いいアイデアは全部バスタブから生まれる

丸山裕貴氏(以下、丸山):ジェレミーもおうちにお風呂を作ったと。

ジェレミー・ハンター 氏(以下、ジェレミー):作りました(笑)。かなりお金を使いました。

(会場笑)

羽渕彰博氏(以下、羽渕):そう、バスタブっぽいやつ(笑)。

ジェレミー:追い炊きがない国でも使えるんですね。

(会場笑)

羽渕:そっか、ないんですよね(笑)。

ジェレミー:実はこの話にはもうちょっと先があるんです。20世紀、認知工学において素晴らしい功績を残されたドナルド・ノーマンのインタビュー時に「いいアイデアは全部バスタブから」と言っていたんです。

彼は、アイデアというのは、机に向かうことや一生懸命働くことではなく休憩からだと確信して、上司に「オフィスにバスタブを置きたいから12,000ドルくれ! そしたら数百万は堅いんだ!」とお願いしたが叶わず、「そのせいで1億5,000万ドルの損失が出てるぞ!」とも言ったんだそうです。

松島倫明氏(以下、松島):すごい。でもやっぱり、さっきジェレミーが冗談めかして「日本人は休まないよね」という話をしていたけれど。ジェレミーはたぶんそうやって、とくにアメリカの文化と、日本の文化という2つが見えているから聞きたいのですが。

自分の心身の状態を自覚することがなぜ重要なのか

松島:先ほどのスライドでも、「今ここ」というところにまずは意識が向いたとして、それでアクションがあって、リザルトがあって、というステップがありますよね。やっぱりそれがすごくロジカルです。でも、欧米的だとも思える。

今回well-beingの特集をしたときに、こちらのイベントにも出ていた石川善樹さんと一緒にやっているドミニク・チェンさんが書いている記事で、「幸福度」……「どのように幸福を感じるか」ということを各国で調査したそうです。

そうすると、日本や韓国などのアジア系と、あとはなぜか北欧もちょっとそうなのですが、幸せというものが「自分がなにかをやったから得られるもの」というよりは、ラッキーで「外から与えられるもの」としてある、という認識がかなり強いらしいんですよ。要するに欧米と比べると、そうした意識が強いというのがある。

だから、そうした認識の社会にいる人というのは、なにかアクションをして、そのプロセスがあって結果があって、それを受け止めて。それが、今、僕がアウトプットしたことへの見返りのようなものというよりは、もう少し外部にそれをアウトソーシングしちゃっているような気がする。

だから、ジェレミーがふだんこうした話をしたときに、なにかアクションがあります。結果があります。それを受け取ります、という話は……例えばアメリカの、それこそGoogleや大企業でやっていると思いますが、そのときのリアクションと、こうやって日本で話したときでリアクションの違いはありますか。お風呂の話から強引につなげてきた日米の差なのですが(笑)、どうですか?

ジェレミー:セルフマネジメントで自分を大切にするということについてでしょうか。まず、講義はエグゼクティブやエンジニアのためにデザインしているので、ロジカルであるのは必須ですね。私が思うのは、アメリカ人に比べて、ほとんどの日本人は自分がどう感じているのか説明できない時が多いなということです。自分の身体に何が起きているのかも説明できません。

自分が何をどう感じているかの説明がなぜ大切なのかというと、身体というのはクルマのダッシュボードみたいなもので、メーターがいろいろな情報を教えてくれるのと同様に、自分がどんなことを感じているのかを教えてくれるものだからです。

何を感じていて、何を体験していて、身体に何が起こっているのかを説明できないと、自分の意識、例えば「どこに行きたいのか」「何をしたいのか」などをはっきりさせて(自分に)正直でいるのは難しいでしょう。それが20年ほどこの仕事をしている中で、最も大変な部分だと思っています。

日本は世界で最も「張り詰めている」国

松島:どうして日本はお風呂があるのに、体のフィジカルな認識がそんなにできないんですかね。

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