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バンドー化学株式会社 小林義正 氏(全1記事)

2019.06.24

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会社を一枚岩にし、昭和の営業スタイルをアップデート 創業113年の老舗企業の挑戦

提供:サイボウズ株式会社

2019年5月23日、なんばHatchにて「kintone hive osaka vol.7」が開催されました。kintone hiveは、日々の業務でkintoneを活用しているユーザーが一堂に会し、業務改善プロジェクトの成功の秘訣を共有するリアルイベントです。本パートでは、バンドー化学株式会社の小林氏が登壇。東証一部上場、創業113年のゴム・プラスチック製造企業の知られざる挑戦を語りました。

ゴム・プラスチック製造の老舗企業・バンドー化学

小林義正氏:それでは『kintoneで実現する営業改革』というテーマで、約20分お時間をいただきます。バンドー化学の経営企画部の小林と申します。今日は夏日で暑くなっておりますが、プロフィール写真がなかなかそぐわない写真で申し訳ございません。雪山が大好きな関西人です。5歳の子どもが1人おりますが、かわいそうに親の影響を受けまして、冬山の特訓を受けている写真です。

下の図は私の勤務地を示しています。1目盛が1年で、黒塗りが海外です。非常に“激しく”引越しをしております。社歴の半分くらいは海外で仕事をしております。前の職場の台湾では、SNSを使ったマーケティングやE-Commerceの導入、さらにSalesforceを導入しました。神戸本社に戻り、「お前はITが得意だろうからこの仕事をやれ!」ということで、今現在、営業部門のIT支援の仕事に携わっております。

本日はこのアジェンダの内容でご説明させていただきます。バンドー化学は、神戸にある会社です。製造・販売しているものは、伝動ベルト・搬送ベルトという製品です。

伝動ベルトはさまざまな機械に採用されています。自動車のエンジン・二輪車のCVT、工作機械、さらに農業機械の収穫機には1台に20本以上の伝動ベルトが採用されています。このように、人に見えないところに使われているケースが非常に多いです。コンベヤベルトは土砂の搬送であったり、工場の中、物流倉庫の中で活躍している製品です。

みなさんの目に触れるもので変わったところで言いますと、広告用、ビルや鉄道車両のラッピング広告用のフィルムなどがあります。他にもロボットの手先の部分に使われる部品や、柔らかくて伸びるセンサー、というような製品も生産しております。

製品のアイテム数が数十万点ということで非常に多い。営業部門に対しても非常に負担がかかっており、営業のIT化が求められるところではありました。

15年かけて組織改正しても、仕事のやり方は30年以上前のまま

バンドー化学は創業113年の古い会社です。今日の話題の中で歴史で関係があるのは、2004年に一度、あるSFAを導入しましたが、失敗したという苦い歴史があります。

本題に入りますが、2018年4月からkintoneで構築したSFAを導入しました。ちょうど1年間活用してきて、振り返ってみてどうなったのかをPDCAの切り口でお話ししていきたいと思います。

本日言いたいことは、「バラバラの組織をkintoneのプラットフォームの上に載せて、一枚岩にできるか」ということ。今もずっと開発しておりますので、挑戦し続けているというお話になります。

我々の販売会社が、どうバラバラだったかと言うと、地域ごとに別の会社でした。よって営業マンは会社ごとに使っている書類のフォーマットも違いますし、会社の社長の方針も違いますし、受けてきた教育もぜんぜん違いました。

そういう中で、この15年間をかけて、2017年4月に販売会社の全国統一を果たしました。統一はしたのですが、この中身を見てみますと、仕事で使っているフォーマットややり方は15年前からほとんど変わっていない。もっと言うと30年以上前ですね。昭和な仕事のやり方をずっと続けているということが見受けられました。

唯一、データを全社で共有するのが週報でした。1週間に1回の週報をFileMakerで共有することしかできておりませんでした。

まずはPDCAの「P」。「現状の仕事のやりかたではいかん」という起点になったのは2018年から開始される中期経営計画の立案時でした。営業の販売を30パーセント伸ばして、利益を倍くらいにしなければならない。これは経費をできるだけ削減していくことと、営業効率を上げていかないといけない。

営業の人員はそのままで増加する仕事を回していかないといけない。「じゃあ、どうしたらいいんだろう」ということを半年間かけてタスクチームを組んで、あるべき姿を追求いたしました。

待ちから攻めの営業スタイルに切り替えるために必要なこと

これはみなさんもご存知のマーケティングの4つのPです。我々は先輩方に非常にいい製品を作っていただき、価格も安いので、「ぜひ売りたい」という人が非常に多かった。我々は早期に販売ネットワークを全国に広げることができていました。ということで、営業マンも「待ちの営業スタイル」が定着してしまっていたところがありました。

それに対して、待っているだけではなくて、もっと前から「どのお客さんにいきたいんだ」とか「どういうお客さんの人脈を作っていきたいんだ」といった情報を蓄積して活用していこうという議論になりました。

そういうときはSFAのプラットフォームが必要、人脈を登録していくにはSansanのようなものが必要だよねという話になりました。さらに、お客さんが本当に当社のほうを向いてくれるように、マーケティングプロモーションも強化することになりました。

なぜkintoneだったか。それはもともと当社のベトナム拠点でkintoneを使っており、「日本でもぜひ使ったらどうか?」ということで、当時のベトナム社長から私に非常に強いアピールがありました。私は台湾でSalesforceを使っていましたので、本心は「Salesforceを使いたいなぁ」と思いながら見積りを取りました。やっぱりkintoneは他のSFAツールよりも各段に安かったんです。

さらにkintoneは、プラグインで機能強化ができるということが利点です。我々はITリテラシーの低い営業マンが非常に多いですから、「初心者にレクサスはいらん。やっぱり軽自動車で十分」ということで、安いサービスでスタートさせました。

ただし、イメージとしては一枚岩ではない“ごつごつとした岩の上のような悪路”でもたくましく走っていける、「改造をバリバリに施したスズキ ジムニー」のようなイメージのプラットフォームにしてゆきたいということで今回の開発を進めております。

このシステムを浸透させるためにどういう人たちから「洗脳」していくかを考えましたが、トップダウンは必須と考えました。、実は2004年にSFAに失敗したときの推進者が、現在の全国統一された販売会社の社長をしております。社長としては、2回目の失敗は許されないということでかなり熱が入っておりました。

あとは、やはりデジタルネイティブ世代の若手の営業マンをうまく使っていきたいとなりました。20歳~35歳の若手営業マンにはiPadを配って、ずっとネットとつないで仕事ができるような環境を準備しました。最初に準備したアプリはSFAに必要なものということで、「顧客台帳」「カスタマーレポート」「物件管理」を準備しました。

情報共有が営業マンのスキルアップにつながっている

次は、PDCAの「D」ですが、どういうふうに行動を起こしたかという説明です。まずは全国20拠点を二班に分かれて全国行脚して説明会を開きました。写真は北上営業所での説明会の様子ですが、実は社長の講話をビデオで撮影し、熱く語ったものを見てもらうところからスタートしました。もう一つの写真ですが、我々営業支援部隊の机は神戸にありましたが、そこには座らず、営業拠点でプラットフォームのヘルプデスクというかたちで常駐していきました。

ここからは具体的なkintoneの画面になります。まずは顧客との打ち合わせ議事録を全社でシェアしていました。メッセージ機能を使って意見・アドバイスの交換ができますので、上司だけではなく先輩であったり、さらに転勤した前任者からアドバイスが入ったり。kintoneの基本機能で、非常に有効な機能であったと考えます。

我々はSansanとkintoneを連携をして、会社の名前、部署名、お客様の名前をしっかり正しく入力するということを実践してきました。お客様の名前がデータのユレがなく、正しく入っておりますので、こういうかたちで市場別にソーティングをしています。このお客様はどの市場でどういう業態なのかをkintoneの裏側に覚えさせておいて、一覧画面でユーザーが見られるように工夫しています。

自分が今から攻略しようというお客さん、そのお客さんの競合他社にあたる企業に対して、当社のほかの営業マンがどういうアプローチをしているかということをkintoneから情報収集できます。添付ファイルが一覧画面から参照できるので、どういうプレゼン資料を使ったかも共有し、開発会議に出なくとも、他社の開発状況を把握できる。こうやって営業マンのスキルを上げることにつながっています。

同様に、kintoneの裏側で会社名をしっかり記録していますので、本当に行かないといけない業種・お客様のところに行けているのかどうか、重点業種に対しての活動量も把握できています。

レポーティング業務の大幅な簡素化を実現した仕組み

今回kintone活用の目玉として、従来運用してきた週報業務を楽にしたいと考えました。いま1ヶ月で1,000件くらいのレポートが上がってきますので、これを経営層がいちいち確認していると大変です。まずは各グループ長が本当に全社に共有するものはどういう記事かを選択、支店長は経営に携わるような重要な情報はどういうものかを選択して、簡単に上位報告ができるように3つのアプリを準備しました。

各営業担当者が日々のレポーティングをしっかりできていると、ワンクリックで1週間の今までの週報ができあがる。

さらに支店長は、経営層に上げるような重要な情報だけをチェックボックスにチェックして、アクションボタンで経営層のみが閲覧できるアプリに展開する。経営層は経営層のアプリの中でコミュニケーションを促進していきました。

このような活動で、支店長に対してプレッシャーが非常に強くなりました。ベテランの支店長がいらっしゃいますが、経営層に上げる情報も下のレポートがないと上に上げられない。よって支店長が非常に重要なポジションにいるかたちになっています。紆余曲折がありながら、いま月々1,000件くらいのレポートが上がって来るようになりました。

ここでPDCAの「C」、1年間で振り返ってみてどうだったかですね。ベテランの人たちは「便利になった」と言っています。理由は、今までの週報業務は、実はベテランの人だけで回していたことが判明。レポーティング業務は楽になりました。逆に若手の人に関しては、「仕事が増えた」というふうに文句が出てきています。

逆にユーザーの中で一番利用率が高かったのは女性の内勤者でした。それはなぜかと言うと、もともと外勤営業担当がSFAで使うような基本機能を準備してスタートしましたが、一番使われていたのが見積書でした。やはりふだん使われる書類をkintoneにしていくことが一番利用率が上がることが当たり前ですが再認識しました。

kintoneを使った営業改革で一番うれしかったこと

私は、kintoneの推進活動をやっていて一番うれしかったことがあります。堺の営業所に58歳のおばちゃんがいるんですけれども、「小林、ちょっと来て」と捕まり「kintoneの見積書の一覧画面を見やすくしてくれ」「これこれ、こういう項目を表示して」と細かい調整の依頼をうけました。

やはり普段からなんらかのシステムを利用しているので、ベテランでもITリテラシーは高かった。ベテラン社員を推進役として想定していなかったのですが、おばちゃんでも、kintoneについてどんどん改善したいという意識になっていた。これは非常にうれしかったですね。

ただし、おばちゃんの話を聞いていると、やっぱりいろいろな拠点・地方の営業所の意見を聞いていかないとならなくなり、見積書もどんどん要望を聞いていると、印刷パターンが足らなくなってしまいました。ソウルウェアさんのReportone-Uは最大10パターンしか登録できないということで、改善を加える必要が出てきました。

見積書はまだワークフロー機能(プロセス管理)を使っていませんでした。鹿児島の営業所で、スピード勝負の営業マンが1人います。この営業マンがスピード勝負で「夜討ち朝駆け」で注文を取りにいっているが、金額の大きい社長決裁の見積書は物理的に大阪まで郵送されるということで、スピード勝負に逆行しています。

ここをなんとか問題解決したいということで、対策と次のステップでは見積書のワークフローを実現しました。条件を組んで、決済が下りたものだけが「見積書出力アプリ」にコピーされるというかたちになっています。

我々の関係会社でロボットの製品を製造販売している、ITリテラシーの比較的高い、もともとSalesforceを使っていたチームがkintoneに乗り換えてくれました。そのチームで今回の見積書のワークフローのように、積極的に新しいアプリや考え方のトライアルを小規模でスタートして、それで本体側で使っていくというように進められています。

SFA機能の非常に重要な意味をもつ物件管理。なかなか物件管理が入力されない状況が続いています。先ほど言いましたが、見積書が普段使いでガンガン入力されています。よってそういった情報をkintoneのアクションボタンでコピーするという一工夫を加えました。このようにして、物件管理の活用率を上げていこうとしています。

FAXや紙でやっていた業務をkintoneに移行

さらに普段使いのフォーマットをkintoneにどんどん乗せかえるという挑戦です。それは工場に対して、今までは「設計計算依頼」「見積依頼」「試作手配」「図面作成依頼」「スペック登録」という5つの依頼書があります。プレゼン画面のフロー図を見ていただきますとわかりますように、工場の「製品技術部門」が一手に営業からの窓口になってしまっています。

これらの書類がずっと工場の中を回覧されていますが、実はこれ、全部紙で動いています。営業からすると、「あの書類がどこまで進んでいるのかわからない」といったときに、設計部門の窓口担当者が追い回されます。本当でしたら、設計部門は自分たちの製品の開発に没頭しないといけないのですが、余分な仕事をやらされています。そこで、FAXと紙で回している書類をkintoneに乗せかえ、ワークフローで仕事がどこまですすんだかを見える化しようとしております。

先ほどの5つのフォーマットを1つのアプリに入れました。新人の営業マンでも、今からやる仕事をドロップダウン項目から選ぶと、必要な情報、必要なフィールドだけが表示されるので、必要事項だけ記入して、ワークフローで必要な人に情報伝達します。この挑戦は今年度スタートしており、現在工場部門でトライアルを重ねております。

現在、営業情報や工場の依頼書等をグローバルで共有しようと取り組んでおります。kintoneをGoogle Cloud Platformと連携させ、Google翻訳を裏で動かしております。ワンプッシュで海外の営業担当者が発信した情報を英語→日本語/中国語→日本語に変換してくれます。

kintoneのこのSFAプラットフォームは実際にいまタイでも使い始めていますが、意外とタイの営業マンのITリテラシーが高くて、利用率もだいぶ高い状態をキープしています。

現場の声をタイムリーに具現化した開発チームの裏側

最後に裏話です。みなさんもご存知の名刺管理のシステム「Sansan」を、kintoneにAPI連携させています。これは、30分に1度、sansanでデータ化された名刺情報をkintoneにコピーするというバッチ処理をしております。一番苦労しているのが、「名寄せ」です。

Sansan側では自動的に名寄せがされますが、kintoneには名寄せ機能は無い。その名寄せ情報をkintoneにクレンジングするというのが非常に苦労しております。まだこれは完全に解決はしておりませんので、みなさんの中で解決策をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。

今回、開発業者は「エムザス」さんにお世話になっています。先ほどのお客様レポートアプリ、非常に単純な機能のアプリですが、実は裏でプラグインが14個も動いています。現場からのリクエスト、その要件に対して非常にフレキシブルにエムザスさんに対応していただきましたので、このような細かなプラグインが実装され、利便性を上げています。基本的には他のアプリでも流用できるようにプラグインという形で開発しています。エムザスさんにはプラグインをぜひ外販していただき、プラグインコストを下げて頂きたいとお願いしておきます。

我々がエムザスさんを採用させて頂いた理由ですが、当社もIT統制が非常に厳しく、エムザスさんには情報システム部門との対応を非常にきめ細やかにやっていただきました。ドキュメンテーションやスケジューリング、テストといったところも、非常に綿密にやっていただき、エムザスさんには非常に感謝しております。

kintoneを導入して得られた効果

最後に導入の効果についてお話しいたします。もともとバラバラの組織を一枚岩にできるか、という課題がありました。kintoneの基本コンセプトである、なんでも全社で共有をしていくということ、さらにコメントを入れていくということが有効に機能しました。あとは、ワークフローで組織を超えて情報を伝達していく、共有していくということで、会社組織を超えた一体感ができたのではないかなと考えています。

ITリテラシーはけっこうレベル差がありましたが、最近は社内で「kintone化する」という動詞ができてしまいました。kintoneを魔法の箱と思ってらっしゃるベテランの方が非常に多いんですが、「kintone化する」ことで、「みんなで使える、共有できる、しっかりしたものを作らないといけないね」という雰囲気は醸成されてきています。

「kintone-SFAでビジネスチャンスが増えたか?」「商売は増えたか?」という点ですが、kintoneを導入しただけでは「打ち出の小槌」のように勝手にビジネスが増えるわけではありません。タスクの中でマーケティングプロモーション等を増やし、SFAに情報流入させるようにしましたので、結果的にビジネスチャンスは増えたと考えています。

「仕事は楽になったか?」という質問ですが、「普段使いのフォーマットをもっとkintone化していけば、確実に楽になるだろうなと思っています。我々もkintoneのシステムを使い始めてまだ1年くらいです。まだまだイケてるシステムとは思っておりません。どんどん改善をしていく必要がありますので、会場のみなさまからぜひヒントを与えていただきたいと考えておりますので、このあとぜひお声かけをいただきたいと思っています。

以上です。ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

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