中長期的なキャリアプランを描くのをやめてみたら

大池知博氏(以下、大池):エイベックスの加藤さんとLINEの室山さんへの質問なんですが、大企業で役員になられるにあたって、どういった努力をして役員になられたのか、そのきっかけというか、秘訣を教えていただけたらなと思います。

加藤信介氏(以下、加藤):これって、人それぞれだと思うし、最初から僕はそう決めていたわけじゃないんですけど。僕はあるときから、中長期的なキャリアプランを描くのをあえてやめたってことが一つあります。

自分が会社から与えられた役目なのか、自ら取りにいった役目なのかは別にして、いま自分がやっている仕事をオペレーショナルな組織の中で愚直に先輩から3年教えてもらって、それを愚直にやっていくっていう仕事のスタイルではもうないんですね。主体性を持って仕事を回していくってことが前提です。

その置かれている環境の中で、いかに自分が最大のパフォーマンスを能動的に発揮できるかっていうことを積み重ねてきた。そうするとやっぱり、どこかのタイミングで人との出会いだったりとかで、「次こういうことやってみたいな」みたいなものが出てくるので、それを取りにいくと。

それで、また同じことをやるっていうことを、僕は今までずっと積み上げてきたタイプなんです。戦略的に、今の新規事業とか、人事も含めた役員をやりたいってことを目的としてセットしていたわけじゃなくて。お話ししたような僕の価値観によって、ここに流れ着いているっていうことだと思うので。ポジティブな意味でですよ。

だから、僕はいま自分の仕事を全うすることを一生懸命やろうと思っていますけど、その先に何かの出会いがあったりとか、何かの気づきがあったりとか、何かのチャンスがあったらまたぜんぜん別の役割をしてるかもしれないし、場合によっては会社の外に出ているかもしれない。

そんな感じで、あえて決めてないっていうことが僕の中にはありますね。

成果を出すまで取り組む「やり切り力」の価値

大池:ありがとうございます。室山さんはいかがですか?

室山真一郎氏(以下、室山):結果としてなぜなれたのかというと、たぶん、そのときのわりと大きなミッションをガッツリやり切ったということだと思うんです。それは35歳のときなんですけど。

36歳で、当時いたテイクアンドギヴ・ニーズはすでに一部上場してたんですね。当時数えたことがあるんですけど、創業者/創業家ではない一部上場企業の役員は、わずか数名しかいないくらい、すごい大きなチャンスでした。大きな一部上場企業のターンアラウンドという大きな仕事をさせてもらったのですが、それをやり切ったという、現象としてのきっかけにはなっていると思います。

とはいえ、現象だけ言ってもたぶん再現性がないので、少し分解するとですね。これはよくミドルキャリアの方々にお話するんですけど、僕の大事な力は3つあるかなっていう話をよくしていて。

そのうちの1つが、まず「やり切り力」です。すごい平たく言っていますけどね。いまの加藤さんの話にちょっと似てるかもしれませんが、とことんやり切るということです。「できるまでやる」「絶対に結果を出す」みたいなものですね。これを分解すると、スキルセットみたいな話になってくるんですけど。なかでも「やり切り力」ってすごいなって思っていて。

これは会社勤めをしている人も経営者の方も、どっちにも共通するんですが、とにかくやり切ると。結果が出るまでやるから成功するんだ、みたいな話ですね。単純なガッツとか、根性論の話ではなくて。これは2年くらい前に読んでいた『GRIT(グリット)』っていう本に、わりと科学的に書いてあるんですけど。「やり切り力」はいるなと思います。

巡ってきた運を掴み取るには、自分を高みに置いておかねばならない

室山:その次が「巻き込み力」。この巻き込み力っていうのは、単にこの指揮命令で「やれ」って言ってやらすのではなくて、チームをちゃんと同じ方向に向けることです。とくに一定規模のことを成そうとすると、1人ではできないので。

餅は餅屋じゃないですけど、必要な能力を持っている人、自分に欠けている能力を持っている人を、その都度ちゃんと巻き込んで実践していく力っているよねっていう話が「巻き込み力」です。

最後の3つ目。これは自分自身のキャリアを振り返っても最も大きいと思っているんですけど、最後の要素は「運」なんですね。もう、どうしようもないくらい「運」なんですよ。でも「なんだ、じゃあラッキーな人がいいのか」みたいな話をしてほしいんじゃなくて。運はみんな必ず巡ってきます。

そうしたときに、この運っていうものを、どうやって自分のモノにするか。自分のアクションに変えていくためにどうするかっていうと、もう常に準備できている状態を保つことです。その時々に一番高いところにいると、案件がポロッとこぼれてきたときに、ちゃんとモノにできる。そうすると「やり切り力」を発揮できるわけなんでですね。

それがどんなスキルセットなのかというと、人によって違います。もしかしたら語学力かもしれないし、財務の知識かもしれない。もしかしたらエンジニアリングかもしれない。それは、それぞれみなさんが求めるキャリアで変わるんです。

成長にゴールはないんですけれども、常に一番高いところに自分を持ってるからこそ、巡ってきたものを掴めるんですね。ボーッと「今来たらどうしよう」と待っていてはいけない。そのいつかが今日かもしれない、このあと帰り道でふっとスカウトされるかもしれない。そのときに掴めますかっていうことなんですね。

掴めなかったものは残念ながら戻ってこないので。その運を「運だから」で諦めるんじゃなくて、運だからこそ、とにかくもう全力で、最速で成長し続ける。自分で考え、自分で必要なものをゲットし続けるっていうことが必要なのかなって思っています。

開業するバーの「仮想敵」を何にすればいいか

大池:ありがとうございます。そろそろ時間ですので、質問の時間を設けさせていただきたいと思います。この中で、名指しでもかまいませんので、もしなにか質問があれば、挙手していただければ。

(会場挙手)

はい、どうぞ。

質問者1:前田さんに質問なんですけど、11月に家族や友人とバーを開くんです。前田さんの著書に、コミュニティが深まる要素の1つに「仮想敵」ってあったんですけど、ちょっと細かく聞かせていただきたくて。

前田裕二氏(以下、前田):仮想敵について、はい。

質問者1:バーのお話をさせていただくと、男性芸能人のインフルエンサーで、お客様はSNSで獲得したファンの方に来ていただくっていうターゲティングをしています。そこでどうやって仮想敵をつくろうかっていう話をしています。

ファン同士、横が仮想敵になってしまうような、ある意味でホストのようなイメージになってしまっているんですけど。仮想敵ってどういうふうにデザインしたらいいと思いますか?

前田:なるほど。もう立ち上げていらっしゃるんですか?

質問者1:場所は決まっていて、許可証も取っています。

前田:そうなんだ。やってみたらわかると思うんですけど、そんなに難しいことでもなんでもなくて。僕は「株式会社スナック」っていうのを、ふざけてつくって、趣味でやっているんですけど。気づいたらもう40店舗のスナックがあって、たぶん「スナックを一番多くやっている人」になってるんですけど。

(会場笑)

10万部の本が絶対に売れるコミュニティの作り方

前田:実はスナックがめちゃくちゃ好きで。地方でスナックに行きまくってたら、やりたくなっちゃって。

真田:それは自分でスナックを経営してるの?

前田:スナックを経営してるっていうよりは……なんていうんですかね? フランチャイズで利益を貰うっていうよりは、ほとんどのスナックが「世界観を貸す代わりに、こういうことやってください」っていうルールを決めて運営されているんですね。

僕がなぜスナックをやりたかったかというと、1人に100万人ファンをつけるよりも、100人くらい濃いファンのついたコミュニティを、1万回重ねてできる100万人のほうが、たぶん数字としては強いですよって言ってるんです。だけど、これってめっちゃ抽象的だなと思っていて。

じゃあスナックを1,000個くらいつくったら、1個のスナックで100個物が売れるから、全部で10万個くらいは売れると。

今そのスナックで本を売ってるんですね。ボトルを入れる代わりに本を売って、本の売上がママに入るっていう仕組みにしてるんです。そうしたら、みんなそこで本を買う。自分の本とかも、そこで何度か重版がかかってるんですけど。

10万部の本が絶対売れるコミュニティになるんですけど、そんなの本屋では絶対無理だから。本屋のどこに平積みしても、「10万部絶対売れる!」っていうのはありえないですから。

そういうのをやりたいなって思ってるんですけど、やっていると心配しないでも敵ができるんですよ。なんていうか、コミュニティを荒らしてくるやつとかがいて。学校とかでもそうなんですけど、派閥って生まれるじゃないですか。

そのバーとかスナックでもなんでもいいんですけど、自分がコミュニティのルールをきちんと提示し続ければ、ルールから漏れる人が基本的に敵になるので。やってみればわかります。たぶん、やらないとなかなか伝わらないんですよね。