未来を見つめる力がある人は老いにくい
佐々木常夫氏:だから、ある意味では、人はいつでも変われるんじゃないかと。私は、まさか62歳になるまで本を書くなんてことは考えたこともなかった。しかし、頼まれて必死になって書いたんですよ。拙い文章でね。ところが、いろいろとアドバイスをしてくれる人がいました。
2冊目の本は仕事術の本だったので、私がやってきたことを書くだけですから。これは比較的簡単でしたが、表現力というのはいまひとつ。よくネットでの感想が入りますが、当時は、文章は下手だけど心は通じるというようなことを書いてくれる人がいました。ところが、課長の本(『そうか、君は課長になったのか。』)くらいから、だんだん乗ってきたんですね。『働く君に贈る25の言葉』がたくさん出ましたが、これは出たなりに理由があるんですよ。
前の本に比べれば、文章がずっと良くなっているんですよ。大げさに言うと、人は何歳からでも伸びるんじゃないでしょうか。私の大好きな葛飾北斎という画家の傑作のほとんどは、彼が70歳を過ぎてから描いたものです。88歳のときに「天よ、私にあと5年の命を与えたまえ、最高の傑作を描いてみせる」と言って、長野県小布施のお寺の中に、最高傑作を描いたんですよ。
ピカソもそうです。80歳くらいになってから名作を描いているんです。ですから、その人に力があって、伸びようとする、あるいはここまでいきたいという意欲があれば、それなりのものがついてくるのではないかと。やっぱり体は衰えますからね。例えば、三浦雄一郎さんはこの間、(ドクターストップで南米最高峰「アコンカグア」の登頂を)諦めましたね。あれは無理ですよ。
けれども、あそこまでトレーニングをしてやるわけですから。だから、あの方は「絶対に自分の体力を維持しよう」という目標設定があった。未来を見つめる力がある人は、やっぱり老いにくいんじゃないかと私は思います。未来を見つめていると、思考力や想像力が維持できますからね。
尊厳死を選んだきっかけ
尊厳死についてですが、私は自分の母親が75歳で亡くなっています。すこし認知症も罹っておりまして、最初は自宅で私の兄弟が看ていたのですが、認知症が入ったので、最後は病院に入ったんですね。食べられなくなっちゃうということで、胃ろうをすることになりました。