特許は「攻めの発想」で使っていくもの
スタートアップにおける知財戦略の勝ち筋

Session6 会社に眠る知的財産を覚醒せよ! #5/5

IVS 2018 Winter Kanazawa
に開催

2018年12月17日~19日、石川県立音楽堂にて「Infinity Ventures Summit 2018 Winter Kanazawa」が開催されました。19日のセッション「会社に眠る知的財産を覚醒せよ!」には、特許庁長官・宗像直子氏、iPLAB Startups中畑稔氏、エアロネクスト田路圭輔氏、FiNC Technologies溝口勇児氏が登壇。Drone Fund General Partner千葉功太郎氏をモデレーターに、特許などの知的財産の重要性や可能性について語り合いました。

起業の理想は社会課題を解決すること

千葉功太郎氏(以下、千葉):あと10分ぐらいなので、まとめに入っていきたいと思います。ぜひみなさんからご自由に発言をいただきたいのですが、「じゃあどうしていこうか」「どうすればいい」というところでまとめていきたいです。

イメージでいくと、シード、アーリー、シリーズA・Bあたりまでのレンジの中で、今からできること。「CEOの考え方を変える」でもいいですし「CIPOを設置するためには、どうしたらいいか」とか。

具体的に、「こうしていけばいいんじゃないか」「ああしていけばいいんじゃないか」という提言を、会場にバンバンぶつけていただきたいのですが。いかがでしょうか?

溝口勇児氏(以下、溝口):僕は、会社を興すことの理想は、なにか社会の課題を解決することだと思うんですよね。私たちに関しては、もう明確に解決したい課題があった。今まではなにかしらの理由があって、それが解決できなかったんです。例えば生産性・コストのボトルネックとか。ほかにもいろんなものがある。

歴史を振り返ると、世の中の大きな変化は新しいデバイスや新しいテクノロジーの登場で起きているんですよ。

例えば、飛行機というデバイスができたことによって、東京とハワイを7時間ぐらいでつなげたわけですよね。どんなに速く泳いでも、どんなに速い船が出てきても、7時間で到着するのは難しいわけです。移動時間といった課題に対し、飛行機というデバイスができた時に、大きな変化が生まれる。

新しいテクノロジーの代表例は、インターネットで、まさに社会の課題を大きく変えました。今だったらAIとか、その中でもディープラーニングとか。それ以外だと、ブロックチェーンなんかもそうですね。

ですから私は、CEOは「まず自分たちは、どんな課題を解決する会社なんだ?」「なぜ、それは今まで解決できなかったんだ?」ということを考えなければいけないと思うんです。そして、その課題を解決するにあたって、CEO自身が新しいテクノロジーにしっかり触れること。つまり、学ぶことと、新しいデバイスにしっかり触れることです。

ただ残念ながら、CEOは組織を見る・ファイナンスをする・戦略を立てる・マーケティングもする・プロダクトも作る……みたいになってくると、時間がないですよね。

そうすると、いちばん重要なのは、将棋でいうと王将になることだと思うんですよ。あらゆる面に1マスずつ進めるようになる。そのためには、一定の知識・知見を得ること。

そして、それよりも大切なことがあります。1マス進めれば、その領域のプロフェッショナルが誰かを認識しやすくなります。私たちの場合だったら、中畑さんは特許のプロフェッショナルです。

いろんな人に会ってきましたが、これは隣にいるからお世辞で言っているんじゃなくて、彼よりも優れた人を僕は知りません。

デバイスやテクノロジーに触れて、僕の思いついたアイデアが「こんなことができるんじゃないの?」「こんな課題解決ができるよね」となった時に、実行してもらうのは彼なんですよ。

今回、私たちは特許をものすごく出願しましたけど、私はただ思ったことをアウトプットしただけで、本当に実務は全部(中畑氏が)やってくれたんです。そういうパートナーを持つことが大事かなと思います。

知的財産関連のイベントを開催

千葉:それは幸運でしたね。今聞いていて思ったのですが、とはいえ中畑さんの営業をするわけにはいかなくて、要はこういう人材を増やさないとダメなんですよね。「中畑先生的な人材」が日本に大量にいれば、スタートアップはみんな強くなるわけです。どうしたらいいですか?

中畑稔氏(以下、中畑):なかなか「人材」というものは増えなくて。弁理士も、日本で登録している人は1万人ちょいなんですよ。

千葉:でも、1万人ぐらいはいるんですよね? いっぱいいるじゃないですか。

中畑:そうなんですけど、年齢層的にいうと、平均年齢が40ぐらいなんですよ。なので、なかなかスタートアップに対して興味を持ったり、入ろうと思ったりする人がいない。でも、CIPOや先ほど言っていた責任者は、別に弁理士である必要はないんですよ。

今みたいに「社長はなにを考えていて、どこに向かうのか」を読み取って、あとはそれをタスクに落とすところだけやればいい。とはいえ、「じゃあ、なにをやればいいんですか?」ということで、明日からできることとして、資料を用意しました。

この講演で知財対策をやらなくちゃいけないのはわかったと。「じゃあ、なにをすればいいの?」というお話を、来年から隔月で「CIPO Night」として渋谷のTECH PLAYさんでやります。

千葉:知的財産系のイベントとしては、ずいぶん軽くきましたね。「ナイト」。

中畑:ナイトです。「まずはなにをすればいいの?」ということで、軽い感じでどんどん来てほしいです。なので「CIPOになりたい」という人もここに集めて、CEOがほしい社長・CIPOになりたい人など、いろんな知財人材を集めたいと思います。

そして来年の11月に、CIPOカンファレンス、CIPOサミットを計画済みです。

千葉:「CIPO」は、商標登録しているんですか?

中畑:出してます。

千葉:出してます(笑)。

(会場笑)

千葉:我々も使っていいんですか? 大丈夫ですか?

中畑:これは、他の方に独占されないようにするためです。

千葉:なるほど。

中畑:例えば、「CIPO Night」「CIPOカンファレンス」「CIPOサミット」と僕が言うじゃないですか。

千葉:はい。

中畑:そこでよからぬ方が「CIPO」を商標登録したりするんですよ。そうなると使えなくなってしまう。

千葉:じゃあ、これはオープンソースの商標みたいな?

中畑:そうです。なので、「自由に使ってください」です。

千葉:おぉ〜、よかった。一瞬「僕が『CIPO』と言ったら請求されるのかな……」とビビりました。

中畑:(笑)。なので、ぜひみなさんもお越しいただければと。

千葉:これはいい取り組みですね。とくにCEOも来たほうがいいですね。

宗像直子氏(以下、宗像):特許庁も(スタートアップ支援チームの)Tシャツを着て行きますので、よろしくお願いします。

千葉:おっ、特許庁の方もご参加?

中畑:(会場を指して)特許庁の、左から3番目の松本さん。彼もまたベンチャーマインドが溢れる方で、彼からも「なにをすればいい?」という、明日からできることや今日からできることを話してもらえます。

千葉:小笠原(治)さんも。なにをしゃべるんですか?

中畑:そうですね(笑)。エンジェル投資家、投資家目線でなにを見るかを話していただきます。

千葉:みなさん、ぜひ参加してください。田路さんからも、「これからどうしたらいいのか」というみなさんへのメッセージをいただきたいです。

特許は「攻めの発想」で使っていくもの

田路圭輔氏(以下、田路):特許を取る時は、「守りの発想」が考えることのスタートになるのですが、(特許そのものは)「攻め」で使っていくものです。エアロネクストの場合、ライセンスというやり方は、要は技術の普及を早める戦略なんです。

だから「自分たちでプロダクトを作って守っていく」という発想があれば、なかなかマーケットが大きくならない時に、ライセンスという形式で流通させることで、大きくしていくことができる。流通させる戦略を中畑さんと共有して、その戦略を遂行すること自体がCIPOの能力なんですね。

CIPO Nightは、すごくいいアプローチだと思っているんですよ。僕は、経営は技術だと思っているので、経営技術をしっかり教えれば、どんな知財パーソンでも僕は経営人材になれると考えています。そのあたりもCIPO Nightのコンテンツに加えていってもらえれば、おもしろいかなという期待はあります。

千葉:別に弁理士の心得がなくても育てられる、というキーワードですか?

田路:はい。マインドが大事だと思っています。

千葉:マインド。一言で言うと、どういうマインドですか?

田路:会社の知的財産・アイデアを守って会社を大きくしていく。それだけです。知識は後からついてきます。

千葉:だそうです。すごくいいキーワードでした。

あと2〜3分ですが、今日のイベントはいろんな記事でも配信されていくので、ぜひ長官から日本のすべてのスタートアップに対して「ぜひこうしていきましょう」「こうしたほうがいいですよ」「一緒にこうして戦っていきましょう、サポートします」など、まとめの強いメッセージをいただけたらうれしいです。

宗像:ありがとうございます。今日は私自身、大変勉強になりました。やっぱり創業の早い時期から会社のアセットをよく考えて、権利化するものは権利化するという行動を起こしていただければと。その時に、特許庁はできるだけお役に立ちたいと思っております。今日、Webサイトもリニューアルして、情報発信の仕方も改善しましたし。

そして、みなさまのお役に立とうとする私たちの仕事の仕方に、どんどんフィードバックをいただいて、みなさまにも育てていただきながら、私たちもよりよい仕事をしていきたいと思います。どうぞお付き合いのほどよろしくお願いいたします。今日はありがとうございました。

千葉:ありがとうございます。

(会場拍手)

驚くべきスピード感でイノベーションが起きている

千葉:運営の方、もう終わりですか? 時間ですね。では、ほぼ1時間しゃべり通しでいきましたが、楽しかったでしょうか? IVSの中では相当おもしろい、尖ったセッションなんじゃないかなぁと思います。僕も、モデレーターとしてこれを受けた時にワクワクしました。

今日のメッセージは、とにかく我々スタートアップは、シード・アーリー・シリーズAを問わず、この知的財産を強く意識すること。そして、CEO自身がまず知的財産を深く考え、そして社内に誰でもいいから、CIPO……知的財産のことを最優先に考える役目を持った人間を置くこと。

これはたぶん、役員じゃなくてもいいんですよね? スタッフでもいいんですよね? とにかく、責任を持って知的財産を考える・守るという誰かを置けば、一気に変わってくるんじゃないかと思います。

それに合わせて、特許庁でも驚くべきスピード感でイノベーションが起きていています。我々の想像を絶するスーパー早期審査と割引、しかも書類も2019年4月以降は不要になってくるというような改革を、長官ご自身が先導されているので、我々はこのプランを大いに使ったほうがいいと思います。

そして当たり前ですが、日本での成功だけではなくて、グローバルで戦っていくスタートアップを、メルカリに続いて我々はどんどん増やしていきたいなと思うセッションでした。では、今日ご登壇いただいた、長官を含めた4名のみなさまに大きな拍手をお願いします。ありがとうございました!

(会場拍手)

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IVS(Infinity Ventures Summit)

IT業界の一流企業の経営者や経営幹部が一同に会し、ディスカッションやスピーチが行なわれる豪華イベント。普段は見ることのできないクローズドな経営者同士の会話や経営裏話など、日本のIT業界の最先端情報がここに集まっています。
IVSは、主に経営者向けに行なわれる通常のイベントのほか、学生向けに行なわれるワークショップも年に数回開催されています。ログミーでは、公式メディアパートナーとしてその中の人気セッションを全文書き起こし、全部で400記事以上のコンテンツをご覧いただけます。

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