:なるほど。でも、疲れているというのはたしかに課題だとは思いますが、新しい価値をつくれなくなってきている人たちが多いことも僕は問題だと思っています。

イノベーションという言葉もあったりしますけど、その2.0のDoがイノベーションを生み出す源泉の可能性だと思うんですよね。Beが新しい価値を生み出すためのエンジンになるのかどうかというのは、まだもやっとしているところです。

人間らしい人間中心のシフトは起こっていくんだけど、「そのときに、ちゃんと心身ともに、経済も豊かである、社会も豊かであるという状況が本当に生み出せるのかどうか?」というのは聞いてみたかったところです。お二人の意見、どうなんですか?

仲山:僕の周りにネットショップをやっている人がいっぱいいるんですが、SEOってあるじゃないですか。

横石:検索で上位に表示されるための。

仲山:たぶんこの蔦屋書店さんのどこかにもSEOのテクニックの本が置いてあると思うんですけど。

横石:ありますよね。

仲山:あれって「やり方」じゃないですか。

横石:ハウツー。

仲山:「今のGoogleのアルゴリズムがこうなっているので、こうしたら上に上がりますよ」ということが書いてある本があると思います。

でもみんながそれを勉強して対策を施したサイトをつくり込んで、実際に上がったとします。そのときに、Googleの人が見て、「ユーザーが見てがっかりするようなサイトが上に来るようになっている。本当は下位になってしまっているこういうサイトを上げたいよね」となる。

そうすると、Googleの超頭が良い人たちが、一生懸命「この良質なサイトを上げて、この対策してくるサイトを落とすためにはどうしたらいいか?」を日夜考えるわけじゃないですか。そういうイタチごっこがずっと行われているのが、SEOの世界だと思うんです。

やり方だけで勝負していると、そのイタチごっこを延々繰り返すわけじゃないですか。それ自体が楽しいというタイプの人がSEO本を出してると思うんですけど、そこが強みじゃない人はいたちごっこの作業を追うこと自体は向いていない。

実際、Googleの人が上げたくなるようなコンテンツをつくっている人って、「SEOとか一切考えたことがない」と言うんです。ただひたすら、お客さんが喜ぶようなコンテンツをつくっている。そしたらいつの間にかコンテンツリッチなサイトができている。

それがまさに「やり方(Do)」と「あり方(Be)」の違いです。あり方が欠けていてやり方だけの人は、あんまり長続きしない。

横石:ゲームが変わったことによって、Beということに対して、もっと本質的に社会がアップデートされていく。

仲山:だからBeをちゃんと備えた人がDoをやると、とても健全な状態になるイメージです。

個人と組織のBeを接続する重要性

横石:村山さん、どうですか? 

村山:今日は働く個人についてフォーカスをしているんですけど、経営者がまだ自社のBeや価値とは何なんだろうと考えられない人も多いです。

事業計画で決めた数値を達成しなきゃいけない。それは株主からのプレッシャーもある。数値至上主義に陥っている経営者というのは、とりあえずそのために何をやるかというDoしか考えられませんね。Beはさておきみたいな。

横石:僕がこれからやらなきゃいけない使命が見えてきた気がした(笑)。というのは、やっぱりDoの世界で生きていると、「Beってそんな必要ないんじゃない?」というか、「みんな勝手に持ってりゃいいじゃん?」と経営者は思いがち。それと、個人と組織のBeをつなぎ合わせるのって、まだぜんぜんやれていないというか考えていない。

仲山:理念を壁に書いてはあるけど、誰もそんなこと思って仕事をしていない会社だとしたら、個人の理念がはっきりしてる人はすり合わせのしようがないですよね。

横石:そうそう。

仲山:だから、ちゃんとふだん使いしている理念を持っている組織と、自分の理念を持っている個人が、まずは出発点だという気がします。