自分に欠けた要素を補える人をナンバー2に採用したい

伊藤亜樹氏(以下、伊藤):事業の育て方の話をしたところで、事業と切っても切り離せないのがやっぱり組織を作っていくというところだと、みなさんはもうご存知だと思います。

創業期って、コアメンバーの採用、とくにナンバー2やCFOの選び方がスタートアップにとっての共通の課題だったり、難しさを感じる部分はあるのかなというところで、次のテーマ「コアメンバーの採用」に進みます。

それぞれコアメンバーの定義がまったく異なるかなと思いつつ、ナンバー2やCXOなどのコアメンバーを誘う時、そのメンバーを採用する時に重要視しているポイントだったり、または失敗談などもおうかがいしたいと思います。では真田さんからお願いします。

真田哲弥氏(以下、真田):はい。ナンバー2、COO的な人、CFO的な人、CTO的な人……いろいろあると思います。いわゆるナンバー2を選ぶ時に、僕は必ず、自分と正反対のタイプを選びます。自分が持っていないものを持っていて、自分が持っているものを持っていないという、シンプルにそれですね。2つのピースをくっつけたら最強になる相手を探します。

伊藤:真田さんにとって最強になる相手ってどんな方なのですか?

真田:このたった10分くらいで、僕の性格はバレているんじゃないかなと思います。僕は押しが強くて、「絶対こうだ!」と思ったことはやります。そういう人は、人を採用する時もそうで。長所と短所は裏表で、長所の裏側に必ず短所があるわけですよね。だから僕は押し出しが強い反面、慎重さが足りないとか、緻密さが足りないという要素があります。

でも勢いがあって、「やるんだー!」みたいなことができる要素があるので、したがって、もう1人僕のような人がいると、会社はうまくいかない。その会社には絶対投資したくない(笑)。

僕みたいなタイプがいて、もう1人、慎重で緻密なタイプが横についていると、投資する時にちょっと安心じゃないですか。僕がアクセルなら、(もう1人は)ブレーキになって、僕がムードを作るんだったら、論理的に「それはダメです」とバッサリいける。だいたい毎回その組み合わせです。

会社のナンバー2を面接で採用しているようではダメ

伊藤:そういった方を選ぶ時に、大抵面接とかをすると思いますが、短いなかで、どう自分のピースとうまくはまるかを見極めていますか?

真田:まず少なくとも、ナンバー2を面接で選んでいるようじゃだめです。僕は社長業の重要な要素・能力の1つに、優秀な幹部を引っ張ってくることだと思っています。それを人材紹介とかメディアに頼って「どうも、はじめまして」と面接しているようじゃ、その時点でその社長は社長としての資質がないんじゃないかなと思います。

やっぱり自分の知り合いとかから引っ張ってこれないようじゃ、ダメだと僕は思っています。

伊藤:知り合いのなかで、ピースがはまるような方を見つけて、口説いていく。

真田:こういう学生が集まるイベントで「将来起業したい。学生の時に何をやっておけばいいですか?」という時に、「ナンバー2のタイプを探しておきなさい」とよく言います。学生時代の時は利害関係がないから、本音で喋れることが多いんです。社会人になってから知り合う可能性がないということはぜんぜんないんですけれどもね。

学生時代の友だちとやらない方がいいという人もいますけれども、学生時代の友だちで本音で喋れて「こいつは本当に優秀だ!」という人材を引っ張ってくるのが、僕は20代の起業の基本だと思います。自分の友だちのなかに「こいつは俺より優秀だ!」と思える人材がいない人は、そもそも社長をやらないほうがいいと思います。

伊藤:パワーワードが出てきましたね(笑)。ありがとうございます。

関係性に囚われないブレーンを何人揃えられるか

伊藤:村井さんはご自身とピースがはまるのはどんな方だと思われますか? また違った感じでしょうか。

村井博之氏(以下、村井):僕はどちらかというと、ナンバー2を作るということよりも、ブレーンを作るというやり方です。私自身、実はサラリーマン時代を通じても、日本での勤務経験がほとんどないんですよ。20年以上海外で勤務していて。

ちょうど最初にいたキヤノンという会社が、80年代にアップルコンピューターを1回クビになったジョブズを引き取って、コンピューターを開発したりしていました。ジョブズに会った時、彼が「組織というのはフラットなブレーンを、うまくその人と自分というかたちでつないでいく。日本型のボトムアップの組織はだめだ」と言っていたんです。

僕はその時は「へえ」って思って。彼はその時、キヤノンに来て一緒にジョイントベンチャーをやっていて、彼はキヤノンのやり方が気に入らないからすごく不満だったんだろうと思います。

海外に20何年もいると、やはり日本的なボトムアップじゃなくて、「『社長とその人』というかたちで、途中の上司とかそういうのに関係なくものを言ってくれるブレーンを何人揃えられるか」がその会社の厚みになってくるかなよ。あえて序列を作らない。

だからうちも、今は上場会社になったので、一応、形上は副社長とかも置きますけれども、本来は役員でもみんなフラットで、私としては接しているつもりですね。

20代の平社員が突然役員になる人事を行う

伊藤:フラットにしていくと、採用の質を落とさないことはすごく重要になってきそうだなと思います。採用していく上で、どういったところに気をつけて仲間集めをしているんですか?

村井:日本の組織なので、どうしても役職をつけなきゃいけない。私がいくら理想論を言っても、日本では「この社長って、おかしいんじゃないか?」と、入る余地がなくなっちゃうので役職はつけます。

私から見たら平社員のAさんも常務のBさんも一緒なんですよ。だから我が社では、突然人事で20代で役員になる人を作る。

それはなぜかというと、今は平社員だったかもしれないけれども、この人が役員をやった方がうまくいくと思えば、日本的な人選とは違った形での抜擢をしていく。それがある意味で言うと、表向きに階級はついているんだけれども、社長からは全部フラットに見ているということです。

伊藤:役職をつけながら、フラットな組織というメッセージングだったりをしていく上で、日頃気をつけていることはありますか?

村井:日頃気をつけることは、コミュニケーションをどうとっていくか。あと社員の人たち全部と「自分と社員」というかたちで作っていくと、その人から私が信頼されなければいけない。イコール私がその人を信頼しなければいけない。

そうすると、「この社長を信頼して何の得があるの」という、ロイヤリティーを常にみなさんに与えておく。それがないと、見返りがこない。

精神的なインセンティブでロイヤリティを高める

伊藤:ありがとうございます。ではここで次のスライドです。こちらも気になるテーマになりますね。採用するだけじゃなくて、経営していく上で中長期で人を引っ張っていくって、すごく大事だと思います。今はいろんな方法でモチベーションを上げたり、離職率を下げるとかをやっていくと思います。

金銭以外でどのようなポイントを軸にして、自社の組織でロイヤリティを高めていくか。どのように捉えているかを聞いていきたいなと思います。では最初、村井さんからお願いします。

村井:僕らがサラリーマン駆け出し時代の昭和の時代は、やっぱり世の中が今ほど豊かじゃなかった。お金が大事というのがあったけれども、今の人はお金じゃなくて、自分のやりたいことをやりたいという方もたくさんいるなかでいうと、いかに金銭的なインセンティブ意外に、精神的なインセンティブを与えるかというところ。

バロックがどういうことをやっているかというと、水原希子とか木下優樹菜とか「モデルとかを続けながら副業してもいいですよ」と、彼女たちが世の中に出るために「会社としても応援してあげるよ」というかたちで、みんなに精神的な満足感を与えてあげる。

今度は、今までアパレル店員って3K職場みたいに思われていたところからカリスマスターが出てくると、ステータスのある職業に変化してきて、応募する人がたくさん出てきて、さらに働く人たちに精神的な満足感が出てくる。いかにそういうものを作り出していくか。

「今はカリスマというのはお店にいるんじゃなくて、ソーシャルネットワークのなかにいます」と言っています。

我が社の場合だと、デジタルマーケティングチームがあって、そういう人たちがInstagramとかYouTubeを使って何万、何十万というフォロワーを持つ。そういう人たちのことを支援して、「彼女たち、彼らもよくて、会社もいい」という精神的なインセンティブをどう作っていくかが、鍵になってくるかなと思います。

伊藤:バロックさんは、20代の従業員の方がかなりいらっしゃるかなと思います。そういったインフルエンサーの方とかの精神的なモチベーションを上げていくのが、すごくイメージがわきます。

村井:そうですね。うちの場合社員の平均年齢が27歳で、しかも女性が85パーセント。もちろんお金もあるんですけれども、お金と同時にやりがいとか、楽しさが重要なキーになってきますね。

成長している感を出し、向上心を満足させること

伊藤:組織構成だと、お二人でぜんぜん異なるかなという感じがしています。真田さんの組織だと、エンジニアなどが多く、実際にKLabさんにもいらっしゃったかなと思います。金銭以外のモチベーションのところ、とくにエンジニアのモチベーションをどう保つか、すごく課題を感じている企業も多いと思います。そのあたりはどのように捉えていますか?

真田:たぶんモチベーションそのものの原理は、エンジニアだろうがクリエイターだろうが、そんなに変わらないと思うんです。優秀な人ほどいろんなところから引っ張られるし、自分でやろうと思ったらできると思うから独立するし。

優秀じゃない人は別に放っておいても、辞めさせたくてもしがみついてくるわけですよね。大事なことは、優秀な人のモチベーションをどうあげるか。優秀な人は何に興味を持つかがとても大事だと思うんです。

僕らは、成長している感、向上心を満足させることが、優秀層のモチベーションを上げるのに1番重要であると定義しています。そういう人がしっかり頑張ってやってくれるという組織作りが一番よくて、その変化が、そうじゃない人にとってはいまいちわからないから辞めていくことになったとしても、「どうぞ、辞めていってください」と。

そこで循環が起きることが大事だと思う。したがって、成長している感をどう感じられるようにしているか。 とくにエンジニアはその傾向が強いです。僕らは勉強会とか自主勉強会というものを推奨したりやったりします。ありとあらゆるカテゴリーの勉強会をやりますし、そういうことに参加する費用を補助するし、就業時間中にやることも認める。

どぶろく制度というのがあります。全就業時間の10パーセント前後は、上司の承認なしでほんとうにやりたかった研究など、好きなことに時間を費やしていいという制度をやっていたりします。自分が向上すると思ったことを評価する。たぶん人が一番報酬として渇望しているのは、褒められることじゃないですか。

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