「原因と結果」はオリエンとプレゼンに似ている
田中信哉氏(以下、田中):岡さん、補足じゃないですけども、岡さんがいつも思ってらっしゃることを少しお伝えください。
岡康道氏(以下、岡):まず、さっきの僕の写真と今の僕が、ずいぶん僕の髪が白いから「昔の写真を持ってきてるんだろう」と思っている人がいると思うんだけど。そうじゃなくて僕は、12月の18日から髪を染めるのをやめたんですよ。それで、どのくらい白くなるか試してみようと思ったら、思いのほか白くなって(笑)。
(会場笑)
これからまた元に戻るべきか、このまま白くなったほうがいいのか迷ってるっていうのが今日なんですけど……(笑)。
(会場笑)
その話はまぁ、置いといて。原因と結果というのは、例えばオリエンテーションとプレゼンテーションのようにも思うんですね。「原因が正しくあれば、突き詰めていけば結果が出る」って、そうやってプレゼンをする人が多いんですけど。
ぜんぜんそんなことないと思うんですね。オリエンテーションに書いてあることは、もちろん間違ってるとは思わないけど、100ある仮説の1つが書かれてて、「必死でここまで考えました」ということを表示してるだけなんですよ。だから、あと99の原因があって、まぁその商品が売れていない現実があるわけですよね。
その1つを絞り出してくれたオリエンテーションに沿って表現を考えて、「これがプレゼンです」というふうにやったら、やっぱりそれはね、クリエイターとしての責任を放棄していると思いますよ。全部クライアントに委ねて「あなたのせいだ」とお客に言っているようなもので。
オリエンテーションは1つの仮説に過ぎない
岡:だから1つの仮説を見ても、あと99の仮説があるわけだから……。さっき鷲田先生がおっしゃった言葉の中で、すごくおもしろいのは、「暗黙の知」というのは僕らにもあって。なぜこの飲料が売れないのか、なぜこの車が売れないのかについては、言語化できる・できないは別にして、たぶんほとんどの人がもう体でわかっているんですよ。
「今これはコンビニじゃ売れないな」というのが、直感的にわかっている。例えば、ここに座っているような人たちは、わかる・感じると思う。「この車あんまり見ないな」というのはわかってると思うんですよ。それで、どうやればみんなが手に取るお茶や、乗ってみたい車になるかというジャンプこそ、クリエイティブであって。
その1つの仮説、オリエンテーションですね。クライアントに合わせたオリエンテーションをなぞってなぞって、「それを表現するとこうです」というようなことでは、ぜんぜん解答にはならないと思うんです。つまり、あと見えない99(の仮説)を全部ひっくるめて、「この表現で全部ひっくり返す」というのがプレゼンテーションなんですよ。
だから、そういう意味では広告のマーケティングというのが、ここに書いてあることですみませんけれど、そうやって表現というのは作られるべきだと僕は思ってるんですね。昔から今まで、もう40年ぐらいそう思ってるんですけども。
それで、そういう前提に立って考えると……鷲田さんはちょっとね、珍しいタイプのマーケターなんでこの中に入らないんだけど(笑)。要するに広告でよく言われるマーケティングというのは、表現のことはさておき、さておきですよ。
いろんな要素、原因になることをたくさん見つけてきて、それを潰すことを考えていくということになるんだけど。「いやいや、それはどんな表現であるかによって、まるっきり違っちゃうじゃないか」といつも思っていたんですね。