モラルがあるチームは主体的に動く
ルールで縛る組織運営の落とし穴

パネルディスカッション 【後編】 #1/4

2019年3月30日(土)、新しい会社の組織のあり方をテーマにしたイベント「チームワーク経営シンポジウム 新しいカイシャとティール組織について語ろう!」が、サイボウズ本社で開催されました。次世代型の組織モデルである「ティール組織」の考え方をヒントに、サイボウズ青野慶久氏、FC今治のオーナー 岡田武史氏、伊那食品工業 塚越寛氏、グッド・ニュースアンドカンパニーズ崔真淑氏、つながりラボhome's vi嘉村賢州氏が登壇。主体的に動くチームに必要な条件や、尊敬されるブランドになるための企業理念について語り合いました。今回は、イベント終了後に行われた質疑応答の様子をお届けします。

モラルがあるチームは主体的に動く

青野慶久氏(以下、青野):後半戦にまいりたいと思います。改めまして、ゲストのみなさんよろしくお願いします。

(会場拍手)

みなさんのご質問をお受けするという予定だったんですけど、若干予定外のことが起きています。質問が100個以上来ています! これは拾いようがないぞということになっておりまして、心を鬼にして選ばせていただきたいと思います。

先ほど控え室でもお話ししていたんですが、やっぱりサッカーチームでも生き生きしているチームとそうでないチームがあると思います。岡田さんが感じるティール組織との共通点はありますか? サッカーチームを作るときに、生き生きするチームってどうやって作るんですか?

岡田武史氏(以下、岡田):……。

(会場笑)

青野:岡田メソッドをちょっとお聞きしたいです。

岡田:それだけで1時間くらい講演してるのに、それをここで?(笑)。

(会場笑)

まあ、1つはチームモラルみたいなものを作るんですよ。モラルというのはルールじゃないわけ。ルールというのは絶対守らなきゃいけない。モラルというのは自然とみんながやるものです。

例えばうちのオフィスが変わったときに、若いやつが「オフィスルールを作りました!」と言ってきた。「えらいな、お前。見せてくれよ」と見たら、「最初に来た人はどことどこの窓を開け、空気を入れ替え……」と。「お前、これがルールか!? こんなことはみんなが自然とやれるようにならなきゃいけないじゃん」と。

文化みたいなものとして、モラルを作らなきゃいけない。ロッカールームは自然ときれいになってるとか。

僕が最初に横浜F・マリノスの監督で行ったときに、初日にフィジカルコーチがコーンを四隅に置いて「ここを1周1分40秒で走れ」ってやってるのを見たら、3分の2くらいの選手がちょっとコーンの内側を走ってるわけ。それで、まじめに走ってる奴がちょっと小馬鹿にされている。でも僕が行って1ヶ月もしたら、1人も内側を走らない。練習生が来て内側を走ったらそいつが馬鹿にされるわけ。これがモラル。

でもコーンにコーチを立てて「そこ回れ!」と回らせたんじゃ、これはルールになる。自然と外を回るチームにしなきゃいけないんです。そういうモラルをまず作って……この作り方は長いからまた(笑)。

チーム哲学の最上位は「エンジョイ」

岡田:その次に、僕は代表チームであってもどのチームに行っても、哲学というものを作るんですよ。チームの哲学というのは、例えばエンジョイとか、だいたいチームによって変えていたんだけど、今は6つに収斂しています。その一番に常にエンジョイというのを持ってくるわけ。

エンジョイというのは何かといったら、楽しむですよね。だいたいJリーグに来るやつなんていうのは、みんな子どものころはお山の大将です。「俺にボール渡せ! 早よ渡せ!」と言ってるのに、レベルが上がってくると「プレッシャーが強いからミスしそうだ。今はいらない」と守りに入るわけです。そんなことをやっていてうまくなったやつはいない。腰が引けて、相手を恐れたりミスを恐れておどおどプレーする。

生き生きとピッチで躍動するようにプレーしなきゃいけない。代表選手だろうがプロだろうが、サッカーを始めたときのあの喜び、最初にゴールをしたときの喜びを絶対忘れちゃいけないとかね。そういうフィロソフィーみたいなものを言っていくわけ。

グラウンドの中ではもちろん厳しいことも言うけど、みんなが最終的に笑顔になる、結果が出てみんながハッピーになるような絵を描かせるわけですよね。

右折が自然とできるようになるのがモラル

岡田:僕はモチベーションビデオというのを作るんです。必ず最初に、ワールドカップで優勝したチームが上げて、みんなで通りをパレードしてる映像から入っていく。そして、日本代表戦で渋谷の交差点でみんながハイタッチしてる絵を出してとかってやるわけ。それを目指していこうなと。チーム作りっていろいろあるんだけど、僕はそういうようなことをしてますね。

青野:塚越さんのところと似てるなと思いましたね。モラルというのがまさに「右折するな」という(のと同じ)。「右折するな」って、たぶんルールにしてるわけじゃなくて、自然とできるように(なるんですよね)。

塚越寛氏(以下、塚越):どんな組織でもそうで、そのバックとして「あの組織が好きだ・チームが好きだ・会社が好きだ」という、要するにファンを作るのが大事ですよということは教えた。

ファンを作るために、自分の会社はまずきれいじゃなきゃいけないじゃないですか。というようなことから、一応理屈で覚えてるということもあるんでしょうね。

それから、体を動かすのは健康にいいじゃないかとかね。理屈はいろいろ教えてあるわけですよ。だけどそのうちにそれが習慣になってきて、自発的にできるようになるから不思議ですよね。みんながやるからってことなのか、どういうことか知らないけど、みんながやってくれますよね。

夢や感動にお金が回る世の中を目指して

青野:なるほど。勉強になります。ビジョンとかもおもしろいですね。理念とビジョンは近いかなと思いますね。みんながパレードしてるイメージを持つというように、ちゃんとビジブルにしていく。

岡田:やっぱり一般の会社を経営してても、うちの企業理念は「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」と。なんでサッカークラブの企業理念がこれなんだと言われるんだけど(笑)、これは僕の行動の原理だからしょうがない。

心の豊かさというのは目に見えない資本を大切にする。この会社とこの会社が同じものを売っていると。この会社のほうが安いけど、この会社の人はどんどんどんどん辞めていく。こっち側は高いけどみんなが幸せそうに挨拶する。こっちを買おう。これは目に見えない資本、信頼というものにお金を払っているんですよ。

要するに数字で表せないもの。僕らは夢とか感動とかしか、売るものがないんですよ。でもそういうものにお金がいくようにならないと、社会というのはうまく回らなくなる。そういう想いでやってるので、理念というものが大事。それをどうやって落としこもうかというのは、僕も今試行錯誤してる。

練習用のビブスと企業理念

岡田:朝礼で唱和というのが俺は苦手で、どうもダメです。でもなにかを決断するとき……例えば1年目のこと。赤と白と分けたりするために、ビブスってあるんですよね。ビブスのスポンサーを取ったんですよ。

ビブススポンサーを150万かなんかで取りました。タオルの町だからビブスをタオルで作れって、タオルで作ったんです。タオルって裏側がパイルで、印刷がのらないんですよ。そうすると、表と裏で色を変えるんです。お前ら色変えろってした瞬間に、スポンサーが見えなくなるんですよ。

「岡田さん、これスポンサーが見えないんですけど」と。そのとき初年度で、150万って僕らにとってものすごく大きかったわけです。「こんなのめったにないですし、スポンサーさんは見ないからいいですよね?」と。

「ダメだ。うちの企業理念は何だ?」と。物の豊かさより心の豊かさを大切にするのに、1回でもスポンサーさんが見て「え?」と思う。信用・信頼が大事なんだよと、作り直させたんですよ。企業理念とかそういうものが、やっぱり最初に生き生きとしたり、みんながやる気になってくる大事なものなんじゃないかなと思うけどね。

尊敬されるとブランドになる

塚越:経済界で尊敬という言葉は、どのくらい活用されてるかね? 私はブランドというのは地域への補償を投資するとかそういうことじゃなくて、尊敬という要素がものすごく高いと思う。

尊敬されるとブランドになる。宣伝をするからブランドになるんじゃないんですよ。尊敬される機能を持たなきゃいけないと思っています。これを大いに議論したらおもしろいと思うね。

青野:それはお客様から尊敬されるんですか?

塚越:そうそう、世の中から。世の中のみんなから尊敬されるものを持つ。うちの連中は密かにうちに会社はある程度尊敬されてるかもしれないという、うぬぼれを持ってるかもわからないよ。

青野:それが誇りなわけですか。

塚越:それが誇り・プライドです。プライドでものすごく大事。「いい会社に勤めてますね」と言われることは、社員にとってすごく幸せの1つかもしれない。

岡田:レッドや。

(会場笑)

「ティール組織になろう!」にはらむ危険

青野:いくつか質問を拾っていきたいと思います。ぱーっと見てて多い質問は、「どうやってこういう組織、ティールっぽい組織を作ったらいいんだ?」「現場の平社員から作れるのか?」「どこから始めればいいのか?」などです。そういったところを嘉村さんの視点から教えていただけませんでしょうか?

嘉村賢州氏(以下、嘉村):はい、ありがとうございます。先ほども言ったように、ティールは正解を目指すものではないということは大前提です。ティールになる必要もないのにティールになろうとすることは、逆に弊害がいっぱいあると思います。

というのも「人はコンセプトになりたがらない」とラルーさんが言ってるんです。ティールに書いてることがどんなにすばらしくても、急に社長に「ティールになるぞ」と言われたら、社員からすると変化ってあまり好きじゃないし。

例えば「もっとみんなが輝いて働いてほしいんだ」とか「もっと仕事で誇りを持てるといいよね」と言われるんだったら、まだモチベートされるかもしれない。けれども、「ティールになるんだ!」という合言葉は基本的にはうまくいかない。

そこは気をつけた上で、どっちかというと「組織がティールになるんだ」じゃなくて、「組織がよりよくなればいいよね」というような旅路は、いつでも始められるかなと思います。

そのときには、やはりなんで変えたいかというのを社長が(考える)。例えば今のよくない状況があったとして、自分のどの考え方が反映されてよくない状況になっているのかとか。ラルーさんは半年から1年は社長の内省だと言っています。

自分の在り方とかで売上を高めるから進化させたいとかじゃなくて、もっと奥の奥にある願いがあって組織を進化させたいんだということがストーリーで語れるようになるまでは、絶対組織の変化は始まらないと言っているんです。

まず社長の内省の旅から始めて、その上で一番身近な存在に「こういう変化の旅を始めようと思うけどどう思う?」と。命令で「変えるんだ!」じゃなくて「こういう願いがあるから一緒にやっていきたいんだけどどう思う?」と。そこもアドバイス・プロセス的にコアチームを作っていって徐々に広げていく。

一斉に各部署ティール化じゃなくて、本当にやりたそうな部署から始めていくということも含めて、いつのまにか全体に広がってきたという感じで。マイルストーンを作ってこの手順でティール化するというのは、ティールに関していうと完全にはまらない。

(一同笑)

青野:オレンジ的やり方でティールにしたらダメってことですね? 

嘉村:ティール組織実現のための3年計画というのはないということですね。

岡田:俺、中期計画立ててその会議やってたんだよな~(笑)。なんか今日ガッカリだな~。

(会場笑)

トップが変わらなければ、なにも変わらない

青野:『ティール組織』はおもしろくて、前半を読んでいるとすごくいいなぁ、いいなぁと思うんです。400ページ過ぎたあたりに、ティールの作り方が書いてあって、絶対必要なものが2つあると。1つがオーナー。もう1つはトップのCEO。それって「トップが変わらなきゃなにも変わらないってことか!?」みたいなね。

嘉村:それ以外のメンバーから変えようという試みは無駄に終わると書いてます(笑)。

(会場笑)

青野:現場から変えられないという衝撃ね。

崔真淑氏(以下、崔):現場の人からはなかなか変えられないと言ったんですけど、例えば現場の人が「これはトップ困るわ」ということで、誰か外の人からトップの人に言ってもらうとかそういう回りくどいことはダメなんですか?

嘉村:そういうので本当にトップの人に話し合っていただけて、トップが変容していくという可能性があるんだったら、それは変わるかもしれないです。トップが違って、オレンジとかアンバーかレッドなのに、ほかをティールにしようというのは不可能だということです。

青野:厳しいですね~。

嘉村:ただティールって引き出しが増えるようなものなので、健全なオレンジとか健全なグリーンはどんどん進化し続けると思います。社長が変わらないと全部をティールにするのは無理というのは、ラルーさんはきちっと主張されているという感じです。

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