気枯れした「塩漬け人材」ができるまで

田中聡氏(以下、田中):要するに何が言いたいかというと、事業を創る人が本来向き合うべきなのは、市場であり顧客であるはずなんですけども、実際には大事な時間と労力を既存事業詣でや社内の火消しに費やしていませんか、ということです。

じゃあ、そのあたりの社内ネットワークに長けた古参社員が新規事業に向いているのか。必ずしもそうじゃないということがわかりました。もちろん、既存事業の経験を全く持たない転職者がいきなり新規事業につく場合よりは、古参社員の方がパフォーマンスをあげやすい。

ただ、既存事業の在籍年数が長くなれば長くなるほど、これまたパフォーマンスが下がっていく傾向にあることがわかってます。最初は「うちの会社はイノベーションだ。ぜひ、みなさんにイノベーターになってほしい」といって、新入社員の頃に威勢のいいことを言われる。

でも、最初に配属された主力事業部門で長い経験を積んでいくと、そんな青臭いことをいう前に目の前のことをやれ、数字を出せ、と。こうして20年も経つと立派な「塩漬け人材」になってしまうんですね。立派な塩漬け人材になったところで、いきなり「新規事業をやってみろ」と。これではなかなか新規事業が立ち上がらないのも無理はないですよね。

新規事業の業績をプラスにするのは「成長志向人材」

あと、事業を創る人が新規事業に対して事前にどんなイメージを持っているかも、新規事業の業績を左右する重要な要因だということがわかっています。まず当たり前ですけれども、「事業を担当することに対して後ろ向きだった」と答えている人ほど成果が出せません。

ここでおもしろいのが、「前向きだった」と答えている人の新規事業がプラスかというと必ずしもそうでもないということです。では、どんな事前イメージが新規事業に対してプラスの影響を与えるのか。

実は、「成長するための絶好の機会だと思っていた」と答えている人ほど、新規事業の業績はプラスになっているんです。キーワードは「成長」です。

では、なぜ「成長志向人材」が適しているのか。既存事業だと業績目標に対して自分がどれくらい貢献できるか。つまり業績目標を志向する人ほど成果をあげやすいと言われますが、新規事業に対してはそうではない。

むしろ、自分自身が持っている可能性をどれくらい引き出したり、伸ばしたりできるか、ということに関心を持つ学習目標志向性の高い人ほど、新規事業では成果を上げやすいことがわかりました。

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