Fintechは日本の金融を変えたのか?

飯田哲夫氏(以下、飯田):それでは「Fintechは日本の金融を変えたのか?」ということで、スタートしていきたいと思います。今日はマネックスベンチャーズから(代表取締役の)和田さんにお越しいただきました。和田さんは投資をしていくという観点、私はクラウドというプラットフォームを提供していく観点ということで、それぞれFintechに対する見方は違うところがあるかと思いますけれども、議論を深めていきたいなと思います。

内容ですが、最初にパネラーの紹介、そのあとディスカッションに入る前に、少し議論の前提として、Fintechのトレンドのポイントをいくつか振り返ってみたいなと思います。そのあとに、和田さんにいろいろ質問をしていくかたちで、Fintechの現在と、これからどっちの方向へ進んでいくのかについて話を深めていけたらと思います。

最初にパネラーの紹介です。まず、マネックスベンチャーズ代表取締役の和田さんから、簡単に自己紹介をお願いできればと思います。

和田誠一郎氏(以下、和田):マネックスベンチャーズの和田と申します。よろしくお願いします。

(スライドの)写真は、なんだかいけ好かない感じで撮っているものです(笑)。あまり登壇する機会をいただくことがないので、今日はすごく楽しみにして来ました。

キャリアのバックグラウンドとしては、大学を卒業したあとに、5人くらいの人材系のベンチャーに入りまして、そこで2年ほど働きました。その後、ドワンゴというニコニコ動画などをメインにしている会社の子会社で上場準備をするプロジェクトがあるということで、そちらに転職しました。

そのプロジェクトに2年半くらい携わったあと、ニコニコ動画のゲーム事業ということで、新規事業を担当して、月商数千万円くらいのサービスを作りました。

そのころ、グリーさんやディー・エヌ・エーさんが全盛期で、彼らのコンテンツの売上は月商数億の時代。(ドワンゴの)代表の川上さんが「こんなもの続けられない」ということで、サービスを閉じることになったのをきっかけに、マネックスにジョインしたのが2010年です。

そこから3年くらいのスパンで、僕自身にとってエポックメイキングなことが起きています。まず入社直後に、アメリカの証券会社を買収しました。その3年後くらいに、株主が静岡銀行という地域金融機関に移ることで、オフラインとオンラインの融合、銀行と証券の融合という新規事業の立ち上げみたいなものがプロジェクトとして走りました。それが、マネックスベンチャーズという活動をスタートさせるきっかけになりました。

その約3年後、2018年6月ですが、マネックスベンチャーズの代表取締役になりました。これまではCtoCというかたちで、自分たちのお金だけで投資をしてきたんですけれども、そのタイミングで、私どももスタートアップのみなさまと一緒で、資金調達して外部のお金を使って、レバレッジの効いた投資をしようということで、2019年1月に約30億円くらいのファンドをレイズしています。

こうして、3年ごとにマネックスにおいて大きな動きがありました。象徴的な動きとしては、コインチェックの買収があるかなと思います。

マネックスベンチャーズとしては、2014年から主にFintechにフォーカスして投資してきました。現在のポートフォリオカンパニーの数としては30社程度になっています。内訳としては、だいたい10~15社くらいがFintechで、残りの15社くらいがそれ以外の領域で、投資の幅を広げている会社でございます。

どんな企業に投資しているか?

飯田:ありがとうございます。投資のステージ、あるいはFintech以外では、どういうテーマ性を持って投資されているのかなど、少し教えていただけますか?

和田:ステージに関しては、シード、アーリーというところですけれども、もう少し細かくお伝えすると、だいたい僕らのところにご相談いただくタイミングが、スタートアップさん側から見たらセカンドファイナンスのタイミングです。

今は、エンジェルラウンド、創業直後のところでは、個人のエンジェルの方、あるいはシードVCの方々の活動が活発です。数千万円のお金が比較的集まりやすい環境にあるのかなと思います。

そこから少しジャンプアップして、プレシリーズA、シリーズAくらいの段階になってくると、みなさんもよく耳にされるような伝統的なVCさんが、億単位のロットで投資をされるというようなかたちです。

その間の、プロダクトを作ってからマーケットフィットさせるところや、マーケットフィットはしたけれど、もう少しマーケティング活動して、その検証を深めたいなど、いわゆるスタートアップの谷みたいなタイミングで、我々にご相談いただくことが多いです。

バリュエーションレンジで言いますと、4億円から6億円のプレバリュエーションに対して、我々は3,000万円から5,000万円くらいの投資をしています。

歴史的に振り返っていくような話になってしまうのですが、2014年にはFintechにフォーカスしていました。金融機関系のVCないしキャピタル部門で、Fintechフォーカス、シード・アーリー特化と、この掛け算で投資しているプレーヤーというのはほぼ0でした。

我々はVCとしては後発でしたので、そのポジションをあえて取りに行ったことによって、2014年から2017年くらいの3年間では、ほぼFintechしかやっていません。

ホームページ等を見ていただくと、我々の投資先のポートフォリオカンパニーが全部載っているんですけれども、表面的には「これはど真ん中のFintechだよね」というものもあれば、表面的には「これのどこがFintechなの?」と思われるものもあります。

それには意図があります。2017年以降の活動につながっていくんですが、やはりFintech単体のサービスで、VCとしてリターンを出していくのは難しいなというのが私の学びです。ある一定の事業体を作るビジネスモデルやサービスが、ある一定の顧客基盤を持ったときに、そのあとにレバレッジとしてのFintechサービス、金融サービスというものがあるべきじゃないかなと思っています。

顧客接点を先に取れるようなプレーヤーと金融とのサービスの相性がいいと考えて、そういったところに投資を始めたのが、その3年間の後半のところです。2017年以降にその動きを加速させています。まずは顧客接点を取れるところ、そしてトランザクションが頻繁に起こるようなサービスを探して投資しております。

飯田:ありがとうございます。そうすると、単に投資先を個別で見ているのではなくて、全体像として見ながらやられていると。

和田:そうですね。

AWSで金融の事業開発を担当

飯田:私自身についても少し自己紹介させていただくと、私はアマゾン ウェブ サービス ジャパンで金融の事業開発を担当しています。

誤解のないように申し上げておくと、Amazonとしての金融ビジネスではなく、AWSというクラウドサービスを金融の領域で使っていただくという観点での事業開発を担当しています。

AWSに入社して3年目になるんですけれども、以前はISIDというSIerの中で企画部門を担当していました。そのときに、FIBCという金融、Fintechのピッチコンテストも担当させていただいたのですが、そのあたりからFintech領域に関わりを持っています。

ISIDで、FIBCの延長としてスタートアップに投資するということをいくつかやらせていただいていて、そのときに和田さんと一緒に投資させていただいた先がありました。それがMFSさんという会社です。

さっき「モゲモゲ」と言っていたのは、その会社のサービスが「モゲチェック」というモーゲージ、つまり住宅ローンの借り換えサービスで、借り換えができるかどうかをモゲスコアで評価しながらやっているんです。モゲというキーワードで、サービスが拡大しているところです。

グローバルのFintechトレンドを振り返る

飯田:ディスカッションに入っていく前に、Fintechのトレンドについて、グローバルと国内で見えているところを少し振り返ったうえで、議論を進めていきたいと思います。グローバルは、CB Insightsというレポートを出している会社から、ポイントをいくつか引っ張ってきています。

4点ほど挙げております。2018年、投資額は過去最大で39ビリオンドルくらいまで拡大している。一方で、この中の30~40パーセントくらいが、中国のAnt Financialです。投資の領域、資金を提供する会社というのも、欧米だけではなく、かなりアジア、あるいは中国にも展開してきています。

一方で、投資先に関しては徐々にアーリーステージからミドルステージの会社のほうへ投資資金がシフトしていきています。まだまだ規模的には、全体の50パーセント超がアーリーステージではあるんですけれども、以前は60数パーセントでしたから、ミドルステージへシフトしてきています。

サービスライン拡大へ向けた動きというのは、あるサービスからスタートしたFintechの会社が、買収や提携を通じてほかの領域へ範囲を広げていくことです。例えばRevolutというバンキングサービスをスタートさせている会社が、仮想通貨へ入り込んでいったり。

あるいは、Coinbaseという仮想通貨のエクスチェンジをやっている会社がありますけれども、こちらが個人向けだけではなく、機関投資家向けのサービスを開始するなど、そういったサービスライン拡大へ向けた、つまり次のステージへ広がっていくような動きが出てきています。

4点目が、Banking as a Serviceです。欧州を中心に、バンキングライセンスを取得して、実際に預金を預かっていくようなバンキングのビジネスをスタートし、さらにいろいろな会社と提携しながらエコシステムを作っていく。

Banking as a Serviceと言われる領域で、例えばN26というドイツの銀行、あるいはイギリスのStarling Bank、また先ほどのRevolutもそうですが、そういった会社がバンキングのビジネスへ入り込んでいくという、金融の本流のところへ展開していくような動きが出ているところが、海外の1つのトレンドかなと思います。

日本におけるFintechトレンド

飯田:では、日本はどうかということですが、去年非常に顕著だったのは、資金調達の大型化と集中です。和田さんのところでは、1案件数千万円くらいの案件、アーリーステージの会社さんが多いというお話でした。

確かに、Fintechの領域だと、数年前に同じタイミングで投資させていただいたところは、そのくらいの規模感で、多くても数億円。それくらいの調達金額が中心だったと思うんですけど、去年あたりから50億、60億円くらいの金額を、1回のラウンドで調達していくという、非常に大型の案件が増えてきている印象があります。

例えば、Origamiが66億円、freeeが65億円、FINATEXTが60億、FOLIOが69億円と、60億円台代が非常に多いのですが、そのくらいの案件が特定のところに集中していくような傾向があると思います。

とくにペイメント領域では、パワープレーヤーや海外勢の参入が顕著です。LINE、楽天、あるいはソフトバンクといったところが、モバイルのペイメントの領域で、QRコード決済にすごい資金を投下しながらビジネスを拡大していくという流れですね。

海外勢の参入というところは、先ほどのCoinbase、あるいは送金のTransferWise、あるいはバンキングのRevolutのような、大手企業が日本のFintech領域へ参入してくるという流れが出てきています。

一方海外ではBaaS、Banking as a Serviceという領域がFintechに担われているということがあります。日本だとまだBanking as a Serviceに自ら入ってくるFintechというものはおらず、大手のITベンダーで、例えばNTTデータがMambuというBanking as a Serviceのプラットフォームと提携して、日本に持ってくるという動きになります。

最近、富士通がFBaaSという、Banking as a Serviceのプラットフォームとなるようなソリューションを出しています。

逆に、それを採用しようとしているのは、必ずしもチャレンジャーバンクといった会社だけではなく、大手の銀行がセカンドブランドとして考えていたり、あるいはネットバンクが次のプラットフォームとして検討していくものとして出てきている。