作り手が楽しんだ結果、いいコンテンツが生まれる

田中森士氏(以下、田中):お三方ありがとうございました。ここからはパネルディスカッションに移っていきたいと思います。今回のイベントのタイトルが「我々はコンテンツ制作とどう向き合うべきか」ということで、こちらの認識ではコンテンツ制作にお悩みの方々にお越しいただいていると思っています。

今日はなぜこの組み合わせなのかということなんですが、実はかっこでくくれるんです。それは何かと言うと、自然体というか楽しんだ結果、いいものが生まれている。楽しんだ結果、コンテンツになっている。そういったところがすごく似ているんです。

例えばSUUMOタウンの岡さんの編集方針ですと、SUUMOタウンさんはライターさんに楽しんで書いてもらうことを意識しています。その結果、なぜかSEOの対策になったり、エンゲージメントが高くなったりすることが起きている。

ヌケメさんもペルソナを設定しているのか、していないのかわかりませんが、とにかく自分が作りたいものを作っています。その結果、今や世界中からワークショップ講師のオファーが来るまでになり、世界中を飛びまわっておられるケースです。

小林さんもそうです。好きでその格好をされているわけですよね。その結果、ご自身がコンテンツと化したわけです。世界中から引っ張りだこで。年末年始はキューバのハバナでお過ごしになったということですが、これもオタク系のイベントのオファーがあったということですよね?

小林秀章氏(以下、小林):キューバはね、太陽ギラギラの国なのに、意外とオタクが多いんですよ。

田中:ウチにこもって日本のアニメとか見てると(笑)。

小林:そうです。

田中:なるほど。その話もおもしろいです。というわけで、私はみなさんのコンテンツ制作の方向性が同じじゃないかと思って今回オファーをさせていただいた次第です。では、さっそくパネルディスカッションに入っていきましょう。

何のためにコンテンツを制作するのか?

田中:まず1つ目のお題。「何のためにコンテンツを制作するのか」。コンテンツマーケティングの視点で言えば、行動を促したり、何らかの企業利益につなげたり、そういった目的があるわけです。お三方の立場はそれぞれ違いますが、まずは岡さんから。何のためにコンテンツを制作するのでしょうか?

岡武樹氏(以下、岡):自分たちが「SUUMOタウン」というコンテンツを作っている理由としては、まずSUUMOという不動産情報サイトが、ある程度知名度の高いサイトになっていて、「家を決めよう」「引越しをしよう」という人には接することができている、ということがあります。

そのうえで、「サイトに来る前の人たちにアプローチをするためにはどうしたらよいか」と考えて、引越しや家の情報だけじゃなく、「街」を紹介することによって、まだアクションを起こしていない潜在層にリーチしたい、と思いながらSUUMOタウンは運営をしています。

田中:マーケティングですね。

:そうですね。

田中:ありがとうございます。ではヌケメさん。

ヌケメ氏(以下、ヌケメ):僕はけっこう、自分が生活していて「足りていないな」というものに関わることが1つ、自分の方向性としてあるんです。

例えばヌケメ帽という、日本語が刺繍されたキャップのシリーズがあります。英語のTシャツとかは普通に街にあふれていますよね。でも日本語をジョークにせず、ちゃんとかっこいいものとして扱ったデザインはぜんぜん足りていないな、という気持ちがあったんです。

なんというか、英語のTシャツやキャップみたいなものを英語圏の人が見たときにどんな気持になるのかずっと興味があって。自分の母国語は日本語なので、僕がそれを体験しようと思ったら日本語がデザインに使われた洋服になるだろうなと思ったんです。

実際にやってみると、やっぱりグラフィックとしての造形よりも先に意味が目に飛び込んでくるんです。気持ち悪い体験だったんですけれど、「想像通りだな、おもしろい体験だな」と思いました。

「これ、どうやって作られているんだ?」が興味の中心

ヌケメ:あと「グリッチ」というテーマにすごく惹かれたのは、ふだんいろんな機械に頼って生活していますよね。でも、それがどういうロジックで動いているかは、とくに意識せずに生活していると思うんです。その機械が壊れたときに、「あれ、なんで壊れたんだろう?」「ふだんはどうやって動いていたんだろう?」みたいなことを想像するきっかけになると思っていて。

例えばカーナビでテレビを見ながら移動していて、トンネルに入ったら一瞬、映像が乱れますよね。「あれはなんでだろう?」と考えると、「トンネルに入ったからだ」「ということは、トンネルの中は電波が悪いから(映像が)乱れているのか?」みたいな。

僕はそういう構造にちょっと思いを馳せるきっかけとしてグリッチがあるなぁと思っていて。そこが自分の興味の中心ですね。「これ、どうやって作られているんだ?」という。

田中:その気付きを与えるために、コンテンツというかアートを作っておられる?

ヌケメ:そうですね。僕にとってはコンテンツそのものが目的というよりも、コンテンツによって与えられる気付きのほうがメインになる感じですね。

田中:なるほど。コンテンツマーケティングの文脈で言うと、あんまりそういうコンテンツがないんですよね。そこで気付きを与えるというか。例えば認知を獲得するためのバズ目的だったり、あとは先ほども申し上げましたが、悩み解決ですよね。

そういったソリューションのためのコンテンツがあるのですが、今のお話をうかがって、その「気付き」というのはこれからのキーワードの1つになるような気がしました。では、小林さんお願いします。

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