「自由」と「他由」が印象に

横石崇氏(以下、横石):みなさん今お話を聞いてどうでしたか? ここで今日来ている人同士で意見交換する時間を持ちたいなと思っております。一度みなさん立ち上がっていただいてよろしいですか?(5分ほど経過し) はい、じゃあみなさんありがとうございます。いったんここで終了にしましょう。

「ここもうちょっと知りたいぞ」「ここおもしろかったっす」みたいな話がうかがえればいいなと思っています。

どなたかマイクを持ってもらって。どういうところに興味をもちましたか?

参加者1:今話した人が仕事を遊ぶ領域までいっていて、「すごいな」と。もともと仲山さんには新卒の頃からお世話になっていて、楽天社員だったんですよ。

横石:だった?

参加者1:今はいろいろ経て違う会社に勤めています。この『組織にいながら、自由に働く。』という本を読んでいて、「自由」と「他由」という言葉がすごく印象に残りました。

今までの組織や評価などの枠を撤廃していくと、なにかやりたいことがどんどん生まれてくる。レベル的にはまだ低いのですが、仕事を遊べるような感覚で過ごせるようになってきたかなとは思いました。

横石:ありがとうございます。じゃあちょっとお隣にマイクを渡していただいて。どういった部分が気になったとか質問とかがあればぜひ。

名前を分解して自分だけのストーリーを編む

参加者2:一番最後の「これから『何かをやるか』『どこでやるか』よりも、『誰とやるのか』『なぜやるのか』が大事になってくるんじゃないか」という部分は、村山さんも仲山さんも共通したお考えだったんじゃないかなと思います。

私もどんな人たちと一緒にやるのかというほうが大事だなと思ってはいるんですけど、企業でいう理念が個人にも必要になるんじゃないかと思っています。それが果たして自分にはあるのか、あるとしたらどこだろうか、それは何だろうか、それらがわからないなと思いました。

仲山進也氏(以下、仲山):良い質問をいただきました。一つ具体的な答えがあります。『自己紹介2.0』に書いてある方法です(笑)。自分の名前の漢字の意味をちゃんと調べるんですよ。僕自身、前にやったことがあって、辞書とか漢和辞典引いたり、英語にしてみたりして、一つひとつの文字が示す意味を全部書き出していく。それを眺めながら一つのストーリーを作る。

横石:僕だったら「横石崇」なので、「横」は「フラット」「横断できる」という意味合いに捉えて、「石」はStoneなんですけど、石をもじって「意思が強い」「Will」とか。

仲山:そういう使い方もある。

横石:変えたりして、自分のストーリーを編み出すんです。仲山さんの場合どんなものだったんですか?

仲山:「仲」は、仲間と一緒に。「山」は、自分が楽しいと思う理想の高み。

横石:仲間と高みを目指す。

仲山:進也は「進む」に「也」で、「也」には意味がなくてビックリマークみたいなものだとわかったので、「仲間と一緒に高みを目指して進んでいくんだ!」です。成長の螺旋を進んでいくイメージ。それが自分の名前のストーリーです。

横石:ビックリマーク、かっこいいですね(笑)。自分の名前から意味を見出すことは、おすすめですよ。みんながロマンティストになれる瞬間なんです。今おっしゃっていた、誰しもがpurposeやビジョンを持たなければいけない時代だなというのは、本当そうだと思っています。この3.0でずっと人間中心と言っているのは、会社にビジョンを預けるんじゃなくて、自分でそのビジョンを主体的に持っていかないと、たぶんお二人が言ってたことは成立しえないのかなと思っています。

仲山:そうですね。

横石:そのために自己紹介というのは、切り口として書かせてもらったんですね。

Facebookは未知の出会いが生まれる場

横石:このあとまた質問を受け付けたいなと思うんですけど、僕が一つ気になったのは、「誰とやるか」が大事だよというときに直感的に「そうだそうだ」と思うんですけど、「具体的にどうやってやればいいんですか?」みたいな話ってまだまだあるなと思っていて。お二人に「誰とやるか」を考えるときのヒントや「こうやるといいんじゃないか」ということを少しうかがいたいです。

仲山:「どうやって人を選ぶのか?」「自分が一緒に遊びたいと思える人とはどうやって出会うのか?」ですかね。

横石:そうです。何を気にして、誰とやるかを考えているか、実践しているか?

村山昇氏(以下、村山):僕はけっこう簡単です。Facebookでもいいと思うんです。例えばFacebookでつながっている人たちで、なにかおもしろそうなイベントや催しについての情報が上がりますよね、それに行くことですね。

私もサラリーマン時代がありますけど、会社員ってすごく視野が狭いんですよ。仕事以外の人とはあんまり付き合わない。仕事以外のこともしない。土日は身体を休めるので精一杯。だから思い切ってそこはいろいろ外に出たほうがいいと思うんですね。

3年前にちょうどFacebookのつながりで、子どものプログラムのボランティアがあって。今全国に養護施設が何十箇所とあるんですけど、家庭内暴力で親と引き離さなきゃいけないという子どもが、日本全国の養護施設に3万人ぐらい預けられているんですね。それは幼児から高校3年生までいますよね。

高校3年になると、その養護施設を出ないといけない。「じゃあ就職どうするの?」とか、そういったときに我々社会人が、就職セミナーとか面接の仕方だとか、アパートの借り方、銀行口座の開設の仕方など、一人暮らしができるようなセミナーをやるんです。

そういったボランティアにたまたま行って、そこでいろいろネットワークをして。そこで高校3年の子たちと、いろいろ交流するわけです。

いわゆるプロボノと言われてますよね。自分のプロフェッショナルとして持っているスキルを、高校3年生のイベントにどう活かせるかというのをやるんですね。そうすると、自分の未知の能力がどんどん磨かれるんです。

そこは理念中心でみんながボランティアで集まっているところですから、「あっ、理念中心で集まっているプロジェクトって自律的にこうやって動いていくんだ」みたいな気づきがたくさん得られる。そうすると、自分の仕事のプロジェクトもそこから応用してやり方を変えられたりする。そこから学ぶことってたくさんあるんですよ。

Facebookとかなんでもいいので、思い切って社外の活動に出たり、違う世界を見たりすると、いろんな良い変化が生まれてくると思います。本業への向き合い方が変わると思います。

Facebookで「おもしろい!」と叫んだら……

仲山:僕の場合は、さっき横石さんが紹介してくれた、今回のイベントの経緯がまさにあてはまります。「『この本おもしろい』ってFacebookで叫ぶ」という。

横石:SNSは偉大ですね。

仲山:そうすると、人がつながって、こうやってご一緒することになるわけじゃないですか。

横石:たしかに。

仲山:ほかにも、最近「『キングダム』おもしろい!」というのをちょいちょい言っていたら……。

横石:大人気漫画ですよね。

仲山:3日前に「日経ビジネスオンライン」さんで「キングダム経営学」という特集が始まりまして。ベンチャー経営者が集まっているカンファレンスで、「『キングダム』おもしろい」と話題になっていた。それで編集者の人が興味を持って、このゴールデンウィークで54巻、全巻読破して特集を立ち上げたんです。

15人とか20人くらいのビジネスパーソンが『キングダム』を語るという特集なんです。そのキングダム芸人(?)のトップバッターとしてご指名をいただくという栄誉をあずかりました。これ、僕が『キングダム』が好きだということを発信してなければ、絶対に起こらないですよね。

かつ、『キングダム』をいかに普通の人と違う視点で楽しんでいるのかも発信しておくと、「なんかこの人ちょっと変わってるな」みたいな。自分の「好き」を発信しておくというのは大事かなと思います。さっきのヴィッセルの話とかも、「サッカー好きです」ととりあえず発信しておいたら、流れがつながったので。

横石:たしかにそうですね。仲山さんの人生、ずっとそうですよね。

『GIANT KILLING』でサッカー日本代表を語る?

仲山:あと『GIANT KILLING』という漫画もあるんですけど。講談社の『モーニング』さんで連載されている漫画です。

僕がやっているチームビルディングの講座に参加した楽天の出店者さんからある日、ダンボールが家に届きまして、「チームビルディングを語るなら、これ必読でしょ」という手書きのメモが入っていた。自分が読み終わった『GIANT KILLING』が送られてきたんですよ。それを読んだらめちゃくちゃはまって、「このストーリー、講座で使っているフレームワークどおりすぎる」と思って。

しばらくしてから講談社の編集者の人と会ったんですよ。そのときに「僕、『GIANT KILLING』にはまっていて」と言ったら、「僕の同期が担当編集なんですよ」という話になって。

横石:たまたま?

仲山:はい。「同期誘ってごはんでも食べます?」と言われて、ランチすることになりました。いかにジャイキリのストーリーがチームビルディング理論にもぴったりかというのを熱苦しく伝えたんです。そのあと思いが溢れすぎて、「このシーンは理論的にはこういうことです」みたいなスライド何十枚かのパワポのファイルを送ってみたんですが、まぁ何も起こらず(笑)。

横石:まあね。

仲山:「何も起こらなかったな」と思っていました。そしたらそれを忘れかけた1年後に急にメールが来て、「あれ、作者のツジトモさんから漫画を自由に使っていいとOK出たんですけど、どうします?」という連絡が来て。

横石:おお、すごい。

仲山:「やります!」と言って、『GIANT KILLING』を自由に使ったチームビルディング本を出すことになった。

横石:なるほどね(笑)。

仲山:それを見たサッカーメディアの人が「あの本、おもしろい」と言って、2014年のブラジルワールドカップが終わったときに、「あのチームビルディング視点で日本代表を分析をする記事をつくりたいから、インタビューをさせてくれ」とオファーが来るようになったんです。

横石:またおもしろいことを考える人もいるんですね。

仲山:「マジか……俺に日本代表を語らせてくれるなんて」と思いました。そのあとその記事がけっこうおもしろかったからといって、4年後のロシアワールドカップのときにもう1回お声がかかり、今コパ・アメリカ(2019年6月時点)をやってるんですけど、これが終わったあとも「森保ジャパンをやってくれ」というオファーをいただいています。

横石:特殊な立ち位置の人ですね。サッカーとビジネスを行き来する。

仲山:僕にとっては「チームビルディング」という軸でつながってるんです。

横石:そっかそっか。「チームビルディング」という旗が立つんですね。

仲山氏の考える、仕事と遊びの定義とは

仲山:これを「仕事ですか? 遊びですか?」と聞かれたら、なんとも答えにくい。仕事と遊びの定義を教えてください。

横石:お金をいただいて生業としているかどうか?

仲山:「はいどうぞ」とくれるときもあるし、なにもないときもあります。

横石:そんなお駄賃みたいに(笑)。

仲山:だから僕、「お金が発生しないんだったら断ります」とか、そういう基準では仕事を選んでいない。「誰とやるか」「なぜやるか」で選んでいるから、お金が発生するかしないかは仕事の定義とは関係ないです。

横石:僕も本を書きたいと思ったことがないんですよ。なぜなら書くのが苦手だから。かなり時間がかかるわけじゃないですか。エネルギーも使うし。

仲山:かかる。よほど売れないと、元が取れないですしね。

横石:僕はイベント、ワークショップは好きなんですよ。書くよりも、話し言葉はどちらかといえば好きです。だから自己紹介ワークショップをやっていたら、編集の人が「おもしろいから本にしてみない?」と言われたときに「うーん」と考えました。自己紹介で10万字書こうなんて、思っちゃいけないですよね(笑)。

仲山:横石さんから「この名刺を本に載せていいか?」「自己紹介の本を出すことになったんだけど」と連絡が来たのを見て、「自己紹介だけで10万字?」と不思議に思いました。

横石:ブログも書いたことないのに(笑)。

仲山:本を読んで「してやられた感」を感じたんですよ。自己紹介と書いておきながら、働き方の本質的な話なんですよね。ただ切り口を自己紹介としているだけで。

自分の中にハッシュタグをもつことの意味

横石:そう捉えてもらえると嬉しいです。さっきシステムで人の最適化を図るという話があったじゃないですか。覚えていますか? 僕の本が「どこに置かれてるかな?」と本屋さんに行くと、だいたい仕事術とかビジネスマナーの棚なんですよ。

いわゆる自己紹介術として認識されて置かれているんですけど、Amazonだけは「これはハウツー本じゃない。倫理学だ」というカテゴリーで判別していて、そこに収まっているんですよ。「すげえ、Amazon」と思って。

仲山:へえ。おもしろい。

横石:もしかしたら1.0の世界観は、ある権力が人の最適化で組織をつくっていたと思うんですけど、これからはAIやテクノロジーが導入されて、人の最適化や凸凹の最適化を滑らかにマッチングしてくれる世界とかがあるのかなと思っていて。

それは4.0なのか3.0なのかはさておき、「自分の好きなものが見つからない」「自分はこんな変な趣味とか特技があるんだけど、人に言えない」みたいなことも、言わなくてもうまくマーケットと結びついていくような感じには、希望を感じているんです。テクノロジーのいい使い方としては。

なので、これからは自分の中にハッシュタグを持つことの必要性をここでは書いていたりします。そのハッシュタグのマッチング、凸凹のマッチングみたいなものがもう少しいい感じで起こると、おもしろい世界かなとは思っております。では次の方、ご質問お願いします。