細野氏が非自民から自民党入りを目指した理由

細野豪志氏(以下、細野):おだちさん、この3年……まあ今は浪人されてますよね。3年の間に(党籍が)失くなったんでしたっけ?

おだち源幸氏(以下、おだち):そうなんです。3年前に落選をして一旦党籍を失くしまして、無所属になって民間で仕事をしていたんです。その間にまたいろいろあって。細野さんもちょっと絡んでいらっしゃったと思うんですけども、いろいろあって。どこに戻っていいのか、分からないような状態ですね。

細野:なるほど。そういう意味では再出発という感じなんですね。

おだち:本当に生まれ変わって。

細野:私の場合は、その間もずっと永田町にはいたので。ちょっと違う意味で「党を出た」というかたちで受け止められてますよね。

私が20年前に民主党に入ったときの党の姿と今の野党というのは、私から見るとまったく別の存在なんですね。当時は自民党が2つに割れて、その1つのかたまりが民主党に収れんした。顔ぶれで言えば羽田孜先生とか、あとは渡部恒三先生とかね。静岡で言うと熊谷弘さんがおられて。

安全保障なんかは共通基盤でやっていこうという雰囲気がすごく強かったんですよね。それが私は2大政党のベースだと思ったので(民主党に)入ったんです。ただ2015年、おだちさんはまだ現職だったかな。

おだち:そうですね。現職でした。

細野:あの局面で安保法制ではっきり与党と野党と別れてしまって、結局案を出さずに反対だけで終わりましたよね。そこから共産党と選挙も共闘するようになって。いよいよこれは、と。「私の考えとは違うな」と思うようになったのが大きかったですね。

ただ、長年非自民でやってきてますから、自民党入りを目指すことに関しては、やっぱり相当ハードルは高いと思います。当然批判もあるし。ただそれを乗り越えてでもやりたいこともあるし、それをやる場所としてね。やっぱり二階派、自民党というのは一番やれる場所じゃないかと自分なりに考えた末に決めたので。後悔はないですけどね。

再び政治を志すことへの意外な反応

おだち:なるほどね。私も実際のところを言うと、政治を離れているときに政党がなくなっちゃったというのが一番大きな理由なんですけども。前回、僕は大阪から出ていって、やりたいことがあって、一緒にやってきたわけなんですけども。

細野:そうですね。

おだち:途中で、ある意味ちょっと頓挫してしまった。一番残念だったのは、やっぱり政権を取っていたときに分裂してしまったというね。あれは本当にやっちゃいけないことで、ガクっときたというのは実際なんですけれども。

私がなぜもう一度政治を志したかということですが、実は私自身がハンターで、猟友会というところにずっと(在籍していたんです)。

細野:へ~。

おだち:その猟友会さんからも、ぜひ一緒にやろうということがあって。今回は地域代表というよりも、全国の仲間の職業代表というか、業界代表のようなイメージでやっております。

細野:過去に民主党にいたのが、今度は自民党で、ということに関してはどうなんですか? 大阪でもけっこう反発はあるんですか?

おだち:私を直接支援してくださっている方々は、逆に「がんばれ」と。やっぱり与党の中の一員として与えられた使命、やりたいことを実現するのが政治家なので。「ぜひ与党の一員でやれ」という声のほうが、僕の場合は多かったです。

細野:なるほどね。例えば(尾立氏と同業の)公認会計士さんとか税理士さんたちの中では、そういう(応援の)声が多いですか?

おだち:そうですね。今まで労働組合的なみなさんにも応援してもらっていたんですけど、もちろん、そういうところは一切ご支援はなくなっちゃったんですけれども。ただ、そうは言っても、組合の中でもこれまでどおり応援してくれるところもあるので。本当に申し訳ないって謝りに行ったんですけれども、「いやいや、応援するよ」と言ってくださるところもあって。

細野:それはうれしいですね。

おだち:ええ、本当にびっくりしました。

政治家のやりがいは政策を実現させられるかどうか

細野:私はやっぱり選挙区がある中で、日々いろいろな人と接していますから、さまざまですね。今言われたみたいに「むしろその(与党の)ほうがいいよ」と言う人もいますけど、やっぱり安全保障などで考え方が違うというので離れた人もいるのでね。正直、なかなか辛いところもありますけれど。最後はもう自分で決めるしかないので。

おだち:そうですねぇ。

細野:決めて、説得をして、理解を得ていく。これしかないですからね。

おだち:細野さんも政権与党の中心でいらっしゃったので、よくおわかりでしょうけど、実際に政策を実現させられるかどうかということで、まったくやりがいが違うと感じませんか?

細野:それはそうですね。政治家は結果が出ないと、ある種のむなしさがあるじゃないですか。

おだち:あります、あります。

細野:なんのためにこういうことをやっているのかな、と感じることがあるから。やっぱり1つでも2つでも結果が出て、手触りのような感覚があると、また次の自分のモチベーションにもなるし。

おだち:そうですね。野球をやっていると「空振り三振!」みたいなね。ああいうのだと、なかなか次に続かないですよね。

細野:そもそもバッターボックスに立てるかどうか。

おだち:バッターボックスに立てないか(笑)。なるほど、なるほど。そうですよね。やっぱり舞台に立って、ヒットでも打とうものなら、次にまたがんばれますし。

政治家に一番求められていることは現実的な対応

細野:私ね、2大政党で政権交代を目指すことも、もちろん意味があると思うんですよ。ただ正直言って、今の外交や安保の状況を考えると、安保法制を白紙撤回すると、それは日米同盟も揺らぐしね。相当厳しい局面になるから、やはり当分難しいと思うんですね。

例えば10年後には、もう1回リアルな安全保障を掲げる政権・政党が出る可能性はあるんだけど。私はそれよりも、政治家の生き方として、目の前で結果を出す。成果を出すほうを選んだんですね。そこは尾立さんと共通かもしれない。

おだち:そうですね。100年先、50年先を考えるのはもちろん政治家の大事な仕事ですけど、目の前で起こっていることにどう対応していくかも、政治家がやらなきゃいけないことなので。このバランスは僕もすごく悩むところですよね。おっしゃったように、現実的な対応がどこまでできるかは政治家に一番求められているんじゃないですかね。

細野:もともと安全保障は、与党と野党でほとんど差がなかったんですよね。2002年、2003年ごろに有事法制を与野党で作ったので。それがここ数年で大きく変わってしまって。私は外交安保については、むしろ今の野党よりもどちらかと言うと自民党に考えが近いので、自分自身は変わってないんですね。

内政は、私は自民党の中に多様な要素があると思っています。アメリカの2大政党に例えるならば、共和党的な要素もあるけれども、民主党的な要素もある。例えば通常国会で幼稚園と保育園、幼児教育無償化と高等教育無償化と児童虐待ですよね。これはもろに、どっちかと言うと……(笑)。

おだち:昔の民主党がやっていた。

細野:アメリカにおける民主党的、世界全体で言うならばリベラル的な立場の政策なんですよね。そういったものを自民党がやる。今は若い人が経済的に厳しいから、それに合わせるかたちで柔軟に変わっていくということですよね。

だから、私の意識は政党としてどうかと言うと、それは外部の方に評価を任せたいと思うんだけれども。私としては外交安保は現実的にやり、内政でダイバーシティやインクルージョンのようなものを大事にしたい。そういう意味では、自分は政策の基本的なところは変えずに、それを実現する手段を変えた、という意識ですけど。

所得を増やしていく順番をどう考えるか

おだち:まったくそのとおりですよね。経済政策的なことを言うと、自民党は大企業というか、企業をまず元気にして、そのおこぼれというか(笑)、果実を働く人が享受するという考え方なんですけど。

前の野党のときはどちらかと言うと、直接一人ひとりの生活、暮らしの底上げのようなことを言っていたんですけれども。今、その順番はいろいろな考え方があるなと思っております。

ただ、結果としては、私はやはり個人の所得を引き上げていかないといけないと思っています。とりわけ今、若い世代の話をされましたけど、非常に非正規が増えて雇用が不安定なので、こういう方々を引き上げていくことは、私は自民党の中でもやっていきたいなと思っています。

細野:野党時代、私が「そこを乗り越えられればな」と思って、なかなか乗り越えられなかったのは、社会保障を充実させることで所得が上がる、と。例えば介護や子育てもそうですよね。その(仕事に関わる人の)人件費を上げることでサービスも充実し、所得も上がるというロジックだったんですけど。これはちょっと、やっぱり一定の限界があってね。

まず経済全体のパイが拡大して、働いている人たちの給料も上がり、税収も上がってこないと社会保障は増やせないんですよね。「社会保障を増やせば経済が良くなる」というロジックはちょっと順番が違う。

あとはパイを拡大する方法として、企業のパイか、もしくは労働者のパイか。労働分配率をどうするかとか。ここは私も尾立さんが言うとおり、やり方の優先順位というか、タマゴが先かニワトリが先かという議論のような気がしますけどね。

おだち:ダイバーシティという意味も含めて、我が国には男女の賃金格差があります。僕は今、ここはもっと政治の力で解決していかなきゃいけないんじゃないかなと痛切に思っているんですね。とくに民間に出て、政治を離れて働いている中で、そこを1つ、すごく感じています。

細野:なんで日本はこんなに差があるんでしょうね? 例えばヨーロッパ、アメリカはもちろんですけど、アジアに行っても、女性がすごく活躍してるじゃないですか。

おだち:女性のほうがすごくがんばっているようなね。

細野:政府の高官などで出てくるのも女性のほうが多かったりね。アジアでもしょっちゅうあるんだけど。日本がなかなかそこまでいかないというのは、ぜひ越えたいですよね。

国民政党であるという自民党の自負心

おだち:そうですね。そこはぜひ一緒に、党の中で声を上げていきたいと思っています。もう1つは最低賃金というか、この部分もちょっと野党的な発想なのかもわからないですけど、できればそこも一緒にやっていきたいと思ってますね。

僕がすごく感じたのは、みんな大人だなぁと(笑)。自民党の方は大人の対応がすごいなと思いましたね。細野さんもおっしゃったように、自民党の中にもいろいろな考え方があって、逆にそれが自民党の強みであり深みであり、国民政党なんだという自負心があるんじゃないかと思っているんですよね。

ですので、僕なんかまさによそから来た者なんですけど、それを温かく受け入れてくれていることを感じましたし。また、この前、党大会に行ってびっくりしたんですけれども、公認証書をもらうじゃないですか。

細野:はい、はい。

おだち:細野さんは、いつもどうやってもらってました?

細野:どうだったかな~?

おだち:記憶ないでしょ?(笑)。

細野:はい、あんまりない。

おだち:違うんですよ。自民党は総裁と三役がバーっと並んで、現職も候補者も1人ずつ総裁から直接もらうというような儀式があるわけです。だから、公認証1つをとっても重みがすごく違うなと感じて(笑)。

前は僕も、どこでいつ公認証書をもらったのかという記憶がないんですよね。形式張っていると言われればそうなんですけれども、そういう大人の対応がすごいなと実は感じましたね。

自民党の仲間づくりに対する意識

細野:自民党の場合は歴史が長いので、そういういろいろな手続きややり方はすごいなと思うことはありますよね。そういう意味の多少のとまどいや、こういうふうに違うんだと感じることはあるんですけれど。

一方で、いるのはみんな「人」なので。別に違う政党にいるからと言って、常にケンカしているわけじゃないんですよね。正直言って、同じ党でも反りの合わない人はいた。一方で、交渉相手で一緒にいろいろやる中で、自民党の人と仲良くなるケースもいくらでもあるので。

そういう人間関係そのものは極端に変わるわけではないんですよね。とくに二階派の場合には、いろいろな人を受け入れてきた歴史もあるから。尾立さんも(会合に)出席できるときはしておられるけど。温かく迎えていただけたところは、非常にありがたいですよね。

ただ、それに甘えちゃいかんので。やっぱり、そのやり方のようなことも含めて、きちっと踏まえてやらなければならないところはあるしね。その中で自分たちがどういう貢献ができるかを考えていかないと。「あとから入れてくれ」という人間の礼節みたいなものはあると。私の場合は、まだ自民党員ではないけれども、そういうふうに感じながら今やってます。

おだち:僕は野党というか、民主党のころしかわからないんですね。実際、自民党はまだ公認してもらっただけで、議員活動を一緒にやっていませんので、わかりませんけれども。その範囲で言うと、自民党の人は仲間づくりがうまいなというのは1つ感じていますね。さっき、伝統があるということを話しましたが、すごく一生懸命に仲間を増やそうとされていることは感じました。

一方、私がいたところはちょっと内紛が多かったなぁと(笑)。トータルで話をして、もちろんみんなで一生懸命やってきたんですが、ちょっと小さなことで揉めることが多かったなという感じを持っています。そのあたりはどうですか?

会合でのお土産やスキンシップに込められた意味

細野:わりと印象的というか、具体的に「ふ~ん」と思ったのは、自民党の人は、会合などにお土産を持ってくる人が多いですよね。

おだち:そうですね(笑)。

細野:二階幹事長などはその代表格ですけど。なにか会合があると、地元のものをお土産に持ってきてみんなに渡すという文化はすごく定着してますよね。それもまた地元のものを持ってくるんですよね。けっこう重たい……紀州の梅干しとかね。金山寺味噌とか、お芋のお菓子とかね。わりとそういうものを持ってくる人が多いかな。お土産は若い人も持ってきますよね。

おだち:そういえば手土産をいつも持ってこられますね。

細野:それが地元のいろいろなものを紹介したり、地元で支援者を増やすことにもつながるんだろうし。

おだち:PRになっていると。

細野:国会にくると、常に地元のことをどう考えているかと問われるから。そこがすごく表れているように感じましたね。

おだち:確かに。そうかもしれないですね。

細野:あとはやっぱり……これは別に野党もやらないわけじゃないんだけど、握手をしたり肩を叩いたりというのをすごくやりますよね。

おだち:スキンシップが(笑)。

細野:それこそ、人間になる前の動物の習性というか、仲良くなるためには毛づくろいをするような。そういう日本の人間の原点に則している。飯を食う、スキンシップ、あとは気持ちを伝えるためのお土産のような。まあわりと日本的と言えば日本的なんだけど(笑)。やられて悪い気はしないというね。

おだち:確かにね。そうですね。

テレビでの印象とは異なる、二階幹事長の人となり

インタビュアー:二階さんは怖い方なんですか? 目も合わせてくれない方? どんな感じの方なんですか?(笑)。

細野:う~ん。どうですか?

おだち:テレビで見ている印象だとわりとお歳を召して、極端な話、「大丈夫かな?」みたいに思われる方もいらっしゃると思うんですけれども。こうやって話すと、すごくシャキッとされていて(笑)。

頭脳明晰で厳しいことをおっしゃいます。甘いことは一切言われません。そういう意味で、ふだんは(ほんわかした)フリをされているのかなと思うくらい(笑)、僕は見た目の印象と違うと感じているんです。細野さんは、お会いになられてどうですか?

細野:そうですね。非常にソフトです。選挙に関しては怖いですよね。

おだち:あ、選挙に関してか。そうだな。

細野:常に地元、選挙ということを考えていて、その話になった瞬間、目つきが変わるとは感じますけど。そのほかの話は、けっこうボケをかましたり、ジョークを言ったり。そういうことをけっこうやりますよね。こっちに気を使わせないように、すごく意識されているかなと。

またそれがけっこう絶妙で。非常に頭脳明晰と、我々が言うのはちょっとおこがましいけど。すごくいろいろなことを考えておられる方だなという印象ですね。とくに私などはよそ者なので、どうすれば私が「いやすくなるか」ということにすごく気を使っていただいてね。

おだち:ああ、そうですか。配慮を。

細野:ありがたいですけどね。恐縮してしまうくらい気を使われますよね。

たたき上げの苦労人ならではの気配り

おだち:僕の場合は、もう選挙のことでしかお会いしていないので、そうなのかなと思いますね。(細野氏の)地元にはもう二階さんは来られたんでしたっけ?

細野:ええ、1回来ていただいて。地元の道路を見ていただいて、それで道路の工事が再開したので。本当にそれはよかったですけどね。

ですから、私が今何を必要としているか、どういうところにすごく問題を抱えているかということも、本当によくわかっておられるから。そこはやっぱり、たたき上げの苦労人のすごいところでしょうね。見習わないといかんな、と思いますね。

おだち:それぞれの自分のグループの議員が抱えている問題点や要望がしっかり頭に入って……。

細野:すごく的確に把握しておられると思いますね。

おだち:そうですか。じゃあ、(細野氏が)二階派に入った(理由もそこにあるんでしょうか)……。

細野:理由はわりと単純で、二階先生がもともと政治活動をスタートしたのは、遠藤三郎先生という、うちの地元の大先輩の秘書をやっておられたので。なんといってもうちの地元に詳しいし、すごく地元にも思いを持っていただいているので。やっぱり地元で政治活動をするのに、そういう人の力を借りたい。そこはもう、明確にそれがきっかけなんです。

おだち:それがまず最初のきっかけですね。

細野:非常に大きいですよね。やっぱり、小選挙区でやっていくうえで地元に少しでも貢献したいじゃないですか。

おだち:そうですよね。

政治の世界でのリベラルというもの

おだち:最近書店でけっこう平積みにされている本で、『なぜリベラルは敗け続けるのか』という本がけっこう売れてるそうなんですけど。

なぜリベラルは敗け続けるのか

細野:若い学者さんですよね。

おだち:ご本人はリベラル支持派だったんですけれども、自戒の意味を込めて書かれているようです。細野さん、あれはどういうふうに感じられました?

細野:岡田さんの発言は非常に興味深いので、Twitterなどでも見ていますけどね。さっき説明されたリベラルというのは、ある種カッコ付きの「リベラル」ですよね。

おだち:なるほど。

細野:世界的な意味で言うと、リベラルというのは、例えば弱者に対する配慮であるとか、ダイバーシティといったものを象徴する言葉だから。私はリベラル的な要素というのは、自民党の中にもあると思っているし、私の中にもあると思っているんですよね。たぶん、さっき言ったリベラルというのは、日本で言われるいわゆるリベラルということなんでしょうね。

それで言うならば、例えば安全保障なども米軍はいないほうがいいし、自衛隊だって予算をかけずに小さくしたほうがいいという。それは確かに理想なんだけど、目の前の北朝鮮の問題や中国の台頭を考えたときにどうするか。確かに、これがちょっと区別できていないと感じることはありますよね。

とくに外交安保の場合は、理想主義を掲げるのは、ある種危険なんですよね。危険だし、国益を毀損する可能性があるから、まず現状を踏まえてそれにどう対応するか。例えば、4年前の安保法制がなかったときにどういう法律を作るかという議論と、4年経ってサイバーディフェンスも含めて実際にいろいろなことが動き出している中で白紙にするかどうかは、まったく違う議論じゃないですか。

おだち:おっしゃるとおり。

細野:残念ながら、今も4年前の議論を引きずっているという意味で言うと、カッコ付きのリベラルの弱さかなという気はしますけど。

現実の問題と将来の理想とのバランス

おだち:僕なんかも自称リベラルなんですよね。カッコ付きか世界的なリベラルかはちょっと置いておいて、自分は真ん中くらいかなと思ってるんですけど。そういう自分ですら、やはり日本をどう守るのかといった中で、「まったく非武装中立でいけるのか」と言われると、この現実を見るとそれは無理でしょうし。

現実に対処しつつ、将来の理想というプロセスがないと、現実は置いておいて一気に理想だけ、というのは、僕は政治じゃないと思っていましてね。そこは今回、自民党というところに籍を置かせてもらって、自分自身もやりがいがあるところだなと思っています。

やっぱり現実は現実であるわけですから、ここの対応はすごく政治家に求められている。細野さんもたぶん、そういう気持ちでずいぶん……。

細野:まあそうですね。例えば、ものすごくシンプルな言い方をすると、「まずは自国を守りましょう。然るべきのちに世界で仲良くしましょう」ですよね。

おだち:もちろんそうですね。

細野:あとは、まずは経済のパイを大きくしましょう。然るべきのちに社会保障。これは順番が逆になると成立しないんですけれど、一見すると、逆のことが比較的説得力を持つケースがあって。それは道徳的にはそうかもしれないけど、政治的には正しくないというか。成立し得ないということをどれくらい自覚するかどうかですよね。

おだち:そうですねぇ。

自民党の中の弱い者の味方でいたい

細野:自民党の中にもいろいろな考えがありますからね。私が自覚的に思っているのは、自民党の中にある弱い者の味方というところ。痛みがわかる人って、自民党の中にもたくさんいるんだけど、そういうところで活動したいなと思いますよね。

私は二階幹事長もそうだと思っています。あんまりそういうふうに思われていないかもしれないけれど、菅官房長官なんかもそういうところがありますよね。ご苦労されているし。あとは、長年私がお世話になった中で言うと野中広務先生とかね。みなさん、なぜかたたき上げだと(笑)。

おだち:細野さんもたたき上げ(笑)。

細野:私はたたき上げかどうかわからないけど。もちろん、代々政治家の家柄の方にもそういう方はいるんだろうけど。そういう意味では、私はどこの馬の骨かわからないところから出てるので。今さら役職を求めたり、そういう気はぜんぜんないんだけど。そこで手触りのある成果が出せれば、政治家を辞めるときに「良かったな」と思えるかなと。それだけですね。

おだち:いいですね、その力の抜けた感じが。僕もそうです。本当にやることをやるだけみたいな。それでみなさんに喜んでもらおうと。

細野:そうですね。人生1回だし、こうやって政治家という職業を選んだわけだから。正直言って、おだちさんなんか政治家を選ばずに会計士をやっていたら、相当いいスーツが着られたかもしれないけど(笑)。

おだち:いやいや(笑)。

細野:ウハウハだったかもしれない(笑)。相当リッチな生活を送れたと思うんですけど。私はそうでもないんだけど、それでも例えば自由な時間とか、いろいろな楽しい趣味とか、充実した人生ってあったわけでしょう。

でも、やっぱりこの道を選んだから。365日、百数十パーセントでやり続けるわけだから。せっかく選んだからには、なにか結果を出したいという思いがしますよね。

おだち:まったく同じです。いっしょにがんばりましょう。

細野:がんばりましょう。

おだち:どうもありがとうございます。