業界が盛り上がるのなら、ライバルは歓迎したい存在

木村和貴氏(以下、木村):なるほど、わかりました。ありがとうございます。お時間がけっこう迫ってきているので、ここで質疑応答に移りたいと思います。会場のみなさんからも登壇者の方に質問していただければと思うんですが。質問のある方は挙手をお願いします。

(会場挙手)

質問者1:貴重なお話、ありがとうございました。川井さんへの質問ですが、Meilyさんに似ているサービスとして、LucmoさんとTRIBEAUさんがあると思います。それらとMeilyさんの違いは何でしょうか?

ちょっと正確じゃないかもしれないんですけど、TRIBEAUさんの方が先にリリースしていると思うんですよね。その状況で、市場占有率でいうと、もしかしたらそれらのほうが大きいかもしれないんですけど。今後どうやってそこをうまく進めていくかの戦略を、話せる範囲でいいので教えてほしいです。

木村:ありがとうございます。川井さん、お願いします。

川井優恵乃氏(以下、川井):最初は競合がいなかったんですが、結果的に私たちはサービスのリリースは最後になりました。美容整形はすごく意思決定が難しいというか、保険とかと同じで、すごくいろいろ考えた上で選ぶものなので、プロダクトが何個かあるほうが、ユーザーにとってもいいのかなと思っています。美容業界を一緒に盛り上げていくという観点では、競合が出てきたことは、いい盛り上がりなのかなと考えています。

プロダクトは、いい機能とかはすぐにどこも取り入れてくると思っていて。いずれプロダクトの質は均等化してくると考えています。実際に韓国の美容整形のアプリは機能が2つあるんですけど、どれもできることは同じなんですね。

どこで市場を勝ち取るかというと、やはりマネタイズ部分になってくるかなと思っていて。そこを勝ち取るための戦略はここでは話せないんですけど、そこをどう戦略を立ててやっていくかの部分は、これから重要になっていくかなと思っています。

質問者1:ありがとうございます。

世の中を豊かにする、新しい美容ビジネスのかたち

木村:できるだけ、みなさんの質問を受けられればなと思うので、なるべく簡潔な質問をいただけると、たくさんお話ができるかなと。

質問者2:貴重なお話、ありがとうございます。2点ありまして、古木さんに質問です。先ほどの自己紹介のとき、美容業界の構造や、ホットペッパービューティーの未掲載サロンが85パーセントくらいということがスライドに書かれていたと思うんですけど。あちらのマーケティングデータは、どういうふうに調べられたのかなと思って。

古木数馬氏(以下、古木):未掲載のサロンですか? 単純にホットペッパービューティーさんが、サロン掲載数を公開しているんです。美容室の数は厚生労働省も経産省も両方公開しているので、そこから得ています。

質問者2:ありがとうございます。もう1点ありまして、実は僕も美容師を10年やって、経営も5年やっていました。外部から美容室のコンサルをしようと思って企業に勤めているんですけど、多くの美容師さんに関わってコンサルティングしていく中で、今後これだけ多くの方が外部から美容に興味を持っていくというのは、中にいた人間としてはすごくいいなと思います。

美容というキーワードに対して、これから新規ビジネスというのは、ご自身のビジネスモデル以外で、どういったものが出てきたら豊かになるのか。こういうサービスが出てきたら、より発展していくんじゃないかなというところで、お二人はどう考えているのでしょうか。

古木:美容業界の美容サービスというところ?

質問者2:諸々、新規ビジネスです。

古木:ああ、新規ビジネスで。いろいろあるよな……。

木村:妄想ベースでも大丈夫なので、今やられていること以外で、どんな事業が生まれてきたらおもしろいなと思いますか?

古木:自分でやりたいなと思っているので(笑)。ちょっと言えないですね……。

吉本興業的構造のタレント事務所型サロン

木村:川井さん、もしご意見があればお先にどうぞ。逆にいうと、当事者起点でというところだったので、それ以外の領域について、そこの質問というのも難しいかもしれないですけど、何かありますかね?

古木:チャンスがあって、自分でやろうと思っていることばかりで。サロンでもいいですか? 僕は美容室のスタイルについて、大きく3つの可能性があるかなと思っています。1個は、店舗展開していくとか、従業員をいっぱい雇うというときに、マネジメントコストがかかったり、マネジメントできなくて、その1店舗が潰れたら、ボンボンボンとなくなっちゃっているパターンはよくあるんですよね。

なので、マネジメントのことを考えたときに、1店舗型ですごく大きいサロンを作るほうがいいんじゃないかなと思うのが1つ。もう1つは、小さい店舗型で、5人以下とかにして、それで店舗展開していくのがいいんじゃないかなというのもあります。

これは、僕が自分でやろうと思っていないスタイルなんですけど、美容室に関しては、タレント事務所型が来るんじゃないかなと考えています。どういうことかというと、美容師さんのインフルエンサーがすごくたくさんいて。僕も週末、インフルエンサーがたくさんいるサロンさんに誘っていただいて、お邪魔して美容師しているんですけど、美容師の仕事って1人で1から10まで全部できちゃうんですよね。インフルエンサー美容師は数百万円稼ぐわけですよ。

なので、雇用の関係とか、業務委託はちょっと違和感があるプレイヤーが潜在的にたくさんいて。どっちかというと、例えば、お笑いの吉本さんみたいな感じで、さんまさんや紳助さんみたいな美容師がいるわけですよ。ああいう人たちは、縛るのではなく、契約関係で事務所型にする。

インフルエンサーは、いろんな商品やマーケティングなど……別のところでマネタイズできるので、僕がもし今の事業をやっていなかったら、タレント事務所型サロンをやっていたかなと思いますね。そういうかたちがいいし、注目度も集められるし、めちゃめちゃおもしろいなと思っています。

木村:おもしろいですね。じゃあ、続いての質問にいきますか。

美容市場は、エンジェル投資家がすでに目をつけている

質問者3:ありがとうございます。お二方とも個人投資家から資金調達されていると思うんですけど、ある程度の資金額を調達できるとき、ピッチとかをされると思います。

そのときに、「じゃあ投資します」と一番キーになる部分は、単純にお二方のエモさみたいなところにくるのか、のちのちに描いている大きい理由のマネタイズのところに、ある程度の利益還元があると踏んで、資金調達を踏み切られたのか。言える範囲でいいんですけど、教えていただけたらなと。

木村:では川井さんから。

川井:投資家なので、リターンはもちろん考えてのことなので、まず、市場はあるかということと、その市場で勝っていけるのかという、この2点だと思います。あとは、人によっては人柄とか。

けっこうこの業界は、著名なエンジェル投資家全員が張ってくれるっていうくらい投資をしてくれているんですよ。つまり、もう市場はあると。じゃあ、その中でどういうふうに勝っていけるかを、壁打ちしたり、チームがちゃんとこれからやっていけそうかというところは見られていましたね。

木村:古木さんは?

一緒に夢を追いかけてくれる投資家に恵まれた

古木:すいません、先に質問なんですけど、よくインターネットで見かける「エモさ」って、何ですか?

質問者3:なんかこう、「熱い」みたいな。エモーショナルさのことです。私は現場主義なのですが、お二方ともプロダクトリリースしているなかで、現場がニッチな趣向性オンリーだと……。

古木:そうですね。最初に投資を受けられたときは、今考えれば、あのときはなかなかいい数字が出ていたので。数字がどういう意味なのか、僕はわからなかったんですけど、それはあるかなとは思うんです。でも、たぶん、投資してくれる方も、それがどういう数字かわからなかったと思うんですよね。僕が説明できていなかったから。

なので、エモさ的なやつなんですかね。思いというか、そういうもの寄りなんじゃないかなとは思います。当時、実現したい最終的なモデルはずっと変わっていないし、戦略とかもぜんぜん変わっていなかったりするんですけど、ビジネスモデルはマネタイズによってけっこう変わるじゃないですか。

そのときはまだ、誰でも思い浮かぶようなちんけなモデルだったりしたので、そういった意味では、これからの期待感とか、そういうものだったんじゃないかなと思います。今もそういうスタンスで関わってくれているというか、リターンというより、僕らの投資家さんは、けっこう夢を一緒に追っかけてくれる方たちが多いかもしれないですね。

質問者3:ありがとうございます。

スタートアップでいちばん重要なのは「PMF」

木村:ちょっと時間が近づいているので、そちらのお二方で最後にさせていただきます。

質問者4:お二方に質問なんですが、最初のユーザーの部分で100人程度のところであれば、先ほどおっしゃっていたみたいに周りの方やTwitterでのコミュニティなどができるのかなと思います。ユーザーの獲得戦略について、差し支えのない範囲でけっこうですので、こういった部分で効いたものがあったななど、もしあれば教えていただきたいです。

古木:最初に始めたとき、僕は広告やプロモーションは、ぶっちゃけよくわかっていなかったですね。マーケティングとか、何が何だかよくわかっていなくて。効いたのは何かといったら、自分でブログを書いていたんですよ。美容師さん向けに。それかなと思います。

戦略的というより、「こういうことが問題だと思っていて、こういうことをやりたいんだよね」みたいな意識があったので、それをものすごい文字数で、1記事3,000~4,000文字、長いと7,000~8,000文字ぐらいのボリュームで、当たり前のように書いていました。

それでいろんな人に知ってもらって、けっこうバイラルして、「いいね!」が付くと広まっていく感じだったので、それが大きかったのかなという気がします。今は、ブログは更新していないですけど、まだあるのでぜひ読んでみてください。

質問者4:ありがとうございます。

木村:川井さんのほうもお願いします。

川井:ユーザーの取り方ということですかね? 極端に言うと、お金を突っ込みさえすれば、新規のユーザー数はどうにでもなると思っています。

でも何よりも重要なのは、最初に100人いたら、その人たちが熱狂的に使ってくれるのかどうかというところです。いわゆる「PMF」と呼ばれていますが、100人のうち、次の日、来週、翌月に使ってくれる人はいったい何人いるのか。じゃあ、なぜ使ってくれるのか。その価値だったりを明確にして、PMFさせるいうのが、スタートアップに一番重要なこと。そのあとのユーザー獲得は、お金を使ってできることがいくらでもあると思っています。

木村:100人の強烈なコアファンを作るということですね。じゃあ、最後の質問に移れればなと思います。

数字で示せるようになってはじめて話を聞いてもらえるようになった

質問差5:ありがとうございました。前の2人の質問とちょっとかぶる部分と、派生的な部分とがありまして。お二方に質問なんですけれども、VCを回ったときに、最初はけんもほろろで、そこから変わったという部分についてです。

こちらの方が質問されていたのは、どういうところがきっかけでしたかという話だったんですけど。VCはまた目線が違うと思うので。VCがけんもほろろだったのが、何をもって変わったのかを教えていただければなと思います。

古木:すいません。また質問になっちゃうんですけど、「けんもほろろ」というのは何なんですか?

(会場笑)

質問者5:「もう帰りなさい。ぜんぜんダメ、そういうモデルじゃマネタイズできないでしょ」とかですね。

古木:みんな優しかったんですけど、1つは、僕の伝え方のレベルがすごく低かったというところがあるかなと思います。美容師をやっていると、論理的思考というより感覚的なところの方が大事だったりするんですよね。

その人が、なんでこういうスタイルがキレイにハマるのかは、さきほどの「アートをサイエンス」じゃないですけど、理論化されていないので、そういうところで説明に行っちゃっていたんですよ。あまり定量的ではなく、定性的な感じでした。

それを、ちゃんと数字で示せるようになったり……未だに感覚的な表現がどうしても多くなっちゃうんですけど、数字で示せるようになったり、マーケットを取れるよという話をロジカルにするようになってから、けっこう話を聞いてもらえたりしています。

さらに、仮説なんですけど、土台の数字がそれによって積み上がっていくとか、そういうところで、やっと対等にお話しできるようになってきたかなとは思います。

事業を広めていくにあたっての戦略立案

木村:川井さんも、何かあればお願いします。

川井:私は、ユーザーにアンケートを取ったりして、数字をちゃんと見せに行くところと、プロトタイプも作ってインタビューもしてというところをちゃんと説明することで、最初の投資は受けられるかなと思っています。

シードの投資では、結構勢いでも出資受けられたりするのですが、次からの調達をどうするかというところを戦略的に考えないと難しいと思ってます。VCやエンジェルを回って、自分が入れてほしい人がいたら、どうしてその人に入れてほしいのかを伝えて、「次までどこを直したら出資してくれますか?」と課題をもらうというようなやり方をしていました。

質問者5:ありがとうございます。僕はいわゆる認知活動で、いまでいうところのコンテンツマーケティングの極みみたいなことをされていたというお話だったんですけれども、コンテンツマーケティングというのは、記事を書いて「あ、この人すごいね」となって、人が注目してくれて、というとあれなんですけれども……それが自然発生的にできていたのかなと思っています。

例えば、VCとか投資家に、「どうやってこれを広めていくか、戦略はあるの?」ということを聞かれて、何か手を打ったことはございますか?

古木:手を打ったこと……詳しく、何をやるかとか何をやっているかとかは言えないんですけど、最初の頃は、さっきも話に出たようにマーケの費用はかけないで、勝手に検索や口コミで広まっていった感じなんですね。とにかくいいものを作るのに全力でした。マーケティングや広告など、予算を作ること自体を知らなかったので、そういうかたちでやってました。

VCに行くときには説得する材料が必要で、いろんなやり方があるじゃないですか。それを一生懸命自分で勉強しました。広告を出す、バイラルさせる、コンテンツマーケティングもそうですし、SEOもそうです。いろんなことを考えて、これが効くんじゃないかみたいな仮説で、それっぽいロジックを作ってやる、みたいなことで説得をしていく。

実際に、現場ではトライ・アンド・エラーをずっと続けながらやっていくのが正解だと思うんですけど、自分の中で、これは一番効きそうだなということを1個決め打ちして、「こういう理由で、これが効くんです。少数に試してみたらこうです」みたいな感じでやっていましたね。

コアなファンをつくり、いかに勝手に広めてもらうか

質問者5:川井さんは、逆にお金を出したら買えるよという話はあるとして、最初にお金がないとなかなかそれは買えない。認知を広めるぞともがいている最中、何かされていましたか?

川井:ありがたいことに、広告を打っていないのに、毎日ちょっとずつユーザーが入ってきていて、フォロワーさんが広めてくれて、ツイートしてくれるんですよね。コアなファンを作って、そこから徐々にいろんな人に知ってもらえるというところが大きかったかなと思います。

質問者5:ありがとうございます。

木村:お二人ともリファラルが多いというか、当事者ならではの人脈や繋がりで広がっていって、なお広まっていくのかなと感じました。お時間がきてしまいました。

まだまだお話をおうかがいしたい方もいると思うんですけど、このあと、名刺交換やご質問など、多少はできるかなと思うので、よかったらぜひというところで、ご登壇いただいたお二人に拍手をよろしくお願いします。ありがとうございました。

(会場拍手)

最後に、告知になります。AMPでは、定期的にイベントをやっておりまして、今回は美容をテーマに開催したんですけれども、例えば先月はエストニアのスタートアップ環境をテーマに開催しました。

来月以降もイベントを実施する予定ですので、ぜひこのグループに入って、興味があればご参加いただければなというところと、キャンペーンについては冒頭でお伝えしたとおりなので、ぜひやっていただければなと思います。本日はありがとうございました。