フランス語には「涙袋」という言葉がない

久保友香氏(以下、久保):2014年頃、ヨーロッパに行く機会があったので「他の国のつけまつげはどんな感じなんだろう」と思って、けっこう隅々まで調べていったんです。これは玉置さんがいらしたドイツで売っているもので、一番たくさんそろっているメーカーさんのものです。

でも見てみると全然違うんですよね。(スライドの製品を1つ指して)これとか、もう(笑)。「ナチュラルな人間のまつげ」みたいな話では全然ないし、高いです。ドイツはそもそも、みなさんあまりお化粧をしないですよね?

玉置:そうですね。私が住んでいた当時も、日本人としては普通なんですけど、例えばメイク落とし・洗顔・化粧水・乳液・化粧下地などを置いていると、一緒に住んでる子が「これ、なにに使うの?」「そんなにお化粧するの?」とすごく興味を持っていました。

久保:するならばパーティーの時とか。だから(スライドを指して)こういうゴージャスな感じになるわけなんですね。

玉置:そうですね。ただ、フランスで実施されたJapan Expoに出店したんですが、その時につけまつげの体験をしたんですよ。ヨーロッパの方はみなさんまつげがすごく長いし目も大きいので、興味を持たれないんじゃないかなと思ってたんですが、行ってみると長蛇の列でした。

感想を聞きますと、「つけまつげってこういうの(派手なもの)しかなくて、ナチュラルなものを探していた」みたいな。「こういうのが使えたらいいな」と言われる方が非常に多かったです。

久保:私もちょうどその時Japan Expoに行っていてお見かけしたんですけれど、すごい行列でしたよね。その後、地べたに座ってフランス人の子がコージー本舗さんのつけまつげをつけあったりしているのを見かけました。

知ればみなさん使うけれど、知らなかったのですね。あの時コージー本舗さんのブースの前でやっていたトークイベントで「涙袋」という言葉がフランス語訳できないと言って騒いでいましたよね(笑)。そのくらいみんな意識したことがない、だから言葉もない、みたいな。

玉置:みなさんあるんですよね。

久保:作らなくても涙袋がありますよね、日本人は作らないと涙袋がないから言葉がある。

日本人のまつげへのこだわりは、世界では類を見ない

久保:(スライドを指して)ちょっと写真が小さくなっちゃうんですけど、イギリスで1つすごく品が揃っているブランドさんがあって。そこで売っているものを見ると、ヨーロッパの中では一番日本のものに近いなと思ったんですけれども、それでもまず値段が全然違って。

他国では、普通1組1,000円以上ですよね。でも日本はずっと安くて数百円。100均でも売っているくらい。しかも見ていると、先ほど1972年にはすでに先細りのデザインが出てきていたという話がありましたが、未だ世界ではほとんど先細りのデザインってないですよね。先がぱっつんですよね。

玉置:ぱっつんのものが多いです。

久保:先ほど、ドーリーウインクという商品から(まつげの並びが)不規則なデザインが日本では広まっていったというお話を聞きましたが、他国ではほぼないですよね。イギリスのすごくたくさん揃っているブランドの商品でも、基本的に、規則的なデザインだけでした。

玉置:そうですね。

久保:日本は本当にコージーさんが引っ張っていらして、異常な進化を遂げていますよね。

玉置:そうですね。あとは使われる方のこだわりも日本はすごいです。やはり手作りですべて作っていますので、作る人によって若干の差というか、ものによっても多少の差はどうしてもできてしまうことがあるんです。

「最近このまつげのデザインがちょっと違うんじゃないですか」「(使う)毛を変えられたんじゃないですか」というお問い合わせや「何年ごろのあのまつげのデザインが良くて買っていたんですよね」というようなお話もあって。

なので並々ならぬ情熱と言いますか、1ミリの差でも気づいてしまうほどで。お客様からのご要望と言いますか、使う方の完成度の求め方もやっぱり違うのかなと思います。

久保:そうですね。アイラインだけ見ても、日本の人はアイラインを圧倒的に綺麗に引いていて、みなさん器用なので、それに合ったものじゃないと、というのがあるのかもしれないですね。

プリクラの写りに明らかな差が出る、つけまつげの有無

久保:さえりさんは使っていたことはありますか?

夏生さえり氏(以下、夏生):使っていましたね。

久保:今はまた違う雰囲気かなと思うけど(笑)。

夏生:今はもう使ってないです。でも大学の時とかはもう「絶対に使わないと外に出るのが嫌だ」というくらい使っていて。しかも、これだけ種類があるにもかかわらず、やっぱりカスタムするんですよ。

久保:やっていましたか?

夏生:やっていました。重ねたりはしないんですけど、「このブランドのこれを買って、これの後ろから3つカットするとちょうどいい」「後ろを使うだけだったらこれが好き」とか。糊1つに関しても「こっちのほうが私には合う」とか、すごくやっていたなあと思って。

ギャルっぽい友だちが家に遊びに来た時も、化粧を落とす前にピンセットで(まつげを植えるしぐさをして)こういう動きを始めて、1束ずつ好きなところに植えていっているのを見ると、すごいなあと思って。でも私もずっと持っていましたね。切ったつけまつげをくっつけてムカデ状態にしたものが部屋で大量に見つかる感じでした(笑)。

久保:大学生の頃はみなさん使っていましたか?

夏生:けっこう使っていましたね。本当にナチュラルっぽい、ふわふわっとしたかわいい子以外は部分的に使っていたりして、みんなかなりつけていたと思います。つけまをつけているかどうかで、実際に見る時よりも、それこそプリで見た時の写りが明らかに違うんですよ。すごい差が出てしまうのでそこで気にしてつけたり、それで調整したりしていたと思います。

久保:それはありますよね、あの頃は。

09年の新入社員は「つけまがないと会社に来られません」

久保:プリはバーチャルの世界だけれども、稲垣さん、女の子のリアルな目の加工についても、けっこう調べていたんですか?

稲垣:そうですね。2005年に入社して、グループインタビューといって、プリを作る時に女の子呼んで話を聞くというので、毎週のように女の子に会いました。先ほどドーリーウインクで第2次ブームが2009年と言われていたんですけど、本当に感覚的には2009年にピークというイメージです。

フリューに来てくれている女子高生もそうですし、フリューの新卒の女の子も2009年入社の子は生粋のギャルで、「つけまがないと会社に来られません」みたいな子が入ってきてという感じで。

最初はギャルから始まるんですけど、けっこうナチュラルな子も「つけまがないとやっぱりちょっと恥ずかしい」みたいな感じになって、かなり一般的になったというところをずっと見ていました。

久保:ドーリーウインクとか、私もいい年だけどふつうに使っちゃっていました。女性と話していると、ドーリーウインクなんて、誰でも知っている名前だけど、たぶん男性だと知らないという方もいるでしょうね。

女の子は誰でも知っていますよね。「あの何番」と言うと「だいたいあれだな」みたいな感じで。今、プリの話に至ったところで、稲垣さんのご経緯を含めてお話しいただこうかなと思います。ではお願いいたします。

稲垣:まずフリュー株式会社についてなんですけれども、「人々のこころを豊かで幸せにする良質なエンタテインメントを創出する!」という企業理念のもと、本日お話しするプリントシール機が中心なんですけれども、他にもエンタメをいろいろやっています。

Webやアプリのサービスをしていたり、オリジナルのカラコンを作っていたり、あとちょっと毛色が変わってUFOキャッチャーの中のぬいぐるみとかを作っていたり、携帯向けのゲームやアニメを作っている会社になります。

プリクラのエンジニアとして入社し、すぐに企画へ転身

稲垣:「私、『GIRLS'TREND 研究所』というところの所長をしています」と先ほど少しお話ししたんですけど、なぜ「GIRLS'TREND 研究所」ができたのかをよく質問されるので、(スライドを指して)簡単に書いています。

フリューはもともとオムロンという京都の会社の新規事業開発で、プリントシール機を作り始めた会社なんですね。かなり真面目な会社でして、すごく真面目にプリントシール機をずっと作り続けていました。

その時に、先ほどもお話ししたグループインタビューというものをすごく重視していて、真面目にプリントシール機を作るために女の子の話を聞いたり、調査したりというところをずっとやってきたら、トップシェアになりまして。

「トップシェアになったなぁ」と思っていたら、結果的に私たちはユーザーである女の子たちにすごく詳しくなっていて、社外の方から「どういうふうにターゲットのことを調べているんですか?」と聞かれるようになってきました。

なので「これはフリューの強みとして、もう少し発信していくといいんじゃないかな」ということで「GIRLS'TREND 研究所」を2012年に立ち上げました。「すべてのGIRLSをHAPPYに」という思いを込めており、7年目になる調査研究機関です。

活動としては、例えば2018年のトレンドなどを調べてニュースレターで配信したり、今日お配りしています「GIRL'S TREND」というフリーマガジンを作ったりしています。あと久保先生と一緒にさせていただいている「盛れる」という言葉を数値化する共同研究もしています。

コラボ・新規ビジネスのトライアルというところで、もしかしたら一番ご存知の方がいらっしゃるかなと思うのは、100円商品が人気のダイソーさんとコラボで商品を作っていまして。フリューの知見でかわいいデザインにしているコラボシリーズがけっこう女の子に人気で好評をいただいています。

私については、言葉でばれるかと思うんですけど、関西出身です。もともとは情報科学を勉強しておりまして、ソフト開発を担当として、当時オムロンエンタテインメントとして、まだオムロンのグループ会社だった時に新卒として入っています。

実は半年ぐらいエンジニアとしてプログラムを書いていましたというところなんですが、その頃の開発、とくにソフトが得意じゃなくて。当時は女性社員が珍しい状態だったので、「商品企画ちょっと手伝ってみないか?」というのをさせてもらっているうちに「自分も企画がやりたい」となって、半年ぐらいから企画をずっとやっています。