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マーケット視点とキャリア思考から見たスポーツの可能性(全6記事)

リーダーたちは哲学を語ろう 「あるべき論」に振り回されぬ組織にするための心得

2019年2月9日、「SCJ Conference 2019 ~壁を超えて、繋がる~」が開催され、ビジネス界やスポーツ界の枠にとらわれず、多様な分野で活躍する第一人者が一堂に会しました。その中の基調パネル「マーケット視点とキャリア思考から見たスポーツの可能性」では、レオス・キャピタルワークス藤野英人氏、morich森本千賀子氏、スポーツコーチングJapan中竹竜二氏が登壇。本パートでは、参加者からの質問に登壇者の3人が答えました。

地方創生とスポーツは大きなテーマになる

中竹竜二氏(以下、中竹):はい、話はどんどん盛り上がってきたんですが、ぜひみなさんからの質問を受けたいと思います。

質問を受ける前に、バーッと我々の話を聞いてもらったので、先ほどの近くの方と、お互い感想なり、その場でもし質問が生まれたら、質問を用意しておいてください。じゃあ、2分ぐらい使いましょうかね。はい、お願いします。

(会場内で話し合う)

はい、みなさん盛り上がってるところ恐縮ですが、じゃあぜひ質問したいという方、いらっしゃいますか?

質問者1:どうもありがとうございます。藤野さんにご質問させていただきたいんですけれども、今はテニスというスポーツに関わっています。

ビジネスとして見たときに、スポーツビジネスがオリンピックに向けて盛り上がっているところがいろいろあると言われているんですが、投資先としての魅力と見たときに、スポーツビジネスでおもしろそうなところはありますか。

藤野英人氏(以下、藤野):スポーツビジネスそのものって、伸びているような会社はもちろんあるわけですね。道具を作ってる会社で、上場している中でヨネックスやミズノ、自転車ではシマノなどのかたちで(ビジネスチャンスは)存在しています。興行だと、東京ドームという会社もあります。

これからどういう分野で重要かというと、上場企業として投資できるかどうか、上場できるかどうかは別ですが、地方においてのスポーツはすごく大事です。これから地方創生とスポーツは、大きなテーマになるかと思いました。

例えば、新潟のアルビレックスはすごく有名なケースですが、各地域の中で、それがバスケットボールやサッカー、最近でいうと卓球などで、とくに沖縄で盛り上がりが始まっています。

だから地方創生で盛り上がっていますし、そういう地方の中で、ちゃんと投資をして回収して、どうやって利益を作るのかが大きなテーマになると思います。地方は、実はお金がたくさんある。今、投資先がないから、地銀のところでお金が溢れるようにあるぐらいなので。

だから、そのお金をどうやって別の方向に引き出していくのか。そのお金を安全なものとして担保して。そうして回るような、リターンの出るような仕組みを作るのかが大事です。たぶんこれがいろいろ、10年間で見ると出てくると思います。私はとても期待しています。

質問者1:ありがとうございます。

個々に対する「えこひいき」が重要

質問者2:ありがとうございます。大阪から来ました〇〇と申します。今お話をうかがっていて、「好き嫌い」と「公平さ、公正さ」の話を聞いて、どんな組織や団体でも、そこらへんのおばちゃんでも、そこのバランスがすごく大事だと思っていて。

個人的には、「個々をえこひいきする」というような、それぞれを大事にえこひいきするところが似ていると思いながら、話をうかがっていました。ここのバランスはどんな感じなんですかね?

藤野:好き嫌いと公平という話ですが、私が口火を切ったので私から話をすると、「個々にえこひいきする」ということは、僕はひとつの答えだと思っていて。僕は仲間に対する愛なんじゃないかなぁと思うんですよね。

やっぱり、根本的に仲間に対する愛があるのがとても大事で。公平さは、ある種の冷たさなども来ると思います。そこに愛があると、結果的に好き嫌いと公平さが存続しているんじゃないかなと。

それをもっと上手に言ったのが、たぶん「個々に対するえこひいき」なのかもしれませんね。だから、全体的な愛ということよりは、もっとより上手に言ったのが、個々に対するえこひいきかもしれません。すばらしい言葉だと思います。

中竹:僕は好き嫌いを徹底的に突き詰めて、根底に「For the Team」というか、組織のためとか、もっと言うと「社会のために」があれば、どんなにセルフィッシュに見えても、見え方は別の話なので。現状と本質は違いますので、僕はいいかなと思っています。

さっきちょっとお話ししてましたけど、ただ本当に、勝ってる組織ですね。例えばバルセロナは『The Barcelona Way』という本も今出ていまして、今度それを僕が完訳します。

The Barcelona Way: Unlocking the DNA of a Winning Culture

オールブラックスもそうですが、みんな自由に自分のやりたいことをやるんですけれども、根底に「For the Team」という哲学があるんです。これを崩したら、もうほぼ崩壊するので。僕はその意味がフェアネスだと思っています。

複数のミッションをやり遂げるコツ

質問者3:ありがとうございます。新潟からまいりました〇〇と申します。私自身の今の状況についてご意見いただければと思っています。やりがいのあることを今いろいろと私に任せていただいているんですが、それぞれ別件で、種類もけっこう違うような仕事が多いです。

私個人としては、例えばアメリカンフットボールに携わっていまして、それを広めていきたいというような活動もさせていただいています。ただ、本業の仕事として、大学だったり、高校だったり、学校のスポーツをしっかり発展させるといったところ。

あとはスポーツ系の投資案件を分析して、それでできるかなど、いろんなことを任されているんですけど、ただ手が回りきらなくて、中途半端になってしまっています。ただ、「全部やりたい」というような状況で。

その場合に、どういうふうに自分をコントロールしていけばいいのか。そういうアドバイスをいただければと思います。

藤野:マルチタスク。

森本:そうですね、優先順位をつけることだとまず思います。人生において、自分の中で何を大事にしたいか。自分の生き方だったり……仕事もそうなんですけども、まず自分の中の優先順位がちゃんとついてるかどうかを自分の中で分析してもらうといいかなと思うんですね。その中で、たぶん自ずとウェイトが見えてくるんじゃないかなぁと思うんです。

あとは本当に、自分ひとりじゃなくて、他人を頼る、他人を信頼する。他の人を信頼しながら、自分じゃないとできないことと、やりたいことがなんなのか。いわゆるWillと、自分じゃなきゃできないことがなんなのかにフォーカスをしてみてください。

それ以外のものは手放して、もっとそれを効率的にできる人が周囲にたくさんいらっしゃると思うので、そういった方の力を借りるということかなと思います。

質問者3:ありがとうございます。

中竹:本当にやりたかったら、寝ずに、食べずに、遊ばずに、やればいいんじゃないですかね。

(会場笑)

いや、本当にやりたかったら。

森本千賀子氏(以下、森本):ショートスリーパーですもんね。

中竹:だと思います。あんまり世の中の常識とか関係なく、やりたかったらやると。そこのデシジョンは、たぶんご自身で決めたほうがいいと思いますので。

藤野:コツは、一つの空間で、一つのことしか考えないことですね。

中竹:それ、言われますね。

藤野:たぶんある場所、あるところで、今もそうだと思うんですけど、今やらなきゃならないことが、いっぱいあるからつらいんですよ。でも、一つの空間で一つのことだけ考えていたら、そういう習慣をつけるといいです。

あともう1つは、何も考えない。お風呂の中とか、一つの空間では何も考えない習慣をつける。こんなことをしていくのが、たぶん心の持ち方としてはいいと思います。

質問者3:ありがとうございます。

「あるべき論」に振り回されないために

中竹:じゃあ、最後の質問。

質問者4:今日はありがとうございます。日本ラグビー協会で働いています〇〇といいます。今日はお話ありがとうございました。

お話をうかがって、好き嫌いをすごく大事にしたり、あと何のために生きていくのかを問いたり、関心を他者に向ける、自分に向けるということをすごく感銘を受けたんですけれども。

自分が今、ラグビーに関わっている場所で、あるべき論ですとか、あと「僕はこうやってがんばってるんだ」というようなアピールが大事だったりするんですけど、そういうオーラがすごく出ているのかなと思いまして、感銘しました。そういうことは、なぜ組織で起こってしまうのか。

それから、お二方がおっしゃったようなことを組織から引き出して、そういう組織にしていくためには、どういうことに心がければいいのかをぜひアドバイスいただけたらと思いました。よろしくお願いします。

中竹:ちょっと難しい質問ですね、答えないという選択肢もありますからね。

(会場笑)

森本:ごめんなさい、ちょっと私がうまく理解ができていなくて。

質問者4:質問が悪いんです……。

森本:ごめんなさい!(笑)

(会場笑)

藤野:でもやっぱりあれかな、どうしてもそうなると思うんですよ。なんでかというと、とくにレベルが高い人たちだと、自分のメソッド、自分のやり方もあるし、指導者もそれが出てくるから、それは仕方ないところがあると思うんですね。

僕らの運用チームのところだと、ファンドマネージャー、アナリストなどは、非常にプライドが高い人たちなので。結局、彼らは、自分たちがやりたい、根本的にやりたいようにやるというところに、何もしないとそっちのほうに行くから。

ただ、コーチなり、監督なり、社長なり、ゼネラルマネージャーだったりが、それを統括して、リーダーシップを発揮するところにコミットしないと、ダメなんじゃないかなとも思うんですね。

力尽くという時も必要かもしれません。でも、根本的にはそれは最後の最後で、根本的には聞いて、関心を寄せてというところを、やっぱり自分自身が信じてそれをやり切るかどうかがすごい大切なんじゃないかなと思いますよね。

要するに、ある時間をかけてこれをやれば、絶対うまくいくはずだという、お腹に確信を持てるかが、わりとカギだと思います。

トップコーチは「哲学を語ること」

中竹:まさに僕も共感で、コーチの世界でも言われているんですけど、「あるべき論」がなんで生まれるかというと、自分に哲学がないからですよ。頼るところが「べき論」にしか行かないですね。

それで、実はトップコーチの最終の駒は……我々が持ってるのは哲学を語ることなんですよ。それが決まらないと、ついつい不安なので。「べき論」をやって失敗したら、言い訳できますから。

最終的にみなさんがこれからコーチやリーダーとして行くんだったら、世の中にある「べき論」の中でも、たぶん自分はこれに共感する、自分はこれで生きていく思想や哲学を持たなければ、ずっと右往左往していく。それで自分が語るというと、他者もそれを語り始めるので。まず、自分から発信していくことが大事なんじゃないかなぁと思います。

森本:あと、ビジョンがたぶんありますよね。みなさんの目指す共通のビジョン。その共通言語をもう1回みなさんで、本当にちゃんと腹に落とせてるかどうかを、みなさんで話し合ってみてはどうかなと思うんですね。

ビジョンが本当に手段化してるみたいなところが、組織の中で乱れたりすることもあるので、ちゃんとそのビジョンが日々の行動の中で落とし込まれているかどうかをもう1回話されてはどうかなぁと思います。

中竹:はい、ありがとうございました。実はあっという間に時間が来てしまい、先ほどから「早く終われ、終われ」というサインをスタッフからいただいてですね。まだみなさんも、私自身まだお二人に聞きたいところではありますが、次のセッションもありますので、いったん基調パネルはここで終わりたいと思います。

お忙しい中、来ていただいたお二人に、改めて拍手のほどをお願いします。ありがとうございました。

(会場拍手)

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