一時期のアレルギー研究は間違っていた?
発症条件にまつわるサイエンス

We Were So Wrong about Allergies

小麦アレルギー、そばアレルギー……。多くの人が楽しんでいるであろう「食」について、アレルギーが悩みの種になっている人は少なからず存在しています。それに伴い、アレルギーにまつわる研究は変遷を遂げてきました。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、アレルギーに関する研究の歴史を振り返っています。

アレルギーにまつわるエトセトラ

オリビア・ゴードン氏:親になると、いろいろな心配事がありますよね。子どもに食物アレルギーがある場合はとくに、話はぐっと複雑になります。子どもがコンセントをいたずらしたり大通りに行かないよう気を配る以外にも、ピーナッツや甲殻類、牛乳、卵を口に入れないように注意を払わなければなりません。

ヒリヒリ痛んだり、口が痒くなったり、じんましんが出たり呼吸が苦しくなったりといった症状が、急激に悪化して生命にかかわる緊急事態に発展する可能性もあるからです。基本的に、子どもの食物アレルギーは冗談事では済まされません。

ですから、そう遠くない昔に、医師が現在とは真逆の、悪化を招きかねないアレルギー対策を勧めていたと聞けば、みなさんは真っ青になるのではないでしょうか。

ところでなぜ、これほどまで誤った認識がなされていたのでしょうか。ことの発端は、食物にアレルギーを持つ子どもが急激に増加した1990年代半ばにありました。医学界が注意喚起して、食物アレルギーの発症を防止する対策を模索しました。2000年、米国小児科学会が一つのアプローチを起こしました。

アレルギーリスクの高い子どもには、ある程度の年齢に達するまでは、発症率の高いアレルゲン食品を与えないように勧告を始めたのです。牛乳を与えるのは1歳以上、卵は2歳以上、ピーナッツや魚介類は3歳以上とされました。

ところで、これらのガイドラインは主に専門家の感覚で決められ、根拠となる研究はわずかでした。

一例として、1990年にニュージーランドで実施された、あるグループの子どもたちが10歳になるまでの追跡調査があります。生後4か月までに食事で複数のアレルゲンを与えられた子どもは、食物アレルギーとの関連性が深い、再発性もしくは慢性の湿疹を発症しやすいというものです。

1994年の類似の調査では、食物アレルギーのある両親を持つ113人のフィンランドの子どもが対象となりました。5歳児を調べたところ、生後3か月で固形食を始めた子どもは、より遅い時期で始めた子どもよりも、明らかにより多くのアレルギーを発症したというのです。

1999年には、ヨーロッパの大きな医療団体が、固形食を生後5か月未満で始めると食物アレルギー発症のリスクが高まるという、より正式なリポートを発表しました。時が経つにつれ、赤ちゃんにアレルゲンの食品を与える時期を遅らせるよう医師がアドバイスすることに賛同する医療団体が増えていきました。

「生後6か月」をターニングポイントとする新説

ところが、2006年頃から、真逆の説を唱える研究が出始めました。過去の研究には、訂正するべき誤りはなんら見られないにも関わらず、データがまったく異なる様相を呈し始めたのです。

例えば同じ年に、1,600人の赤ちゃんについて、誕生時から5歳までの追跡調査の結果が発表されました。この研究では、生後6か月以降の遅い時期に小麦を食べ始めた赤ちゃんは、小麦アレルギーを持つリスクが高まることがわかったのです。

こうしたデータは増加の一途をたどって、じきに転換点に達し、2008年、米国小児科学会はスタンスを変更しました。過去と同様に、大手の保健医療機関が右にならいいました。そして、赤ちゃんが固形食を受け付ける様子が見られる4から6か月になったらすぐ、一般的にアレルゲンとなることが多い食物を与えるよう指示するガイドラインが発表されました。

みなさんは、なぜデータが180度変わったのか、不思議に思っていることでしょう。それは、専門家も同じでした。なぜ過去の研究において、アレルゲン食品を与える時期を遅らせるべきだとされたのか、医学者にもわかっていません。さらに、過去の説がまったく間違っていたことが、研究によってどんどん明らかになってきました。

例えば、2015年に行われた『The Learning Early About Peanut (LEAP、ピーナッツの早期摂取) 』研究の臨床試験によりますと、幼児期の早期にピーナッツを摂取する方がよいことがわかりました。

さらに『Enquiring about tolerance study (EAT study、早期離乳食開始の予防効果)』研究では、生後6か月未満の乳幼児にアレルゲン食品をたくさん与えても、害がないことがわかりました。つまり、以前のガイドラインとは真逆の証拠がたくさん出てきたのです。

ところが残念なことに、大規模な食物アレルギー予防の実践となると、総体的な専門アドバイスが構築されていません。赤ちゃんに各アレルゲンをいつ頃与えるか、どれほどの頻度で与えるかといったように、研究もまちまちです。

ちなみに、地理的位置によりアドバイスを変えるべきか、食物アレルギーを発症するリスク因子を持つ乳幼児と持たない乳幼児で、同じアドバイスが通用するか、などの研究も行われています。

しかし、こういった研究を、実際に親たちにアドバイスとして翻案できるほどの根拠は、まだ十分ではありません。始めて食べる食物以外にも、アレルギーの発症に影響する因子があるかどうかなど、より多くの調査が必要となることでしょう。また、調査を要する食物は、ピーナッツ以外にもたくさんあります。

いずれにせよ、乳幼児のアレルゲン摂取時期を遅らせるべきだというアドバイスは、育児界において根強く残っています。また、すべての人に最新のガイドラインの知識があるわけでもありません。

しかし、ありがたいことに、最新の勧告は、小麦やピーナッツのような一般に多いアレルゲンの摂取開始時期を遅らせる必要はないとしています。その代わりに、子どもが受け付けられるようになり次第、多種多様な食品を与えるべきだということになっています。

ところで、みなさん個々人のお子さんについては、私たちSciShowや、当然ですがインターネット育児サイトの見知らぬ人からの言葉を鵜呑みにしないでください。お子さんの食品アレルギーについて深く悩んでいる場合は、きちんと小児科を受診してくださいね。

Published at

SciShow

Hank Green(ハンク・グリーン)たちがサイエンスに関する話題をわかりやすく解説するYouTubeチャンネル。

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