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イントロダクション「チームワーク経営とティール組織」(全2記事)

サイボウズ青野氏「個人の業績に関わらず、ボーナスは一律」 チームワークあふれる会社はティール組織がつくる

2019年3月30日、ベルサール東京日本橋にて「チームワーク経営シンポジウム2019 新しいカイシャとティール組織について語ろう!」が開催されました。同日に開催される株主総会に先駆けて行われたこのイベントでは、サイボウズが目指す「チームワークあふれる社会をつくる」と親和性の高い次世代型組織モデル「ティール組織」をテーマに、著者の嘉村賢州氏や伊那食品工業社長の塚越寛氏 など多彩なゲストが登壇し、さまざまな視点からティール組織の可能性についてディスカッションが行われました。本記事では冒頭に行われた、サイボウズ株式会社 青野慶久氏による基調講演の模様をお送りします。

なぜ土曜日に株式総会をすることになったのか

青野慶久氏:みなさん、こんにちは。サイボウズの青野と申します。本日は土曜日にもかかわらず多数お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

今日はこれから「チームワーク経営シンポジウム」というのをさせていただきまして、そのあと株主総会という流れになっております。

土曜日にさせていただいたのは実は理由があります。去年の株主総会での質疑で「土曜日にやってほしいんですけど」という方が、いたんですね。私は「それ、イヤだ」と言いました。だって、土曜日にやったら社員の人たちが出社してこなきゃいけないじゃないですか。「そんなの、働き方改革推進企業としてできません」とかって、去年は言ったらしいんですけど……。

(会場笑)

手のひらは返すもんですよね。実は社員から「土曜日にちょっとチャレンジしてみたい」という話があって、今回はそうさせていただきました。

(参加者に手を向けながら)あちらの株主様に、実はそう言っていただきました。それで、もう少し広い世代にたくさん来ていただけるかなと思って、今回は土曜日にさせていただきました。

ティール組織に学ぶ、チームワーク溢れる会社づくり

それでは、今から「チームワーク経営シンポジウム」をさせていただきたいと思います。今年のテーマは「ティール組織」です。

サイボウズには企業理念があります。こちらにいらっしゃる方はもうご存じかと思います。「チームワークあふれる『社会』を創る」「チームワークあふれる『会社』を創る」と。このように、チームワークというものにすごくこだわって経営をしている会社です。社会のチームワークをよくするけれども、私たち自身もチームワークのいい会社を目指そうと、やっているわけであります。

少しずつ評価をしていただけるようになってきました。例えば、(スライドを指しながら)この「働きがいのある会社ランキング」という調査が毎年あって、こちらで6年連続ランクインしています。たぶん何百社も登録されているなかから、今年は2位をいただきました。

それから、女性ランキングでも2位をいただいたりしました。自分たちなりに、少しずつチームワークのいい会社を創り始められているかなという手応えを持っております。

ただ、「じゃあ、うちはどうすればいいんですか?」と聞かれたときに、なかなか答えられない。「じゃあ何を目指せばチームワークのあふれる会社を創れるんですか? 何をすればいいんですか?」と聞かれても答えられない。それで「うーん……」となってたんですけど、去年刊行されました『ティール組織』という本に、なんと答えが書いてあったんですね。

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

時代とともに新しい組織のマネジメント方法が生み出されている

これをお読みになった方は、いらっしゃいます?

(会場挙手)

ありがとうございます。けっこういらっしゃいますね。これ600ページもあって、本当『コロコロコミック』ぐらいの厚さなので、ちょっと重いんです。

(会場笑)

読んでもよくわからないんですけど、ただ、書いてある内容はすごくおもしろいです。「あっ、これが僕たちの目指してる組織なんだ」と、感じたんです。

けっこう難解なのですが、イラスト解説版みたいのも出てます。

[イラスト解説]ティール組織――新しい働き方のスタイル

もしよろしければ、『ティール組織』をぜひ読んでいただければと思います。このあと、『ティール組織』の解説を書いていらっしゃる嘉村賢州さんに、解説をいただきたいと思っています。

シンプルに解説しますと、「組織って時代とともに新しいやり方が編み出されてるよね」ということで。「原始的な組織から始まって、だんだん社会の進歩・科学の進歩とともに、新しい組織のマネジメント方法って生み出されているよね」ということが、書かれています。それを色で表すという本になっております。

例えば、「ティール組織」といわれる新しい組織は、情報共有がすごい。とにかく社内に隠しごとがない。経営者が知ってることを全社員が知っている。こういうことが書かれているわけです。

でも、よく考えると「私たちもそれを目指してます」と言われるんですね。サイボウズのなかでも、とにかく経営会議で決まったことをその日のうちに議事録として全社員に知らせようという取り組みが始まっていたりとか。

サイボウズが取り入れた一律で決まるボーナス制度

それから紛争解決ですね。ティール組織というのは、誰かが問題を解決してくれるのではなくて、一人ひとりが紛争解決をしないといけない。意見が対立したときに、解決しないといけない。そのために、新入社員に対しても紛争解決の教育訓練をするんだと。これがティールの特徴なんだと書かれているわけです。

これ、サイボウズでやってるんですね。サイボウズに入社すると、入社3日目に「問題解決メソッド」という、紛争解決のために意見対立を解消する手段について教育されます。「サイボウズ、ティールっぽいところがあるやん?」みたいなね。

それから、責任の取り方なんかもおもしろいです。ティール組織は、自分の役割以外であっても、なにかをする責任を負う。自分の部署とか他人の部署とか関係なく、責任を取りにいくんだと。「あれは違う部署のことだから」みたいなことは言わない。

これも、今サイボウズは取り組んでます。「質問責任」といって、「自分の部署に関係ないことであろうとも、気になったときは質問しなさい。疑問をぶつけなさい。それをしないで愚痴るのは卑怯者がやることですよ」という教育をしています。なんかティールっぽいでしょ? 

それから、あとボーナスですよ。ボーナス。こういうIT企業のボーナスって、すごくがんばったやつがいっぱい取るみたいなイメージだと思いますけど、あれやめたんですね。ティール組織は、個人的な報奨金は完全に廃止という世界なんですよね。がんばったやつ、がんばらなかったやつも関係なく、ボーナスを決めていく。

こういう制度を、実はサイボウズも取り入れているんですね。もっと具体的にいいますと、クラウドサービスの売上金額によって、達成率があって、そこにもとづいて一律的にボーナスの金額が決まるという考え方になります。

このやり方を、なんと最近アメリカでも取り入れました。アメリカの、あのサンフランシスコです。ITのメッカのところでやっているのにもかかわらず、ボーナスの決め方は一律的にやるというのを取り入れたりしています。

ということで、まだまだティールとはちょっといえなくて、(スライドを指して)オレンジ色のようなKPI型のマネジメントをしているサイボウズではありますけど、一歩ずつ進化していきたいと思っております。

神様のような存在の、伊那食品工業 塚越社長

このあと嘉村さんにティール組織の解説をいただいたあと、ゲストをお招きしたいと思っております。今日は、ゲストのお1人として、伊那食品工業の塚越さんにお越しいただいております。私にとっては神様のような存在です。今日もお話をおうかがいできるのを大変楽しみにしております。

『ティール組織』のなかに、1つエピソードが書いてあります。それがこの(スライドの)左側に書いてある絵です。これは何かといいますと、FAVIという製造会社があって、非常にティールっぽく運用されています。

製造業ですので、工具をいっぱい置いているわけです。この工具を、社員の人に貸し出しできるような仕組みにしているんですね。そこで、鍵もかけずに「みんな好きに工具を使っていいよ」みたいなことをやっていたら、なんとそのなかでドリルが盗まれたんだそうです。貸し出ししてたら、社員の人が持っていっちゃったということです。

普通だったらみなさんどうします? 鍵をつけますよね。次はもう持っていかれないようにしようと思って、鍵をつけますよね。なんですけど、この会社はそんなことしなくて、そこに貼り紙を書いた。「持っていかないでね」。それで鍵はつけない。この感じなんですよね。

そのエピソードを読んだときに、パッと思い浮かんだのが塚越さんのエピソードなんです。3年ほど前に塚越さんと実は対談をさせていただいて、その時におうかがいしたエピソードがあります。

伊那食品工業さんで使う道具は会社で買ってますと。ただ、それは社員の人が自分の家の庭の芝刈りをするときなど、私用で勝手に使っていいと。車も無償で貸します。引っ越し用に2トントラックを使ってもOKです。

こういうことをされているんですね。性善説にもとづいたマネジメントをされていて、非常にティールっぽいなと。未来の幸福な会社って、こんな感じなのかなと思いました。

それではここから、みなさまが気になり始めたティール組織について、嘉村賢州さんをお呼びして解説したいと思います。大きな拍手でお迎えください。

(会場拍手)

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