「チョコレートは体にいい」ってホント?

マイケル・アランダ氏:チョコレートって、おいしいですよね。私たちが甘いものをたくさん食べたいときに、言い訳として「チョコレートは体にいい」という話をよく耳にすることがあるのではないでしょうか。

その説を支える科学的根拠はいくらかあります。ただ、あなたも感じていらっしゃるかと思いますが、その話には落とし穴が潜んでいるのです。

チョコレートが体にいいという話の根拠には、カカオなどの多くの植物に含有されるフラボノイドという化合物が関係しています。

カカオの種はココアやチョコレートの材料となります。ある研究では、フラボノイドが心臓病のリスクの減少と関係があるとわかりました。ある実験研究では、健康な成人が、特別に作られたフラボノイド含有率の高いココアやチョコレートを食べたところ、血圧が下がることがわかっています。

脳の血流が良くなる研究結果

例えば2015年に行われたある研究では、100人の成人が1日に2回、ココア含有率の高いチョコレートドリンクを1ヶ月間飲み続けたところ、約4水銀柱ミリメートルも血圧が下がりました。水銀柱ミリメートルとは圧力の単位です。わずか2ミリメートルの血圧の低下があっただけで、心臓発作などの心臓疾患のリスクの減少につながるとされています。

他のいくつかの実験も、フラボノイドが脳への血流を良くすることを示していて、血流が良くなると脳の働きがより良くなるというのです。例えば、2014年に「Nature Neuroscience」で発表された論文によれば、高齢の被験者がフラボノイド含有率の高いココアを3ヶ月に渡り飲み続けたところ、記憶力が良くなり、脳の記憶中枢の血流が特に良くなりました。

しかし他の多くの研究では、脳の血流に変化があっただけで、認知力が良くなったわけではなさそうでした。

それに、これらの実験によればキャンディーバーが体に良いというわけではないということもわかります。

健康への影響が見られるまでに数ヶ月かかる事実

これらの実験では、ほとんどの場合、健康への良い影響が見られるまでに何週間、または何ヶ月もの時間がかかっています。

また、実験に使われたココアは特別に作られたもので、フラボノイド含有率が400から1000ミリグラムと特別に高く、スーパーで売られている一般のチョコレートとは処理のされ方が異なります。

400ミリグラムだとしても、普通のチョコレートよりフラボノイドの含有率は高く、同量のフラボノイドを摂取するには毎日通常のダークチョコレートの大きいサイズを2枚は食べなくてはなりません。

もしそうしたとしても、ココアの渋みを減少させるためのプロセスや、ミルクや砂糖などを加えることによりフラボノイドが減少してしまったり、体が吸収できる量に影響があったりします。

実験で使われるチョコレートは、とにかくマズい

それに、これらの実験で使われたフラボノイド含有率を高くされたチョコレートは、特においしくありません。被験者の中には食べられない人もいたほどです。これらの実験ではまずいチョコレートが使われたのです。スーパーではこのようなフラボノイド含有率の高いドリンクやチョコレートは売られていません。

結果として言えることは、チョコレートや他の食物に含まれるフラボノイドが、心臓や脳の健康に多少の益をもたらすという証拠はあります。しかし、それがどのような働きをするかについてははっきりわかっていませんし、さらに重要な点として、この化合物は一般的なボンボンやチョコレートバーにはわずかしか含まれていません。

効果があるほどのフラボノイド量を摂取するためには、食べ過ぎになってしまいます。少なくとも、チョコレートに含まれる砂糖や脂肪が及ぼす悪影響の方が大きくなってしまうでしょう。

ですから、チョコレートを食べるときは、長寿のために食べるのではなく、適量をデザートとして楽しんでください。