マネジメントとは、人に対して関心を向けること
藤野英人氏(以下、藤野):私は明治大学で教えているのですが。僕らが何を教えているのかと言うと、ベンチャーファイナンスという授業です。いろんなかたちで経営者の方であったり、べンチャー企業のマネジメントなどの話をするんですね。僕自身も話し、いろんな実際の起業家の人の話を聞いたり、チームディスカッションもします。
それで、「あなたは何を学びましたか?」という試験をしました。1人の学生さんが、いい意味で、すごいことを書いたんですね。びっくりしました。「マネジメントとは何かを私は学びました。マネジメントとは、人に対して関心を向けることです」と書いてあって。
中竹竜二氏(以下、中竹):すごいですね。
森本千賀子氏(以下、森本):深い。
藤野:「よくこの言葉を見つけたな」というか。要するに、結局これに尽きるんじゃないかと。「関心を向けること」は、まさにそうで。
私は、いろんな方にインタビューするのが仕事みたいなもので、いろんな会社の社長さんたちにインタビューするんですが、その時にすごく大事だと思ってるのは、どういう立ち位置で話すか……投資家というと、「金出してやるぞ、えらいぞ」みたいな、上から下へみたいな感じになると、身構えるし、怖い。
いい私を見せようとするので、なるべくそうでない立ち位置をする。でも、へりくだりすぎてもよくないので、どういう目線で人と話をするのがいいのかなと、ずっと考えていました。
その時に、僕はその彼が言っているのと同じことをしていて、「あなたのことを知りたくてしょうがないんだよ」という立ち位置が、いちばんコミュニケーションとしてベストだなぁと思いました。
要は、「あなたの会社、あなたのことについて、僕は本当に知りたくてしょうがないです」「あなたのこと、なんでも知りたいです」「あなたの会社、なんでも知りたいです」。健全な好奇心を向けて、話をしていくと、だいたいの人はなんでも話してくれるんです。
結局、みんなが何を一番求めてるのかというと、ほとんどの人が自分のことを聞いてもらいたいんですよ。自分のことや自分の苦労などを関心を持って聞いてもらえるということは、人間にとってハッピーなことなんですね。だから、「マネジメントとは、人に関心を向けること」というのは、すごいですよね。
根底にあるべきは「learn」の考え
中竹:いやぁ、ドラッカーよりいい言葉ですね(笑)。
(会場笑)
ドラッカーが例のマネジメントの定義づけをしましたけど、そっちのほうがすごいですね。
藤野:すごいんです。ある種、人間的なところを深く見てますね。だから、学生から学ぶ、まさに「学び合う」というところで、僕は彼から本当に学びました。お金払ってもいいぐらいです(笑)。
中竹:いやぁ、本当にすばらしいですね。実際、長い研究の歴史の中でも、マネジメントというのはけっこうサスティナブルというか、長期的になっています。
結局、何が大事かって、前まではやっぱり「control」とか、命令型の動詞が多かったんですけども、今は「teach」とか「coach」も、もちろんマネジメントとかにも使いますが、根底にあるのはほぼ「learn」ですよ。
森本:どれだけ我慢して、フラットで学ぶかというのが、今の組織の大きな課題なんですね。そういう意味では今、藤野さん、教えながら学んでいるというのは……。
藤野:そうなんです。だから教えることって、1人の先生が教える、2人学ぶことの話は、それは本当にそうだと思いますね。
だからみなさんも、どんな小さいことでもいいから、教える機会を持つといいです。僕は明治大学で16年間教えてるんですが……すごいことをあえて言っていくと、当たり前のことなんですけど、16年間、自分の授業を休んだことがないです。
中竹:すごいですね。
森本:えーっ、すごい。
藤野:どういうことかというと、自分の授業を自分でやってるから、絶対出席してるじゃないですか。だから、僕は16年間、自分の授業を受け続けているわけなんです。
中竹:そういうことですね。
藤野:そういうことです。先生としてやることは、絶対に自分が最初の生徒になって学ぶということになります。それは、みなさんが、どんな人でも、子どもであったり、小さいサークルでもいいけれども、何かの場で教えると、それが学びの場になるということですね。