フォロワーの関心が写真からキャプションへと変化

石橋尚也氏(以下、石橋):もともとは、どちらかというと海外旅行に行かれていて?

MOYA氏(以下、MOYA):そうですね。なので、海外旅行で「〇〇のレストランがおすすめ」と書いても、例えばマニアックな国だったら行く人も少ないし、その情報を求めている人もあんまり多くなかったりするので、写真を見ているような感じだったと思うんですね。

今は、写真も見てくださっているかもしれないけど、そのキャプションの内容を読んでくださっている方が多いのかなという気がします。

石橋:ちょっとこう、Instagramの使い方がどちらかというとブログ寄りになっているというか。

MOYA:そうですね。写真にすごくこだわりを持っているんですけど、Instagram+ブログという感じに変えていっているというか、移っているのかなという感じです。

石橋:ありがとうございます。ざっくりですが、先ほどおっしゃっていたライフステージの変化でお子さんもいらっしゃって、Instagramとブログのようなかたちに、ということですけれども、それに対して意識していることはありますか?

MOYA:「意識している」というのは……?

石橋:こだわっているポイントとか。

MOYA:あぁ。視聴者に対して?

石橋:はい、そうです。

MOYA:写真にはこだわっているので……。Instagramはけっこうその世界観、パッと見たサムネでフォローするかしないかが決まってくると思うんです。なので、その1枚の写真よりも、私はもともとサムネイルをすごく気にしています。色味で「あっ、これはMOYAの写真だ」とわかってもらえるように加工したりという意識はあります。

石橋:たしかに旅行に行かれていた時から、今はご自宅の写真などになったんですけど、ずっとトーンは同じ感じですよね。

MOYA:はい。使っているアプリなども徐々に変えているんですけど、違和感がないように変えています。

等身大の自分で、意味のあるメッセージを発信する

石橋:加工のアプリなどを変えていらっしゃる?

MOYA:はい。アプリは変わっていっています。

石橋:へぇ。ちなみに差し支えなければ、どんなアプリを使って……?

MOYA:今は「VSCO」と「Lightroom」をメインに。

石橋:Adobeのやつですね?

MOYA:そうですね。

石橋:では、次のテーマにいきたいと思います。同じような感じになるんですけど、Instagram上でメッセージを発信するという意味で、意識していることがもしあれば教えてください。

MOYA:あくまでも私は一般人なので、等身大の自分で発信しないと。例えば上から目線とか、ちょっと「ぶっちゃう」と、なんだか「えっ?」となってしまうので、あくまで自分は等身大で発信するようにしています。先ほど言ったように、もちろん本音でキャプションを書いているんですけれど、メッセージを伝える上では……。

石橋:ぶっちゃわないようにする、ということですか。

MOYA:そう、ぶっちゃわないように。嫌味っぽく書かないようにとか、嘘はつかないように、というのは基本として意識はしていますね。

石橋:けっこうあれですか、Instagramのフォロワーが多い方々の界隈で、そういう「ぶっちゃう人」というのは、けっこういらっしゃるんですか?

MOYA:あんまり大きな声では言えないですけど、なんだか読んでいて「気持ちよくないな」と思われちゃうと、やっぱりフォロワー離れとかもあるので、そうですね。

やっぱりフォローしてくださっている方に、ちゃんと意味のあるメッセージを届けないとダメだと思っているので。そこはちゃんと、けっこう考えてるのかなぁ。あんまり無意味なものは発信しないようにしようとか。

投稿しないように心がけているもの

石橋:では、アップしないように、投稿しないようにしていることはありますか? 「こういうものは絶対にあげない」とか。

MOYA:やっぱり生活感があるほうがいいとは思っているんですけど、例えば大衆居酒屋で地元の友達とごはんを食べているというのは、たぶんフォロワーの人はそんなに求めていないと思うんですよ。

そういうのは、例えば今だったらどうしてもアップしたい時はストーリーズで親しい友達だけに公開するようにして、クローズにしてあげたりしていて。

あとは、生活感が見えていたとしても、あんまり汚いところというか(笑)。写真ではちゃんときれいに見せていても、裏側だったらいいんですけど、あまりにも生活感じみているものに関してはアップしないようにしています。

それから子育てに対しては、お母さんのフォロワーさんでけっこう鋭い方がいらっしゃるので、おやつなどをあげすぎちゃうと「こういうものを今食べさせていいんですか?」とか、そういうのがやっぱり来るんですね。なので、そういうものはなるべくあげないようにしていますね。

石橋:なるほど。それは質問が来ちゃうからあげないようにしているということなんですか?

MOYA:質問というか、注意してくださる方はいいんですけど、やっぱり中傷というか「こんなおやつをあげていて、母親として終わってる」とか(笑)。たまにそういうのが来てしまうこともなくはないんですね。

そういうのが来るとスルーはするんですけど、やっぱり……ちょっとはどこかで傷ついている自分がいるので、なるべくそういうことに遭わないように注意はしているつもりで書いています。

石橋:炎上じゃないですけど、そういった方に配慮する感じで。

MOYA:そうですね、はい。炎上商法もありますけど、私はそんなにメンタルが強くないので、当たり障りのないようなかたちでやっています。

同世代のフォロワーと一緒に年を重ねていく感覚

石橋:天野さんはいかがですか?

天野彬氏(以下、天野):先ほどのお話でおもしろかったのが、やっぱりInstagramという場自体がちょっと変わっているというか。それ(非日常のこと)だけじゃなくて、より日常のことをみんなシェアするようになってきたし。

それと一緒に、やっぱりインスタグラマーと呼ばれる人に期待する価値なども変わってきていて。MOYAさんは、そういったものを読んでInstagramに投稿されているのかな、という印象を受けるんです。

MOYA:たぶん自分が歳を重ねていることもあるかもしれないんですけど。やっぱり、自分が旅行をしていた時は旅行のインスタグラマー、海外のインスタグラマーにすごく憧れていて、トラベル系のインスタグラマーばっかりフォローしていたんですよ。

今30歳を過ぎて、自分の子どもも持ってとなると、日本で一緒のタイミングで子育てをしているママとか、家を建てるとなったら、やっぱり家を建てる人のインスタなどを参考にするようになって。

自分が歳を重ねていくごとにライフスタイルは変わっていくから、自分が興味を持つ人も変わっていく。自分も変わっていっていることもあるのかもしれないんですけど、フォローしてくださっている方はけっこう同世代の方が多くて。そういう意味では別に変えていってもいいのかなと思って、自然に変えていったところはありますね。

石橋:同世代が多いということは、ちょっと前は25歳とかそういう感じの人たちが多かった?

MOYA:そうですね。一緒に歳を重ねていっているので、たぶん同じような境遇の人が多いのだと思います。なので、それによって変えていく感じで、今後ももしかしたら変わっていくかもしれないです。

「Instagramをやっていてよかったな」と思うとき

石橋:わかりました、ありがとうございます。じゃあちょっと次の質問にいきたいと思います。Instagramでの活動でおもしろいこと、大変なことがありましたら教えてください。

MOYA:圧倒的におもしろいことのほうが多いですね。まずは人脈がかなり広がっているというのが多くて、仕事面でもそうですけど、一緒に遊んで休日を過ごしている友人は、比較的Instagramで出会った友達が多いですね。

Instagramで出会うのは、今はけっこうありきたりなのかもしれないですけど、私の友達が増えていったのはちょうど4〜5年前ぐらいなので、まだInstagramのフォロワーさん同士で会うのは、なんだか出会い系みたいで怖いと思われていたぐらいなんですよ。

そういう頃、ちょうど旅行に行っている時にフォロワーさんから「私も旅行好きなんです」というようなメッセージが来て、「じゃあ会いましょう」となって会ったのがきっかけなんですね。そういうのがずっと広がっていって。

Instagramだと、パッと見ただけで趣味がわかるじゃないですか。「この人は旅行好きなんだ」「同じぐらいの子どもがいるんだ」とか。フォローしていると、フォローした人もこっちのことが気になってフォローを返してくれて友達になっていったりするので、そういう意味では一生の財産が得られたなと思っています。

あとはInstagramが名刺代わりでもあって。もちろん代理店さんからお仕事を依頼していただくこともあるんですけれど、直々に自分の好きな企業さんからメッセージが来ることもあるので、そこは「Instagramをがんばっていてよかったな」とすごく思う時ですね。

大変なことはプライバシーの問題と案件のマッチング

大変なことは、先ほどもちょっとかすったんですけど、やっぱり子育てとか、シビアになるところではプライバシーの問題とかですね。ちょっとストーリーズにあげたりしたら、なんか「私、ここにいました」「私も同じ場所にいました」とかになっちゃって、プライバシーの問題というか、そういう……。そうですね、今はそういうプライバシーのことを一番気にしていますね。

仕事だと、キャスティングしていただいても、どうしても自分の中でうまく消費・消化できないだろうな、うまくPRできないだろうなと思うというか。そこはうまく説明できないんですけど、葛藤があるんです。これは私がPRするのを断ればいいんですけど、キャスティングはしてもらったけど「なんとかできないかな?」というような(笑)。

石橋:ミスマッチな案件?

MOYA:そう、ミスマッチな案件なども自分で精査しないといけない。個人でやっているので、それを自分で判断していくことが大変な時もあります。

石橋:ありがとうございます。思いのほか早く時間が来てしまったので、このへんで終わらせていただきまして、本日のまとめにいきたいと思います。

お話ししたこととしては3つだったかなと。それぞれの切り口で一言お話ができたらと思うんですけど、事業者側の視点としては、私のほうからもお話ししたんですけれども最後のMOYAさんのお話にもあったように、ミスマッチな案件のご依頼もけっこうあったりすると思うんですね。

そういったところを我々のようなインフルエンサーマーケティング事業者が整理して、ちゃんとクライアントさんにとってメリットのあるものにインスタグラマーの方をマッチングしします。

基本的にインスタグラマーの方に「やりたい」と思っていただけるような案件をご提供するような基盤を整えることが、我々が今後もっと気をつけていかないといけないところかなと思いました。生活者視点のところを、天野さんからお願いします。

個人として柔軟に変わっていけることがインフルエンサーの1つの価値

天野:信頼性、信望性というキーワードもありましたね。あとは今日のお話をうかがって、やっぱり変わっていくことが1つの価値としてあるというか。ライフスタイルなどの中で、フィードなどを見ると発信するデザインは共通しているというか、統一されていたり。

企業は事業者として変わらないことで信頼性を保っている一方で、インフルエンサーは、個人として変わっていくことで信望性をちゃんとキープしてるんだなと、そういう対比なども見えてきました。

インフルエンサーというのは、生活者と企業の間に立っていて柔軟に変わっていけるところが1つの価値であって、だからこそ企業ができないような情報発信ができたり、そこで生活して変身していく。やっぱりそこが大事な視点なのかなと思います。

石橋:私のほうから最後にちょっと補足させていただくと、今日MOYAさんからいろいろお話を聞いて、本当に本音で投稿されていらっしゃったりしますので、やっぱりそういった部分がフォロワーの方々にもすごく信頼されて、親しみを持っていただけている。そこが大きいのかなと思いました。

そういったことがありますので、案件をご提供させていただいている私たちもそこに気を使ってやっていけると、インフルエンサーマーケティング活動全般として良くなってくるのかなと思いました。

では、本日のお話としては以上になります。ありがとうございました。

(会場拍手)