「使うためのリテラシー」はどんどん下がっていく

尾原和啓氏(以下、尾原):やっぱり最初に、テクノロジーの食わず嫌いをどう超えるかって問題がありますよね。どんどん技術ってコモディティ化していくんですけど。

例えばAIって、2年前だとAI技術者になれば一生食っていけるみたいな話があったんですけれども。先ほどのプレゼンでも少し出させていただいた、筑波大学の学長補佐をされている落合陽一さんの研究室って、AIを使いまくってるんですけど、多くの研究生の方々はプログラミングを使わずにAI活用しているんですよ。

レゴブロックみたいな感じで、画像を入力してそれをいくつかに分類します。そこで、「こういう分類ができたら、こういう反応をしてください」みたいな感じで、コードを入れなくてもパーツを組み合わせるだけで使えるようになってきたりしているんですね。

あと、もう一つ大きいのはiPhoneですよね。さっきのフィッティングの技術の裏側で使われてる技術は、HTMLファイルやJavaScriptが簡単になってきているけれども、それ以上にユーザーがただグリーンバックの前に立って、服がうまく合うようにサポートするように動きをしてあげるだけで使えるようになってきていて。ユーザー側の動作というのは、どんどんどんどん直感的になっているんですよね。

とくに去年くらいから、iPhoneでキーボードでタイプするという難しさから、指でピンチしたりっていう簡単なものに変わってきたんですね。

4年くらい前から、「インターネットが目から耳と声に変わる」という言い方をしていて。少なくとももうアメリカでは、音声入力が96パーセントを超えてるので。声だけで「そのレストランで〇〇予約して」とか、「〇〇の商品は何色でこういうものが欲しい」って言えば、それがどんどん表示されていくようになっていっているので。

そういう意味では、使うためのリテラシーというのは、だいぶハードルが下がってくるのではないかなと思ったりするんですけども。

カメラの仕組みがわからなくても写真は撮れる

尾原:AIをゴリゴリやられている勝山さん、そのあたりはどうですか?

勝山公雄氏(以下、勝山):そうですね。正直に言うと、私も今はプログラムをまったく書かなくなっているんですけれども。どっかの誰かが難しい数式をライブラリの塊にしてくれてるんですよね。我々はそれをどこかから見つけ出して、ダウンロードして使うみたいなことをしてるんですね。

何を投げたら何が出てくるのかくらいだけわかっておけば、ぜんぜん使いこなせちゃうというのはけっこうあったりするので。難しいことを一生懸命理解しなきゃいけないというよりは、「誰かがわかるようにしてくれるだろう」と期待して、何を動かしたらどんなことが返ってくるのかだけよく知っておけば、使いこなすのは簡単じゃないかなと我々も感じていますね。

尾原:そうですよね。よくマーケティングの話で、「ユーザーはドリルを欲しているのではなく、ドリルによって作られる穴を欲している」っていうのがあるじゃないですか。

だとしたら、地方行政の方々のやるべきことというのは、「どこの場所にどのくらいの深さの穴を欲しているのか」ということをきちんと理解しておけば、ドリルがどんなかたちで回っているのかとか、そのドリルの先にある金属がどんな硬さのものなのかなんていうのは知らなくても、適切なドリルを当てればそこで穴が作られて、その穴によってなにか新しいものが接続されていくみたいなことがありますよね。

佐々木伸一氏(以下、佐々木):今の話を聞いて思ったんですけど、みなさんはテレビの映る仕組みとかってわかります?

尾原:僕、わかるよ(笑)。

佐々木:電波が来て、受信機みたいなものでどうやって信号を変換して映しているかとか。あと電話とかもそうだし、写真もそう。そんなの知らないから、「写真の真ん中に映ると魂を抜かれる」なんて、明治あたりの人は騒いでたけど。

知っていると、仕組みがわかってなくても「これは映像で残しておくためのものなんだな」っていうことさえわかっていれば、別に使えるので。だから穴のほうですね。記念に残しておこうとかはできるので、そんなビビらなくていいのかなと思いました。

本来の用途と違う使い方から生まれるイノベーション

佐々木:あと尾原さんの話を聞いていて思ったのが、楽天市場に出店してる人たちって、10年前とかから、すっごい変な使い方をする人が多いんですね。

尾原:あ、多い。多い。

佐々木:楽天さんの中では、きちんと定められた仕組みがあります。できるできないとか、あるいは「ここはそのためにあるんですよ」っていうのが。一番わかりやすいのは長期休業文告知といって、例えばゴールデンウィークみたいに長い間、「いつからいつまでお休みいただきますよ」みたいなことを書いておくところなんですけれども。

例えばうちなんかだと……うちって言っても、もう5年も前に辞めてるんですけど。「父の日のときに気をつけてくださいね」って記入するところがあるんです。いつものように、つい送り先を自分の住所宛にしてしまうことがあるんですよ、お父さんに送らなきゃいけないのにね。

それに、あとから「連名にする」とかになると、父の日に到着が間に合わなくなるかもしれないから、あらかじめ「連名の仕方はこうですよ」と書いておくとか。あとは、「代金引換は選ばないでください」とかですね。お父さんのために送ったのに、お父さんがお金を払うというおかしなことになりますから、注意喚起しておいたり。

そういったことを、本来は「お休みします、ごめんなさい」ってことを知らせるためのスペースを使ったりすると、実はそれでトラブル発生率が大幅に下がることがあったり。とりあえず使ってみて、「こうしたらいいんじゃね?」みたいな感じのアプローチであれこれやって、ときどき怒られてっていうのがいいのかなと思いますね。

尾原:そうですね。そうやって技術の進歩って、どんどん直感的になる。一方で、使ってるほうは商売に直結してくれば、どんどんそこに合わせた使い方をしていく。それってすごく大きいことですよね。

いつでもどこでも仕事ができる時代の働き方

尾原:では、次のネタに移りたいと思うんですけど。こうやって僕もバリ島から中継で参加してるし、ヨナーイさん(佐々木氏)はふだん盛岡や大阪とかで仕事をしてますよね。「リモートで働くってさみしくないですか?」とか、「結局リモートで働くことで隔離されて、うまく動かないんじゃないですか?」とか言われます。うまく動くリモートなものだったり、うまく動く地方の違いって何なんですかという話って、けっこうあったりするんですけども。

ここをヨナーイに話させると、たぶん長いと思うのでね。勝山さんとか益子さんとか、リモートでもうまくいく秘訣とかがあれば、ぜひ教えてください。

勝山:私も、趣味の城巡りをしながら仕事をすることがあるんですけど(笑)。何をするときに人と会わなきゃいけないのか、何をするときにその場所にいなきゃいけないのかっていうことをきちんと調整したうえで、どこか好きなところに行って、ネットワークを見つけてつないでメールを送ったりとかしています。

自分で資料を作ったりすることもあるんですけど、そういうときはネットワークにつながっていなくてもいいので。ごはん屋さんにいながらPCを開いて、カタカタやったりしていますね。場所と時間を考えて、自分が一番仕事の捗るところを選んで仕事するみたいなのは、けっこう意味があるのかなぁとは思いますね。

尾原:私もなんでバリにいるかと言うと、目の前にあることを淡々と処理するという仕事は、どんどんAIとロボットに取っていかれちゃうので。そうすると、人間に必要になるのってクリエイティブとか想像力、ひらめきとかだったりする。

そういうひらめきの仕事は、刺激があったときとか、もっと言えば自分の好きなことをやっているときのほうがアイデアが降りてくることもあって。そういう自分の好きなこと、お城の話と仕事の話がうまく想像力でつながるみたいなこととかが、あったりすると思います。

勝山:ありますね。石垣とデータサイエンスがつながってくるということが。

尾原:いやいやいや(笑)。

勝山:ちょっと変なことを言ってますけど(笑)。

AI時代の到来をターミネーターととるか、ドラえもんととるか

尾原:そのへんはどうなんですか? ヨナーイさんは、ずっと地方でやられていたわけですけど。

佐々木:酒蔵なんていうのはすごく老舗だし、働き方とか以前に、そもそもパソコンが全社に導入されていないところがスタートだったので。僕がネット通販の店長を始めたとき、パソコンを持たされてなかったんですよ。「それで何をしろと!?」っていう話なんですけども。

クリエイティブって言っちゃうと、例えばロボットだとかAIに作業の部分は任せてしまって、人間は相手とコミュニケーションをきちんと取ることだったり、クリエイティブなことをしようとなるんですけれども、けっこう自信がないから、みんなおっかながって抱え込む。「いや、でもこれは難しい仕事だから」とか「丁寧にやらなきゃいけない」、「機械に任せて楽しちゃいけない仕事だから」とか。要は、自分の仕事を取られるんじゃないかっていう恐怖が強い人が、たぶん多いのではないかと思っていて。

僕、あるとき気が付いたんですよ。みんなAIとかロボットとかテクノロジーを、自分のことを殺しにくるターミネーターだと思ってビビるんですよ。まともに戦ったら、絶対負けるから。

尾原:(笑)。

佐々木:これは誰かに言われたんですが、「え、なんでわざわざビビるの? 日本人ってドラえもんとうまくやってんじゃん」って。「あ、確かに!」と思って。ターミネーターは自分の部屋にいてほしくないけど、ドラえもんがいるなら、嫌なことはテクノロジーに解消していただいて、好きなだけあやとりしたり昼寝したりしたいわけじゃないですか。

勝山:のび太ですね。

佐々木:そうです、そうです。日本人って、たぶんそっちの使い方のほうが合ってると思うんですよね。変にまじめに我慢して、時間を我慢した代わりに……本来自分の楽しいこととか有意義なことに使っていい時間を我慢して、仕事というものに捧げたから対価としてお金とか評価をもらうっていう考え方自体が、たぶんおかしいんだなと思いました。

流行れば流行るほど、自分の好きなことができなくなる現象

佐々木:さっきの勝山さんの話じゃないですけども、「それ、わざわざ人がやる必要あるかな?」とか、「その場所に行く必要があるかな?」とか。だから僕、最後のほうとかはもうタイムカードがなくなりましたもんね。

尾原:ほう!

佐々木:普通の中間管理職なのに、稟議書を上げないで勝手に会社の経費で出張に行っていいことになりましたし、自分が忙しいと思えば、父の日とかが最繁忙期なんですけども……あ、今日の話って、労基関係のほうに抜けないですよね? 

尾原:どうぞ。おもしろいから(笑)。

佐々木:まあ、自分が働きたいだけ働いていいとか、あとは勝手に休んでいいとかっていう感じで。会社に行って、決められた時間ただその場所にいることじゃなくて、お前が会社としてのミッションをきちんと実現してお客さんに喜んでもらって、収入っていう結果を出すのにベストだと思うパフォーマンスをとりなさいみたいな感じになってきたので。そこをきちんと示せるといいのかなとは思いますね。

尾原:うんうん、そうですよね。人がしょうがなくやってることを、いかにテクノロジーの力で取り除いてあげるか。「本当に人間でしかできないことって何?」ってなったら、「好きだからやるんだ」とか、「テクノロジーと仲良しになってどんどん新しいことができるようになるから、もっともっとトライするんだ」という気持ちを、どう広げていくかが大事ですよね。

実際、楽天市場の店舗さんにもおもしろい話があって。「流行れば流行るほど、店長さんが自分の好きなことができなくなる現象」って、けっこうあるんですね。それが何かと言うと、お店が流行れば流行るほど荷物の在庫管理や配送とか、あとはお金の資金繰りとかが大変になっていきます。こういった業務はやっぱり店長さんがやらなきゃいけないんですけど、流行ることで忙しくなって、「自分はこの商品が好きなのに、どんどんお客様から遠ざかる」みたいなところもあったんです。

楽天技術研究所とか技術の活用で、自動連携みたいなかたちで在庫管理をできるだけ気にしなくていいようになったり、人がそうやって仕方なくやっていることをいかに自動化してあげて、いかにヒューマナイズしていくかってところがありますよね。ほかに、どういう取り組みがあるんでしょう?

「新幹線で移動すること」自体が仕事ではないのであれば

益子宗氏(以下、益子):ちょっと話が変わっちゃうかもしれないんですけれども。さっきの遠隔システムっていうのは、ヒューマナイズするのに一役買っているのかなと思っていて。

今週末、実は楽天市場で「イーザッカマニアストアーズ」という店舗を運営する、ズーティーさんの神戸の実際のお店に、先ほどのとはちょっと違うバージョンのシステムを置かせていただいて、東京のスタッフが遠隔で接客をするんですね。

そうすると、東京のスタッフは神戸のお客様とコミュニケーションがうまく取れるんですけども、実際には移動しなくていいわけです。なので東京での業務をしながら、たまに来たお客様とのコミュニケーションにも注力できるといった活用の仕方ができています。

その部分って、やっぱり人間らしいというか、本来注力するべきところですよね。新幹線で移動するのが業務なわけではないので。そういうところにうまく時間を割り振れるところは、1つ利点としていいのかなと思いました。

あと、こういう遠隔で接客できる技術を使うと、これまでできなかったような働き方みたいなのもできるかなと思っていて。今回の取り組みの延長には、例えばどこかの店舗で働きながら複数の他の店舗にアドホックにサポートで入るみたいなこともできたりしますし、日本だけじゃなくて海外にも行けたりとか、ロケーションがかなり遠いところでも行けたりとか。さらに、自宅からでも参加して働けるみたいなことにもつながって、やがて働き方改革にもつながったりと、いろんな可能性がどんどん出てくるんじゃないかなと思います。

尾原:そうですよね。そうやってつながっていくことによって、ポテンシャルがどんどん広がっていくことがすごくあって。ご質問の中に、ものすごくピンポイントな話の質問がありました。

陥りがちな「データでわかるから現場には行きません」という判断

尾原:「大都市である東京は一人勝ちと叩かれやすい状況があると思います。都市の持つポテンシャルをうまくテクノロジーで活用して日本全体に波及させることとか、みんながハッピーになれるような方策は考えられないか?」というお話なんですけれども。

Eコマースで地方とつながろうと言っているけど、結局東京の一人勝ちじゃないのと。都市のポテンシャルと地方との掛け算みたいなところって、あり得ないですかみたいなご質問なんですけど。データサイエンスで地方を創生しているということで、勝山さんはこういったところってどう思われますか?

勝山:先ほどの尾原さんの講演で、リンゴのことを訴求していただいたと思うんですけれども。まず「青いリンゴと赤いリンゴはどう違うのか?」を見つける必要があるかなと思います。自分を知って、次にアピールをして、それで成果を生むという順序があると思います。

たぶんデータサイエンスでお手伝いできるのは、最初の「そこは青じゃなくて赤なんですよ」っていうことを見つけてあげたり、「ほかの土地にある赤いものには、こういうものがあるんですよ」みたいなものをデータから見つけるということが、まず1つできるかなと思うんですね。データという意味では、そういうところがあると思います。

あと、ちょっと今の話の流れで、私には若干違和感があって。

尾原:お?

勝山:みんな「どこにも行かなくてもいい」みたいな感じになりがちなんですけれども。行かなきゃいけないときは、そうしなきゃいけないってことがあると思うんですね。我々も地方創生の仕事をやろうとしたときに、「その土地のことは東京にいてもデータでわかるから行きません」とするのは非常によくないことなんだと、今感じていまして。

いえいえ、行きます!人と人とのコミュニケーションが必要な場では絶対に行きますということを、申し上げておきたいなと。そう思いました(笑)。

データでわかることは、データでわかることでしかないんです。ちゃんと会話しないといけないことは、やっぱりフェイストゥフェイス(対面)で。今、尾原さんとは遠隔ですけどフェイストゥフェイスみたいな感じになっていますが、本当に物理的に、フェイストゥフェイスが必要なときはあると思っていますので。そういう場面では、きちんとその同じ場所にいるということは大事なんじゃないかなと思います。

Webをきっかけに、リアルへ回帰する流れ

尾原:そうですよね。人間のコミュニケーションって、実は言葉以外のノンバーバルと呼ばれる非言語のコミュニケーションのほうが70パーセントを占めるという研究結果があったりします。それって、やっぱり身振り手振りだったりとか表情だったり、そういったものが大きく占めるので。やっぱり、こういうところが遠隔だとなかなか伝わりにくいっていうのもあります。

あと、逆の話もあって。先ほどの講演の中で、「ネットを通して、データを通して魅力的に」から、やっぱりリアルに行きたいっていう魔力がすごく増えてきています。例えばサーファーの人口って、GoProによって増えたんですよね。GoProって(お笑い芸人の)イモトアヤコさんとかがテレビ番組で付けているような、ちっちゃいテレビカメラです。バンジージャンプで落ちるときの、景色がめっちゃ見えるカメラがあるじゃないですか。あれって、実はサーファーの方が作ったんですよ。

サーフィンという過酷なスポーツをやっていて、「波を抜ける瞬間のきれいさを、人に共有したい」という想いで作られたカメラなんですね。あれができたことで、波を抜ける爽快感を映した動画が、YouTubeでめっちゃ増えたんですね。そうすると、やっぱり「切り取っても気持ちいい、でもその先にもっとヤバいものがあるんだろうな」というものが伝わってきていて。それによって、サーファー人口が増えていると。

今日来られた方は、帰りに時間があれば、ぜひ目黒のスターバックスとかに行っていただくとわかるんですけど。最近の名所って多くがそうで、目黒のスターバックスがうまいのは、インスタで切り取ってもめっちゃかっこいいんですよ。

でもそのスターバックスでは、コーヒーをその場で焙煎している匂いだとか、あと上海だとなぜか煎った豆が空を飛んでいるんですね。天井にチューブが張ってありまして。これって、インスタでは切り取れないんですよね。そうすると、「やっぱりあの場所に行こう」、「仲間と行こう」と、どんどんリアルに人を動かすんです。そういうところがありますね。

どこでも買えるビールを飲みに軽井沢まで足を伸ばす理由

尾原:このへんってヨナーイさん、やっぱりよなよなさんがすげぇうまいよね?

佐々木:そうですね。けっこうというかだいぶメジャーな感じになってきたんですけれども、長野の軽井沢のほうに「よなよなエール」というクラフトビールを製造している、「株式会社ヤッホーブルーイング」さんという会社があって。11〜12年前、ちょうど同じくらいに楽天さんの賞とかいただいて、同じお酒関係の仕事ということで仲良くさせていただいている会社さんがあるんです。

今はインターネットでも、もちろんモノを売ってますし、最近だと東京のあちこち、赤坂や新宿に飲食店もある。あと、たぶんみなさんの街のローソンなど、コンビニとかスーパーでも売ってると思うんですけども。もう、「よなよなエール」は日本全国のどこでも飲めるんですね。

ちょうど明後日なんですが、軽井沢に全国のファンが集う、よなよなエールさんの「超宴」というイベントがあります。簡単に言ってしまうと、土日を潰して、全国各地から軽井沢に、近所のコンビニでも買えるビールを飲みに行くために、数千人とか1万人とかが集まるイベントです。しかも、かなり濃い感じの人たちが集まるんですよ! 

尾原:前回は確か、1万人超えだったんですよ。

佐々木:ここだけ聞くと、意味がわかんなくないですか?「いや、家で買ってきて飲めばいいんじゃねぇの?別に電車賃もかからないし」みたいな話なんですけども。たぶんこれが、尾原さんがおっしゃるように「現地に行かないと得られないもの」なんじゃないですかね。

人は「もの」ではなく、「ものがたり」を買っている

佐々木:ただビールの味を楽しむことだったり、気持ちよく酔うことではなくて、自分が好きなものを応援する喜びだったり。あとは単純に、軽井沢という立地ならではの気候を楽しんだり。それに、自分と同じ趣味嗜好を持っている人たち同士で「うわ、みんなバカだなぁ。わざわざみんな、ビールを飲みに軽井沢まで来るんだ~(笑)」っていう仲間意識や一体感を感じたり。これは、たぶん理屈じゃない。

そのビールを飲んだことがあるからとか、情報として知っているからだけではなくて、逆に知っていることによって、「ここの会社、おもしろいな。このビールを飲みたいな。ここの場所に行ってみたいな」と、人を惹きつけるんじゃないかなぁと思いますね。

尾原:そうだよね。結局「『もの』を買ってるんじゃなくて、『ものがたり』を買ってる」って話なんですよね。もっと言えば、たぶんこの「超宴」に行った人たちは、家に帰っても晩酌でまたよなよなエールを飲むんだけど、「超宴に行ってよかったな、おもしろかったな」っていう思い出を飲んでたりするんですよね。

佐々木:そんな気もしますよね。

尾原:そういう相乗効果みたいなものを、どうやって作っているかが大事なんですけれども。あ、ちなみにこのセッションの間も、先ほどみなさんにお伝えしたQRコードでリアルタイムで質問を受け付けています。僕もずっと見ていて、拾ってみなさんに適宜質問をぶつけていきますので、どんどん質問を入れていただければと思うんですけれども。

で、こういう話をするとさ、「でも、軽井沢だからでしょ?」とか「そのビールが、類まれなおいしさだったからでしょ?」みたいな話って、絶対出るじゃないですか。こういうのって、どうやってクリアしていくんですかね? 

佐々木:さっきのテクノロジー×地域振興の話じゃないけども、みんなはほかと比べて、自分にないものをできない理由にするんですよね。

尾原:勝山さんも益子さんも、入ってきてくださいね。ほっとくと、全部ヨナーイが取りますから(笑)。

佐々木:ほっとくと、あと25分、僕の独演会になりますので。

(会場笑)