情報のギャップを埋めるコミュニケーション

嶋﨑真太郎氏(以下、嶋﨑):最初にこれを聞きたいなと思っています。「コミュニケーション」ですね。人事は採用の仕事もあったりすると思うんですけど、松尾さんが人事というポジションでありながら、採用担当者に留まらず、いろんな活動されている中で社内であったり社外に向けてどういったコミュニケーションを取るように心がけているのか、またはどういったコミュニケーションをとっているのかをお伺いしたいなと思っています。

松尾彰大氏(以下、松尾):ありがとうございます。一言でいうとなるべくその情報のギャップを埋めるところ、本当の会社の姿などを、見せ続ける努力だったりとか。会社としての視線を持ち続けるということをまず社内に対して言いつづけているところで、そのチャネルとして私が立ち上げたmercanだったり、SNS上でも影響力のある経営陣が多いです。

一言一言、「これを言ってくれ」とは私は絶対いいませんが、会社の未来などに対して、どれだけ夢を見せられるのか。それに対してコミットメントを求めている従業員などを夢見て入っていただけるような候補者に対して、ずっとアプローチし続けられているのかが常に、ことある度に言っている感じですかね。

嶋﨑:mercanは会社から作れというふうに言われたんですか?

松尾:入社前に今の社長の小泉文明と朝ご飯でコーヒーを飲む機会が2人であって。当時からすでに、メルカリはスタートアップ業界では、もう一目置かれていて、メディアからも好きなように取り上げられるし、Wantedlyのフィードをいち早く活用してトップフォロワーを獲得できていたんですけど。

ドメインがいっぱいあったり、情報が乱立していたんですよね。それは会社だけではコントロールできないものになっていたので、そこはコントロールできるように選択的にかつストック型のコンテンツと、フロー型のコンテンツをきちっと分けてやれるようにしましょうと。

「自社ドメインの、オウンドメディアをメルカリだったら作ったほうがいいんじゃないですかね」という話をしたところ、「それおもしろそうだね、ダメだったらやめよう」みたいなところで私が入社してやることは、その時に決まっていたみたいな感じですけど。

嶋﨑:なるほど。1つ前に、どうやってビジョンや夢を見させ続けられるのか、見せていくのかみたいな話があったと思うんですけど。

候補者にも誠実でありたい

嶋﨑:わりと僕も採用支援をやっていていろんな人事の方や経営者の方とお会いしていると、夢を見せたり、ビジョンを見せたりするのが、経営者の役割という認識を持たれている企業さんの方が圧倒的に多いなと思う中で、人事が部門として自ら主体的に夢やビジョンを見せるということに対しての当事者意識を持っている会社はあんまりないなと思うんですけど。その辺ってメルカリさんは、わりと人事がそういうものを社員に対してメッセージを発信していくべきという感じになっているんですか?

松尾:そうですね。人事だからっていう感覚はあまりないです。会社の優先順位は常々変わってしかるべきで、メルカリの場合は創業以来、組織や採用が解決すべき課題として優先度が高かっただけなんじゃないかなと。

その時、候補者の方に対して誠実に向き合うためにも経営の意思やメルカリの会社としての姿勢をキチンと伝えていく。それはミッションとバリューに集約されています。もちろんそれに従って、面接でも評価する。そして入社後の評価基準にもなっている礎があるからこそ、そういうコミュニケーションが成り立つのかなとは思いますね。

嶋﨑:採用の段階から、社のメッセージ発信するミッションやバリューと評価が連動している感じになっているんですか?

松尾:そうですね。逆説的な話で、その目線で評価するのに、それだけの情報を与えられていなじゃないと不当じゃんみたいな。メルカンではそういったことを伝えるコンテンツをきちっと提示することを目指しました。メルカリってもう今、マンスリーアクティブユーザーが日本だけで1千何百万人いるようなサービスなのに、メルカリ使っていませんみたいな方はたぶんウチの会社って合わないっすよね、という姿勢を取れる状況は、諦めずにずっとやり続けていきたいと思います。

ミッションとバリューが会社のコアを形作る

嶋﨑:なるほど、ありがとうございます。もっといろいろ聞きたいんですが、次に行きたいなと思います。今の話にも含まれるんですが、そういう「カルチャー」がそもそもあったのか、それを意識的に作ったのか。社員みんなが作ろうとしているのか。

どこにその軸となるようなものができてきたのかは、メルカリさんみたいな強い組織・強い採用組織・評価制度などを作っていくときに、結局、いまお話された点が外せないなと思ったりするんですが、どうやってつくっているんですか?

松尾:メルカリの場合でいうと、まずは創業メンバーがメルカリをまず作りはじめて、その中で、社長の小泉が創業して1年経たないくらいに入社したときに、プロダクトはすばらしいものができはじめていて、あとはソフトエンジニアの採用だったり、それを支えるカスタマーサポートの拡充などにかなりの人員を要する。

かつスタートアップで採用はかなりキーポイントになってくる中で、「メルカリって何を達成するための会社なんだっけ」「何をしたいんだっけ?」となる時に、コアが曖昧だった。そこで最初に取り組んだのがミッションとバリューの制定だったみたいなんですよね。

それはかなり揉みに揉んで、なるべく少なく覚えられて、キャッチーで、日ごろの会話でも使えるようなものみたいなところの軸で決まった、かなり初期に作られていたもので。それを軸に、いろんな制度などを経営陣も話したり、私自身もミーティングとかでそれを話すことで調整されていったものなのかなとは思いますね。

OKRは四半期ごと見直し、メルカリの“身軽”なカルチャー”

嶋﨑:評価制度によくある売上とか、例えば開発進捗とかは含まれているんですか?

松尾:評価制度の軸は、「Objectives and Key Results」というものです。その中でタイミングによっては月間総流通総額、GMVといったものをどれくらいまで伸ばすのかということがObjectivesとしてあって、KeyResultsだったり、アクションプランの中でどういう施策を、どのタイミングで、どういう人がみたいなところまで落としこまれていくというかたちですね。

それはあくまで数字というか会社としては目標的な側面で。それをどう実行するか、仕方みたいなところはバリューによって評価されていくというかたちですね。

嶋﨑:OKRは頻度よく変えていっているんですか?

松尾:四半期ごとに設定されて、それに沿って各部門や職種、個人に落ちていくというかたちですね。

嶋﨑:四半期ごとにOKRを設定し直す?

松尾:そうですね。

嶋﨑:けっこう大変ですね。

松尾:大変です、大変です。

嶋﨑:でもそれがきちんと評価制度にちゃんと連動していっているという。

松尾:ただ、それこそメルカリはうまくいっているじゃないかとよく言われるんですけど、決してずっとうまくいっているわけではないです。組織の拡大だったり、事業フェーズの変化だったりとかで全然変わります。

かなりクイックに制度や組織を変えていくところを怖がらないところもあります。失敗だったら失敗って、みんなにちゃんと伝えて「はい、次こうやります」みたいな。身軽さも1つカルチャーというか、礎です。泥沼にハマらないようにするというか。それはすごくメルカリのおもしろく、いいところだなとは思いますね。

嶋﨑:ありがとうございます。逆に老舗日本企業ができていない部分でもあったりしますよね。

松尾:そうかもですね。ただ守っているのは、カルチャーなど変えられるものにして、変えられないもの、変えられるものを切りわけたりすることは、それぞれが考えている部分だとは思います。

嶋﨑:ありがとうございます。

人事の仕事は「従業員体験」の向上である

嶋﨑:では続いて、そんな話を聞いていると、人事、人事というと採用が仕事みたいなことになったり、総務が入ってくると変わってきたりすると思うんですけど。

松尾さんが定義する「人事の仕事」はなんですか? 松尾さんというか、「メルカリにとって」でもいいです。松尾さんにとって人事の仕事ってなんですか? メルカリだと人事ってなんですか? よろしくお願いいたします。

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