2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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司会者:本日のイベントを始めさせていただきます。本日は『自己紹介2.0』刊行記念イベントです。新時代に向けて、働き方本の大ヒット著者たちが語る「新時代の自分の仕事を作る術」というタイトルでお送りいたします。ゲストに仲山進也さま、村山昇さま、横石崇さまをお招きしております。それではみなさま拍手でお迎えください。
(一同拍手)
横石崇氏(以下、横石):こんばんは。本日はありがとうございます。大ヒット著者たちと書いてあるんですけれども、僕だけそんな人気著者ではないですから(笑)。
仲山進也氏(以下、仲山):村山さんだけ大ヒット著者です(笑)。
横石:未来の大ヒットメーカーがいるぞということでお許しください(笑)。『自己紹介2.0』(KADOKAWA)という著書を先月出版しまして、銀座 蔦屋書店フェアをやらせていただいております。そんな機会もありまして、企画していただいたブックコンシェルジュの兼頭さんから、「ぜひ出版イベントにふさわしい二人を呼んでもらえないか」とお願いをされました。
僕はTokyo Work Design Week(トーキョーワークデザインウィーク)という働き方の祭典を7年ほどやっていて、いろんな働き方の変わった人を知っているんですけど、その中で新時代の働き方について語るにふさわしい二人をお呼びしました。
まずはじめに、今回のイベント開催に至った発端をみなさんにシェアさせてください。
仲山:今日このイベントがこのメンバーになるいきさつということですか?
横石:ですです。村山さんと仲山さんは実は今日が初対面なんですね。仲山さんが4月9日にFacebookで、村山さんの本をアップして「この本、めちゃくちゃ好み! 絵を眺めているだけで『わかるー!』ってなる!」と投稿されていて。『働き方の哲学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)自体は去年の3月に出たものなのですが、みなさんは既に読まれていますかね?
仲山:おお! ほとんど(全員手を挙げている)!
横石:村山さんのホームじゃないですか!
さてさて、その仲山さんのFacebook投稿をたまたま僕が見て、「なんなら三人でトークイベントしましょう!」みたいなことをコメントしたら、仲山さんが「おおお! やりたいです!」と反応してくれて、村山さんにも「いいね!」とおっしゃっていただきました。
今日は何の話をしようかとメッセンジャーで三人で議論して、「仕事のモチベーション」「チームワーク」「自分らしさ」の3つを軸に新時代の働き方について語ってみようとなりました。後半には参加者のみなさんともインタラクションを交えてお話できればと思います。まずはお二人の自己紹介からおうかがいさせてください。
仲山:仲山です。僕はちょっと変な名刺を使っていて、『自己紹介2.0』で事例として紹介していただいているんですが、そんな僕の苦手なことは自己紹介です(笑)。
横石:僕も自己紹介が苦手だから、こういう本を書いているわけです。仲山さんの名刺っておもしろいんです。ビックリマンシール風の名刺になっていて、誰が見ても「何だこりゃ」ということで話が盛り上がります。自分と相手の間にノイズを走らせる役割があるのはすごくいいなと思って、著書でもご紹介させていただきました。
仲山:ちなみに楽天って会社をご存知の方はいらっしゃいますか? 手を挙げていただいてよろしいですか? (全員手を挙げ)ありがとうございます(笑)。僕は1999年6月21日入社なので、明日でまる20年。成人の日を迎えるんです(笑)。昔は領収書をもらうときも、「楽天で」と言っても「え?」と聞き返されるので、「“楽しい”に天国の“天”です」と言っていました。
横石:怪しい会社ですね(笑)。
仲山:そんな頃からやっております。会社が20人くらいのときに入社をしました。
横石:といっても転職組なんですよね。
仲山:そうです。最初はシャープで働いていて、楽天には創業して2年くらい経ったころに入社しました。楽天市場に出店して商売している全国各地の中小企業の人たちと、「どうやったらもっといい商売ができるか」とか、「どうやったらもっといい会社ができるか」とか、そんなことをずっと話し合いながらワチャワチャとやってきました。
そして、途中に変化球みたいなキャリアが挟まってきます。テレビを見ていたら「三木谷浩史さんが、ヴィッセル神戸のオーナーになりました」というニュースが流れてきて。その事実はニュースで初めて知ったんですが、もともとサッカーが好きだったので、すごくびっくりしたんです。
そのあとたまたま社内の合宿があって、晩ごはんのときに目の前が三木谷さんだったので、手を挙げて「サッカー好き、神戸、神戸」と片言でアピールしてみたんですけど。ヴィッセルは、今は楽天グループなんですけど、当時は三木谷さんが個人でやっている会社でした。楽天からは誰もやらないと言われて「ザンネン」と。
そうしたら2週間後くらいに呼び出されて、「君の願いをかなえてあげよう」と言われました。「明日から神戸行って来て。開幕準備で忙しそうだから手伝ってきて。1~2ヶ月くらいかな。以上」と。社内的には人事発令が出るわけでもなく、神戸へ行きました。「非公式お手伝い」と本に書いていますが、楽天の同僚からすると「あいつ、急に会社来なくなったね」みたいな状況です(笑)。
村山昇氏(以下、村山):ヴィッセルの報酬は?
仲山:楽天の給料だけです。ヴィッセルとは何の契約関係もないので、副業でもないです。東京と神戸を行き来している生活を送っているうちに、僕が楽天社内にいなくても困る人が誰もいないという状態が確立するんです。
仲山:そのあたりから働き方が変な感じに加速していきまして(笑)、2007年にはなぜか兼業自由・勤怠自由だけど正社員という働き方ができるようになりまして、僕が会社に行く頻度も減っていきました。
今日はたまたま楽天のオフィスに行ったんですけど、僕を発見した人に「ちょっと写真を撮るから動かないで」と言われて、ツチノコ発見的な扱いをされたりしています。
横石:ほとんどオフィスにいないということですよね?
仲山:僕がいなくても誰も困っていないので(笑)。あとは自分で会社をつくってみたり。なぜか楽天グループにヴィッセルがあるのに、横浜F・マリノスで働くことになってみたり(笑)。
横石:一応聞きますけど、“窓際”の方ではないですよね?
仲山:窓際を突き抜けると“出島”になったんですよ(笑)。出島というのは、社内の人とはさほど関わらないで、ひたすら出店者さんと接するという働き方です。さらに神戸に行くようになったら、社内からはどこにいるかもよく分からなくなる。“離島”と呼んでいるんですけど。
横石:もはや出島と違って橋すら架かっていない(笑)。
仲山:離島型の働き方からさらに変化しまして、最近は会社の外側をぐるぐる回る“衛星”型の働き方になっています。
横石:窓際の度を越したバージョンですね(笑)。
仲山:自己紹介が苦手なので、これだけ喋っているのに「よく分かんないやつだな」と思われていると思います。しかも肩書は「楽天大学学長」なんですけど、楽天大学の仕事には今はほぼ関わっていないし、学長といっても部下は一人もいない。
なので、楽天の名刺を渡したときに、「楽天大学はどんなことをやっているんですか」「学長さんですか。部下は何人いるんですか」のような社交辞令的な質問をされると全部答えにくいんです。でも『自己紹介2.0』で紹介してもらった名刺を使うと、「この名刺おもしろい!」となって仕事内容について一切聞かれないので、「これは便利だ」と思って使っています(笑)。
横石:村山さんは仲山さんとは、今日が初めてですよね?
村山:そうです! 初めてリアルでお会いしています。
横石:仲山さんへ聞いてみたいことはありますか。
村山:サラリーマンだと上司がいて、働き方を評価したり査定して給料を決めるじゃないですか? 楽天大学の学長って、どなたかが上にいて「仲山君はどういう評価だ」と査定しているんですか?
仲山:上司が誰なのかよくわからないんです(笑)。12年前、兼業自由・勤怠自由の正社員になったときに人事考課もフリーになりまして。僕のことを自分の部下だと思ってくれている人はたぶんいないと思います。
横石:さらに理解に苦しむのが、株式会社ヤッホーブルーイングでも「エア社員」として活動をされています。
仲山:「よなよなエール」というクラフトビールはご存知ですか? けっこう頷いてくださっている人が多いですね。その会社で名刺をいただいて、お仕事させてもらっています。最近は楽天トラベルのエア社員というのもやっています。所属は楽天大学だけど、楽天トラベルのエア社員(笑)。
横石:ますます謎が深まります。どのようなかかわりなのでしょうか。
仲山:プロジェクトベースでお仕事をさせていただいております。内容としてはどちらも組織育成プロジェクトです。
横石:ちょっとここで参加者のみなさんに質問をしてもいいですか? 自営業とか自分で会社を経営されているわけではなくて、仲山さんのようにある会社にお勤めの方はどのくらいいらっしゃいますか? ……8割くらいですね。
仲山さんみたいに主体性をもって働く場所を選んだり、仕事内容を選んだりする人が世の中に増えてきたと僕は思っていて、今日はそのあたりのお話も詳しくおうかがいしたいと思います。それでは、村山さんに自己紹介をバトンタッチをしましょうか。
村山:私は『働き方の哲学』の著者の村山と申します。サラリーマンを4社経験して、16年前に人材育成の会社を立ち上げて独立しました。
基本的にはこの本の内容の通り、「働くって何だろう」「キャリアをつくるってどういうことなんだろう」ということを、社員に教育したいところから注文をいただいて、いろいろ登壇しています。
16年もやっているといろんなコンテンツが自分の中にたまってきます。それをその都度出版していくと本が名刺代わりになって、人事部長さんから「この本を読んだけど、うちの社員に研修してくれない?」と仕事をいただいてやってきた16年です。
これは私の10冊目の本です。この手の本は何冊も書いています。ビジネス書は大体4,000部とか5,000部を最初に刷るのですが、初刷りの4,000部が売り切れるのは、めったにないことなんです。お二人の本はすでに初刷りは楽勝にクリアしていますが。
私も10冊のうち最初の9冊は本当に初刷りだけで、大体3ヶ月から4ヶ月の間に半分くらい売れずに戻ってくるみたいな。完売すればいいですけれども、出版社から「残念でしたね」みたいな話になります。
そうすると「2作目も書いてください」という気前のいい出版社はなかなか現れない。私は9冊書いて鳴かず飛ばずでした。「私の書いたものを本にしてください!」と言っても、本にしてくれる出版社がいよいよ出てこなくなる。「村山何某という書き手は9冊も書いてるけど、初刷りを超えられない著者だからね」という情報が出版業界で流通すると、「あの書き手に頼んでもしょうがないんじゃないか」と言われてしまって……。
横石:ミュージシャンでも、アルバムを9枚出してずっとオリコンランキングで圏外でしたら、もうどうしようかって話ですもん。
村山:それで10冊目。これまでの9冊は、「書いてある内容はおもしろかったです!」という読者の評価は多かったんですけど、なかなか量が売れなかったんです。そして、文字ばっかりの自伝書だった。これからの時代は、図解やイラストなど、読者に合わせてビジュアルがわかりやすい本をつくろうということで、絵本をコンセプトにしたんです。
働くことを伝える絵本をつくろうと企画をいろいろ(な出版社へ)持って行ったんですけど、「こんな本は手間が掛かる」「ビジネス書は1400円から1600円くらいでつくらないと売れないのが定説だ」「これだけ絵を充実させて分厚くすると、これは1400円や1800円では到底作れませんですね」という反応ばかりで立ち消えになりそうなときに、奇特な出版社さんが現れまして。
横石:どちらの出版社ですか?
村山:ディスカヴァー・トゥエンティワンです。そちらにお一方いらっしゃいますけど。
横石:素晴らしい本をありがとうございます!
村山:担当した編集者さんが、このめんどくさい本を全ページ文字を張り付ける指示をして、膨大な量の原稿整理をしてくださったんです。こういう出版社が世の中にまだあったということに非常にうれしさを覚えました。そして、これが見事13刷りまでいきまして、7万~8万部くらいまで到達しています。
横石:定価はおいくらでしたっけ? 通常のビジネス書と比べて、少しお高い印象があります。
村山:税込みで2,808円で、この本がそれだけご支援いただいたというのは本当に(うれしいです)。こうしてヒット作ができたので、私も営業が楽になりました。私は個人事業主なので営業部隊を持っていません。今はおかげさまで、この本が営業になっています。
でも受ける仕事が多くなりすぎてしまって。今私のホームページをみると「新規受付停止」と書いてあります(笑)。
横石:うらやましい!
村山:わがままで横着なんですけど、「2020年の4月まではとりあえず仕事がいっぱいなのでお受けできません」と、平謝りのイラストとともに受注休止という看板を立てています。
横石:受注休止、いつかやってみたいです(笑)。
村山:かといって、マニュアルをつくって私以外の講師を4、5人育成して、「覚えてください」とバンバン自分の分身を派遣すれば、量が裁けるのではないかという話なのですが、起業したときに量を追わないことを掲げたんです。「等身大、身の丈のビジネスでいい」ということでやってきました。
私がよくお話しするのは、「寿司屋を開業させるのに神楽坂の一軒寿司がいいか、回転寿司チェーンの経営のどっちがいいですか?」と聞かれたとしましょう。チェーン店を全国に100店舗200店舗ぐらい出して、規模を大きくするビジネスもありますが、私はそっちではないんです。
神楽坂の本当に奥まった場所にお店があって、店内はカウンター10席とテーブル2席ぐらい。お客さんは自分で全部握れるくらいのお客さん。そのお客さんも「大将が握る寿司はうまいね」と、ある程度いいものを分かっている。そんな人たちだけに給仕できるのがいいなと思います。
研修事業もそうなんです。大手の研修事業はたくさんあります。講師陣を数多く揃えてていて、量産体制を敷いています。私はそうではなくて、松下村塾のように一人ひとりと対面して、私塾的な教育サービスをしてきました。でも年間に30日くらいしか私の体力的に研修ができません。顧客数からいうと、10社から15社です。それ以上のお客さんは手に負えないので、今はキャパが埋まってしまっているため、残念ながら新規のお客さんはお断りしています。
横石:寿司屋の例えで言うと、こられるお客さんはどんな反応なんですか? Amazonなんかではレビューが投稿されますよね。
村山:高級なお寿司屋で「大将このネタいいね! どこの港で獲れたの?」みたいに分かる人は星が5つくらいついて、「本当にためになる本です」と思ってくれる人もいれば、チェーン店の寿司屋に慣れている人にとっては、「なんか高いだけで、このネタがいいのかよく分からない」という感じで受け止めきれない人もいます。
仲山:これ、見開き2ページだけで1冊の本の中身ですもんね(笑)。
村山:行間を埋めていけるような咀嚼力を持っている人にとっては、見開き2ページの中に随分な内容があるんですよね。
仲山:だってマズローのB動機やD動機が、あの文字量だけでシンプルに書いてあったらわからないですよね(笑)。
村山:あれは「この本をきっかけにちゃんとマズローの翻訳本を読んでください」というメッセージなんです。ちゃんとそこでアクションを起こせる人は学べる人ですよね。
横石:そういう意味では僕の本はお二人にかなり影響を受けています。村山さんの本からは引用もさせていただいているんですけど、本をつくり始めるときに「もうこの本を読めばいいじゃん」と思っていました。2800円は安すぎるんじゃないかなと思ったくらいです。
村山:人間の感覚って、本に対する値段がシビアですよね。2800円の本というと高い感覚ですよね。ところが居酒屋に行って、ちょっと飲み食いするだけで3000円や5000円ぐらいすぐ飛んでしまいますが、2800円の本は高いと思われる。そのあたりが、世の中的には本が安すぎるなと思います。
横石:そういう意味でこの本はきっと単価UPに貢献しているんですね。
仲山:本って、自分で書いてみると、いかに安いものなのかわかりますよね。
横石:どういうことですか?
村山:え?
仲山:自分の中身を絞り出して一冊書くじゃないですか。「これが1500円か……」と思うじゃないですか。そういう意味です。他の人の本も、お得だと思えるようになりました。
横石:たしかに。
仲山:だからもっと本が売れるようになるには、国民全員が一度本を書いてみるというアクティビティをやってみたら、「本って安いね!」となると思う(笑)。
横石:それいいですね! ブログやSNSもいいんですが、本を書いてみるのはオススメです。そういうわけでそろそろ本題に行こうかと思います。
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