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オリラジ中田敦彦「このメンバーで勝つ」と決めていた 仲間のスペックより情熱を大切にすべき理由

2019年3月10日、「中田敦彦氏講演会『僕たちはどう伝えるか』 in Kichijo-ji〜人生を成功させるプレゼンの力〜」が開催されました。芸人になるために親を説得したことを原点として、「人生をプレゼンの力で切り開いてきた」と語るオリエンタルラジオ中田敦彦氏。当講演では、自分の気持ちを伝え、相手に協力や賛同してもらうプレゼンの極意を明かします。連載最後の本記事では、参加者からの質問に答えながら、仲間の集め方やスタートアップのおもしろさなどについて語りました。

年を取ることは「経験」と「可能性」の等価交換

司会者:ありがとうございます。知名度を持って新大陸にいくということだったのですが、その知名度と言いますか、立場に関して、ご質問が来ております。

卍さんという方からです。「歯科衛生士として5年ほど勤めております。若いというだけで、社会経験が自分より長い患者様にまともに話を聞いてもらえないことが多々あります。私と院長が同じことをお伝えしても、私では納得してもらえず、院長が伝えると『なるほどね~』と言われることが多いのです。ある程度経験を積まないと、もしくは積んでいると思われないと、伝わらないこともあるのでしょうか?」というご質問です。

中田敦彦氏(以下、中田):年齢論、確かになあ。「自分の年齢が足りていないから舐められるんだな」と思う人は多いのですが、その逆もめっちゃあるんです。自分より年下の人間が結果を出しているときの「やべえ」感はすごいじゃないですか。

落合陽一さんは、筑波大学の準教授・学長補佐をやっていて、「天才!」と言われて、「うわ! めっちゃ若いのに!」ということで、「若いのにすごい!」というブランドが乗っかるんです。

若さはディスアドバンデージでもあるけれども、結果さえ出しちゃえば、ものすごいパワーを発揮するし、年齢というのは本当にトレードオフなんですね。経験と可能性の等価交換でしかない。今日という1日、明日という可能性を消費して、1個の経験を得て、ということなので、経験は経験で、すごくリスペクトしていかなければいけないと思っています。

だけど、自分にはなにもない。そこに経験で勝とうとすると、埋まらない。経験に対するカードは可能性なので、「いやいやいや! 新しい時代のこのツールに関して……」というような、自分の時代や自分の世代でなにか1つの結果を出すと、1つ大きい名刺として使えると思いますから、世代的に上の人に経験で勝とうとさえしなければ、なんとかうまくやっていけると伝えていこうと思います。

司会者:ありがとうございます。あと、これは今日の講演会自体に対する質問なのですが、「今日の講演会はすべて練習通りですか? アドリブは何回くらいありますか?」。

中田:基本的には、しゃべったことがある話がたくさんあるので、その上でアドリブという感じです。アドリブというのは基本的にはオイルくらいのものです。アドリブがあることによって、マシンが滑らかに動く。これが骨と肉くらいの割合でアドリブをやってしまうと、ガタッと崩れる。

マシンを別に用意しておいて、そこにアドリブというオイルを流しながら走らせると、滑らかに動くというイメージですね。

司会者:マシーンが主体という感じですね。

中田:マシーンが主体ですね。マシーンが割り箸のような感じで来る人もいますからね。

(会場笑)

中田:「うちの車です」「割りばしやないかい!」というような。

(会場笑)

「あとはこれに粘土をつけるんですよ。『バキッ』、あー骨折れたー!」。

(会場笑)

消防士に厳しい訓練をさせるとき、どう伝えればパワハラにならないか

司会者:ありがとうございます(笑)。あとは、講演会の前から準備をして質問を投稿してくださった方がいます。「私は消防士をしています。消防士という、身体を資本としている仕事は、人命救助のために日々訓練や筋力トレーニングをしなければ最高のパフォーマンスを発揮できません。

パワハラが話題となっている現在、自分たちの限界を超えるような訓練や筋力トレーニングをする際に、心を奮い立たせるような言葉や行動はどのように伝えればよいでしょうか?」ということでした。

中田:消防士として、「お前らそんなんじゃダメだ!」という訓練の中で、「これはパワハラなんだろうか……?」。

(会場笑)

中田:小振りじゃない(笑)!? かなり狭いテーマの質問だな! 確かにね。いつこう言われてもおかしくないし、「『パワハラだ!』なんて言われたらなんもできませんわ!」と言っちゃうと、違う気もする。そのルールの中でやれという感じはするので、今の時代の空気感は、「こういう女性への発言はノーだ」「こういう恫喝は暴力だよね」。

そうしたルールが今の世代で調整されてきた空気だとしたら、「昔は良かったんだからいい」では、プレイヤーとしていいプレイヤーではない。ルールがアップデートされているのに、昔のルールでサッカーやっちゃう、というやり方を押し通すのは、あまりいいプレイヤーじゃないと思うので、今の空気感にフィットした声のかけ方を発明したら、めちゃくちゃいい消防士かもしれませんね。

イノベーションですよね。ルールが変わって、そこにフィットさせた。その結果、昔の消防士の先輩が作れなかった檄の飛ばし方が作れたというね。「お前ら、なにやってんだ! そんなことじゃ死んじまうぞ!」というようなことを言わないでなんとかする。ルールを作るというのはおもしろいですよね。

「幸福洗脳」も、「幸福洗脳」というものを使い続けることを、めちゃくちゃ狭い枠内でやると、めちゃくちゃおもしろくなっていくので、「殺す」「死ぬ」なんかは絶対に使わないほうがいいですよね。あと、人格否定もよくないですよね。「お前みたいなのは、だからダメなんだ!」といったことは言わないほうがいいですよね。

励ましながらやれたらいいですよね。やっぱり、テンションを上げたいから、声も上げたいじゃないですか。「お前に可能性を感じている! この俺の意気込みが見えねぇのか!」というような(笑)。

(会場笑)

中田:「声を上げてめっちゃ怒られているようだけど、めっちゃ優しい! なにそれ!」という(笑)。

(会場笑)

中田:そういう檄を発明するのはおもしろそうです(笑)。枠の中でぜひアップデートをして、イノベーションを起こしていただきたいと思います。

仲間を集めたいときは、どうやって発信していくべきか?

司会者:今の時代にあった檄の飛ばし方を見つけていけたら、ということですね。ありがとうございます。これが最後の質問です。「仲間を集める時に、浮かんだ人すべてに声をかけますか? それとも、リアルに相乗効果が期待できる人を精査して声をかけますか?」という質問です。

中田:なるほど、なるほど。声をかけるのか。僕の場合はどちらかというと、声をかけるというよりは、「これがやりたいんです!」と声を上げたうえで来た人とやる、という感じだと思うんです。なにをやりたいかをとにかく声高に発信していると、その旗のもとに、「僕はどうでしょうか?」「私は?」という人が来るんです。

ピンポイントで「君さぁ」と口説きにいくと、ノーの可能性の方が多いので。あくまでも協業のニーズは同期との方が多いので、仲の良さベースで選んじゃうと「俺はそれやりたくない」と断られることの方が多いし、遺恨を残しそうだなぁ、というのがあるので、とにかく言い続ける。真ん中で「俺はお笑いがやりたいんだ! お笑いが好きなんだ!」と言って、きたのが藤森だったんです。

元は藤森くんに「僕と漫才やらないかなぁ?」と言ったわけではないんです。「俺はお笑いが大好きでさ、お笑いがめちゃめちゃ好きだから、お笑い芸人になってみたいなーと思っているんだけど、コンビでやってみたいけど、でもなー。無理だろうなー。でも、お前はお笑いが大好きだよねー!」などと言って、おもしろいところを見せる。

ひたすらしゃべって人を笑わせて、「あっちゃん、お笑いの芸人になったらいいじゃん! お笑いのネタ詳しいし、お笑い好きなんだろ!」、「まあまあまあまあ」と言っているときに、藤森が「僕とやりませんかね?」と。そういった感じかと思うんです。ここに立った人全員が、やっぱりスペックよりも情熱だと僕は思っているんです。

スペックが高くても気持ちがつながっていないと、絶対にうまく協働できないんですよね。それがすごくポイントだと、今思い出しましたね。逆に情熱があったら「とりあえずやってみる!」というのも……それもけっこうケースバイケースなんですよね。

本当にいろんな人が「僕となにかやりませんか?」と言って「う~ん」となってスルーするパターンはかなりあるので、そこは本当にマッチングというかフィーリングなのかなあ。

「このメンバーで勝つ」という命題を掲げる大切さ

やっぱり、スペックよりも情熱。だから、カードゲームに例えて、僕は常に「今あるデッキで勝つんだ!」と言っているんですよ。「お前はなに様だ」というような感じですが、自分のカードがチームだとして、こんなデザイナーがいて、こんなやつがいて、こんな営業部長がいて、こういうやつがいて、こういうやつがいて。

だけど「こいつらが全部ゴールドドラゴンだったらなあ」と言っている人のところには、ゴールドドラゴンはこないわけです。そのカードで勝てる相手を探して、勝って、その勝っているさまを見て、1個レベルの強いカードがくる。自分に近いところで勝利を見て、より強い人が来るので、デッキで勝つことによって、いずれゴールドドラゴンが手に入るだろう。

というように思えないと、なかなか人間は集まらないと思うので、だから藤森くんだって、別に俺は相方を変えた男ではないわけです。「藤森くんで勝つ!」。この命題はおもしろいんですよ。

(会場笑)

漫才全盛の時代は、ツッコミがうまくないと本当に芸人としてはダメだったので、藤森くんはあんまり最初ツッコミの人じゃなかったんですよね。その途中で劇的にチャラくなっちゃうし。

(会場笑)

「このメンバーで勝つ!」という命題の結果として生まれたのが、『武勇伝』や『PERFECT HUMAN』だったんだと思います。「RADIO FISH」もそうですし、幸福洗脳も「このブランド名とこの立地で勝つ!」という。乃木坂で、「幸福洗脳」ですよ。「どう成功させるか?」「まだできることはある!」と言って、電柱広告を貼るんです。

「おもしろくない? この電柱空いているんじゃないかな? ここ空いてるよな。あそこなにかしら貼ってあるし、ここは空いてるよな? ちょっと調べようぜ!」と言って調べて、「空いてますか? 月額いくらですか? いける! やってみよう! デザインこれだ! やってみよう!」で「幸福洗脳……」。恐ろしいことをしている……。

(会場笑)

効果があるのかないのか? ラジオを聞いていないのに、これだけを見てくる客なんている? 

「電柱広告見て、気になって調べたら、雑貨屋ができたんですね、いいっすねー、買いますわ」となる?

(会場笑)

おもしろいことに挑戦し続けられるのがスタートアップ

「なる!? これ!?」と言っていたんです、ずっと。すると、電柱広告を出して1ヶ月か2ヶ月くらいして、ついにその客が現れたんです。僕が店の裏の事務所スペースにいたら、(ドアのベルが)カラーンと鳴った。「あ、お客さんが来たな。どういうお客さんだろう?」と聞いていたら、4人くらいで来たんです。

「なになに? 前から知ってたの?」

「いや、違うんだよ。さっき調べてさ……」

「なんか、ビビッときてさ……」

それで、うちのTが「いらっしゃいませ。お客さん、ラジオですか?」と聞いたら、「いや……え? ラジオ? なんですか?」と。ラジオで発表していたことを知らないの。

「いや、あの、電柱広告を見ました」。

(会場笑)

中田:俺、後ろで震えたもん。「来たぞ、おい! 電柱広告で来ました、だって!」と思って耳をそばだてて聞いていたら、その4人は、近くのお店に勤めている人だったんです。そのうちの一人の男性が「え、なにこれ!?」と思って、ネットで検索して調べたら「アパレルなんだ! 気になるから入ってみたい。でも一人で入るの怖いな」ということで同僚を連れて4人で来たという。しっかりパーカーを買って帰ったんです。

(会場笑・拍手)

中田:「うわー、おもしれえなー!」と思って。こんなのおもしろいでしょ!? 「客こねえ、どうする⁉︎」となって「電柱なんて意味ねえよ!」とひとしきり喧嘩して。それで、「おもしろいかもしれない。これ、やべえのやっちまったかもしれない。俺、いつ逮捕されるのかなぁ」なんて。

(会場笑)

中田:「電柱を見て来たやつがいる。まじか!」という。

(会場笑)

中田:こんな経験はなかなかできませんからね。スタートアップは本当におもしろい、と思いました。「中田となにかしたらおもしろいことがある!」ということだけは伝わったと思います。

今日は本当にありがとうございました!

(会場拍手)

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