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次世代リーダーに求められる問い続ける力、そしてその方法 ~ハイパーコーポレートユニバーシティに学ぶ(全2記事)

2019.05.28

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21世紀型の教養には「編集力」が不可欠 情報を“知性”に育てるLinking Networkの持つ力

提供:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

11月27日、ベルサール東京日本橋にて「三菱商事と編集工学研究所の取り組み事例から学ぶ これからの時代に求められる次世代リーダーとは」が開催されました。次世代のリーダー育成に課題感を持つ経営層等を対象に、リベラルアーツ(教養)の必要性について、3名のゲストスピーカーがプレゼンテーションを行ないました。本記事では、トリを務めた株式会社編集工学研究所・安藤昭子氏による講演「次世代リーダーに求められる問い続ける力、そしてその方法 ~ハイパーコーポレートユニバーシティに学ぶ」後半の模様をお送りします。

生命現象は非線形でしか表せない

メソッドとしての「編集工学」というお話に入る前に、編集工学研究所のスローガンでもある、私たちが非常に大切にしていることについてお話しします。

(スライドを指して)「生命に学ぶ、歴史を展く、文化と遊ぶ」とここにありますが、この3つの言葉を、私たちは普段仕事をするときに傍らに置くようにしているんです。「この3つに自分たちは向かえているか?」ということを自問しながら、仕事をするようにしています。

1つずつ見ていきましょう。まず「生命に学ぶ」とはどういうことかですが、先ほど「編集はあらゆるところに埋め込まれている」というお話をしました。情報の本質を捉えるにあたって、生命というものほど適したモデルはないだろうと考えています。生命という現象にこそ、情報編集の本質があると言ってもいいと思います。

「生きている」という状態は、個々の要素の寄せ集めだけでは現れてきません。構成要素の和から生まれてこない、「生きている」という現象。つまりはなにかが創発してきて、生きているという状態が生まれています。その創発してくるところに、情報の本質があるんじゃないかという見方をするんですね。

生きているという生命の現象は、非線形でしか表せません。線形な捉え方では表せないだろうというところに、「生命に学ぶ」意義があるかなと考えています。

「非線形科学の本質はメタファー(隠喩)に似ている」と、蔵本由紀さんという複雑系の科学者の方がおっしゃっています。松岡が「千夜千冊」で要約してまとめ、紹介していますが、非線形科学とは、今お話ししたような創発ですとか相転移、ゆらぎといったものを扱えるんですね。

つながりを見出すアナロジカル・シンキング

このメタファー、つまり比喩についてですが、蔵本さんが例えておっしゃっているのが「氷山の一角」や「玉虫色」といった言葉です。これは2つともメタファーですね。「氷山の一角である状況」をわざわざ定義しなくても誰もが理解できる。これが、なにかに例えて理解するということです。これはなにをしているかと言うと、一見関係ないものを、ある事象に当てはめて考えてみることによって、私たちはなにかを忽然と理解するということです。

それが、非線形科学や生命における創発、相転移の現象にとても似ているということを、蔵本さんは言っているわけです。ほかにもさまざまな見方がありますが、こういった生命にみられる情報の不思議というか、神秘と言えるもの自体を、私たちの思考方法の中に取り入れていきたいと。それが、(スライドを指して)ここに書いてあるアナロジカル・シンキングという思考法です。

先ほど、ロジカル・シンキングのお話は少ししましたが、それはそれでもちろん大切なものですけれども、最近とくに重要性を増し得ているのはアナロジーです。これはなにかとなにかの似ているところを見出すということです。

「リベラルアーツをなぜ学ぶ必要があるのか?」と関係するのですが、先達がやってきたことを頭に入れておくことによって、「あ、今起こっている現象は◯◯と似ているな」と気づき、考える力にするためにリベラルアーツがあるんだと、先ほどの和光さんのお話にもありました。複雑さが増していく社会にあって、このようにアナロジーで考えることが非常に有効になってくると思います。

見るべきもの、学ぶべきものは歴史の中にある

次に「歴史を展(ひら)く」です。先ほどの藤島さんからのお話の中にも「過去から解放されるため、選択肢を増やすために、歴史を学ぶんだ」という話がありました。これはまさに、先ほどの「歴史的現在に立つ」というところでもあります。

岡倉天心は「われわれは、われわれの歴史のなかに、われわれの未来の秘密が横たはつてゐるといふことを本能的に知る」と、『東洋の理想』という本で書いています。これは『茶の本』の少し前ですね。たしか1903年だと思いますけれども、西洋化の波が押し寄せてくる中で、岡倉天心はこの『東洋の理想』を英語で書き、ロンドンの出版社から出しました。その中でこういうことを言っているんですね。

「本能的に知る」というところがポイントだと思っています。歴史の中にこそ、見るべきもの、学ぶべきものがあるということを、自分たちは本当はわかっているんだということです。

これはもしかすると「セルフ・アウェアネス」につながってくるんじゃないかと思います。自分は何者なのかを、「歴史的現在に立って」見るというかたちで、組み合わせて考えていただくといいのかなと思います。

経済と文化は切り離せない

最後は「文化と遊ぶ」です。(スライドを指して)「経済と文化を切り離さない」と書いてありますね。先ほどの講演でも「好み」とか「数寄」という言葉が出てきましたね。文化を扱うときには、当然ながら私たちの「好み」「数寄」といった内面にある嗜好性は本来切り離せないはずなんです。

「だって好きなんだもん」がまかり通ってしまうような、そういった営みの中で作られてくるのが文化だと思うんですね。そのことと、私たちが普段ハンドリングしていると思っている経済とが、ある時点から切り離されてきたのではないか。これはおそらく、長い人類の歴史から見たらここ100年くらいの特異な状況なのかもしれないです。

(スライドを指して)背景にある絵は18世紀のコーヒーハウスの絵です。ロンドンのコーヒーハウスでは、コーヒーを飲みに集まってきた紳士たちがディスカッションをする中で、そのときにはまだなかったジャーナリズムや広告という概念などが生まれてきました。ディスカッションした内容をある人がメディアにまとめて、なにかを知らせたい人がそこにお金を払ってお知らせを出すのですね。こうして広告というものが生まれていきました。

同じように保険や郵便のシステムが生まれていったりしたように、こういう文化的な営みの中から新しい経済活動が生まれています。このように「経済と文化ってもともと一緒だったよね」ということをたまに思い出してみるのも、ハイパーコーポレートユニバーシティの中で大事にしていることです。

これを松岡は、1980年代後半に書いた『知の編集工学』などで、このように言っています。

「私は、明日の日本には、これまでの真似事とはまったく別のパラダイムを導入するしかないと思っている。そのパラダイムには、まず、〈情報化〉と〈編集化〉を切り離さないこと、すなわち技術をハードとソフトに切り離さないこと、ついでは経済と文化を切り離さないことと決めてかかることではないかとおもう」と。

[AIDA]というコンセプトも、ここに1つ、非常に大事なポイントがあると思っているんです。30人くらいいらしてくださる塾生の方々は、みなさん日々前線で活躍されているビジネスパーソンの方たちです。その方たちをお迎えして、日常の感覚から解放されたところで体験を共有する中で、「やっぱり経済と文化の間って切り離せないよね」と実感を持っていただき、持ち帰っていただくのがとても大事なことと思っています。

分断されたものをつなぎ直すお手伝いが、ハイパーコーポレートユニバーシティの役割

それではまとめに入っていきます。結局のところ、ハイパーコーポレートユニバーシティで編集工学研究所がなにをしているかと言うと、分断されてしまったものを問い直して、つなぎ直すお手伝いをしているんだと思うんです。

これは例えば「アメリカの社会が分断されている」とか「格差が広がっている」といった、目に見える大きな分断だけではありません。先ほどお話ししたような、自分と世界も知らず知らずのうちに分断されているかもしれないし、「国語・算数・理科・社会という分断って、頭の中でも分かれていますか?」ということでもあると思います。そういうさまざまな分断を問い直して、つなぎ直すことが、いま特に必要になっているのだろうと思います。

次世代リーダーが持つべき21世紀の「教養」には、この分断されたものを問い直してつなぎ直すための「編集力」が、やっぱり必要なんだと思うんです。

「編集」を一言で言うとすれば、AとBという異なる情報の「あいだ」に関係線を引いて、分断されたものをつなぎ直して、そこに新しい価値を発見していくことだと捉えています。

「編集力」とは、頭の中でばらばらになっているものを、リンクを張るように、つなぎ直していく行為でもあると思います。

これを「Linking Network」という言い方でよく表現するんですが、編集とはこのネットワークを拡張していく行為でもあります。そうすると、だんだん世界がつながって見えてきます。これこそが「教養」の正体なんじゃないかなと思います。

情報から知識へ、知識は知恵に、知恵は知性へ

例えば本1冊も、自分の外部にあるときは情報です。情報を頭の中に取り込むと、知識になります。その知識を活用していくと知恵になっていきます。その知恵がつながって、知性になっていく。つまり「Linking Network」とは、知性の表れだと言ってもいいかと思います。

「知性とは“つながり”である」と言ってもいいですね。これはぐるっと最初の話に戻るんですけれども、“つながり”とはなにかしらの問いがあるところにしか生まれないものだとです。漠然と情報を受け取っているところでは、つながりは生まれてこない。主体的に問うことを通して、世界は途端につながって見えるんですね。そのことを半年にわたって体験していただく場所が、ハイパーコーポレートユニバーシティなのだろうと思います。

私からのお話はここまでですが、編集工学研究所はそういった「問い続ける」こと、なにかとなにかをつないでいくこと、先ほどオーセンティック・リーダーシップという話もありましたけれども、企業の本来の姿に立ち返っていくことのお手伝いをしています。

自分自身のスタンスで世界を見直すことについて、個人のみならず企業や学校や自治体などに対しても、さまざまな方法でサポートをさせてもらってます。具体的にどんな活動をしているのかは、冒頭でご案内しました会社案内の中にございますので、ご興味があればぜひご覧になってみてください。「問い続ける力」というお話を通して、編集工学研究所が日頃大切にしていることについても、今日はいろいろとお話をさせていただきました。本日はどうもありがとうございました。

(会場拍手)

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