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パネルディスカッション「ポスト2020のスタートアップ」(全8記事)

グロービス高宮慎一氏「今後スタートアップ業界は2部リーグ制になる」 若手起業家がシリアルアントレプレナーになるまでの道筋

2019年4月8日、DMM.com本社にて「ポスト2020のスタートアップ」が開催されました。U30の起業家・スタートアップのCXOだけを対象に行われたこのイベント。オリンピックイヤーの2020年以後の世界を見据えたこれからのスタートアップ事情について、DMM.comの亀山敬司氏、CAMPFIREの家入一真氏、グロービス・キャピタル・パートナーズの高宮慎一氏の3名が、お金や事業、最近注目している分野の話など、投資家・起業家としての立場からディスカッションを行いました。本記事では、「自己破産したとしても、ぜったいに仁義は通すこと」など、参加者からの質問に登壇者が答えたパートをお送りします。

買い叩かれないように事業を売却するには?

冨田阿里氏(以下、冨田):次は具体的な質問ですね。「DMMさんに事業売却させていただくとすると、人の組織状態・物・サービスの状態・金・ファイナンスのコーポレーション、どんなかたちが理想的でしょうか」。売ること前提ですね。

家入一真氏(以下、家入):こういうこと聞くっていう前提で、もう弱い立場にあるから。買い叩かれるっていうことですよね。

亀山敬司氏(以下、亀山):確かに叩かれるね、これ。「僕も捨てたもんじゃないです」って言いながら会社売りに行ったほうがいいよね。

(一同笑)

冨田:次は「グロービスさんでは、M&Aによるイグジット可能性が高い会社でも投資することは可能でしょうか?」。

高宮慎一氏(以下、高宮):規模感によりますけどね。

冨田:どれぐらいだったら?

高宮:IPOかM&Aとか、エグジットの手段は、ある意味何でもいいです。むしろエグジットの規模の目線が投資家にとっては大事なんです。あくまで目線で、結果論として小っちゃくなっちゃってもいいんだけど、うまくいったときはそうなるのが大事です。

冨田:次は「僕たちの生徒に授業をしてください」。これはラブコール?

亀山:なにそれ? 誰が? わかんない。はい、次!

冨田:「教育事業を展開しています。イベントでこのスペース貸してください」。それも後で。

亀山:そのうち気が向いたらね。

銀行が20代のスタートアップに融資する理由

冨田:「スタートアップで創業8ヶ月、黒字ですがまったく新しいサービスがなく、シナジーのない抱き合わせで売ってるのが黒字の理由です。まったく新しいサービスに全精力を注ぐべきなのか?」。

亀山:いやいや、今は集中すればいいんじゃないの。今多角化とか言っても10年早いからね。1個しかやれないから。何個もやってたらうまくいかないし、とりあえずそれ、安定して絶対潰さないくらいになってから。次行こう。

冨田:はい。「株式調達でない方法で資金調達を考えてます」。「ではなく」か。「急成長を目指すスタートアップのための新しい選択肢のすすめについて、ご意見うかがいたいです」。

高宮:「エクイティファイナンスじゃないけど、急成長したいときどうしたらいい?」ってこと?

亀山:サラ金に行けばいいんじゃないの?

(一同笑)

亀山:そういうこと? 違う?

冨田:補足、もし質問の方、あれば。大丈夫ですか? 質問しづらいのかな。

亀山:デットで資金調達。

冨田:よくあるものですか?

家入:これはありますよね。

高宮:普通は事業が安定しないとデットってつかないんですけど、特別な創業融資とかある。だけど、たぶん金額が限られてて。最近だと2,000万円くらいなら、借りられると思います。

亀山:今だと2,000万円ぐらい借りられるよね。この間、銀行の人に聞いたんだよね。「20代のスタートアップに融資して大丈夫なの?」って聞いたら、「だいたいもうITやる人は学歴は高いし、2,000万円くらいは個人保証で回収できる。いざとなったら親から取り立てます」って言ってたから。

(一同笑)

亀山:だからたぶん貸してくれる。

自分しか思いついていないアイデアなんて無い

高宮:1個デットで怖いところがあって、これは絶対覚えとかなきゃいけないことがあります。返さないと一発で会社が飛ぶとか、誰か保証つけたりしたらその人に返済義務がいくっていうことです。

エクイティだと、最悪返さないとチャラで一応終わりなんですけど、デットは返さないと会社が終わるとか、誰かが代わりに返さなくちゃいけないっていう話です。なので、エクイティにもデットにメリット・デメリットがあって、うまく使い分けて、組み合わせましょうという話だと思います。

亀山:追い込みはかけられるね、デットは。会社が死んだら絶対かけられるよ(笑)。

(一同笑)

冨田:気をつけてください。次は「VCからの出資が必要なビジネスだとして、アイディアだけの段階での出資を決めることはありますか?」。それを決める理由はどうでしょう。

高宮:たぶんVCの定義なんですけど、一般的に最近言われるVCって、元々はシリーズA以降のVCで、シードVCの人だとアイディアだけで投資できる。

亀山:あるの?

家入:アイディアだけ? ありますよ、全然。でもアイディアだけってか、大半のアイディアにあまり価値を感じなくて、基本は人しか見ないです。

亀山:そいつがどうかって話なの? アイディアは本当にあんまり価値ないよ。

家入:さっきのパクられるパクられないもそうで。「アイディアというものを過信しすぎるな」って話なんですよ。自分しか思いついていないと思っても、世界中にはあなたよりもっと頭のいいやつが、寝ずにめっちゃ考えてるからって思います。

亀山:自分が考えたことって、100人は考えてる。

家入:本当、考えてる。

自己破産は恐れるな、仁義は通せ

冨田:ありがとうございます。「デットで調達した結果、失敗すると再起困難なイメージがあります。一方で、エクイティでも失敗したら、逆に『よくがんばった』と称賛される雰囲気がある気がします。実際、エクイティで調達したあとに失敗した人に、再投資しようと思いますか?」。

高宮:実際、終わり方次第ですね。

家入:終わり方ですね、そう。

高宮:不義理をしていないとか、ちゃんとやりきった上で、次に向けてラーニングが何があるみたいのがあれば、ぜんぜん。

冨田:そうですね。それこそ、周りの評判でそこは全部入ってきちゃいます。

高宮:本当、不義理とか仁義系だけは注意したほうがいいと思いますね。

亀山:それはデットで失敗してもね、自己破産ぐらいは立ち直れるんだよ。俺、自己破産から立ち直ったやつをいっぱい見てるから。でも自己破産が嫌で「なんとかしなきゃ」って誰かに保証人させたり、友達とか裏切って金借りて返さないとかってやつは、最後までだめになったりとかするね。だから、自己破産ぐらいやるのはぜんぜん構わないけど、人間関係を壊すなってのは大事かな。

冨田:「先ほど家入さんが、株式型クラウドファンディングの危険性をおっしゃっていました。今後のVC調達への悪影響も抑えられますでしょうか?」。

家入:株式型クラウドファンディングにもいろいろあって。でも別に、危険とかじゃないですよ。危険性があるって僕は言ってるわけじゃなくて。「それをやることによって、銀行とかVCからは調達できない方向にいく可能性があるから、そうしたときに自分はどうやっていくべきなのかを考えたほうがいいよ」ってことを言ってるだけであって、別に危険ではないです。

高宮:いろんなファイナンス手法があって、それぞれ一長一短があって、それぞれうまい使い方があるっていうのを知った上で、確信犯的にやりましょうっていう話だと思います。

家入:そうです。

IPOを目指すべきか、M&Aを目指すべきか

冨田:ありがとうございます。「若者たちのベンチャーがメディアなので注目される中で、大人ベンチャーが着実に世の中シェアを掌握してきている感覚があります。事業はそれこそタイミングが重要だと認識しているのですが、同じ事業をやるにしても若いときに率先して事業を起こしたほうがいい理由はあるのでしょうか?」。

どうでしょう? 確かに大人ベンチャーが掌握してきてる感はあります。

亀山:大人ベンチャー?

高宮:そこって、大人のほうが一定経験があってスキルも高いみたいな話はもちろんあるけど、本当に全部一緒だったら、若いほうが馬力もあるし、再起もしやすみたいのもあるとは思います。

亀山:大人ベンチャーは、若いころからベンチャーやってた大人がもう1回やったやつとかの話じゃないの? いきなり大人がベンチャーやっても、優位なことはないと思うんだけどな。

山田進太郎とかも、1回やって売ってからメルカリを始めたりしてるからね。

冨田:「会社の社長はIPOを目指すべき? M&Aを目指すべき?」。これもなんかもどうですか?

亀山:俺は自営業を目指すべき派だから、どっちもしないのが楽な気もするけどね。

高宮:ケースバイケースというか、自分たちがどこを目指してるかのビジョン次第っていうか。IPOはハウで、M&Aもハウなんで。自分たちが成し遂げたいことって、どっちが効くんですかっていうんで。

亀山:やりたいことにどうしても金いるとか、IPOしないとできないんならやればいいと思うんだけどね。

今後スタートアップ業界は2部リーグ制になる

亀山:でも、M&Aは目指さないだろ、普通あんまり。途中でやり切れないっていう感じもあるかな。

家入:でもね、最近やっぱり、次のステップとしてのM&Aをわりと計画的に考えてる若い子はけっこういて。

亀山:そうか。Googleに買われるとかね。

家入:20前半で起業して、20半ばぐらいで、10億円ぐらいでバイアウトして、それを元手に次の戦いしますって子はむしろ増えてる気がします。

高宮:本当に。僕、今後スタートアップ業界は2部リーグ制になると思ってて。圧倒的にシリアルアントレプレナーが、スキル的にも調達力・信用力的にも有利すぎて。1周目の子たちが計画的にクイックエクジットして、大企業で経営学んで、2週目でシリアル化してみたいな。

亀山:それって結局M&Aで、これならGoogleに買われるとか、楽天に買われるとか、そういうことを目処にするってこと?

家入:ある程度見据えた事業設計をしていくとか。ファイナンス計画、要はファイナンスもバリエーション上げすぎちゃうと買われなくなっちゃうから。バリエーションを抑えつつファイナンスして、みたいな感じとか。

高宮:逆に亀山さんとか、「これぐらいの規模感の会社」「こんなニーズのエンジニア」「こんな人がいる会社だったらこれぐらいで買いたい」「こんなジャンルを買いたい」とかって言っとくと、たぶん合わせ込みで来る若者とか、合わせ込みで来るVCが出るはずですよね。

亀山:そういうことか。合わせ込みっていうかまあ……それはちょっと違う気もするけど(笑)。

高宮:シリコンバレーなんか完全に合わせこんで、計画的に2、300億円で買われるパターンとかあります。

亀山:そうなんだね。いろいろあるんだね、世の中。勉強になります(笑)。

合理的に考えて、絶対に節税はすべき

冨田:「アダルト系が敬遠される印象がありますが、今のスタートアップにも所得をつけるためにはおすすめしますか?」。

亀山:アダルト系は、上場とか考えるなら、ぜんぜんおすすめしないよ。マイナスでしかないから(笑)。手っ取り早く稼ごうと思ったらやりやすいと思うし、テクノロジーとかやりやすいっていうのは、VRであろうが、動画配信であろうが、アダルトのほうが早めに利益になりやすいから。

上場とかそんな考えなく稼ぐんなら、比較的稼ぎながらテクノロジーを成長させるってのはある。でも、あとあとグロービスは金出してくんなかったりするわけ。

(一同笑)

亀山:そこは目指すとこがどこか、だよね。稼ぐか、IPOをするかの違いだよ。

冨田:節税についてはどうですかね? スタートアップのくせに……。

家入:合理的に考えて、どうやっても節税すべきですよね。

冨田:(節税は)ダサいとかじゃないですよね。

亀山:めちゃくちゃ節税すべきで。上場するといきなり会社を良く見せないといけないから、基本的に「儲かってます」って言うんだけどさ。自営業っていうのはいつも「いやもう、うちは儲かってません」って、税務署が来るたびに言ってるからね。どっかの商店のおばちゃんもみんな言ってるだろ。それが本来の事業なんだよね、税金を少しでも払わないのが。

だって、最終的に会社の体力って純利益じゃない。税引き後純利益だよね。だから節税して、最後に純利益取るのが大事よ。

高宮:脱税はだめですよ。あくまで、”節”税ですよ。

亀山:そうです、脱税はだめです。

冨田:大事なところですね。

亀山:昔はちょっと、適当なことやってたんだけど。

(一同笑)

亀山:若いの頃は多少ね。父ちゃんと母ちゃんだけで飲み屋やってる頃は、多少大雑把でもわかんない(笑)。すみません。はい、次行こう。

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