みずほ銀行デジタルチャネルチーム次長の若宮太郎氏が登壇

司会者:第3部は「『社会課題解決』型訴求によるマーケティング成果向上事例」と題しまして、株式会社みずほ銀行、リテールデジタル開発部デジタルチャネルチーム次長、若宮太郎様にお話しいただきます。どうぞ壇上までお上がりくださいませ。

(会場拍手)

若宮太郎氏(以下、若宮):ただいまご紹介に預かりました、みずほ銀行の若宮でございます。今日は30分ほどお時間をいただき、好事例と言っていいのかわかりませんけれども、当行の取り組みをご紹介させていただきます。一つでも、なにかお役に立つことがあればなと思っております。よろしくお願いします。

まず自己紹介をということでしたので、簡単に記載させていただきました。私自身は96年にクレディセゾンに入社、約13年働いて、2009年よりみずほ銀行のe-ビジネス営業部に入行しております。

e-ビジネス営業部では、決済ビジネスや新規ビジネス、R&D、当時は「フィンテック」という言葉はありませんでしたが、そういう「テクノロジーと金融」の分野をやってきました。

組織改編や人事異動など、もろもろありまして、2018年より、今のリテールデジタル開発部デジタルチャネルチームで決済や新規ビジネス、マーケティングといったものをやらせていただいています。

インターネットバンキングの不正送金のセキュリティ対策

私の所属しているデジタルチャネルチームは「みずほダイレクト」という、インターネットバンキングを取り扱っています。

「セキュリティ関連」と言っているのは、主にそのインターネットバンキングの、不正送金のセキュリティ対応を指しています。今日はこちらの話を中心にさせていただきますので、このように書かせていただいています。

また、「みずほWallet」などのアプリ。アプリで決済やバンキングといったものも提供しております。

最後に、BtoC決済商品やアライアンスと書いていますが、デビットカードやペイジーなどをご存知の方もいらっしゃると思います。最近ですと、話題のLINE PayやPayPayなど、もう本当に「キャッシュレス」という言葉を聞かない日はないんじゃないかと思います。実はペイメントの裏側で、銀行口座との接続・連携・提携といった仕事もしております。

というところで、私の所属チーム、仕事のご紹介でした。

セキュリティ・社会課題解決型施策について

ここからが本題になります。ちょっとタイトルは堅いですが、「セキュリティ・社会課題解決型施策について」についてお話させていただきたいと思います。

そもそもみずほ銀行のセキュリティへの想いというか……取り組みですね。何をやっているかというと、インターネットバンキングで不正に送金・振込などを、第三者がなりすまして実施してしまうという犯罪があり、それを抑止する必要があります。

警察庁の資料によると銀行業界全体で、平成30年の上半期で4億くらいと記載されています。多いのか少ないのかというと、ちょっとイメージがつかないかもしれないですけれど、国民最終消費支出が290兆円とかいう世界ですので、そこから考えると大きくはないですね。

不正の例ですと、例えば昨今のニュースで、スマホの決済アプリが話題になってしまいましたね。クレジットカードの悪用もときどきニュースになります。それから銀行で言うと、やっぱり昔からキャッシュカードを盗まれたとか、偽造されたカードをATMで使用されたといった不正もあります。インターネットが普及し、ネットバンキングの犯罪が増えてきていますが、他の被害に比べると、未だ少ないと言えます。

ただし我々は、金融機関として、社会インフラとして業務をやっています。金融業界全体で対策もしており、預金者保護はもちろんですが、マネーロンダリングなどで、犯罪者にお金が渡ってしまうことは、金額の問題ではなく、非常に良くないことです。そういった強い使命感を持ちながら、不正犯罪を防ぐためのセキュリティに取り組んでいます。

具体的にどんなものがあるか、ということで、当行のセキュリティツールをご紹介させていただきます。こちらはワンタイムパスワード。これは一回こっきりのパスワードです。4ケタの暗証番号など、決められたものというよりは、振り込もうとしたときに「はい、今回のパスワードは1234です」というかたちで、毎回パスワードを変えています。それによってフィッシングなどの犯罪を防いでいます。

それから、こちらはかなりマニアックですけれど。知っている方もいらっしゃるかもしれませんが、実際に振り込み操作をするお客様のパソコンにウイルスが入ってしまうことがありますので、ウイルス対策のソフトを無料で配っています。そもそもお客様のパソコンがウイルスに乗っ取られてしまうと、気をつけたとしても、不正な送金などが起きてしまいますので、そうしたことを防いでおります。

それからこちらは、生体認証。もうかなり馴染みがあると思いますが、指紋や顔認証などご本人しか持っていないようなもので認証をします。

あとは非常に地道なんですが、これが一番有効で(笑)。我々が、振込やログインなどの取引ログを1件1件見ながら、「これは怪しいぞ」とお止めします。手間もコストもかかるのですが、お客さまの大切な資産を守るために……そういったかなり地道な作業をしております。

セキュリティの高さと利便性の両立の難しさ

ご想像がつくと思いますが、セキュリティを高めようとすると、利便性が悪くなるんですよね。これは概念図で……当たり前のことですが。我々もやはり銀行として、インターネットバンキングの利用者を増やしたいので、便利に、簡単に、ということをすごく求めてはいるんですが、一方で簡単にすると、すぐ破られちゃう。

また一方でパスワードをたくさん、もしくは4ケタから6ケタ、パスワード10ケタ! というふうにしていくと、セキュリティは高くなりますが、利便性が悪くなる。これが非常に大きな我々の悩みです。

だから、「利便性が落ちるので、セキュリティのツールは普及しなかったんじゃないか」。そんなふうに部内で議論をしているところで、課題として「どうしたらインターネットバンキングを使ってもらえるんだろう?」「どうしたらセキュリティツールを使ってもらえるんだろう?」。そうしたことが日々の悩みであり、課題でした。

ちょっと参考までに、正直に挙手いただきたいのですが、この中で、銀行のインターネットバンキングを、「ときどきでも使います」という方は、どのぐらいいらっしゃいます?

(会場挙手)

ありがとうございます。非常に多いですね。今パッと会場を見渡したときに、やっぱりWebのリテラシーの高い方が集まっていらっしゃるので、9割ぐらいですかね。実は日本全体で見ると、インターネットバンキングは非常に普及率が低いです。たぶん、みなさんのご想像をはるかに超えるぐらい。これはちょっと忘れていただきたい情報ですが、銀行がダメなように思われちゃうんで(笑)。

(会場笑)

今やインターネットでやるのは当たり前の世界です。銀行としても、コスト削減やマーケティングのために、極力対面取引ではなく非対面にしていきたい。銀行の窓口に並ぶ、ATMが混んでいる、という苦情なども日々いただきますので、なるべくインターネットにしていきたいんですが、お客さまがそちらに動かない。

機能訴求ではなく、社会課題解決型での取り組み

実はこれはすごく難しいテーマで。お話をいただいたときも「ちょっとどうしようかな……」と思いましたよ。コミュニケーションが非常に難しいですよね。今日いらっしゃる方は、ネットリテラシーが高い方なのでいいんですけれども。

みずほ銀行のお客様は、北海道から九州まで、年齢も普通に小学生・中学生から大学生、そして70歳、80歳。もうネットのリテラシーが高い人も低い人も、本当にいろいろいらっしゃいまして。利便性を求める人もいるし、とにかく「不安だ、不安だ」という人もいらっしゃる。

インターネットバンキングが普及しない理由は、いろいろなことが言われています。「面倒くさいからいやだ」「なんか怖いからやだ」とか。

あとは「そもそも使わない、銀行にATMあるでしょ」……これはキャッシュレスでもよく話題に出るんですが、日本はATMがたくさんあって、偽造紙幣もなくて、犯罪も少ないので、ネットバンクなんて使わなくていい、なんていうことも聞きます。

本当に難しいのが、「安全です! 安全です!!」「便利です! 便利です!!」と言ってしまうと、それはそれで問題ですし、「危ないです! 危険です!!」というのも難しくて。本当に日々の課題として悩んでいました。

そんなときに、当行にメンバーズさんから常駐で来ていただいている方がいるんですが、ふらっと「どうしよっか?」と相談したら、「いい事例がありますよ」ということでお話をいただきました。

冒頭にお話がありましたが、トレンドマイクロ社さんの事例や、マーケティング3.0、CSVみたいな。私も言葉や概念は知っていたんですけれども、改めて事例などを聞いて、「ちょっとやってみようか」ということになりました。

初めはなかなか苦労をしていたのですが、メンバーズさんから、「みずほさんって、改めて考えると、セキュリティの『ワンタイムパスワードだと安全ですよ』とか『簡単ですよ』とか『Rapportだとパソコンでどういうふうにできますよ』……やっぱり機能訴求だと難しいんじゃないですかね」とアドバイスをいただいて。先ほどの仮説から、社会課題解決型、CSV型でやってみようかと。そんな流れで進みました。

グループワークで「Why」を掘り下げていく

僕自身もそうだし、僕の部下たちもたぶんこう思ってたんですけど、「本当にお客様に届くんだろうか」「『不正送金ゼロ』なんて言っていいのか」とか。銀行ってけっこう面倒くさいので(笑)、「前例がない、なかなかロジカルに説明のできないことって行内に通るのかな?」。部下のメンバーも、こんなことを思ってたんだと思います。

ちょうど常駐でいらっしゃるメンバーズさんの方と、そんなこともラフにいろいろとお話ししたときに、「じゃあワークショップやってみませんか?」という提案をいただきまして、ワークショップをやってみたと。

ここからはちょっとイメージ図で。グループに分かれて、いろいろディスカッションして、メンバーズの方にも一緒に入っていただいて、コーディネーターをやっていただいたりしながら進めました。

先ほどちょっと絵も出ていましたけれども、そもそも「なんでセキュリティやるんだっけ?」「なんでワンタイムパスワードやるんだっけ?」。こういうWhyのところですね。「銀行としてなんでなんだっけ?」「お客様にとってなんでなんだっけ?」「社会にとってなんでなんだっけ?」……こういったことを考えながら、グループワークをしてきました。

こちらも……すみません、私が参加してないのであんまりわからないんですけど(笑)。いろいろ工夫をしながら、かたちにしていったと聞いています。

この後のプロセスは少し割愛します。グループでいろいろ議論しながら、実際メンバーズさんに、デザイン案のようなものを起こしていただいて。Aチームではイメージ案をこんな感じで、メインビジュアルはこうだよね、キャッチコピーはこうだよね、サブキャッチコピーはこうだよね、という。こんな取り組みをやっていきました。

チームを2つ作って、Bチームでも同じような作業をして。実際にご協力をいただきながらモノを作ってみたり、イメージを湧かせていったりというような。意外にこういう作業が重要だったなと、僕もあとから見て「なるほどね、うん」と思いました。

概念はわかるんですけど、可視化したり深く考えてみないと、なかなか気づかないことや、納得しにくいことも多くて。こういったワーキングは非常に有効だったなと思います。

不正送金被害をゼロにすることで、より良い安全な世の中を作る

こんなかたちで土台ができて、いよいよコンセプトを作ってみようか、というところまできました。

やはり我々は、「どうやったら、お客様にワンタイムパスワードを使ってもらえるんだ?」「無料にしたほうがいいんじゃないか?」とか「いくらだったら使ってくれるんだろう?」とか「電子メール送ったらいいんじゃないか?」「こういう表現にしたほうがいいんじゃないか?」等々。日々、振り返るとそんなことばっかり考えてて、「ダメだったなぁ」とすごく反省しています。

やっぱりWhyの部分ですよね。「なんでみずほ銀行はワンタイムパスワードを提供するのか?」。この1つ手前に、「なんでみずほ銀行はセキュリティに取り組まなきゃいけないんだっけ?」があります。

「たかが」と言ったら怒られちゃいますが、日本に金融機関は1,000個ぐらいありまして、みずほ銀行の口座シェアを考えると、(業界全体の不正送金の)4億の本当に何十分の一ですと。わずかそれだけのために「なんでこんなに一生懸命やらなきゃいけないんだっけ?」「お客様ってなんでだっけ?」と、本当にWhyをかなり突き詰めながら考えていきました。

そうすると結局、行き着いたところが、やっぱり「銀行の社会的意義」ですね。ほかの会社とちょっと違って、銀行という立場を考えるとやはり、「健全な社会をともに作っていきましょう」「安全・安心を確保していきましょう」「反社会的組織に資金を流さない」ということが重要。このためにやってるんだな、というところに行き着きました。

じゃあどうやって価値を、この世界観を実現するのか。今まではHow、「どうやってワンタイムパスワードを売ろう、セールスしよう、使ってもらおう」というところばかりだったんですけど。そうじゃなくて、Whyの部分をもう1歩、2歩、3歩掘り下げたことによって、「どうやってこの世界観を作るのか?」というところで、「不正送金被害をゼロにするんです」と。こうやって良い世の中、安全な世の中を作っていくんです、ということになりました。

社会課題解決型のグループワークから生まれたコンセプト

「じゃあ何で?」というところで初めて、ワンタイムパスワードで、ですね。ワンタイムパスワードだけではないんですが、いろいろなセキュリティサービスを使っていくんだ。そういうふうに考え方を変えていったと。ある意味、当たり前といえば当たり前なんですけれども(笑)。グループワークなどをしながら、改めて突き詰めて考えていくと、こういった考えに整理ができた。

ということで、コンセプトとしては「インターネットバンキングの不正送金被害ゼロを目指して、すべての人々が安心して生活できる社会をお客様とともに実現する」というようなところで、いったん作っています。

実際の施策のご紹介をさせていただきます。コンセプトのページは、左側が今まで、過去やっていたものです。ホームページですね。これも実はそれなりに工夫をしてるんです(笑)。

下側に生体認証の絵がちょっと入っていますが、やはり生体認証やワンタイムパスワードの訴求をしつつ、なかなかダメだよね。それで、上でちょっと工夫して「セキュリティ対策は万全ですか?」と、お客様に問いかけるようなトーンでやってみていましたけれども。まぁなかなか(笑)……とくに目立った成果というか、わかりやすい成果は出ていなかった。

今回のグループワークを通して、右側ですね。社会課題解決型ということで、こんな感じでですね。「みずほ銀行は不正ゼロを目指します、一緒にゼロにしましょう」。こういったかたちで、お客様と一緒に、まさに共創、共に創っていく。良い世界を創っていきましょう、と。こんなコンセプトから始めてやっています。

我々も……まぁ、「大丈夫かな?」というところも正直ありまして。実はA/Bテストでやりました。これはバナーの1つですけれど、メールを送ったときも従来型と新型と、「せーの」で送ってみました。

A/Bテストで、ワンタイムパスワードの申し込み件数が13倍に増加

ちょっと裏話をすると、やっぱり部下が想像したとおり、僕もちょっと半信半疑。「マーケティング3.0はわかるけどさ、マーケティングの概念ってわかるんだけど、本当にビジネスにつながるのかな?」って。これは本当によく思うんですよね。

そして、私はサラリーマンなので(笑)。これまた上司の顔を思い浮かべると、とくにうちの役員がマーケティングにうるさい人なので、「これなぁ、良いんだけどな、通るかな……」とかですね。いろいろ考えて、「A/Bテストやります」でまず行こうと。役員には、「なかなか苦戦もしてるし、新しい取り組みとしてチャレンジさせてください、これはA/Bテストやりますから。それで、ちゃんと結果が出たら段階的に進めます」と。

細かく言うと、初めにメールをやりました。ホームページのランディングページは実は古いままでやっておいて、メールからの飛び先だけA/Bを作っておく、というやり方です。メールがうまくいったらランディングページも変えます、ということを一応、役員にも言いながら。

結果、申し込み件数が13倍になりました。これはA/Bテストの結果です。従来型と新型を同じタイミング、同じ日に送ったメールで。もう本当に、僕も想像していた以上に差が出た。ここまで差が出てくれれば、このあとは非常に楽でしたね。

メールとかの世界なので、出ても微妙な0コンマ何パーセントとか、「これ誤差じゃないの?」と言われちゃうようなことって多いんですけれども。今回は本当に顕著に出て、正直かなり驚いています。

もちろんわかっていたこともあるんですが、改めて「Why」というところで、我々が思っていた以上に、社会課題解決のようなものを、自分ごととして感じやすいユーザーが多かったんだなと。のちほどグラフなどもお見せしますけれども、そういったところがあったと思います。

あと、そもそもリテラシーの高い人はそれなりに取り組んでくれてるんですよね。やっぱり関心のない人をこれから動かさなきゃいけないよね、というところで、先ほどのやり方が刺さったんじゃないかなと。

それから、当たり前の……当たり前というか、一番重要なことなのかもしれないんですけど、本当に機能訴求では動かないユーザーを動かさなきゃいけなかった。それが今回の取り組みでうまくいったんだろうな、と。

成功要因は自分ごととして捉えてもらえたこと

こちらはメンバーズさんからいただいた分析資料ですが、もしかしたらみなさんもご存知かもしれませんが。アンケート調査で、やっぱりCSV的なことに「関心がある」「どちらかというと関心がある」という方が、まぁまぁ多かった。

これは事前に資料を見ていたときに、僕はちょっと「当たり前かな?」なんて思ってたんですけど。グラフで見ると「60歳の方とか関心高いよね」「女性は全般的に高いよね」「男性はあんまり、ドライで興味ないよね」。……ただ意外だったのは、20代などの若い層は関心があると。

僕よりも一回り、二回りぐらい若い子たち、バブルが弾けたあとから生まれている子とかですね。よくZ世代だ、ミレニアル世代だと言われますけれども。そういう方々は、やっぱりこういうところに関心があるのかな、と思っています。

こちらもご覧になられている方も多いと思うんですが。社会課題解決のところで、63パーセントが、関心があるとか。商品購入のときも、こういう企業の姿勢をとても重視してますよ、とか。

会社としてコミットしているサービスや商品を購入したいと思っています、といったアンケート結果も確かにありまして、今回うまく刺さったのかなと思っています。

余談なんですが、こちらにいらっしゃる方はみなさん、ネットリテラシーが高いので、インターネットバンキングを使っていただいています。ただ想像なんですが、こちらにいらっしゃる方でも半分ぐらいはセキュリティとか不正利用といったことはあまり考えてらっしゃらないのじゃないかなと。

「パスワードは人に教えちゃいけないよね」とか「マルウェアに気を付けなきゃいけないや」とか、そういう意識をしている方もいらっしゃる。しかし、「まぁ自分は大丈夫だ」、もしくは「不正が起きても銀行やカード会社が補償してくれるよね」とか、あんまり自分ごととして考えていない方も、実は多数いらっしゃるのではないかと思います。

今回は、一部の層には、本当に自分ごととしても捉えてもらえたんじゃないかと思います。「不正が起きるんです」ということをあえて出してみたり。金額も今まではあまり出さなかったんですけれども、「世の中でも実はこれだけ不正が起きているんですよ」という。「その不正で得たお金が回りまわって、犯罪に使われてたりしていて、みなさんの安全を脅かすんですよ」と。やっぱり自分ごととして捉えてもらったことも重要なのかなと思います。

「Why」から考える必要性と有効性

最後にまとめに入らせていただきます。今回のワンタイムパスワードの例でお話ししましたが「プロダクトアウトなんてダメだ、マーケットインだ」と、僕もついつい、当たり前のように部下に言ってしまいます。わかっているつもりなんですけれど、やっぱりプロダクトアウトになっていたなと。

確かに「消費者目線で」と言うんですが、お客様にとって無料がいいのかな、お客様にとってどう見えるのかな、という考え方で、やっぱり根底的には甘かった。プロダクトアウトが抜けていなかった。

今回のケースでは、お客様目線や社会目線をすごく深掘りしていきました。13倍という成果も大事ですが、やはり我々もちょっと、マーケティングの仕方として、わかったつもりのことを気付かされたし。今回のグループワークみたいなものって有効だなと思いました。

あのあと「行き詰まったらちょっとやってみようか」ということで、別のプロダクトで、あれとは違うグループワークなどもやっています。

加えてやっぱり「Why」から考える必要性。このへんが非常に有効だったし、今後もこれをやってかなきゃいけないなと思います。

今後の展開はまだ検討中で、あんまり大した内容じゃなく、「外部にはお教えできません!」なんていう大それたものじゃないんですが。実は今、先ほどのCSVの取り組みをさらにアレンジして、第2弾というかたちでセキュリティに取り組んでいこうと思っています。

「みずほWallet」「みずほダイレクトアプリ」リリースの舞台裏

あと、ちょっと最後に宣伝ぐらいしておきたかったなと思いながら。質問もないとは思うので、というか質問されたくないので時間を使っちゃうと(笑)。

(会場笑)

私のところでやっている今一押しの商品が、去年出た「みずほWallet」というアプリです。コンビニなどで「ピッ」とお買い物をする商品。「青いSuica」なんていうかたちで、かなり話題になりました。

こちらが「みずほダイレクトアプリ」。インターネットバンキングのアプリで、ちょうど先週からAndroid、昨日からiOSをリリースしました。実はあえてこちらをご紹介したのは、利便性とセキュリティのバランスで僕らの悩みというか、愚痴をもう1回言いたかったのが半分なんです。アプリを開くと残高などがパッと見れるんです。

今までお客様から「パスワードを入れるのが面倒くさい」というお声が多かったので、残高がパッと見られる。それで振込などのお金の移動をさせるときには、右下のボタンを押して初めてパスワードを入れるんですね。要は通帳を見るのと同じ感覚で、残高を見るのにパスワードはいらないだろう、と思って、僕らはこういうふうにやりました。

それで、「いいね」という声も多かったんですが、中には「こんなの危ない」「ログオフできないのか」と。これはAPIという仕組みを使っているので、ログオフという機能はないんですが……。

セキュリティと利便性について、僕らは毎日非常に頭を悩ませています。そんな雑談と愚痴がてら、新商品のご案内でしたので、よろしければぜひご利用いただければと思います。どうもありがとうございました。

司会者:若宮様、ありがとうございました。

(会場拍手)