2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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大池知博氏(以下、大池):エイベックスの加藤さんとLINEの室山さんへの質問なんですが、大企業で役員になられるにあたって、どういった努力をして役員になられたのか、そのきっかけというか、秘訣を教えていただけたらなと思います。
加藤信介氏(以下、加藤):これって、人それぞれだと思うし、最初から僕はそう決めていたわけじゃないんですけど。僕はあるときから、中長期的なキャリアプランを描くのをあえてやめたってことが一つあります。
自分が会社から与えられた役目なのか、自ら取りにいった役目なのかは別にして、いま自分がやっている仕事をオペレーショナルな組織の中で愚直に先輩から3年教えてもらって、それを愚直にやっていくっていう仕事のスタイルではもうないんですね。主体性を持って仕事を回していくってことが前提です。
その置かれている環境の中で、いかに自分が最大のパフォーマンスを能動的に発揮できるかっていうことを積み重ねてきた。そうするとやっぱり、どこかのタイミングで人との出会いだったりとかで、「次こういうことやってみたいな」みたいなものが出てくるので、それを取りにいくと。
それで、また同じことをやるっていうことを、僕は今までずっと積み上げてきたタイプなんです。戦略的に、今の新規事業とか、人事も含めた役員をやりたいってことを目的としてセットしていたわけじゃなくて。お話ししたような僕の価値観によって、ここに流れ着いているっていうことだと思うので。ポジティブな意味でですよ。
だから、僕はいま自分の仕事を全うすることを一生懸命やろうと思っていますけど、その先に何かの出会いがあったりとか、何かの気づきがあったりとか、何かのチャンスがあったらまたぜんぜん別の役割をしてるかもしれないし、場合によっては会社の外に出ているかもしれない。
そんな感じで、あえて決めてないっていうことが僕の中にはありますね。
大池:ありがとうございます。室山さんはいかがですか?
室山真一郎氏(以下、室山):結果としてなぜなれたのかというと、たぶん、そのときのわりと大きなミッションをガッツリやり切ったということだと思うんです。それは35歳のときなんですけど。
36歳で、当時いたテイクアンドギヴ・ニーズはすでに一部上場してたんですね。当時数えたことがあるんですけど、創業者/創業家ではない一部上場企業の役員は、わずか数名しかいないくらい、すごい大きなチャンスでした。大きな一部上場企業のターンアラウンドという大きな仕事をさせてもらったのですが、それをやり切ったという、現象としてのきっかけにはなっていると思います。
とはいえ、現象だけ言ってもたぶん再現性がないので、少し分解するとですね。これはよくミドルキャリアの方々にお話するんですけど、僕の大事な力は3つあるかなっていう話をよくしていて。
そのうちの1つが、まず「やり切り力」です。すごい平たく言っていますけどね。いまの加藤さんの話にちょっと似てるかもしれませんが、とことんやり切るということです。「できるまでやる」「絶対に結果を出す」みたいなものですね。これを分解すると、スキルセットみたいな話になってくるんですけど。なかでも「やり切り力」ってすごいなって思っていて。
これは会社勤めをしている人も経営者の方も、どっちにも共通するんですが、とにかくやり切ると。結果が出るまでやるから成功するんだ、みたいな話ですね。単純なガッツとか、根性論の話ではなくて。これは2年くらい前に読んでいた『GRIT(グリット)』っていう本に、わりと科学的に書いてあるんですけど。「やり切り力」はいるなと思います。
室山:その次が「巻き込み力」。この巻き込み力っていうのは、単にこの指揮命令で「やれ」って言ってやらすのではなくて、チームをちゃんと同じ方向に向けることです。とくに一定規模のことを成そうとすると、1人ではできないので。
餅は餅屋じゃないですけど、必要な能力を持っている人、自分に欠けている能力を持っている人を、その都度ちゃんと巻き込んで実践していく力っているよねっていう話が「巻き込み力」です。
最後の3つ目。これは自分自身のキャリアを振り返っても最も大きいと思っているんですけど、最後の要素は「運」なんですね。もう、どうしようもないくらい「運」なんですよ。でも「なんだ、じゃあラッキーな人がいいのか」みたいな話をしてほしいんじゃなくて。運はみんな必ず巡ってきます。
そうしたときに、この運っていうものを、どうやって自分のモノにするか。自分のアクションに変えていくためにどうするかっていうと、もう常に準備できている状態を保つことです。その時々に一番高いところにいると、案件がポロッとこぼれてきたときに、ちゃんとモノにできる。そうすると「やり切り力」を発揮できるわけなんでですね。
それがどんなスキルセットなのかというと、人によって違います。もしかしたら語学力かもしれないし、財務の知識かもしれない。もしかしたらエンジニアリングかもしれない。それは、それぞれみなさんが求めるキャリアで変わるんです。
成長にゴールはないんですけれども、常に一番高いところに自分を持ってるからこそ、巡ってきたものを掴めるんですね。ボーッと「今来たらどうしよう」と待っていてはいけない。そのいつかが今日かもしれない、このあと帰り道でふっとスカウトされるかもしれない。そのときに掴めますかっていうことなんですね。
掴めなかったものは残念ながら戻ってこないので。その運を「運だから」で諦めるんじゃなくて、運だからこそ、とにかくもう全力で、最速で成長し続ける。自分で考え、自分で必要なものをゲットし続けるっていうことが必要なのかなって思っています。
大池:ありがとうございます。そろそろ時間ですので、質問の時間を設けさせていただきたいと思います。この中で、名指しでもかまいませんので、もしなにか質問があれば、挙手していただければ。
(会場挙手)
はい、どうぞ。
質問者1:前田さんに質問なんですけど、11月に家族や友人とバーを開くんです。前田さんの著書に、コミュニティが深まる要素の1つに「仮想敵」ってあったんですけど、ちょっと細かく聞かせていただきたくて。
前田裕二氏(以下、前田):仮想敵について、はい。
質問者1:バーのお話をさせていただくと、男性芸能人のインフルエンサーで、お客様はSNSで獲得したファンの方に来ていただくっていうターゲティングをしています。そこでどうやって仮想敵をつくろうかっていう話をしています。
ファン同士、横が仮想敵になってしまうような、ある意味でホストのようなイメージになってしまっているんですけど。仮想敵ってどういうふうにデザインしたらいいと思いますか?
前田:なるほど。もう立ち上げていらっしゃるんですか?
質問者1:場所は決まっていて、許可証も取っています。
前田:そうなんだ。やってみたらわかると思うんですけど、そんなに難しいことでもなんでもなくて。僕は「株式会社スナック」っていうのを、ふざけてつくって、趣味でやっているんですけど。気づいたらもう40店舗のスナックがあって、たぶん「スナックを一番多くやっている人」になってるんですけど。
(会場笑)
前田:実はスナックがめちゃくちゃ好きで。地方でスナックに行きまくってたら、やりたくなっちゃって。
真田:それは自分でスナックを経営してるの?
前田:スナックを経営してるっていうよりは……なんていうんですかね? フランチャイズで利益を貰うっていうよりは、ほとんどのスナックが「世界観を貸す代わりに、こういうことやってください」っていうルールを決めて運営されているんですね。
僕がなぜスナックをやりたかったかというと、1人に100万人ファンをつけるよりも、100人くらい濃いファンのついたコミュニティを、1万回重ねてできる100万人のほうが、たぶん数字としては強いですよって言ってるんです。だけど、これってめっちゃ抽象的だなと思っていて。
じゃあスナックを1,000個くらいつくったら、1個のスナックで100個物が売れるから、全部で10万個くらいは売れると。
今そのスナックで本を売ってるんですね。ボトルを入れる代わりに本を売って、本の売上がママに入るっていう仕組みにしてるんです。そうしたら、みんなそこで本を買う。自分の本とかも、そこで何度か重版がかかってるんですけど。
10万部の本が絶対売れるコミュニティになるんですけど、そんなの本屋では絶対無理だから。本屋のどこに平積みしても、「10万部絶対売れる!」っていうのはありえないですから。
そういうのをやりたいなって思ってるんですけど、やっていると心配しないでも敵ができるんですよ。なんていうか、コミュニティを荒らしてくるやつとかがいて。学校とかでもそうなんですけど、派閥って生まれるじゃないですか。
そのバーとかスナックでもなんでもいいんですけど、自分がコミュニティのルールをきちんと提示し続ければ、ルールから漏れる人が基本的に敵になるので。やってみればわかります。たぶん、やらないとなかなか伝わらないんですよね。
質問者1:ルールっていうのは、どうやって決めるんでしょうか。コンセプトとか、どういう世界観にしたいかから下ろしていくとか……。
前田:なんでもいい、超シンプルで。僕だったら、スナックは夜の時間帯に子ども連れてきちゃダメなんですよ。例えアルコールを飲まなくても。そう言ってるのに、連れてくる輩がいるとしますよね(笑)。
そうすると、仲間同士で「本当にあの人たち空気読めないよね」みたいなことになる。「子ども連れてきたらなんとかかんとかで」「わかるー」「そういえばね、あの人、こんなとこでも空気読めないし」「わかるわー」って愚痴り合いが始まるわけですよね。
仮想敵なんて特段難しく考える必要はなくて、こんなもんでもよくて。要は、「僕らが大事にしたい世界観を破ってくるやつらは敵だー!」っていう議論ができるだけで、中の結束って深まるんですね。
だからルールとか世界観とか、自分たちが認めることを明確に打ち出せば、その逆側ができるので、それが敵になるよっていうことですね。
もっとエンゲージメントをギュッと濃縮して高めていきたいんだったら、本当にホストとかキャバクラみたいに、わかりやすい仮想敵をつくっていけば、エンゲージメントが上がるんですけど。そこまでエンゲージメント上げて客単価を上げたいと思っているわけではないですよね?
質問者1:そうですね。
前田:じゃあ、いまぐらいのことでよくて。ゆるくみんなが「ここは心地いいな」って思えるくらいの仮想敵のつくり方でいいと思いますよ。
質問者1:共通目的との違いっていうのは、まだできてなくて。
前田:共通目的は、あれですよ。例えば僕らで言うと「スナックを今年中に100個にしよう」とか。そうするとお客さんが勝手に、「ここで飲んでる場合じゃない」と。「俺もスナック立ち上げます」って言って、勝手にどこかにスナック立ち上げてくれて、っていうことです。
質問者1:なるほど、ありがとうございます。
大池:では前田さん以外の人に質問したい方。
(会場挙手)
質問者2:みなさまにおうかがいしたいのですが、人生最大の挑戦はなにかを教えてください。
真田哲弥氏(以下、真田):過去に? これからのこと?
質問者2:過去のことでお願いします。
真田:僕はまあ、最大はどれかって言われると……いっぱいあり過ぎたんで。
会社を僕は4回つくってますから。4回とも「そんなこと絶対あり得ない」って周りの人が猛反対の中、会社を設立してるんで、どれも挑戦だったし。
会社は在学中に始めたから、途中で中退しちゃったんですけど。33歳で初めて就職したんですね。経済学部出身で完全文系人間だったんだけど、インターネットの時代になって、「これは俺、プログラミングとか覚えないといけない」って思って、プログラマーしかいない技術系の会社に33歳で転職しました。
それまでずっと社長業しかしたことなかった人が、初めてサラリーマンをして、そこで1年間でプログラミングを学んで、CPUの設計までできるようになったんです。
人生でその1年間が一番勉強した期間で。そのときが一番かな。自分では無理と思いながら、なんかできるようになりました。それが一番の挑戦だったかな、と振り返ると思いますね。
大池:ありがとうございます。
大池:じゃあ、森さん。お願いします。
森:1社目を起業したときによくあると思うんですけど、それまで仕事をしていなかったところから学生起業でいきなり立ち上げると、「お金を稼ぐ」っていう企業の一番の目的を忘れて、ビジョンがどうこうっていうところから始めちゃうと思うんですね。
それで僕は1回失敗したんです。その失敗した1,000万円の借金を返さなくちゃいけないところで、初めてちゃんと地に足をつけて稼ぐっていうことを、地味なんですがやり続けました。
制作会社で「けっこう稼げた」っていうところまで持っていったっていうところで、自分の中で人生の切り替えがあったかなって思います。
今もこう、それがベースにあるからこそビジョンがあって、そのビジョンに対して、本当に達成していくっていうところができる。達成してないビジョンっていうのは、結局結果が出ていない絵に描いた餅なので。
絵に描いた餅をちゃんと、結果を出して形にしていくってとこに関して、やっぱり根源はちゃんと真面目に、ちゃんと稼げる会社をつくるのを、借金という追い込まれた状況の中で考えたことが大きくて。
学生なので大変だったけど、必死にただ稼ぐっていうことに邁進して、それを乗り越えたっていうことが、今でも大きいかなって思ってますね。
大池:ありがとうございます。じゃあ、最後の質問!
(会場挙手)
質問者3:お話ありがとうございます。室山さんに質問なんですけども。どんな学生が欲しいかっていうところで、早く成長できる人、成長曲線が描ける人っていうお話をさっきおっしゃっていたんですけれども。成長できる学生にある要素みたいなものが、いくつかあれば教えていただきたいです。お願いします。
室山:身も蓋もない話をしてしまうと、コツとかは絶対にないので、「とにかくやれ!」っていうことになってしまうと思うんですね。強いて言うならば、先ほど真田さんの話にもありましたけど、自立して自走できる人。それで、きちんと自分で課題設定して、そしてそれを乗り越えられる人。
横に人が付いていると活躍できないとかじゃなくて。いきなり高いバーを越えるって無理なんですけど、ちゃんとここまでいくぞって決めたらやり切る人。さっきの話にぐるっと回ってきますけど、そんなことかなと思います。
残念ながら、どこからいけばとか、何を身に付ければっていうのはないと思うので。それぞれみなさんの人生は、それぞれ形が違うので。とにかく、自走できる人。やり切る人。そんなことが大事なのかな、と思います。
大池:ありがとうございます。すみません、そろそろ時間なので。これで終わりにしたいと思います。登壇した方々、みなさん新卒採用やられてますので、もしもっとお話を聞きたいとかあれば、終わったあと、ぜひ捕まえていただいて、ぜひお話していただければなと思います。
それではみなさん、登壇者のみなさん、ありがとうございました。
登壇者:ありがとうございました。
(会場拍手)
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